アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
令和元年8月23日
アルゼンチン政治情勢(2019年7月)
2019年8月作成
在アルゼンチン日本大使館
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 大統領選挙予備選挙キャンペーンの開始
9日,大統領選挙予備選挙(8月11日実施)に向けたマスメディアを使った選挙キャンペーンが開始され,テレビ,ラジオ,新聞をはじめ,ツイッター,フェイスブック等にも各候補者の動画や広告が掲載された。
イ 「変革のために共に」大会
10日,与党「変革のために共に(Juntos por el cambio)」は,パルケ・ノルテで党大会を開催し,マクリ大統領は,次の4年間も大統領となる準備はできていると再選への意欲を見せた。大会には,ピチェト上院議員(副大統領候補),ビダル・ブエノスアイレス州知事,ラレタ・ブエノスアイレス市長の他,コルネホ急進党党首,バルデス・コリエンテス州知事,モラレス・フフイ州知事,ルストー下院議員等が出席した。
ウ ボランティア市民サービスに関する治安省令
16日,ブルリッチ治安大臣は,市民サービスに関するボランティア制度を始める旨の省令を官報で公布し,9~12月に1,200人を対象として週に1度,本制度のパイロット的実施を行うと発表した。この制度は,学校に行かず,また働いてもいない若者対策の一環として,16~20歳の若者を対象に治安維持のためのボランティアへの参加を促すもの。
エ テロ組織及び人物に関するリストの作成
17日,マクリ大統領は,テロに関わる組織及び人物のリストを作成する政令を発表した。管轄は,司法・人権省で,同リストの対象には1994年のイスラエル共済組合(AMIA)爆破事件に関与したと見られるヒズボラも含まれる。
(2)国会
ア 裁判官の任命承認
17日,議会上院は,約3ヶ月間審議が止まっていた11裁判官と3名の公的弁護人の任命を承認した。未だ50以上が空席となっており,早期の任命が待たれている。
イ 潜水艦サン・フアン号事故に関する国会報告書の公表
18日,潜水艦サン・フアン号事故に関する両院委員会は,バッテリータンク3での火災により,潜水艦が爆破したと結論付ける報告書を公表した。本事故は,2017年11月15日に起こったもので,44名の乗組員が死亡している。
(3)司法
ア ブドゥー前副大統領のチコーネ社の買収関与に対する有罪判決
17日,連邦刑事上告裁判所(Cámara Federal de Casación Penal)は,2018年8月に連邦裁判所が下したブドゥー前副大統領への5年10か月の懲役刑を支持した。この事件は,2010年,当時経済大臣であったブドゥー前副大統領が,当時破産状態にあった民間印刷会社チコーネ社の買収に不正に関与し,「(公務遂行とは)相容れない取引(Negociación incompatible)」を行ったとした訴えに対し,連邦裁判所で有罪判決が下されたもの。
イ 賄賂ノート事件にかかる公判前倒し請求
22日,クリスティーナ・フェルナンデス前大統領(現上院議員)は,2020年1月に予定されている汚職ノート事件の公判を早めるように裁判所に請求した(その後,棄却)。この事件は,キルチネル元大統領及びフェルナンデス前大統領時の様々な汚職に関し,デ・ビード元連邦企画・公共投資・サービス大臣の右腕とされたバラータ同省次官の運転手であるセンテノ氏が不正な資金の流れを克明に記録したノートが明るみに出たことが発端となったもの。同前大統領は,公判で無罪を主張し,副大統領候補として立候補している本年選挙で,汚職のイメージを払拭したいという意図がはたらいたものと見られている。
(4)その他
ア 交通機関のスト
5日,エセイサ空港及びホルヘ・ニューベリー空港でパイロット組合及び乗組員組合によるストがあり,少なくともキャンセルが40便,遅れが30便に出たため,約5,000人の乗客に影響があった。また,23日にも,ペロン党キルチネル派組合員が空港内デモや機内でのビラ配り等を展開した。
加えて,12日には,地下鉄・バス運転手組合(UTA:Unión Tranviarios Automotor)が,給料の引き上げを求めてブエノスアイレス州及びブエノスアイレス市内の路線バス(コレクティーボ)のストを実施した。
