2010年12月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)
2011年1月作成
在アルゼンチン大使館
T 概要
(1)内政面では,アルフォンシン下院議員,ソラナス下院議員,カリオ市民連合代表及びドゥアルデ元暫定大統領という野党政治家らが次期大統領選挙への出馬を表明した。他方,フェルナンデス大統領は,ペロン党執行部の会合を開催し,同会合に出席した政治家らは,同大統領の次期再選を望む旨述べた。また,ブエノスアイレス市における治安の悪化を受け,同大統領は,治安省を創設し,ガレ国防相を治安相に任命した。また,同大統領の主導により,労使交渉の円滑化への取り組みが進められた。その他,2010年予算の2011年への適用に係る政令及び緊急大統領令が官報に掲載された。
(2)外交面では,亜においてイベロアメリカ・サミットが開催され,各国首脳等が訪亜した他,フェルナンデス大統領は,メルコスール首脳会合に出席するためブラジルを訪問した。また,同大統領は,アッバース・パレスチナ暫定自治政府大統領宛書簡を送付し,亜政府がパレスチナを国家承認する旨表明した。ティメルマン外相は,イタリアを訪問してフラッティーニ同国外相と会談した。
U 内政
1 下院の次期執行部役員選出
1日,下院において,同院の次期執行部役員を選出するための準備セッションが開催され,同役員が以下のとおり選出された(注:毎年12月1〜10日の間に次期執行部役員を選出するための準備セッションを開催する旨,下院規則により規定されている)。
(1)議長:フェルネル下院議員(ペロン党キルチネル派)
(2)第1副議長:アグアッド下院議員(急進党)
(3)第2副議長:ファデル下院議員(ペロン党キルチネル派)
(4)第3副議長:プエルタ下院議員(ペロン党反キルチネル派)
2 児童手当の拡充及び年金特別支給
(1)1日,フェルナンデス大統領は,2011年1月より,季節労働者の世帯に対し,就労時期以外の月にも児童手当を支給する旨発表した。同支給の対象者は約15万人であり,歳出は年間約2億ペソの見込み。
(2)また,同日,同大統領は,無掛金年金の受給者に対し,12月の年金額に220ペソの特別支給を上乗せする旨発表した。同支給の対象者は約190万人であり,歳出は約2億2000万ペソの見込み。
3 次期大統領選挙出馬表明
(1)3日,アルフォンシン下院議員(急進党)が集会を開催し,「大統領府に向かって重要な一歩を踏み出している」等述べ,次期大統領選挙への出馬を表明した。また,同下院議員は,フェルナンデス政権の経済政策や社会政策が不徹底であるとして批判した他,「私の行政経験不足を批判する者がいるが,州知事等を経なければ大統領に就任できないと言うのであれば,ルーラ・ブラジル大統領も,マンデラ元南アフリカ大統領も,ケネディ元米大統領も,ペロン元大統領も,大統領に就任できなかったことになる」,「急進党は労働総同盟(CGT)を恐れていると言われる(注:アルフォンシン元大統領の政権期を始め,過去の急進党政権はCGTとの関係が良好でなかった)。私は,CGTを私物化するつもりはないが,かれらを恐れてはいない。我々は賃金を上げ,労働条件を改善しようとしているのに,労組を恐れることがあろうか」等述べた。
(2)7日,ソラナス下院議員(南プロジェクト)が集会を開催し,「南プロジェクトは,貧困を解決し,汚職と戦うことができる」等述べ,次期大統領選挙への出馬を表明した。また,同下院議員は,「70万人の子どもが栄養失調の状態にあり,60%の労働者が社会保障を受けていない」,「政府は,年金増額法案に拒否権を発動しておきながら,欺瞞に満ちたパリクラブ債務を返済しようとしている」等述べ,フェルナンデス政権を批判した。
(3)12日,市民連合の全国大会が開催され,次期国政選挙において,カリオ市民連合代表を同党の大統領候補として,ペレス下院議員を副大統領候補として擁立する旨合意された。同大会において,カリオ代表は,「もし私に投票してもらえれば,私は,謙虚且つ賢明に,公正な行動を取る」等述べ,次期大統領選挙への出馬を表明した。また,同代表は,フェルナンデス政権の汚職,貧困対策の不徹底等に言及して同政権を批判した。その他,急進党及び社会党を「裏切り者」と称して批判した上で,「我々は,かれらがいないこと(注:急進党や社会党との協調関係が断絶していること)で心配などしていない」と述べた。
