アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
平成30年6月22日
アルゼンチン政治情勢(2018年5月)
2018年6月作成
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:IMFへの支援要請
4日,4月下旬からの急激なペソ安を受けて,亜中央銀行は政策金利の引上げ(33.25%から40.00%)及び金融機関に対する外貨ポジションの持ち高規制強化(30%から10%に引下げ)を発表した。また,財務大臣及び金融大臣が共同記者会見を行い,今年度財政収支目標の強化(プライマリー赤字をGDP比3.2%から2.7%に修正)及びそれに伴う財政支出削減を発表した。
8日,マクリ大統領はテレビ演説を行った。ラガルドIMF専務理事と話し合いを行い,IMFからの財政支援を受けるための協議を開始した旨発表した。その後,ドゥホブネ財務大臣も会見を行い,「今朝,ラガルドIMF専務理事と協議した。まだ金額や合意の詳細は決まっていない」と述べた。
16日,マクリ大統領は,今回の急激なペソ安及びIMF支援要請等の一連の経済情勢に関する記者会見を行った。この中で,マクリ大統領は,我々は今回の為替の混乱を乗り越えたと思うとし,これまで小さな進歩を遂げてきた以上に財政赤字を削減しなければならないと述べた。また,IMFとの交渉については,追加的な手段であり,我々が市場の変動にさらされないようにするために,更なる安定性を与えてくれるものであると述べた。
(2)連邦議会:公共料金値上げにかかる制限法案
9日,公共料金のIVAの減税や賃金上昇率を上回る公共料金の値上げを制限する内容を伴う公共料金値上げを制限する法案が議会下院で可決された。31日,同法案は,が議会上院において可決・成立したことを受け,6月1日,マクリ大統領は拒否権を発動すると共に,同大統領令が官報にて発表された。)
(3)その他:デモの実施
14日,労働総同盟(CGT)及び亜運輸労働者連盟(CATT)は,政府の公共料金値上げやIMFへの支援要請等に抗議するため,デモ行進を行った。また,25日,野党勢力や労働者連盟(CTA)等の労組は,政府の経済政策やIMFへの支援要請等に抗議するため,市内中心部において,大規模デモを実施した。
2 外交
(1)G20:
ア G20ブエノスアイレス外相会合
(ア)20~21日,当地においてG20ブエノスアイレス外相会合が開催された。220~22日,G20外相会合のマージンにおいて,フォリー外相は河野外務大臣,ボリス・ジョンソン英外相,サリバン米国務副長官,王毅・中国外交部長,アルファーノ伊外相,ブロック・オランダ外相,ムシキワボ・ルワンダ外相,アンプエロ・チリ外相,マース独外相,シン印外務担当閣外相,マルスディ・インドネシア外相及びバラクリシュナン・シンガポール外相等の各国とバイ会談を行った。
(イ)日亜外相会談の実施
22日,G20外相会合出席のため亜を訪問した河野外務大臣は,フォリー外務大臣と日亜外相会談を行った。両外相は,両国が素晴らしい二国間関係にあることを強調するとともに,両国の戦略的パートナーシップの継続的な深化への関心を表明した。また,両外相は,日・メルコスール間の対話の進捗や肉及びフルーツといった亜産農産品の日本市場へのアクセス交渉の進捗や日本企業から亜への投資の可能性についても意見交換を行った他,交渉中の各種二国間協定を推進していくことにつき合意した。なお,21日,河野大臣はマクリ大統領を表敬訪問した。
(ウ)亜・イギリス外相会談の実施
20日,G20外相会合出席のため訪亜したボリス・ジョンソン英外相は,フォリー外相とともにサン・マルティン広場において献花を行った。マルビーナス(フォークランド)戦争以降,英国外相の亜訪問は22年ぶり。22日,フォリー外務大臣はジョンソン外相とバイ会談を行った。
