アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和8年10月22日

アルゼンチン政治情勢(2026年9月)

1 内政

(1)ミレイ政権

●7日、政府は、刑事責任年齢を14歳に引き下げる新たな少年刑事制度の施行規則を公布した。
 
●ロス・ニウイレス水力発電システムを巡る動向
・11日、政府は大統領令で、ロス・ニウイレス水力発電システムの水力発電ロイヤルティについて、ラパンパ州への一部配分を定めた従来の規定を廃止し、当該発電施設が所在するメンドーサ州に全額配分することを決定した。
・14日、ラパンパ州は、当大統領令の停止を求め、連邦裁判所に仮処分を申し立てた。
・16日、連邦裁判所は、仮処分を認め、当該大統領令の執行を差し止めた。
 
●ブルリッチ上院議員による政府批判
・12日、ブルリッチ上院議員(与党)は、大学での講演会において、景気回復の「スピード」について懸念を示し、減税が「すべての人に恩恵をもたらす」よう求めた。
・14日、ブルリッチ上院議員は、ブエノスアイレス市弁護士会で開催された講演会において、報道の自由を擁護し、表現の自由に対する政府による制約の限界を考慮しなければならないと発言した。同発言は、新聞記者に対し、辛辣な非難を繰り返すミレイ大統領の態度とは対照的であると報道された。
・16日、ブルリッチ上院議員は、同日審議される予定だった2027年度予算案について、事前通知なく障がい者関連条項の大幅な変更があったため、審議が見送られたことに不満を表明し、変更を行ったとされている経済省を批判した。
・18日、ブルリッチ上院議員は、自身のXに、ミレイ大統領が以前から批判していた歌手の楽曲「私は気にしない」を聴いている自身の動画を投稿した。
 
●16日、サンティリ官房長官は、北部の州知事ら(カタマルカ州・コリエンテス州・サルタ州・トゥクマン州)と会談し、2027年度予算への支持を求めた。
 
●大統領官邸・公邸人事異動
・17日、ミレイ大統領官邸・公邸の警備を担当していた文民職員12人を更迭し、軍関係者がその役割を引き継いだ。政府は、更迭の理由について、ミレイ大統領とその側近の活動に関する情報が漏洩した疑いがあるためと説明した。
・23日、政府は、大統領官邸・公邸から解雇した12人の職員を復職させ、別の役職に配置転換した。
・29日、政府は、大統領公邸の軍関係者の配置について、閣僚級高官への脅迫やテロの脅威、教皇レオン14世の訪問など治安情報の懸念を理由に挙げた。
 