(4)20日,ドゥアルデ元暫定大統領(ペロン党反キルチネル派)が集会を開催し,自分は亜に「平和と秩序」をもたらし得る旨述べ,次期大統領選挙への出馬を表明した。同元暫定大統領は,フェルナンデス大統領等を名指しで批判することは避けつつも,治安問題に繰り返し言及し,「暴力はもう沢山である。平和は,法と秩序の遵守によって構築されるものである」,「私は,(暴力の)鎮静に言及することを恐れない。その鎮静とは,人を殺すことではなく,国家として揺るぎない機能を果たすことである」等述べた。
4 治安問題
(1)7日,連邦警察及びブエノスアイレス市警察は,ブエノスアイレス市ビジャソルダティ地区における公園の不法占拠者を立ち退かせる措置を試みたところ,激しい抵抗を受け,その後,同占拠者と周辺住民との対立等も交わり,同地区の治安が著しく悪化した。結果,数名の死者と多くの負傷者が生じ,11日には,国境警備隊及び水上警察が出動する事態となった。また,本件への対応を巡り,連邦政府及びブエノスアイレス市政府が相互の責任を追及して対立を繰り返した。
(2)10日,フェルナンデス大統領は,世界人権デーを祝す行事での演説において,治安省を創設し,ガレ国防相を治安相に任命する旨発表した。同大統領は,同国防相について,「職務の遂行について,私が完全なる信頼を抱いている人物である」と述べた。その後,15〜16日付官報において,治安省(Ministerio
de Seguridad)の創設,及び,司法・治安・人権省の司法・人権省(Ministerio de Justicia
y Derechos Humanos)への改称,並びに,ガレ前国防相の治安相への任命及びプリチェリ元サンタクルス州知事の国防相への任命が公布された。15日,大統領府において,ガレ新治安相及びプリチェリ新国防相の就任式が行われた。同式において,ガレ新治安相は,「安全は国民の権利であり,これを保障するために,我々は全力を注ぐ」と述べた。また,プリチェリ新国防相は,「フェルナンデス政権に協力できることを誇りに思う」,「デビード公共事業相を敬愛している」等述べた。
(3)15日,大統領府において,フェルナンデス首相を筆頭とする連邦政府代表と,マクリ・ブエノスアイレス市長を筆頭とする同市政府代表が会合を設け,ビジャソルダティ地区における不法占拠者問題への対策について協議したところ,両政府の共同出資により,上記不法占拠者らに対し,再び不法占拠を行わないことを条件に,住居を割当てる計画を実施する旨合意した。但し,その後も,両政府は,ブエノスアイレス市各地で生じている不法占拠問題の責任等を巡り,対立を繰り返した。
(4)16日,ガレ新治安相は,バジェッカ連邦警察長を解任し,カプデビラ連邦警察治安総局長を連邦警察長に任命した。また,19日,同相は,連邦警察の警察官に銃器等の武器の携行を禁じる旨発表した。この措置を巡り,警察関係者等の間で賛否両論が生じた他,野党からも,警察官の身に危険が及ぶ可能性や治安が一層悪化する可能性等が指摘された。その他,20日,フェルナンデス大統領は,2011年1月より,6000名以上の国境警備隊をブエノスアイレス市郊外に派遣して巡回させる旨発表した。
(5)23日,ブエノスアイレス市コンスティトゥシオン地区において,鉄道従業員及びそれを支持する左派政党等が,従業員の正規雇用を要求して,鉄道の路線を封鎖する等の激しい抗議デモを行い,その後,路線を封鎖された鉄道の利用者等との対立も交わり,この騒動の中で多くの市民及び連邦警察の警察官が負傷した(警察官らは,上記(4)の措置に従い,武器を携行していなかった)。閣僚等は,ドゥアルデ元暫定大統領が,フェルナンデス政権の評価を傷つけるために,この事件を扇動した等主張し,同元暫定大統領を批判した。
5 ペロン党指導部の会合
