アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

平成30年2月22日

アルゼンチン政治情勢(2018年1月)

2018年2月作成
在アルゼンチン日本大使館
 
1 内政

(1)大統領府・政府
 ア 公共交通機関の運賃の値上げ
 3日,ディエトリッチ運輸大臣は,公共交通機関の運賃の段階的な値上げを実施する旨発表した。ブエノスアイレス市内のバス(現在の最低運賃6ペソから,8ペソ(2月),9ペソ(4月),10ペソ(6月)),地下鉄(同市の公聴会が残っているものの,現在の最低運賃の7.5ペソから,11ペソ(4月),12.5ペソ(6月))及び鉄道の値上げを実施する他,複数の公共交通機関利用を利用する際に割引を行う「Red Sube」を導入する。加えて,市内のタクシー料金も17.7%値上げされる。
 
 イ 行政の効率化を目的とする緊急大統領令の発出
 11日,政府は,行政の効率化を目的とする170の措置を含む緊急大統領令(DNU)を官報に掲載した。政府の試算によれば,同措置により,2年間で1千億ペソの歳出削減が可能となる見込み。非自動輸入許可対象品目のうち314品目を自動輸入許可に切り替え,特許・商標登録手続きの簡素化・迅速化,工業投資や新港湾認可の手続きの簡素化が含まれる。
 
 ウ 教員労組の労使交渉にかかる緊急大統領令の発出
 17日,政府は教員労組の労使交渉における交渉団構成の変更等にかかる緊急大統領令(DNU)を官報に掲載した。今までは,各労組(5組合)の代表人数は組合人数に比例していたため,亜の最大教員労組である亜教職員連盟(CTERA)は5名,その他4組合は1名となっていたが,今次DNUにより,各組合からの代表人数を1名に変更した。また,教員の賃金交渉は,これまで,まず国レベルで交渉後,その合意をもとに州レベルで交渉されていたが,今後は州政府とのみの交渉に変更した。
 
 エ 政府による財政緊縮措置の発表
 29日,マクリ大統領は公的財政の緊縮に向け,(1)政府内の約千ポストの削減,(2)政府高官を中心とした昇給の停止,(3)閣僚の親族の政府内採用の禁止の3つの措置の導入を発表した。マクリ大統領によれば,約千ポストの削減(25%減)は,年間15億ペソの削減になるとしているが,当地紙は,同大統領政権発足時に25%の政治任用職が増加したため,今次措置はこれを相殺するものに過ぎないと報じた。
 マクリ大統領の発表を受け,31日付官報に,閣僚の直系又は傍系の2親等までの親族の政府内採用を禁止する旨の大統領令が掲載された。すでに採用されている場合は,本年2月28日までに辞任しなければならないとされており,これを受け,トリアカ労働・雇用・社会保障大臣,フリヘリオ内務・公共事業・住宅大臣,ブルリッチ治安大臣等の親族がすでに辞任した他,対象は40名近くに上る見込み。
 
 オ 奨学金プログラム「Progresar」の改革の発表
 31日官報において,政府は,前政権が導入した脆弱層の若者(18~24歳)を対象とする奨学金プログラム「Progresar」の改革を発表した。奨学金を増額(ただし,成績や学校の種別(高校,大学,専門学校)により金額は異なる)した他,本件にかかる所管を国家社会保障機構(ANSES)から教育省に移管した。なお,本年の同プログラムに対する予算は100億ペソ。
 
(2)司法・検察:ウーゴ・モジャーノGGT前書記長等に対する司法訴追
 1月に入り,ウーゴ・モジャーノ労働総同盟(GGT)前書記長兼前トラック労組書記長及びモジャーノ一族に対する訴訟事案が相次いで提起された。((1)民間配送会社のOCA社によるウーゴ・モジャーノ氏及びトラック労組に対する脱税及びマネロン疑惑(12日),(2)高級住宅(パルケ・レロアル)の不正購入に関するマネロン疑惑(23日),(3)クルブ・アトレティコ・インデペンディエンテ(ブエノスアイレス州内の強豪サッカークラブを有するスポーツクラブ)を巡る不正行為(24日))
(当館注:同氏は,2016年5月に,双方の書記長から退いたが,未だCGT内への影響力は大きい。その後,同氏の息子のパブロ氏がトラック労組書記長を引き継いでいる。なお,もう一人の息子ファクンド氏はマサ派下院議員。)
 