●18日、政府は、アルゼンチン・チリ間の犯罪人引渡条約を公布した。
 
●18日、政府は、「中央当局間の国際司法協力の要請の電子的送信に関する条約」(通称「メデジン条約」)を公布した。
 
●21日、ビルチェス障がい者担当副大臣が辞任した。
 
●27日、ミレイ大統領は、経済指標の統計的なデータが信頼できないと示唆し、景気後退を否定した。
 

2)議会


●2日、下院委員会で、家計債務負担軽減法の審議が開始した。
 
●9日、上院委員会で、中央銀行基本法改正案が可決された。
 
●10日、上院委員会で、税務上の無罪推定法案(修正案)が可決された。
 
●15日、政府は、下院に2027年度予算案を提出した。
 
●16日、上院委員会で、寒冷地域法案が可決された。
 
●17日、政府は、国家主権防衛法案を議会に提出した。
 
●17日、上院で、税務上の無罪推定法案(修正案)が可決された。
 
●17日、上院で、新バイオ燃料制度が可決された。
 
●17日、上院で、裁判官の任命(2件)が可決された。
 
●23日、下院委員会で、家計債務負担軽減法が可決された。
 
●29日、パゴット上院議員(与党)が死去した。
 

(3)デモ・スト


●1日、クリスティーナ・キルチネル元大統領の自宅前で、4年前に起きた同人に対する暗殺未遂事件の真相究明と正義を求めるデモが行われた。
 
●19日、左派勢力は、政府に抗議する「怒りのデモ行進」をした。
 
●30日、賃上げを求める72時間の大学ストライキが開始した。

 
(4)その他


●1日、連邦行政訴訟裁判所は、政府による大学財政法遵守を義務付けた仮処分の解除請求を退け、3日以内に履行状況や進捗を報告するよう政府に命じた。
 
●2日、キシロフ・ブエノスアイレス州知事(野党)は、駐アルゼンチンカナダ大使と会談し、経済・貿易・科学分野での協力の強化等について協議した。
 
●4日、ブエノスアイレス連邦裁判所は、マクリ元大統領がIMFに要請した570億米ドルの融資に関する告発を不起訴処分とした。
 
●7日、ブエノスアイレス州の少年刑事裁判所は、同制度の同州における刑事責任年齢を14歳に引き下げる少年刑事制度施行規則の適用を60日間停止した。政府はこの判断を批判した。その後、上級審が同停止措置を取り消した。
 
●8日、行政訴訟控訴裁判所は国営水道公社「AySA」の民営化を差し止め、この件を連邦裁判所に移送した。
 
●8日、国家選挙管理委員会は政府に対し、政府が目指す2027年の選挙を見据えた選挙制度改革について、時間的猶予が少なくなっていると警告した。
 
●21日、連邦裁判所は、障がい者に関する判決の履行義務違反の疑いがあるとして、ルゴーネス保健相と国立退職者・年金受給者社会福祉院(PAMI)のトップに対する捜査を命じた。
 
●22日、連邦行政訴訟裁判所は、政府に対し大学資金調達法の遵守を命じ、5日間の猶予期間を与えた。
 
●29日、最高裁判所は、外国人への土地売却に制限を設けないとする必要緊急大統領令(DNU)を有効と判示した。野党はこの判決をめぐり最高裁を批判し、さらなるデモを呼びかけた。
 
●30日、連邦刑事上訴裁判所は、フェルナンデス元大統領に対するジェンダーに基づく暴力事件につき、元大統領弁護団による訴追取消しの申し立てを却下した。



2 外交
 
●1日、カレイラ国家デジタルコミュニケーション局長がXの個人アカウントに本年8月中国・ネパール国境地帯で発生した大規模な土石流災害について、中国政府に責任がある旨を投稿した。中国大使館はカレイラ局長に対し「直ちに態度を改める」よう要求し、両国間の「協力関係に悪影響が及ぶ」可能性があると警告した。
 
●2日、キルノ外相は、ルベッキン・ウルグアイ外相と共に、二国間の航空路線を自由化するオープンスカイ協定に署名した。
 
●2日、キルノ外相はXの個人アカウントで、ウルグアイがアルゼンチンの懸念を聞き入れる形で、パイサンドゥのグリーン水素プラントの再配置決定を伝えてきたことを発表、オルシ・ウルグアイ大統領、ルベッキン・ウルグアイ外相への感謝を表明した。
 
●3日、アルゼンチン・チリ共同声明
・政府は、アルゼンチンとチリ両大統領が、二国関係の緊密化、エネルギー・通商・国境・治安・南極協力の深化、マゼラン海峡やフォークランド(マルビーナス)諸島問題の共通課題について協議し、ハイレベル対話と二国間協力を一層強化することで一致したと発表した。
 