(1)21日,大統領官邸において,キルチネル前大統領の逝去後初めて,ペロン党全国執行委員会の構成員を中心とする同党指導部の会合が開催された。同会合には,閣僚(フェルナンデス首相,デビード公共事業相等),議員(ピチェト・キルチネル派上院議員団長,ロッシ同下院議員団長等),知事(シオリ・ブエノスアイレス州知事(ペロン党筆頭副党首)他13名),ブエノスアイレス州各市長,労組指導者(モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長(ペロン党副党首)等)等,ペロン党キルチネル派の主要な政治家らが出席した。
(2)フェルナンデス大統領は,同会合において演説を行い,「キルチネル前政権発足以降の7年間で,我々は,稀にみる経済発展と同時に社会的包摂をも達成してきた。我々は,この成長のモデルを深化させ続けなければならない」,「我々は,このモデルを支持してくれるような他の政治勢力との協調も必要としている。ペロン党は,あらゆる人々が参加できるような広がりを持たなければならない」,「マスメディアが報じることを信用してはならない」,「今年は国会にとっては悪い年であった。野党は社会保障について語っておきながら,2011年予算法案を可決させなかった。これは矛盾である」等述べた。
(3)同大統領は,自身の次期大統領選挙への出馬については言及しなかったが,今次会合の出席者の多くは,同大統領がペロン党の指導者であり,大統領候補に相応しい人物は同大統領しかいないと述べた。
6 労働問題
(1)9日,フェルナンデス大統領は,大統領府において,鉱業界の労使交渉の円滑化を目的とする協定の署名式を開催した。同協定は,連邦政府,鉱業関連各州,企業及び労組の各代表により署名された。同署名式において,フェルナンデス大統領は,「環境に配慮したものであれば,あらゆる鉱業への投資が実現可能であり,望ましいものである」等述べた。
(2)20日,フェルナンデス大統領は,大統領府において,建設業界の労使交渉の円滑化を目的とする協定の署名式を開催した。同協定は,政府,企業及び労組の各代表により署名された。同署名式において,フェルナンデス大統領は,「建設業界は,亜の経済成長の最大の要因となっているセクターの一つである」等述べた。
(3)22日,労働総同盟(CGT)及び亜工業連盟(UIA)の両幹部が会合を設けた。同会合において,両者はインフレへの懸念及び社会協定の必要性について認識を共有した。他方,同会合にCGT幹部として出席したカロー金属労組書記長は,同会合の直前に,「我々が賃上げを議論するのは,物価が上昇しているからである。賃上げ率の上限は設定しない」と述べた。
7 亜労働者連盟(CTA)書記長選挙
(1)9月に実施された亜労働者連盟(CTA)書記長選挙の結果を巡り,ジャスキー及びミチェリ両氏が対立を継続する中(注:ジャスキー氏は9月当時CTA書記長,親政権派。ミチェリ氏は同副書記長,反政権派),10月上旬,両氏の合意に基づき,5名の弁護士から成る調停委員会が設置され,本件について協議されたところ,同月22日,同委員会は,ジャスキー氏の要求に基づき,一部の選挙区において再度書記長選挙を実施するよう,ジャスキー及びミチェリ両氏に命じた。しかし,両氏は,同選挙の日程等を巡り,対立を続けた。また,11月2日,労働省は,書記長選挙を巡る対立が解決するまでは,ジャスキー氏をCTA書記長の職に留めるよう命じる省令を発出した。ミチェリ氏は,「政府による明らかな干渉である」と述べ,同令を批判した。ジャスキー氏は,「この労働省令は政治的意味を持たず,選挙結果の決着までの事務的な処置に過ぎない」と述べた。
(2)9日,ミチェリ氏の勢力は,ジャスキー氏の勢力の承認を得ずに,上記調停委員会により命じられた一部の選挙区において,再度書記長選挙を実施した。しかし,ジャスキー氏は同選挙を無効とみなして参加しなかったため,同選挙はミチェリ氏の勝利という形に終わった。
(3)同日,CTA執行委員会が開催され,ジャスキー氏の勢力は,来年3月に「正式な」書記長選挙を実施する旨決議し,他方,ミチェリ氏の勢力は,9日に実施された上記選挙の有効性を承認する旨決議した。両勢力は,互いの決議の有効性を否定した。