2 外交

(1)日本:鈴木東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣のアルゼンチン訪問
 9~11日,鈴木東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣がアルゼンチンを訪問し,本年10月,当地で開催されるユース五輪関連の施設を訪問すると共に,国立スポーツ強化センター(CENARD)を訪問し,マック・アリステル・スポーツ庁長官と会談等を行った。
 
(2)米国:亜産バイオディーゼルに対するアンチダンピング関税の開始
 4日,米国は亜産バイオディーゼルに対するアンチダンピング関税(72%)の適用に関する措置を米国の官報において公布した。なお,同措置は,昨年8月28日より遡及して適用される。
 
(3)ロシア:マクリ大統領のロシア訪問
 ア プーチン露大統領との首脳会談他
 23日,ロシアを訪問したマクリ大統領は,プーチン露大統領との会談を行った。同会談において,両首脳は,より緊密な貿易関係を実現し,農業,エネルギー,環境,テロ・組織犯罪対策及びその他の共通の関心事項を含む30の分野にかかる二国間協力をコミットする内容の文書に署名を行った。また,同日,マクリ大統領は,ロシア主要企業幹部との朝食会に出席し,官民連携(PPP)制度や亜ローカル企業とのジョイントベンチャーを形成する選択肢等を通じた投資への可能性について説明した。
 
 イ ウラン探鉱・採掘に関する覚書の署名
 23日,マクリ大統領のロシア公式訪問に同行していたフォリー外務大臣は,バラニャオ科学技術・生産革新大臣に代わり,Vasily Konstantinov・Uranium One Group社長(注:露政府が所有し,トロントに本社を置くウラン採掘企業),Omar Adra・UrAmerica Argentina社長と共に,ウラン探査・採掘に関する覚書に署名を行った。同ウラン探鉱・採掘に関する投資は2億5千万米ドルで,約500名の雇用の創出が見込まれている。
 
(4)スイス:マクリ大統領のスイス訪問
 ア マクリ大統領の世界経済フォーラム出席
 24~25日,マクリ大統領はダボスで開催された世界経済フォーラムに出席のためスイスを訪問した。同会合のマージンにおいて,24日,マクリ大統領は,メルケル独首相,トルド-加首相,ルッテ蘭首相及びマキシマ蘭王妃とのバイ会談やビル・ゲイツ氏,小林三菱商事会長他主要企業家と会合を行った他,25日には,シュワブ・世界経済フォーラム会長,インファンティノFIFA会長等とも会合を行った。また,スイス訪問に同行していたドゥホブネ財務大臣は,25日,ムニューシン米財務長官との会談を行った。
 
 イ 亜官営企業によるオランダの研究用原子炉建設
 24日,マクリ大統領は,マキシマ・オランダ王妃も出席したルッテ・オランダ首相との会談の中で,亜INVAP社が蘭パラス財団との間で,オランダ・ペッテン市の研究用原子炉の設計及び建設と医療用放射性アイソトープの生産にかかる契約に関する署名を行った旨発表した。
 
 ウ 亜・スイス間の亜の鉄道インフラセクターに対する開発と協力にかかる覚書
 24日,フォリー外務大臣とロイタード・スイス連邦大統領との間で,亜の鉄道インフラセクターに対する開発と協力にかかる覚書に署名が行われた。右は信号システム,電化及びパーツの保証等のプロジェクトに対するインフラ・技術的支援の提供を中心とするもの。
 
(5)フランス:マクリ大統領のフランス訪問
 26日~27日,マクリ大統領はフランスを訪問し,マクロン仏大統領と首脳会談等を行った。両首脳は,二国間アジェンダ,EU・メルコスールFTA交渉,ベネズエラ情勢及びG20等について話し合いを行った。また,マクリ大統領は,MEDEF(仏経団連)の代表者らと朝食会を行った他,イダルゴ・パリ市長との会談を行った。
 