(エ)ベネズエラに関する有志国共同声明の発出
21日,亜政府は,オーストラリア,カナダ,チリ,米国及びメキシコと共に記者会見を行い,20日にベネズエラで実施された大統領選挙が非合法的な機関(制憲議会)により召集されたものであり,その正当性を認めないとして,ベネズエラの民主主義的秩序を回復するために,マドゥロ・ベネズエラ政権に対し,外交的かつ財政的な措置を適用するとする共同声明を発出した旨述べた。
イ 貿易・投資作業部会(TIWG)第1回会合の実施
7~8日,当地において,貿易・投資作業部会(TIWG)第1回会合が実施され,100名以上の各国代表者が出席し,人々に具体的な恩恵を与える更に包括的な国際貿易システムをどのように達成するか等を中心とした議論が行われた。次回会合は,9月12~13日,マル・デル・プラタにおいて開催予定。
(2)日本:
ア 日亜政策協議の実施
4日,当地において日亜政策協議が実施された。日本側より,山﨑外務審議官が,亜側よりライモンディ筆頭外務副大臣が出席して行われた。
イ フォリー外務大臣と河野外務大臣との電話会談の実施
9日午後(本邦10日午前),フォリー外務大臣は河野外務大臣と電話会談を行った。河野大臣は,フォリー大臣に対し,亜政府が実施している構造改革が,世界に開放され,そして統合された経済に貢献していることを理解しているとして,この改革を日本が支持する旨述べた。また,日本がIMF理事会の重要なメンバー国として,亜とIMFの間で合意された支援手続きを進める上で,果たす役割についても双方は言及した。
ウ エチェベレ農産業大臣の訪日
14日,訪日したエチェベレ農産業大臣は,齋藤健農林水産大臣と会談を行い,双方は,ブエノスアイレスでの今年7月末のG20農業大臣会合の時点で,パタゴニア産牛肉・羊肉と日本産牛肉が相互に輸出可能となるよう,双方で必要な手続を進めていくことについて合意した。(その後,中国を訪問したエチェベレ大臣は,16日,上海国際食品・飲料見本市(SIAL)の開会式に特別招待国として出席した他,17日,両国の間で,亜産の骨なし・骨付きの冷蔵・冷凍牛肉の対中輸出の規則に関する署名が行われた。)
(3)米国:
ア 亜産鉄鋼・アルミの対米輸出に関する米国との合意
先般,米政府により導入された鉄鋼・アルミ追加関税措置に関し,5月1日付亜外務省プレスリリースを発出し,亜政府は米政府との間で,亜産鉄鋼・アルミの対米輸出にかかる関税の適用を除外することで合意に達した旨発表した。亜は,オーストラリア,ブラジル及び韓国と並んで,鉄鋼・アルミの対米輸出に対する関税の適用が除外された4か国の内の1か国となった。
イ 亜米間の電話会談
(ア)フォリー外務大臣とポンペオ米国務長官との電話会談
1日,フォリー外務大臣は,ポンペオ米国務長官と電話会談を行い,二国間及び地域間の課題等について意見交換を行った。また,フォリー外務大臣より,5月のG20ブエノスアイレス外相会合への招待が改めて行われた。
(イ)マクリ大統領とトランプ米大統領との電話会談
14日,マクリ大統領はトランプ米大統領と電話会談を実施した。マクリ大統領は,財政赤字削減への課題や近くIMFとの交渉を開始することについて話し合いを行った他,G20,北朝鮮及びベネズエラ情勢等についても意見交換を行った。マクリ大統領より,マルパス米財務次官が亜を支持する旨表明したことにつき感謝の意を表明した他,トランプ大統領より,亜とIMFとの交渉に対し支持する旨述べられた。
ウ フォリー外務大臣とアルマグロOAS事務総長と会談
15日,フォリー外務大臣は,アルゼンチンを訪問したアルマグロOAS事務総長と会談を行った。同会談において,今度のOAS総会(6月4日及び5日(於:米ワシントン))におけるアジェンダやベネズエラ情勢について意見交換が行われた。
