アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和5年5月11日

アルゼンチン政治情勢(2023年4月)

1 内政
 
(1)大統領選挙に向けた動き
●ブエノスアイレス市長選挙方式の決定
10日、ラレタ・ブエノスアイレス市長(共和国提案(PRO))は同市長選挙方式を、大統領選挙(10月22日)と同日実施としつつ、電子記入方式とし、投票用紙は大統領選挙と分けることを発表した。野党連合内では、これは同市長が市長後継者としたいルストー上院議員(急進市民同盟(UCR))を有利にするものと目され、対立候補となるホルヘ・マクリ・ブエノスアイレス市政大臣(PRO)を支持するマクリ前大統領をはじめ、野党候補らから強い批判が噴出している。
●アラクレ大統領顧問辞任表明
18日、フェルナンデス大統領の側近とされるアラクレ大統領顧問が辞任を表明した。17日より「マサ経済相が辞任し同顧問が後任を務めるのではないか」との噂が流れ、経済政策を巡る双方の軋轢が報じられたことから、フェルナンデス大統領が政局及び市場沈静化のため同顧問に辞任を求めたとされる。
●フェルナンデス大統領の大統領選挙不出馬表明
21日、フェルナンデス大統領は自身のSNSで、経済問題や干ばつ等、亜が直面する課題解決に専心するため、大統領選挙には出馬しない意向を表明した。また、大統領選に相応しい与党候補の選出が重要であるとして、8月の予備選挙(PASO)での統一候補選定の重要性を表明した。
●ペロン党理事会開催
21日、ペロン党理事会が開催され、本年5月16日にペロン党大会を開催することを決定した。
 
(2)その他
●ベルニ・ブエノスアイレス州治安相への暴行事件
3日、ブエノスアイレス州で発生した路線バス強盗未遂事件でバス運転手が死亡し、被害者の同僚運転手らが同州の治安対策を批判し抗議デモを行った。興奮したデモ参加者たちが、事態沈静化のため赴いたベルニ・ブエノスアイレス州治安大臣に暴行し、同大臣が負傷する事態となった。
●5日:「農業ドル」発表
5日、マサ経済相は、外貨準備の増強のため、1ドル300ペソの大豆・地域農産品輸出用優遇レート「農業ドル」施行を発表した。
●ネウケン州知事選挙
16日、ネウケン州知事選が行われ、60年以上にわたり政権を握っていた与党ネウケン人民運動(MPN)のコープマン候補が敗北し、MPNから独立して出馬した元副知事のフィゲロア候補が僅差で当選した。
●リオネグロ州知事選挙
16日、リオネグロ州知事選が行われ、キルチネル派とUCRの支持を得たウェレティルネック候補が当選した。
●クリスティーナ・フェルナンデス(CFK)副大統領の控訴
24日、客年12月に「公共事業・有料道路」事件で、懲役6年及び公職からの永久追放の判決を受けたCFK副大統領が控訴し、本判決には根拠となる具体的証拠がないとして無効とするよう求めた。一方、検察側も、客年8月に求刑した組織的犯罪が認められていないとして控訴した。
●武田製デング熱ワクチンのANMAT承認
26日、保健省国家医薬品・食品・医療技術監督庁(ANMAT)は、武田薬品工業開発のデング熱ワクチンの4歳以上のすべての人々への接種を承認した。当地では、客月末よりデング熱の感染が拡大し、過去6年で最多となる、国内累計71,717件の感染者数(22日時点)を記録している。
 
2 外交
 
(1)首脳級の動き
●チリ訪問
5日、フェルナンデス大統領はチリを訪問し、ボリッチ・チリ大統領と共に、「マイプーの抱擁」205周年記念式典に出席した。また首脳会談を行い、両国のエネルギー・インフラの統合やUNASUR再興等について協議した。
●「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム」出席
20日、フェルナンデス大統領は、バイデン米大統領の呼びかけで開催された「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム(MEF)」にオンラインで出席した。
●フエ・ベトナム国会議長訪亜(~26日)
23~26日、フエ・ベトナム国会議長が亜越外交関係樹立50周年に際して訪亜し、フェルナンデス大統領、テタマンティ筆頭外務副大臣らと会談した。
 
