アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

平成30年5月21日

アルゼンチン政治情勢(2018年4月)

2018年5月作成

在アルゼンチン日本大使館


1 内政

(1)大統領府・政府:ドゥホブネ財務大臣のマネロン疑惑
 16日,ドゥホブネ財務大臣が大臣就任前に2千万米ドルの未申告外貨の正規化(blanqueo)を行った旨報じられた。ドゥホブネ大臣は,未申告外貨の正規化は,犯罪ではない上に,公職に就く前であると主張しているが,野党議員らは同大臣の辞任を求めた。
 
(2)連邦議会:労働規制改革3法案の議会上院への提出
 27日,昨年11月,議会上院に提出されていた労働規制改革法案に関し,政府は,3つの法案((1)未登録労働者の正常化法案,(2)継続的な労働訓練,フォーマル教育から労働への移行,若者の雇用及び労働訓練の促進法案,(3)労組の健康保険組合おける国家医療技術評価機関(AGNET)の創設法案)に分けて議会上院に改めて提出した。
 
(3)司法・検察:伯オデブレヒト社への汚職を巡るデ・ビード前大臣の訴追
 3日,23億米ドルにのぼる石油ガスパイプライン建設(ShanskaII)に関し,伯オデブレヒト社に便宜を図ったとされる疑惑を巡り,デ・ビード前連邦企画・公共投資・サービス大臣が訴追された。オデブレヒト社は,亜に対し3500万米ドルの賄賂を支払ったとされているが,同社を巡る事件において訴追されたのは,デビード大臣が初。
なお,同大臣自身の訴追は6つ目。
 
(4)その他:公共料金等の値上げ
 本年2月より実施されている段階的な公共交通機関の値上げの枠組において,1日より,電車(9%)及びバス(12%)料金の値上げが実施された。また,ガス料金についても,1日より平均32%の値上げが行われた他,17日,ガソリンについても平均4.5%値上げとなった。なお,本年のガソリン料金はすでに13.5%の値上げとなっている。

 
2 外交

(1)日本:日亜貿易投資合同委員会会合の実施
 16日,東京において,日亜貿易投資合同委員会会合が実施された。両国の間で,投資協定,サービス・電子商取引協定に関する二国間協力,日・メルコスールやG20等の多国間フォーラムにおける地域協力の進捗等について話し合いが行われた。日本側より,平木経済産業大臣政務官が,亜側よりブラウン工業生産副大臣等が出席した。
 
(2)米国
 ア 亜産バイオディーゼルの対米輸出への関税措置の発表
 3日,米国際貿易委員会(ITC)は,5年間にわたり,亜産バイオディーゼルの輸入に対し,72%の関税措置を講じることを承認した。同措置は,4月末に米連邦官報で公表された。
 
 イ 米豚肉の対亜輸出
 13日,パーデュー米農務省(USDA)長官及びライトハイザー米通商代表(USTR)は,米豚肉の対亜輸出に関し,亜政府による技術的要件の検討が終了したことにより,1992年以来初めて,米豚肉の亜への輸出が可能となった旨発表した。(注:本件にかかる合意は,昨年8月,ペンス米副大統領がマクリ大統領との会談後に発表された。)
 
 ウ 亜産レモンの対米輸出
 18日,マクリ大統領は,トゥクマン州において,17年ぶりに解禁された米国向けの亜産レモンの最初の積荷式に出席した。
 
(3)メルコスール
 ア メルコスール・ニュージーランド間の対話の実施
 9日,当地において,メルコスール・ニュージーランド(NZ)間の対話が実施された。亜側よりレイセル外務副大臣(国際経済担当)が出席し,貿易交渉のアジェンダや進捗状況について意見交換が行われた。次回会合は,下半期に実施する方向で調整が行われることとなった。
 
 イ 第3回メルコスール・EFTA自由貿易協定交渉の実施
 10~13日,当地において,第3回メルコスール・EFTA自由貿易協定交渉が行われた。両者は,次回交渉において,市場アクセスのオファーに関する意見交換を行うことで合意した。なお,次回会合は7月2~6日,ジュネーブにおいて行われる予定。
 
