アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和2年7月23日

アルゼンチン政治情勢(2020年06月)

2020年7月作成

在アルゼンチン日本大使館

 

1 内政
(1)大統領府・政府:

ア 新型コロナウイルス関連
(ア) 強制隔離措置の28日までの延長
4日、フェルナンデス大統領は、7日まで実施予定であった強制隔離措置を28日まで延長すると発表した(延長を規定する必要緊急大統領令(DNU)は8日公布)。今期延長では、感染拡大が懸念されるブエノスアイレス首都圏(AMBA)を含む特定の地域では従来通りの「社会的、予防的及び強制的『隔離』措置」が継続されるものの、その他の感染が落ち着いている地域では次の段階「社会的、予防的及び強制的『距離』措置」に移行することとなった。(その後同措置は一部緩和しつつも8月2日まで延長)
(イ) ブエノスアイレス首都圏(AMBA)での規制の強化
17日、フェルナンデス大統領は、キシロフ・ブエノスアイレス州知事及びサンティリ・ブエノスアイレス副市長(ラレタ市長は、コロナウイルス感染疑いのため欠席(後に陰性が確認))と、AMBAでの統一的な対応方針について協議を行った。規制強化の一環として、AMBAでは18日24時より公共交通機関の利用を生活に不可欠なサービスを提供するために働く者に限る等の措置を講じた。
(ウ) AMBAにおける厳格な強制隔離措置の7月2~17日までの実施発表
26日、フェルナンデス大統領は、AMBAの強制隔離措置を最も厳しいフェーズ1に戻し、7月2~17日まで実施すると発表した(同措置に関するDNU576/2020は29日付官報にて公布)。なお、AMBA、チャコ州、リオ・ネグロ州ヘネラル・ロカ群及びネウケン州ネウケン市及び周辺都市以外の地域は、社会的・予防的・強制的「距離」の措置を適用。
(エ)ブエノスアイレス市でのジョギング等の解禁
8日、ブエノスアイレス市は、20~8時までジョギング、ウォーキング、ローラースケート等の運動を解禁した。初日の8日には市内の公園に多くの人が集まり、大混雑する事態となったことから、同市は9日、運動時のマスク着用や主要公園周辺の車両通行止め(19時30分~22時)、一部の大通りの運動場所としての開放などの変更措置を発表した。その後の18日には、身分証明書(DNI)番号末尾による許可への変更、時間の19時~9時への変更等を加えた(注:7月2日からのAMBAへの厳格な強制隔離措置導入に伴って再禁止)。

イ フェルナンデス大統領の地方訪問
 フェルナンデス大統領は、5日ラ・パンパ州とネウケン州を訪問した。また、12日にはラ・リオハ州を訪問し、公共事業により建設された施設や強制隔離後再開した生産現場等を視察した。

ウ 穀物商社ビセンティン社の国有化方針発表
8日、フェルナンデス大統領は記者会見を開き、会社更生法適用中の穀物商社ビセンティン社(サンタ・フェ州)を国有化する方針を発表した(9日、国有化に至るまでの措置として、政府の介入を規定した必要緊急大統領令(DNU)522/2020を公布)。なお、同社関係者によればこの決定は同社には事前に知らされておらず、本社のある同州アベジャネーダ市民をはじめ、地元住民からも強い反発があった。また、20日にはブエノスアイレス市を始め全国で大規模な抗議行動(国旗を掲げた抗議活動バンデラッソ)が行われた。

(2)国会
ア 上院による必要緊急大統領令(DNU)の承認

4日、上院はフェルナンデス大統領が発出した主に新型コロナウイルスに関する10本の必要緊急大統領令(DNU)を承認し、一方マクリ前大統領による2本のDNU((1)連邦情報局(AFI)の通信傍受捕捉部の機能を最高裁に移すことを内容とするもの、(2)連邦司法裁判所の人事に関するもの)は否決した。なお、上院で否決されたDNUを無効とするには下院の否決も必要になる。

育法改正案(遠隔教育の追加)及び新賃貸法案の可決・成立
11日、上院は教育法へ新たに遠隔教育を追加する改正案を満場一致で可決した。また賃借人の状態を改善する新しい賃貸法についても賛成41で可決したが、野党「変革のために共に」の上院議員は、本法案はバーチャル審議で議論すべき新型コロナウイルス対策には関係ないとして退席した(注:与野党合意で、事前にバーチャル審議で議論
するのは新型コロナウイルス対策関連と決められていた。なお、両法案とも下院は通過済み)。