イ デ・ラ・ルア大統領の逝去
9日,フェルナンド・デ・ラ・ルア元大統領(1999年から2001年)が,81歳で逝去した。通夜は国会で行われ,マクリ大統領ほか政府関係者が参加した。
ウ 鉄道サン・マルティン線の一部高架線化
10日,鉄道サン・マルティン線の一部(パレルモ駅からパテルナル駅間)が5kmにわたって高架線化された。昨年5月から一部区間で行われていた運行中断や減便がなくなり,レティーロ駅からドクトル・カブレ駅までの全線運行が再開した。本高架線開通により,当該区間の道路通行への支障がなくなり,交通渋滞が緩和されると見込まれている。
エ イスラエル共済組合(AMIA)爆破事件25周年追悼式
18日,1994年に起こったAMIA会館爆破事件の追悼式が行われた。25回目を迎える本年は,前の年より多い追悼式典参加者となった。AMIA,在亜イスラエル協会(DAIA)といったユダヤ系団体の式典の他に,本件の犠牲者と事件を調査していたニスマン連邦検事の死を悼む沈黙のデモも行われた。なお,マクリ大統領は,政令で18日を国喪とした。
2 外交
(1)日本: アルゼンチン産羊肉の商業ベース輸出開始
23日,パタゴニア産の子羊肉が初めて日本に向けて輸出された。12トンの羊肉が冷凍コンテナで,サンタ・クルス州からチリのプンタ・アレナス港を通じて出荷され,約1ヶ月後に日本に到着する予定。
(2)米国:ポンペオ国務長官の来亜
19日,米国のポンペオ国務長官が来亜し,ブエノスアイレスで開催された第2回西半球テロ対策閣僚級会合に出席した。同会議の前に,イスラエル共済組合(AMIA)爆破事件25周年関連式典に参加した他,マクリ大統領を表敬し,フォリー外務大臣他と会談した。また,今次訪問において,アルゼンチン,ブラジル及びパラグアイ三か国国境におけるテロ対策協力体制への4カ国合意がなされた。
(3)メルコスール:第54回 メルコスール首脳会議の開催
15~17日,当地サンタ・フェ州サンタ・フェ市で,メルコスール首脳会議を含む各種会合が開催された。17日の首脳会議では,メルコスール加盟国及びボリビア首脳による共同声明,メルコスール及び関連国首脳による共同声明,メルコスール諸国及びボリビアによる国際先住民族言語年共同宣言,メルコスールにおける民主主義強化に関する首脳宣言,ベネズエラ問題に関する首脳宣言,テロリズム及びAMIA爆破事件25周年に関する首脳宣言が採択された。また,メルコスール域内でのローミング料金課金を廃止する合意がなされた。首脳会議には,メルコスール加盟国からボルソナーロ・ブラジル大統領,ベニテス・パラグアイ大統領,バスケス・ウルグアイ大統領が出席し,加盟準備中のモラレス・ボリビア大統領,準加盟国のピニェラ・チリ大統領やその他政府高官が出席した。
(4)ベネズエラ:
ア 第4回キト・プロセス会合の開催
4~5日,サン・マルティン宮殿で,第4回キト・プロセス会合が開催された。本会合は,ベネズエラ避難民の人的移動に関するキト宣言(2018年9月)及び行動計画(同年11月)のフォローアップを行う技術レベルの会合で,エクアドル以外での開催は初めて。会合では,ブエノスアイレス宣言と今後のプロジェクト案などを記載したロードマップが署名された。
イ 第15回リマ・グループ外相会合の開催
23日,サン・マルティン宮殿で,第15回リマ・グループ外相会合が開催され,ベネズエラのグアイド暫定大統領支持や早期の民主主義回復支援を含む参加国共同声明が発表された。会合には,同グループ16カ国の代表やEUからイグレシアス・ベネズエラ担当特別顧問が参加し,途中,ベネズエラ・カラカスからグアイド暫定大統領が,ビデオ会議システムを通じて加わった。
(5)グアテマラ:モラレス大統領の来亜
3日,モラレス・グアテマラ大統領が訪亜し,パンパIIIを2機購入する契約を製造会社であるFAdeA社と結んだ。売却額は28百万ドルでパイロットの訓練とメンテナンスを含んでいる。(なお,その後の新聞報道によれば,グアテマラ政府内の手続き不備により,契約は延期された由。)
(6)要人往来
ア 往訪
(1)大統領府・政府:
ア 大統領選挙予備選挙キャンペーンの開始
9日,大統領選挙予備選挙(8月11日実施)に向けたマスメディアを使った選挙キャンペーンが開始され,テレビ,ラジオ,新聞をはじめ,ツイッター,フェイスブック等にも各候補者の動画や広告が掲載された。