(4)フランス
 ア フォリー外務大臣の仏訪問
 3日,フランスを訪問したフォリー外務大臣は,ル・ドリアン仏・欧州・外務大臣と外相会談を行った。同会談において,二国間及び政治・経済情勢の他,EU・メルコスールFTA交渉の最終段階における進捗状況等についても話し合いが行われた。また,ベネズエラ情勢に関し,両外相は懸念を表明すると共に,民主主義的プロセスにおける進展の必要性について意見交換が行われた。
 
 イ ブランケール仏国民教育大臣のアルゼンチン訪問
 13日,マクリ大統領はアルゼンチンを訪問したブランケール仏国民教育大臣の表敬訪問を受けた。同表敬には,フィノキアロ教育大臣も同席した。なお,同大臣は,12~13日のG20教育作業部会会合等に出席するため当国を訪問したもの。
 
(5)スペイン:ラホイ西首相のアルゼンチン訪問
 ア 首脳会談等の実施
 10~11日,ラホイ西首相がアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領と首脳会談を行った。ラホイ首相より,EU・メルコスールFTAが近く締結されるよう,西は確固たるサポートを行っていくことが改めて表明された他,亜がOECDの正式加盟国となれるよう,亜をサポートしていく旨述べられた。また,両政府は以下の5つの文書((1)ワーキング・ホリディ制度に関する協定,(2)持続可能な開発目標を達成するための共同声明,(3)水資源の総合的管理における協力に関する声明,(4)情報通信技術(ICT)の発展と強化に関する覚書,(5)インフラ及び運輸分野の協力に関する覚書)に署名を行った。
 また,11日,ラホイ首相の今次訪問に同行しているダスティス西外務大臣は,フォリー外務大臣と朝食会を行った。なお,同会談には,ドゥホブネ財務大臣の他,スペイン企業団も同席した。
 
 イ 経済・貿易協力二国間委員会会合の実施
 9日,カブレラ工業生産大臣は,ラホイ首相の今次訪問に同行しているポンセラ西商務長官と経済・貿易協力二国間委員会会合を行い,二国間貿易,投資,両国間の生産的関係を深化させるためのアクションやEU・メルコスールFTAの締結に向け,貿易促進及び投資振興といった共通の関心事項について,話し合った。
 
(6)チリ
 ア フォリー外務大臣のチリ訪問
 5日,フォリー外務大臣は,ピニェラ・チリ大統領主催で行われたマイプの戦い200周年記念式典(注:チリ独立戦争の一つ)に出席するため,チリを訪問した。
 
 イ ピニェラ・チリ大統領のアルゼンチン訪問
 25~26日,ピニェラ・チリ大統領がアルゼンチンを公式訪問し,同26日,マクリ大統領と首脳会談を行った。両首脳は,両国の間に高いレベルでの共通性があることを確認しつつ,二国間,地域及びグローバルな課題について協議した。また,戦略的パートナーシップと様々なテーマについて取り組んでいくことを再確認した。
 
(7)ペルー:マクリ大統領のペルー訪問
 ア マクリ大統領の米州サミットへの出席
 13~14日,マクリ大統領はペルー(リマ)で開催された第8回米州サミットに出席し,ベネズエラ情勢やシリア情勢,腐敗・治安問題等に関する演説を行った他,14日,トルド-加首相,サントス・コロンビア大統領及びバレラ・パナマ大統領等と会談を行った。今次米州サミットにおいて,14日,「リマ・コミットメント:「汚職に対する民主的統治」」と題する文書に署名が行われた他,ベネズエラ情勢に関する文書については,16のリマ・グループによる加盟国の首脳・代表のみにより署名が行われた。
 
 イ カブレラ工業生産大臣及びフォリー外務大臣とロス米商務長官との会談
 13日,カブレラ工業生産大臣及びフォリー外務大臣は,ペルー(リマ)において,ロス米商務長官と約45分に及ぶ会談を行った。同会談において,ロス商務長官は,先般,米政府による鉄鋼及びアルミニウムの輸入に対する追加関税措置に対し,亜が近いうちに,「最終的な除外」の対象を得るだろう旨述べたと報じた。また,亜側代表団はUSTR関係者とも会合を行った。なお,フォリー外務大臣は,リマにおいて,コロンビア,ペルー及びボリビアの外相とそれぞれ会談を行った。
 