ウ カフィエロ内閣官房長官による上院への報告
18日、カフィエロ内閣官房長官は就任後第一回目となる上院への政権運営報告を実施し、新型コロナウイルス対策や経済状況について説明した。同官房長官は、経済、社会状況は2019年12月の現政権発足前から難しい状態にあったとして、マクリ前政
権による施策を批判した。また、穀物商社ビセンティン社への政府の介入については、
数千の家族や生産者を救うものだとして擁護した。

(3)司法
ア 地方の連邦裁判所再開

3日、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて一時的に閉鎖されていたコリエンテ
ス、トゥクマン、コモドロ・リバダビア、エスキエル、カレタ・オリビア、リオ・ガジ
ェゴス、サン・ラファエル、サン・ルイス、ビジャ・メルセデス、サン・フアン、リオ・
クアルト、ビジャ・マリア及びベル・ビル裁判区の各連邦裁判所が再開した。

イ 賄賂ノート事件(テチント社による賄賂事案)の却下
23日、マルティネス・デ・ヒオルヒ連邦判事は、テチント社から前政権の政府関係
者への賄賂が渡ったとし、クリスティーナ・フェルナンデス副大統領やテチント社のベ
トナサ氏他幹部等が訴えられている事案(賄賂ノート事件の一部を構成するもの)を証
拠不十分として却下した。

ウ 国によるビセンティン社への介入に対する判断
19日、連邦裁判所サンタ・フェ裁判区ロレンシーニ判事は、政府によるビセンティ
ン社の介入は、同社の会社更生手続きとは別件として扱うと判断し、DNUによる政府
の介入を拒否し、ビセンティン社の幹部に経営監督権を戻した。この判決により、政府
が任命した経営監督責任者の役割は「監視役(Veedor)」に格下げされることとなった。
一方、政府は同判決に対する異議を書面で裁判所に提出した。

(4)その他
ア 野党「共和国提案」による外交方針表明
8日、マクリ前大統領が所属する「共和国提案(PRO)」は、「世界と一体化した亜を目指して」という政策提言文書を表明した。同文書は、フォリー前外務大臣などマクリ前政権下での外交担当者等が起草に参加し、ブルリッチ同党党首(前治安大臣)及びポンぺオ同党外交部会長(前内閣府戦略長官)が署名している。

イ  ラタム航空アルゼンチン国内線撤退発表
17日、ラタム航空(従業員約1700名)はアルゼンチン国内の12路線、国際線4路線から撤退すると発表した。撤退する国際線4路線と貨物路線はグループ会社が運航を継続する。

2 外交
(1) 米国:ソラー外務大臣とポンぺオ米国務長官とのテレビ会議
8日、ソラー外務大臣はポンぺオ米国務長官とテレビ会議を行い、二国間関係及び
COVID-19 パンデミック関連での新たな課題について話し合った。また、ベネズエラ情勢
や対外債務交渉についても取り上げた。

(2) ドイツ:ソラー外務大臣の「中南米諸国とドイツとのイニシアティブ」第2回会合出席
3日、ソラー外務大臣は、ドイツが主催した「中南米諸国とドイツとのイニシアティブ」第2回会合(テレビ会議)に出席した。

(3) チリ:フェルナンデス大統領とピニェラ・チリ大統領との電話会談
17日、フェルナンデス大統領はチリのピニェラ大統領と電話会談を行い、二国間アジェンダと域内情勢における共通の関心事項について話し合った。また、COVID-19 のパンデミックについてそれぞれの国における対応策と両国の医療状況につき意見交換を行い、両国保健大臣による協力の枠組みを構築することに合意した。

(4) 中南米諸国:フェルナンデス大統領の西・中南米諸国首脳テレビ会議出席
24日、フェルナンデス大統領は、サンチェス西首相の呼びかけで開催された中南米諸国首脳とのテレビ会議に出席し、新型コロナウイルスによる世界的危機に対峙するための共同行動を呼びかけた。

(5) フィンランド:フェルナンデス大統領とマリン首相とのテレビ首脳会談
25日、フェルナンデス大統領はマリン・フィンランド首相とテレビ会議を実施し、両国共通の関心事及び両国間での発展に関する経験共有のための戦略的合意を促進する可能性について話し合った。

(6) OAS:ベネズエラ非難決議への亜の棄権
26日、OAS常設理事会におけるベネズエラ(マドゥーロ体制)非難決議案の投票に亜は棄権した。

(7) 多国間主義同盟:ソラー外務大臣のテレビ会議参加
26日、ソラー外務大臣は、マース独外務大臣及びル・ドリアン仏外務大臣が主催した多国間主義同盟のテレビ会議に参加した。会議では、新型コロナウイルスに関連して多国間医療体制を強化する必要性に関する考えについて意見交換された。

(8)要人往来
特になし。

(了)