●フォークランド(マルビーナス)諸島問題
・3日、ミレイ大統領は、全国放送、声明を通じて、フォークランド(マルビーナス)諸島でのアルゼンチンから許可を得ていない石油開発計画「シー・ライオン」に対抗し、国家主権・安全保障・重要インフラ等を包括的に強化する法案を議会に提出し、関連する規則制定を進める方針を表明した。ティエラ・デル・フエゴ州における海軍基地の建設、石油開発企業に対する制裁措置も課すと発表した。
・4日、キルノ外相は、建設予定のティエラ・デル・フエゴ州における海軍基地を米国に渡すことはないと断言した。
・4日、政府はフォークランド(マルビーナス)諸島周辺で石油・ガスの探査・開発に関与しているとされる企業や株主・関連サービス企業計45社に対し、法律違反を調査・処罰するための制裁手続きを開始した。キルノ外相は、これらの措置の目標は、フォークランド(マルビーナス)諸島での石油・ガス開発が開始されるのを防ぐことだと説明した。
・7日、政府は、キルノ外相が、アメリオ国家財務局検事の法的支援を受け、石油開発計画「シー・ライオン」を行う企業ナビタス・ペトロリアム社に対して刑事告訴を行うと発表した。
・7日、政府は、2027年度予算において、ティエラ・デル・フエゴ州の統合海軍基地の建設・整備を優先すると発表した。
・8日、政府は記者会見において、マルビーナス諸島をめぐる英国とのいかなる軍事衝突の可能性を否定した。
・9日、政府は、アルゼンチン大陸棚で法令に違反して石油採掘活動を行う企業に加え、関与した取締役・経営者ら個人も刑事告発し、既存訴訟の拡大や新規訴訟を通じて責任を追及すると発表した。
・9日、連邦裁判所は、フォークランド(マルビーナス)諸島における石油開発企業に対する訴訟に介入する管轄権を有すると発表した。
・10日、政府は外務省に、外交政策や国際的利益に影響し得る政府活動の情報共有・調整・助言を行い、フォークランド(マルビーナス)諸島問題等に関する外交方針の一貫性を確保する「外交政策調整システム」を創設すると発表した。
・10日、ミレイ大統領は予定していた10月のロンドン訪問を中止した。
・11日、キルノ外相は、プレスティ国防相と共に、ティエラ・デル・フエゴ州ウシュアイア市に建設される統合海軍基地の予定地を視察し、同州メレラ知事及びウルキサ副知事と会談した。
・12日、政府は、諸島をめぐるアルゼンチンと英国の対立が「潜在的な大惨事」になるというトランプ米大統領の発言を受け、英国との交渉における仲介役として同大統領を排除するつもりはないとした。
・14日、政府は、ウルグアイで開催された観光業の展示会に英国のブースが諸島を英国の名称である「フォークランド諸島」として宣伝したことを受け、ウルグアイ外務省に対し、正式な抗議を申し入れた。
・15日、政府は、英国政府によるフォークランド(マルビーナス)諸島での商業・石油開発活動に関する指針を批判し、石油開発計画「シー・ライオン」をめぐり、外交・行政・司法上の対抗措置を強化すると発表した。
・15日、キルノ外相は記者とのインタビューで、英国のスコットランド、ウェールズ、北アイルランドにおける自己決定をめぐる動きがフォークランド(マルビーナス)諸島をめぐるアルゼンチンの主張を法的に有利にする材料になるとの見方を示した。
・16日、連邦裁判所は、フォークランド(マルビーナス)諸島で操業している石油会社ロックホッパー社とナビタス社に対し、石油開発計画「シー・ライオン」の推進を停止するよう命じた。
・16日、ミレイ大統領は、フォークランド(マルビーナス)諸島をめぐる政府政策が自身の選挙戦略と関連しているという見方を否定した。
・17日、政府は、「国家主権防衛法案」を議会に提出したことを発表した。
野党は、政府が推進する「国家主権防衛法案」に含まれている「偽情報キャンペーンの罪」が報道機関や市民社会に対する「政治的弾圧」の手段として利用される恐れがあると懸念を示した。18日、政府は、当条項が「記者を迫害するためでなく、我々アルゼンチン人を守るため」だとし、その内容を擁護した。
・22日、政府は、アルゼンチンが違法とする、同国大陸棚における石油・ガス採掘権の延長について、英国に抗議した。
・23日、ミレイ大統領は国連総会での演説で、国連がフォークランド(マルビーナス)諸島問題を無視していると同機関を批判した。
・24日、ミレイ大統領は、記者とのインタビューで、アルゼンチンがマルビーナス諸島を奪還した場合でも、島民を国外追放することはないと断言した。
・24日、連邦裁判所はフォークランド(マルビーナス)諸島での石油開発をめぐる捜査につき、英国とイスラエルに司法協力要請を送った。
・28日、政府は、英国によるフォークランド(マルビーナス)諸島周辺での石油資源開発などをめぐり、国連海洋法条約に基づく仲裁手続きを開始するとともに、英国への活動停止要求や必要な法的・制裁措置を進めると発表した。
 