(4)14日,ミチェリ氏及びその支持者等が,労働省庁舎前で集会を開催し,ミチェリ氏のCTA書記長への就任を宣言した。また,ミチェリ氏は,「ジャスキー氏がCTAを分裂へと導くことになろうとは,想像もしていなかった」と述べてジャスキー氏を批判し,「労働省は,CTAに法人格を与えないばかりか,CTAを崩壊させるべく機能した」と述べ,11月2日に発出された上記労働省令を批判した。同集会には,野党各党の主要政治家らも出席し,ミチェリ氏への支持を表明するとともに,フェルナンデス政権を批判した。アルフォンシン下院議員(急進党)は,「今般のCTAの問題において,政府が干渉していることは明白である」と述べた。ジウスティニアーニ社会党党首は,「政府から独立して,労働者を真に尊重しようとする運動(注:ミチェリ氏の勢力)に対し,我々は連帯を表明する」と述べた。ソラナス下院議員(南プロジェクト)は,「CTAの正当な執行部(注:ミチェリ氏の勢力)が,自由を尊重しない政府による操作から逃れられるよう,我々は支持をする」と述べた。ストルビセルGEN党首は,「ミチェリ氏は,組合員の決定及び正当な投票を尊重しているので,我々は確固として,同氏を支持する」と述べた。
(5)他方,同日,ジャスキー氏の要求に基づき,9日にミチェリ氏の勢力が実施した選挙を無効とする処分が,連邦判事により下されたが,ミチェリ氏の勢力は,同処分を「遂行不可能」とみなした。同日,ジャスキー氏は,同処分を受け,「ミチェリ氏の就任は完全に違法である」と述べ,11月2日に発出された上記労働省令に言及し,自身が書記長の座に留まっている旨述べた。また,「公正な選挙人名簿で以て合法的な選挙を行い,この闘争に終止符を打たなければならない」と述べ,来年3月に書記長選挙を実施するという上記決定を再確認した。
8 ビデラ元大統領等に対する有罪判決
(1)22日,コルドバ州連邦裁判所は,1976年,同州において,左派政党関係者らの誘拐,拷問及び殺害に関与したとして,ビデラ元大統領,メネンデス元陸軍第3軍司令官,他14名の元軍幹部等に対し終身刑,7名に対して禁固6〜14年を命じ,7名に対して無罪を宣告する判決を下した。なお,同判決は,ビデラ元大統領については,(軍事刑務所から)一般刑務所に移送されるものとし,メネンデス元司令官については,刑務所への移送に先立ち,健康状態を検査するためコルドバ市の国立病院に移送されるものとした。
(2)同判決を受け,被害者遺族,人権団体関係者等は,「我々の長年の戦いにおける最も大きなステップであり,喜ばしいことである。但し,我々は未だ道の途上にいる」,「今次判決に至り,我々の歴史の真実を語ることができたことの喜びを噛み締めている。しかし,これ程多くの者(注:上記7名)が無罪を宣告されたことには悲しんでいる」等述べた。
9 2010年予算の2011年への適用
(1)29日,以下の政令及び緊急大統領令(DNU)が官報に掲載された。
(ア)2010年予算の2011年への適用(政令)
国家予算執行管理法第27条に基づき,2011年1月1日から,2010年予算(修正等を含む)を2011年にも適用する。首相は同条に基づく修正を行う。
(イ)同予算の修正(DNU)
同予算に対し,優先的投資プログラム向けの融資枠(約76億ドル)や公共事業に係る保証枠等(約182億ドル)の設定のほか,超過外貨準備の債務削減基金への移管の承認(約75億ドル)等の修正を行う。
(2)これを受け,各紙は,政府がDNUで修正を講じたことを批判的に報じた。また,野党も,政府がDNUで予算の修正や債務削減基金の措置を行ったことについて批判するとともに,3月に始まる通常国会において,同DNUを否決する意向を示した。
V 外交
1 ユネスコ
1日,ボコバ・ユネスコ事務局長が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。同外相は,亜政府として,ホワイトヘルメット委員会(注:亜外務省に属する緊急援助隊)を通じてハイチ支援を行う旨述べた。また,同外相は,(2009年2月,)ユネスコの後援により亜に創設された国際人権促進センターの運営のために,亜政府が出資を行う旨約束した。
2 イベロアメリカ・サミット
(1)3〜4日,ブエノスアイレス州マルデルプラタ市において,第20回イベロアメリカ・サミットが開催された。同サミットのテーマは「社会的包摂のための教育」とされ,加盟国22か国中,21か国の首脳及び首脳代理(注:チャベス・ベネズエラ大統領,モラレス・ボリビア大統領,オルテガ・ニカラグア大統領及びラウル・カストロ・キューバ国家評議会議長は欠席)並びにイグレシアス・イベロアメリカ・サミット事務局長が出席した。なお,ロボ・ホンジュラス大統領については,亜は,同政権を承認していないため,招待されなかった。