(4)バチカン:フォリー外務大臣のバチカン訪問
28~29日,フォリー外務大臣はバチカン市国を訪問した。29日,バチカン市国を訪問したフォリー外務大臣は,ローマ法王によるミサに出席した他,ギャラガー・バチカン外務長官と会談を行った。両外相は,ベネズエラにおける人道的状況や環境保護のための世界的なコミットメントを引き続き推進する必要性について意見交換を行った。また,フォリー外務大臣は,パロリン・バチカン国務長官を表敬訪問した。
(5)ウルグアイ:ニン・ノボア・ウルグアイ外務大臣のアルゼンチン訪問
4日,フォリー外務大臣は,アルゼンチンを訪問したニン・ノボア・ウルグアイ外務大臣と外相会談を行い,二国間アジェンダにおける重要なテーマについて話し合いを行った。両外相は,二国間の間で,異なる分野での相互協力の結果として,近年強化され,緊密化した二国間関係について強調した。
(6)デンマーク:ミケティ副大統領のデンマーク訪問
2~3日,ミケティ副大統領がデンマークを訪問し,マルグレーテ女王陛下への御接見を行った他,ラスムセン首相,イエンセン財務相及びケアスゴー国会議長等と会談を行った。両国の間で,投資市場や協力関係の強化に向けて,亜が世界に改めて参入することの重要性につき確認した。また,イエンセン財務相は,EUメルコスールFTA及び亜のOECD加盟に対するデンマークの支持について改めて述べた。
(7)メルコスール:メルコスール・EFTA自由貿易協定交渉の実施
4日,当地において,メルコスール・EFTA自由貿易協定交渉が実施された。スイスより,ヨハン・ニクラウス・シュナイダー=アマン経済・教育・研究大臣が,亜よりレイセル外務副大臣(国際経済担当)が出席した。
(8)カタール:亜・カタール政策協議の実施
9日,当地において,亜・カタール政策協議が実施された。カタールより,ムライヒー外務担当国務大臣が,亜よりライモンディ筆頭外務副大臣が出席した。両者は,ハイレベルの要人往来等による素晴らしい二国間関係や,貿易・投資,協力による二国間関係の強化の重要性を強調した。また,農産加工業,鉱業,金融,通信,再生可能エネルギー,湾岸・空港のインフラ,ガス・石油,ソフトウェア,サイバーセキュリティ等の分野における協力の可能性についても意見交換が行われた。
(9)キューバ:ペニャ内閣府官房長官のキューバ訪問
27~28日,ペニャ内閣府官房長官はキューバを訪問した。28日,ペニャ官房長官は,ロドリゲス・キューバ外相と会談を行った他,マルミエルカ外国貿易・外国投資大臣,カブリサス閣僚評議会副議長兼経済企画大臣とも会談を行った。
(10)南極条約:第41回南極条約協議国会議の実施
16~18日,当地において,第41回南極条約協議国会議が実施された。同会議には,日本を含む53か国の代表,専門家及び国際機関等が出席した。
(11)要人往来
ア 往訪
●1~4日: ブルリッチ治安大臣の米国訪問
●2~3日: ミケティ副大統領のデンマーク訪問
●7日: エチェベレ農産業大臣の米国訪問
●14~17日: エチェベレ農産業大臣の訪日・訪中
●27~28日: ペニャ内閣府官房長官のキューバ訪問
●28~29日: フォリー外務大臣のバチカン訪問
イ 来訪
●4日: 山﨑外務審議官(日亜政策協議への出席)
●4日: ニン・ノボア・ウルグアイ外務大臣
●15日: アルマグロOAS事務総長
●20~22日: 河野外務大臣,ボリス・ジョンソン英外相,サリバン米国務副長官,王毅・中国外交部長,アルファーノ伊外相,ブロック・オラ
ンダ外相,ムシキワボ・ルワンダ外相,アンプエロ・チリ外相,マース独外相,シン印外務担当閣外相,マルスディ・インドネシ
ア外相及びバラクリシュナン・シンガポール外相(G20外相会合への出席)
(了)
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