(2)閣僚級の動き
●マサ経済相の外遊(ドミニカ共和国、米国、ウルグアイ)
12日、マサ経済相はIMF交渉のためドミニカ共和国を往訪し、シャーマン米国務副長官と会談した。13日には米国ワシントンを訪問し、IMF・世界銀行春季会合に出席した。マサ経済相は今次訪問で、米州開発銀行(IDB)から総額6億ドル、サウジアラビア開発基金から5億ドルの融資を取り付けた。また、27日にはウルグアイでラテンアメリカ開発銀行(CAF)幹部と会談し、6億9000万ドルの融資を取り付けた。
●カフィエロ外相のウクライナ外相との電話会談
12日、カフィエロ外相は、クレーバ・ウクライナ外相と電話会談を行い、対話が唯一の道であると述べ、亜の、戦争終結のための平和的・永続的な解決へのコミットを改めて表明した。
●シャーマン米国務副長官訪亜
13~14日、シャーマン米国務副長官が亜米外交樹立200周年、亜の民主主義回復40周年に際して訪亜し、カフィエロ外相らと会談を行った。会談では、エネルギー・鉱物資源における連携や亜米間の通商に係る制度的問題を中心に、幅広いテーマについて協議した。
●リチャードソン米南方軍司令官訪亜
16~17日、リチャードソン米南方軍司令官が訪亜し、タイアナ国防相と亜の南大西洋での役割等国防問題に関し幅広く意見交換を行ったほか、パレオ統合参謀本部参謀総長と安全保障協力等につき協議した。
●カフィエロ外相の「第8回南大西洋平和協力地帯」閣僚会合出席
17日、カフィエロ外相は、カーボベルデで開催された第8回南大西洋平和協力地帯(ZPCAS/ZOPACAS)閣僚会合に出席し、南大西洋における軍事的脅威への懸念を表明した。18日、カフィエロ外相は、カーボベルデ、ナイジェリアの外相とそれぞれ会談を行った。
●カフィエロ外相のコロンビアでの国際会合出席
25日、カフィエロ外相は、コロンビアで開かれたベネズエラの政治プロセスに関する国際会合に出席し、制裁や封鎖等、外からの圧力ではなく、民主主義の原則に基づいたベネズエラ国民同士による対話で政治的解決を図ることが重要である旨強調した。
●カフィエロ外相のチリ訪問
26日、カフィエロ外相はチリを訪問し、国連ラテンアメリカ・カリブ(ECLAC)主催「第6回持続可能な開発に関するラテンアメリカ・カリブ海諸国フォーラム」の開会式に出席した。
 
(3)要人往来一覧
●往訪
 チリ:フェルナンデス大統領、カフィエロ外相、ビトベージョ大統領府長官
 ドミニカ共和国:マサ経済相
 米国:マサ経済相
 カーボベルデ:カフィエロ外相
 コロンビア:カフィエロ外相
 フィリピン:ローゼンワイグ外務次官(外交政策担当)
(25日、亜・比二国間協議)
 タイ:ローゼンワイグ外務次官(外交政策担当)、
オルドキ外務次官(多国間・二国間経済交渉担当)
(27日、第5回亜・タイ政策協議)
 ウルグアイ:マサ経済相
●来訪
 米国:シャーマン国務副長官、リチャードソン南方軍司令官
 ベトナム:フエ・ベトナム国会議長
 モザンビーク:ゴンサルヴェス外務副大臣
(24日、第2回亜・モザンビーク政策協議)
 スペイン:マルラスカ内相(28日、大統領表敬)
 ルーマニア:ヨハニス大統領(25日、首脳会談)
 コスタリカ:ペラルタ二国間担当外務次官
(28日、第4回亜・コスタリカ政策協議)

(了)

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