イ 「変革のために共に」大会
10日,与党「変革のために共に(Juntos por el cambio)」は,パルケ・ノルテで党大会を開催し,マクリ大統領は,次の4年間も大統領となる準備はできていると再選への意欲を見せた。大会には,ピチェト上院議員(副大統領候補),ビダル・ブエノスアイレス州知事,ラレタ・ブエノスアイレス市長の他,コルネホ急進党党首,バルデス・コリエンテス州知事,モラレス・フフイ州知事,ルストー下院議員等が出席した。
ウ ボランティア市民サービスに関する治安省令
16日,ブルリッチ治安大臣は,市民サービスに関するボランティア制度を始める旨の省令を官報で公布し,9~12月に1,200人を対象として週に1度,本制度のパイロット的実施を行うと発表した。この制度は,学校に行かず,また働いてもいない若者対策の一環として,16~20歳の若者を対象に治安維持のためのボランティアへの参加を促すもの。
エ テロ組織及び人物に関するリストの作成
17日,マクリ大統領は,テロに関わる組織及び人物のリストを作成する政令を発表した。管轄は,司法・人権省で,同リストの対象には1994年のイスラエル共済組合(AMIA)爆破事件に関与したと見られるヒズボラも含まれる。
(2)国会
ア 裁判官の任命承認
17日,議会上院は,約3ヶ月間審議が止まっていた11裁判官と3名の公的弁護人の任命を承認した。未だ50以上が空席となっており,早期の任命が待たれている。
イ 潜水艦サン・フアン号事故に関する国会報告書の公表
18日,潜水艦サン・フアン号事故に関する両院委員会は,バッテリータンク3での火災により,潜水艦が爆破したと結論付ける報告書を公表した。本事故は,2017年11月15日に起こったもので,44名の乗組員が死亡している。
(3)司法
ア ブドゥー前副大統領のチコーネ社の買収関与に対する有罪判決
17日,連邦刑事上告裁判所(Cámara Federal de Casación Penal)は,2018年8月に連邦裁判所が下したブドゥー前副大統領への5年10か月の懲役刑を支持した。この事件は,2010年,当時経済大臣であったブドゥー前副大統領が,当時破産状態にあった民間印刷会社チコーネ社の買収に不正に関与し,「(公務遂行とは)相容れない取引(Negociación incompatible)」を行ったとした訴えに対し,連邦裁判所で有罪判決が下されたもの。
イ 賄賂ノート事件にかかる公判前倒し請求
22日,クリスティーナ・フェルナンデス前大統領(現上院議員)は,2020年1月に予定されている汚職ノート事件の公判を早めるように裁判所に請求した(その後,棄却)。この事件は,キルチネル元大統領及びフェルナンデス前大統領時の様々な汚職に関し,デ・ビード元連邦企画・公共投資・サービス大臣の右腕とされたバラータ同省次官の運転手であるセンテノ氏が不正な資金の流れを克明に記録したノートが明るみに出たことが発端となったもの。同前大統領は,公判で無罪を主張し,副大統領候補として立候補している本年選挙で,汚職のイメージを払拭したいという意図がはたらいたものと見られている。
(4)その他
ア 交通機関のスト
5日,エセイサ空港及びホルヘ・ニューベリー空港でパイロット組合及び乗組員組合によるストがあり,少なくともキャンセルが40便,遅れが30便に出たため,約5,000人の乗客に影響があった。また,23日にも,ペロン党キルチネル派組合員が空港内デモや機内でのビラ配り等を展開した。
加えて,12日には,地下鉄・バス運転手組合(UTA:Unión Tranviarios Automotor)が,給料の引き上げを求めてブエノスアイレス州及びブエノスアイレス市内の路線バス(コレクティーボ)のストを実施した。
イ デ・ラ・ルア大統領の逝去
9日,フェルナンド・デ・ラ・ルア元大統領(1999年から2001年)が,81歳で逝去した。通夜は国会で行われ,マクリ大統領ほか政府関係者が参加した。
ウ 鉄道サン・マルティン線の一部高架線化
10日,鉄道サン・マルティン線の一部(パレルモ駅からパテルナル駅間)が5kmにわたって高架線化された。昨年5月から一部区間で行われていた運行中断や減便がなくなり,レティーロ駅からドクトル・カブレ駅までの全線運行が再開した。本高架線開通により,当該区間の道路通行への支障がなくなり,交通渋滞が緩和されると見込まれている。