(8)UAE:フォリー外務大臣のUAE訪問
 16日,フォリー外務大臣はアラブ首長国連邦(UAE)を訪問し,アブダッラー外務・国際協力相との間で,二国間投資協定に署名を行った他,貿易取引や様々な分野における二国間協力について進捗を確認した。また,両外相は,地域及びグローバルなアジェンダについても意見交換を行った中で,シリアの危機的情勢に懸念を表明すると共に,平和と安全保障を確保するために,国際社会が対話への道筋を模索するよう求めた。
 
(9)シリア:シリアにおける化学兵器の使用に対する非難声明の発出
 14日,亜外務省は,シリアにおいて化学兵器が使用されたことに非難を表明し,緊張の高まりを回避しつつ,対話を引き続き追求するよう訴える旨のプレスリリースを発出した。
 
(10)北朝鮮:南北首脳会談
 27日,亜外務省は,同日に韓国及び北朝鮮の間で実施された首脳会談を肯定的に受け取っているとするプレスリリースを発出した。
 
(11)UNASUR(南米諸国連合):亜及び5か国による参加停止表明
 21付当地紙は,亜及び伯,チリ,ペルー,コロンビア及びパラグアイの5か国の外相が,南米諸国連合(UNASUR)への一時的な参加停止を表明する旨の共同書簡を議長国であるボリビア外務大臣宛に送付した旨報じた。
 
(12)IMF/世銀:ドゥホブネ財務大臣及びカプート金融大臣の米国訪問(IMF・世銀春季会合への出席)
 16~22日,ドゥホブネ財務大臣及びカプート金融大臣は米国(ワシントン)で開催されたIMF・世銀春季会合に出席した。19日,ドゥホブネ財務大臣は,オリバレス西経済・産業・競争力大臣,ラライン・チリ財務大臣とそれぞれ会合を行った。同日,カプート金融大臣はキム世銀総裁及び年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野理事(CIO)等と共に講演に出席した。
 
(13)G20:G20観光大臣会合(T20)の実施
 17日,当地において,G20観光大臣会合(T20)が行われた。同日,マクリ大統領は大統領府において,G20諸国の大臣による表敬訪問を受けた。また,18~19日,世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)年次総会がヒルトンホテルにおいて行われ,マクリ大統領及びサントス観光大臣が開会式に出席した。また,WTTCは,亜の観光セクター開発に20億米ドルを投資する旨発表した。なお,日本より,両会合には簗国土交通大臣政務官が出席した。
 
(14)EU:バラニャオ科学技術・生産革新大臣のベルギー訪問
 19日,ベルギー(ブリュッセル)を訪問したバラニャオ科学技術・生産革新大臣は,モエダス科学技術担当欧州委員との間で,海洋調査協力に関する協定に署名を行った。また,バラニャオ大臣は,ベルギー滞在中,亜・EU協議委員会会合にも出席した。
 
(15)ブラジル:第2回亜・伯政策調整メカニズム会合の実施
 17日,当地において,第2回亜・伯政策調整メカニズム会合が実施された,亜側より,ライモンディ筆頭外務副大臣が出席した。双方において,2017年2月に両国の大統領により署名された行動計画の協定等の達成状況について意見交換が行われた他,貿易の促進やメルコスールの強化等についても話し合いが行われた。
 
(16)ボリビア:亜・ボリビア二国間技術会合の実施
 20日,当地において,亜・ボリビア二国間技術会合が行われた。両国の間で,エネルギー,国境地帯の水力資源,貿易,宇宙,貿易分野の協力といった二国間の共通アジェンダについて意見交換が行われた。
 
(17)要人往来
 ア 往訪
●3日:     フォリー外務大臣の仏訪問
●5日:     フォリー外務大臣のチリ訪問
●13~14日: マクリ大統領,フォリー外務大臣及びカブレラ工業生産大臣のペルー訪問(第8回米州サミットへの出席)
●16日:    フォリー外務大臣のUAE訪問
●16~22日: ドゥホブネ財務大臣及びカプート金融大臣の米国訪問(IMF・世銀春季会合への出席)
●19日:    バラニャオ科学技術・生産革新大臣のベルギー訪問
 
 イ 来訪
●10~11日: ラホイ西首相,ダスティス西外務大臣
●13日:    ブランケール仏国民教育大臣
●17~18日: 簗国土交通大臣政務官
●25~26日: ピニェラ・チリ大統領
                                    (了)