アルゼンチン政治情勢(2015年8月)
2015年9月作成
在アルゼンチン日本大使館
概要
(1)内政:
(ア)9日,大統領選予備選挙が行われ,シオリ候補(与党),マクリ候補(野党),マサ候補(野党)等が,10月25日に実施される本選挙に進出することとなった。また,同日,国内6州で地方選予備選挙が行われた。有権者数が最多のブエノスアイレス州の州知事選では,アニバル・フェルナンデス候補(与党),ビダル候補(野党),ソラー候補(野党)等が,10月25日に実施される本選挙に進出することが決定した。
(イ)23日,トゥクマン州で,地方選本選挙が行われ,州知事選ではマンスール候補(与党)が暫定結果ながら勝利した。他方,同選挙においては,様々な不規則事項が見られたとして,野党は選挙のやり直しを訴え,24日以降連日,トゥクマン州政庁前でデモが行われた。
(2)外交:
(ア)13~14日,宇都外務大臣政務官がアルゼンチンを訪問し,14日にはスアイン筆頭外務副大臣と会談を行った。
(イ)16~19日,日本の海上自衛隊練習艦隊が,ブエノスアイレス港に寄港し,18日には,中畑練習艦隊司令官等が,ガストン・フェルナンド・エリセ海軍参謀本部長を表敬した。
内政
(1)大統領・政府
(ア)アニバル・フェルナンデス官房長官を巡るスキャンダル
2日,テレビチャンネルの「Canal 13」は,2008年に発生した麻薬密売グループによる3名の殺人事件について,現在実行犯として服役している人物が,アニバル・フェルナンデス官房長官(ブエノスアイレス州知事候補)による指示のもと,同犯行を行った旨述べる内容のインタビューを公開した。
(イ)フェルナンデス大統領による州債務返済協約署名式典等における演説
20日,フェルナンデス大統領は,国家政府の対州政府債務の返済遅延に関する協約の署名式典にて演説を行い,その中で,国家機関が保有する株式の売却を規制する法案を連邦議会に送る旨発表した。
(2)連邦議会:国家武器管理機構の創設
26日,司法・人権省下の国家武器登録所(Registro Nacional de Armas)に代わり,「国家武器管理機構(ANMAC:Agencia Nacional de Materiales Controlados)」を創設する法案が可決された。今後,同機構は,武器管理を行政組織として一元管理することとなる。
(3)司法・検察:メネム元大統領等に対する口頭審理(裁判)の開始
6日,連邦裁判所は,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の容疑者の罪を隠蔽した容疑が掛けられているメネム元大統領等に対する口頭審理(裁判)を開始した。
(4)選挙
(ア)大統領選予備選挙
9日,大統領選予備選挙(有権者が義務投票により各党派内から本選挙に出馬する候補を一人に絞るための選挙)が実施され,下記の候補者が10月25日に実施される本選挙に進出することが決定した。
(i) 「勝利のための戦線」(与党連合): シオリ候補
(ii) 「カンビエモス」(野党連合): マクリ候補
(iii) 「新たな代案」(野党連合): マサ候補
(iv) 「左派及び労働者戦線」(野党連合): デル・カニョ候補
(v) 「進歩主義」(野党連合): ストルビセル候補
(vi) 「連邦コミットメント」(野党連合): ロドリゲス・サア候補
(イ)地方選予備選挙
9日,ブエノスアイレス州をはじめとする国内計6州で地方選予備選挙が行われ,各州から下記の候補者が10月25日に実施される本選挙に進出することが決定した。(主要候補のみ抜粋)
(i)ブエノスアイレス州(有権者人口1位)
・ フェルナンデス候補(「勝利のための戦線」)
・ ビダル候補(「カンビエモス」)
・ ソラー候補(「新たな代案」)
(ii)エントレ・リオス州(有権者人口7位)
・ ボルデ候補(「勝利のための戦線」)
・ デ・アンジェリ候補(「カンビエモス」)
(iii)サン・フアン州(有権者人口13位)
・ ウニャク候補(「勝利のための戦線」)
・ バスアルド候補(「サン・フアン・コミットメント」)
(iv)チュブット州(有権者人口18位)
・ ブッシ候補(「勝利のための戦線」)
・ ダス・ネベス候補(「チュブット結集連合戦線」)
(v)サン・ルイス州(有権者人口19位)
・ アルベルト・ロドリゲス・サア候補(「連邦コミットメント」)
・ リカルド候補(「カンビエモス」)
(vi)カタマルカ州(有権者人口20位)
・ コルパチ候補(「勝利のための戦線」)
・ ブリスエラ・デル・モラル候補(「市民社会戦線」)
(ウ)トゥクマン州地方選本選挙