(6)イスラエル:ミケティ副大統領のイスラエル訪問
 10~14日,ミケティ副大統領兼上院議長はイスラエルを訪問した。10日,ミケティ副大統領がネタニヤフ・イスラエル首相と会談を行った中で,両者は,両国が二国間関係を強化し,貿易を促進していくことで一致した。また,11日,ミケティ副大統領はリブリン・イスラエル大統領と会談を行い,二国間関係を強化していきたいとするマクリ大統領の意思を改めて表明しつつ,両国の産業,通商,観光分野における戦略的パートナーシップを確立することの必要性を主張した。また,ミケティ副大統領は,デルステイン・イスラエル国会議長,バルーフ・イスラエル輸出庁長官等ともそれぞれ会談を行った
 
(7)中国
 ア 肖捷・中国財政部長のアルゼンチン訪問
 30日,マクリ大統領は訪亜した肖捷・中国財政部長と会談を行った。同会談において,中国側より,亜とチリを結ぶアグア・ネグラトンネル計画の開発に対し,中国企業が関心を有している旨述べられ,マクリ大統領はこれを歓迎した。また,同部長より,2017年に北京で行われた「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラム出席のため,マクリ大統領が訪中したことに対し謝意が表明された。なお,29日,同部長は,ドゥホブネ財務大臣とも会談を行った。
 
 イ 亜産牛肉等の対中輸出の拡大
 17日,亜外務省はプレスリリースを発表し,亜と中国の間で,骨なし・骨付きの冷蔵・冷凍牛肉及びパタゴニア産ヒツジ及びヤギ肉の対中輸出に係る衛生要件の手続きついて合意した旨発表した。(注:今まで亜は,骨なし冷凍牛肉のみを中国へ輸出していた。)
 
 ウ 亜・中間の第4回経済協力・調整のための戦略的対話
 19日,当地において第4回経済協力・調整のための戦略的対話が実施され,亜側よりレイセル外務副大臣(国際経済担当)が,中国側より,王暁涛(Wang Xiaotao)国家発展改革委員会副主任が出席した。同会合において,事業やそのファイナンス契約等の進捗状況,特に,ベルグラーノ,サン・マルティン及びロカ鉄道,第4及び第5原子力発電所,水力発電所等のプロジェクトに関し,話し合いが行われた。
 
 エ 第2回中国・CELAC閣僚会合
 21~22日,チリにおいて第2回中国・ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)閣僚会合が行われ,亜側より,ライモンディ筆頭外務副大臣が出席した。同会合では,(1)サンティアゴ宣言,(2)「一帯一路」イニシアティブをラテンアメリカへ拡張する宣言,(3)中国・CELAC協力・合同行動計画に関する宣言の3つの成果文書が採択された。
 
(8)EU:フォリー外務大臣とモゲリーニ外務・安全保障担当上級代表との会合
 29日,フォリー外務大臣は,ベルギー(ブリュッセル)において,モゲリーニ外務・安全保障担当上級代表との間で,EU・メルコスールFTAに関し話し合いを行った他,ベネズエラ情勢,EU・CELAC関係及びEUと亜との二国間関係等についても意見交換を行った。
 
(9)北朝鮮:「拡散に対する安全保障構想(PSI)」にかかる共同宣言への同意
 10日,亜は,日本を含む16か国による北朝鮮に対する新たな制裁に関する国連安全保障理事会決議第2375号(2017年9月11日)及び同第2397号(2017年11月28日)の適用を支持する「拡散に対する安全保障構想(PSI)」にかかる共同宣言に同意する旨亜外務省プレスリリースにおいて発表した。
 
(10)要人往来
 ア 往訪
●10~14日: ミケティ副大統領のイスラエル訪問
●21~22日: ライモンディ筆頭外務副大臣のチリ訪問(第2回中国・CELAC
         閣僚会合出席)
●23日:    マクリ大統領のロシア訪問(フォリー外務大臣等同行)
●24~25日: マクリ大統領のスイス訪問(世界経済フォーラム出席)
●26~27日: マクリ大統領のフランス訪問
●29日:    フォリー外務大臣のベルギー訪問
 
 イ 来訪
●9~11日:  鈴木東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣
●19日:    王暁涛・中国国家発展改革委員会副主任
●30日:    肖捷・中国財政部長
                                    (了)