エ イスラエル共済組合(AMIA)爆破事件25周年追悼式
18日,1994年に起こったAMIA会館爆破事件の追悼式が行われた。25回目を迎える本年は,前の年より多い追悼式典参加者となった。AMIA,在亜イスラエル協会(DAIA)といったユダヤ系団体の式典の他に,本件の犠牲者と事件を調査していたニスマン連邦検事の死を悼む沈黙のデモも行われた。なお,マクリ大統領は,政令で18日を国喪とした。
2 外交
(1)日本: アルゼンチン産羊肉の商業ベース輸出開始
23日,パタゴニア産の子羊肉が初めて日本に向けて輸出された。12トンの羊肉が冷凍コンテナで,サンタ・クルス州からチリのプンタ・アレナス港を通じて出荷され,約1ヶ月後に日本に到着する予定。
(2)米国:ポンペオ国務長官の来亜
19日,米国のポンペオ国務長官が来亜し,ブエノスアイレスで開催された第2回西半球テロ対策閣僚級会合に出席した。同会議の前に,イスラエル共済組合(AMIA)爆破事件25周年関連式典に参加した他,マクリ大統領を表敬し,フォリー外務大臣他と会談した。また,今次訪問において,アルゼンチン,ブラジル及びパラグアイ三か国国境におけるテロ対策協力体制への4カ国合意がなされた。
(3)メルコスール:第54回 メルコスール首脳会議の開催
15~17日,当地サンタ・フェ州サンタ・フェ市で,メルコスール首脳会議を含む各種会合が開催された。17日の首脳会議では,メルコスール加盟国及びボリビア首脳による共同声明,メルコスール及び関連国首脳による共同声明,メルコスール諸国及びボリビアによる国際先住民族言語年共同宣言,メルコスールにおける民主主義強化に関する首脳宣言,ベネズエラ問題に関する首脳宣言,テロリズム及びAMIA爆破事件25周年に関する首脳宣言が採択された。また,メルコスール域内でのローミング料金課金を廃止する合意がなされた。首脳会議には,メルコスール加盟国からボルソナーロ・ブラジル大統領,ベニテス・パラグアイ大統領,バスケス・ウルグアイ大統領が出席し,加盟準備中のモラレス・ボリビア大統領,準加盟国のピニェラ・チリ大統領やその他政府高官が出席した。
(4)ベネズエラ:
ア 第4回キト・プロセス会合の開催
4~5日,サン・マルティン宮殿で,第4回キト・プロセス会合が開催された。本会合は,ベネズエラ避難民の人的移動に関するキト宣言(2018年9月)及び行動計画(同年11月)のフォローアップを行う技術レベルの会合で,エクアドル以外での開催は初めて。会合では,ブエノスアイレス宣言と今後のプロジェクト案などを記載したロードマップが署名された。
イ 第15回リマ・グループ外相会合の開催
23日,サン・マルティン宮殿で,第15回リマ・グループ外相会合が開催され,ベネズエラのグアイド暫定大統領支持や早期の民主主義回復支援を含む参加国共同声明が発表された。会合には,同グループ16カ国の代表やEUからイグレシアス・ベネズエラ担当特別顧問が参加し,途中,ベネズエラ・カラカスからグアイド暫定大統領が,ビデオ会議システムを通じて加わった。
(5)グアテマラ:モラレス大統領の来亜
3日,モラレス・グアテマラ大統領が訪亜し,パンパIIIを2機購入する契約を製造会社であるFAdeA社と結んだ。売却額は28百万ドルでパイロットの訓練とメンテナンスを含んでいる。(なお,その後の新聞報道によれば,グアテマラ政府内の手続き不備により,契約は延期された由。)
(6)要人往来
ア 往訪
●14日 | モラレス・フフイ州知事中国訪問 |
イ 来訪
●3日 | モラレス・グアテマラ大統領 |
●17日 | ボルソナーロ・ブラジル大統領,ベニテス・パラグアイ大統領,バスケス・ウルグアイ大統領,モラレス・ボリビア大統領,ピニェラ・チリ大統領 (メルコスール首脳会合出席) |
●19日 | ポンペオ米国務長官 (西半球テロ対策閣僚級会合出席) |
●23日 | アラウ-ジョ・ブラジル外相,リベラ・チリ外相,ホルメス・コロンビア外相,ベントゥーラ・コスタリカ外相,ホベル・グアテマラ外相,カミングス・ガイアナ外相,ポポリシオ・ペルー外相 (リマ・グループ外相会合出席) |
(了)
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