23日,トゥクマン州(有権者人口6位)で,地方選本選挙が行われ,州知事選ではマンスール候補(与党「勝利のための戦線」)が暫定結果において約54%の得票率で,カノ候補(野党「200年記念の合意」)に対して勝利した。他方,同選挙においては,投票箱の焼失,投票所内での暴力をはじめとする様々な不規則事項が見られたとして,野党は選挙のやり直しを訴え,24日以降連日,トゥクマン州政庁前でデモが行われた。なお,24日初日には,警察当局が,デモ隊を鎮圧した結果,複数の負傷者や逮捕者が出た。
(5)その他
(ア)ブエノスアイレス州等の浸水被害
7~13日にかけての降雨により,ブエノスアイレス州等が広域に亘り浸水し,多数の避難者が出た。11日よりイタリア渡航中のシオリ・ブエノスアイレス州知事は,13日急遽帰国し,14日には州政府として,非常事態宣言を発出した上で,各種の被害者救済策を発表した。また,12日,フェルナンデス大統領も,被害者に対する各種行政措置を発表した。
(イ)農牧団体等による抗議活動
24~28日,農牧協会(SRA),全国農協連盟(CONINAGRO),亜農牧連盟(CRA)等が中心となり,政府による農産品への輸出課徴金等に対する抗議活動がチャコ州,サルタ州,トゥクマン州等北部地域で行われた。
外交
(1)日本
(ア)宇都外務大臣政務官のアルゼンチン訪問
13~14日,宇都外務大臣政務官がアルゼンチンを訪問し,14日には,スアイン筆頭外務副大臣と,日本・アルゼンチン二国間関係に関する協議を行った。
(イ)海上自衛隊練習艦隊のブエノスアイレス寄港
16~19日,日本の海上自衛隊練習艦隊が,若手自衛官の訓練や日本と訪問国との関係強化及び相互理解促進を目的とした12か国16寄港地訪問の一環で,ブエノスアイレス港に寄港した。18日には,中畑練習艦隊司令官等が,ガストン・フェルナンド・エリセ海軍参謀本部長を表敬した。
(2)中国
6日,連邦企画省は,中国冶金科工股份有限公司(Metallurgical Corporation of China)が開発を行うリオ・ネグロ州のシエラ・グランデ鉱山の鉄鉱石約6万トンにつき,対中輸出が開始された旨発表した。また,25日,同省は,ティエラ・デル・フエゴ州産の泥炭の対中輸出について発表した。
(3)イスラエル
12日,フェルナンデス大統領は,大統領府公邸にて,パレスチナ暫定自治政府のエラカート・パレスチナ解放組織(PLO)交渉局長を迎え,パレスチナ自治政府を承認する国の元首に贈られる「パレスチナの星」の勲章を受けた。
(4)バチカン
フォークランド(マルビナス)諸島の領有権問題につき,19日,フランシスコ・ローマ法王が「アルゼンチンと英国が対話する時」と書かれたボードを手に持った写真がソーシャルメディア上に流布した。アルゼンチン政府関係者は,同ローマ法王を賞賛したが,バチカン市国報道官は,同ボードは一般記者会見で持たされただけで,アルゼンチンを支持する意味ではないと述べた。
(5)ブラジル
27日,ティメルマン外務大臣は,ブラジルのブラジリアにて,ビエイラ伯外務大臣と,メルコスール首脳会合で提示された欧州連合との自由貿易圏構想につき協議した。
(6)米州開発銀行・世界銀行
4日,ランダッソ内務・運輸大臣は,米ワシントンDCの米州開発銀行を訪問し,鉄道サン・マルティン線とベルグラーノ南線における鉄道電化プロジェクトに対する融資を取り付けた。また,6日,世界銀行本部を訪問し,ブエノスアイレス州ラ・マタンサ市とブエノスアイレス市を結ぶメトロバスの工事に対する約1.2億米ドルの融資を取り付けた。
(7)UNASUR
26日,サンペール南米諸国連合(UNASUR)事務総長はアルゼンチンを訪問し,ティメルマン外務大臣と南米の地域情勢につき会談を行った。また27日,シレオニ教育大臣と,過去12年間の教育分野におけるUNASURとの協力や,今後の義務教育の課題等について協議した。
(8)要人往来
(ア) 往訪
4~6日 |
ランダッソ内務・運輸大臣の米ワシントンDC訪問(米州開発銀行,世界銀行訪問) |
7日 |
スアイン筆頭外務副大臣のエジプト訪問(新スエズ運河開通式出席) |
11日 |
ティメルマン外務大臣の米ニューヨーク訪問(国連本部訪問) |
11~12日 |
シオリ・ブエノスアイレス州知事のイタリア訪問 |
25日(詳細日程不明) |
スアイン筆頭外務副大臣のシエラレオネ,コートジボアール,マリ訪問 |
27日 |
ティメルマン外務大臣のブラジル訪問 |
(イ)来訪
12~13日 |
エラカート・パレスチナ解放組織(PLO)交渉局長 |
13~14日 |
宇都外務大臣政務官 |
26~27日 |
サンペールUNASUR事務総長 |
26~28日 |
ガルシア・ラテンアメリカ開発銀行総裁 |
28~30日 |
サルコジ前仏大統領 |
31日 |
トゥアン・アン・ベトナム商工副大臣 |
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