●13日、パリの「カサ・アルヘンティーナ(アルゼンチン・ハウス、在外文化交流施設)」ムシオ所長が辞任した。
 
●15日、政府は、メルコスール・シンガポール自由貿易協定(FTA)を公布した。
 
●16日、ラメラス米国大使は自身のXで、アルゼンチンにおける米国からの投資拡大に取り組んでおり、アルゼンチンの米国ビザ免除プログラムへの復帰を推進していると述べた。
 
●18日、政府は、サウジアラビアにおけるフーシ派による度重なる攻撃を非難した。
 
●21日、政府は、11月に予定されている教皇レオ14世によるアルゼンチン訪問のプログラムを正式に発表した。
 
●21日、政府は、AMIA会館爆破事件(1994年)に関する欠席裁判において、イラン人被告人7人とレバノン人被告人1人を正式に審判することを決定した判決を「歴史的な進展」として歓迎した。
 
●23日、政府は、米国と共に、交通・エネルギー・鉱物・デジタル分野のインフラ整備と投資を促進し、重要なサプライチェーンの強化を目指す「アンデス・大西洋回廊」を立ち上げたことを発表した。
 
●24日、ミレイ大統領は、ネタニヤフ・イスラエル首相と会談し、同首相への無条件の支持を表明した。
 
●24日、政府は、アルゼンチンとUAEは、貿易・投資関係の一層の深化に向け、包括的経済連携協定(CEPA)の交渉開始で合意し、鉱業、AI、エネルギー、農産業などへの投資拡大を目指すと発表した。
 
●28日、政府は、教皇レオ14世の来訪に伴い、11月9日を全国、10日をコルドバ州とブエノスアイレス市、11日をブエノスアイレス州の祝日とし、訪問の準備・調整・警備を担う臨時特別執行ユニットを内閣官房に設置すると発表した。
 
●30日、ミレイ大統領は、記者とのインタビューで、改めてルーラ・ブラジル大統領を非難し、ボルソナロ・ブラジル大統領候補を支持した。


(3)要人往来

 往訪:
●ウルグアイ:キルノ外相(2日、メルコスール非公式会議出席、二国間オープンスカイ協定締結)
●チリ:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、キルノ外相(3日、「マドリード・フォーラム第5回地域会議」出席、サラ・ロジャース米国務省広報担当次官補との会談、カスト・チリ大統領との会談)
●米国:ミレイ大統領、キルノ外相、カプート経済相(22日~24日、国連総会出席、「米州の盾」会議出席)
 
来訪:
●「レイノルズ財団」代表団(1日、ミレイ大統領との会談)
●ノーベル経済学賞受賞者のヘックマン氏及びアルゼンチン・マクロ経済研究センター大学(UCEMA)ペッシーノ学長(3日、ミレイ大統領及びペトベッロ人的資本大臣との会談)
●AI・クラウドサービスの企業「DayOne Data」代表団(7日、ミレイ大統領及びカリーナ・ミレイ大統領府長官、サンティリ官房長官との会談)
●テスラ代表団(7日、ミレイ大統領及びカプート経済相、キルノ外相との会談)
●タジャニ・イタリア閣僚評議会議長兼外務・国際協力大臣、ヴァルディタラ・イタリア教育・功績大臣、ニコレッティ駐アルゼンチンイタリア大使、オルシーニ・イタリア産業総連盟会長(8日、ミレイ大統領及びカリーナ・ミレイ大統領府長官、キルノ外相、ペトベッロ人的資本大臣との会談)
●イノベーション・投資プラットフォーム「Plug and play」アレン・シー・グローバル展開・成長担当副社長(8日、キルノ外相との会談)
●鉱物資源会社「Vicuña Corp.」のホックスタインCEO及びモレア地域担当ディレクター(16日、キルノ外相との会談)
●アル・マリUAE経済・観光大臣(25日、キルノ外相及びシオリ観光・環境・スポーツ担当長官との会談)

(了)

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