(2)同サミットにおいて採択された文書は以下のとおり。
(ア)「マルデルプラタ宣言」:基本的人権としての教育の普及及び質の向上,教育を通じた社会的包摂等の目標を表明。その他,法治国家の秩序を覆し得るクーデター等に対する拒絶等を表明。
(イ)「マルデルプラタ行動計画」:イベロアメリカ諸国の課題として,教育,労働,貧困,青少年,司法,観光,文化等の各種テーマに係る計画を提示。
(ウ)「民主主義及び憲法秩序の擁護に係る特別宣言」:民主主義,法治国家としての秩序,人権,自由,社会正義等の擁護を宣言。
(エ)各種コミュニケ:フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題の解決に係るコミュニケ,米国による対キューバ経済封鎖の解除に係るコミュニケ等計10点。
(3)エクアドル,ボリビア,ベネズエラ,キューバ等は,今次サミットの合意文書において,ウィキリークスによる米外交文書の流出に関し,米国に対する批判を表明することを試みたが,議長国である亜は,ブラジル,メキシコ,チリ等の同調を受け,今次サミットにおける対米批判の表明を避けた。
(4)今次サミットの機会を利用し,南米諸国連合(UNASUR)加盟諸国は,臨時首脳会合を設け,次期UNASUR事務局長の選定について協議する予定であったが,同会合は中止された。代わりに,UNASUR加盟諸国の外相らが臨時会合を設け,同件について協議したが,次期事務局長の選定について合意に至ることはできなかった。
3 パレスチナ
6日付外務省プレスリリースは,亜政府がパレスチナの国家承認を決定した旨発表した。同プレスリリースの概要は以下のとおり。
(ア)6日,フェルナンデス大統領は,アッバース・パレスチナ自治政府大統領宛書簡を送付し,亜政府がパレスチナを国家承認する旨表明した。亜は,メルコスール加盟国であるブラジル及びウルグアイと共に,パレスチナを国家承認すべき時期を迎えたとの見解を共有した。
(イ)亜・パレスチナ間には友情と連帯の伝統があり,かねてより両国の外交使節の往来が行われている他,2009年11月にはアッバース大統領が訪亜し,フェルナンデス大統領が同大統領を接遇している。
(ウ)また,亜は,人権尊重,テロ撲滅及び一方的な武力行使の禁止という考えを常に表明してきており,イスラエルによる占拠地域での入植活動には,断固として反対してきた。
(エ)他方,メルコスール・イスラエル間の自由貿易協定に示されている通り,メルコスール諸国はイスラエルとの友好関係も維持しており,亜としても,各種分野において,イスラエルとの協力関係を進展させてきた。
(オ)亜は,かねてより,パレスチナ国民が独立国家を建設する権利,及び,イスラエルが近隣諸国と平和裡に共存する権利を支持してきた。今般のパレスチナ国家承認の決定は,紛争の終結に向けた交渉プロセスへの寄与,及び,あらゆる国民の共存という亜の意思の表れである。
4 イタリア
9日,ティメルマン外相はイタリアを訪問し,フラッティーニ同国外相と会談した。両外相は,経済,科学技術,文化,国防等の各分野における二国間関係の強化の他,国連安保理改革,G20の展望,EU・メルコスール間の通商交渉プロセス等について協議した。また,2011年上半期,亜において,両外相の主催により,経済及び政治に係る両国間のハイレベル会合を開催する旨合意に至った。
5 コロンビア
(1)14〜15日,ウリベ・コロンビア前大統領が訪亜し,14日,フェルナンデス大統領と会談した。両者は,南米地域における軍隊に係る問題等について協議した由。但し,同会談の直前,2008年,ウリベ前大統領(当時大統領)が,米外交官等に対し,「フェルナンデス大統領は,大統領選挙の際にチャベス・ベネズエラ大統領から資金援助を受けていたため,チャベス大統領に逆らうことはない」旨述べたとする米外交文書が,ウィキリークスにより公開された。今次会合の後,ウリベ前大統領は,同会談は「穏和」であった旨述べた。
(2)15日,ウリベ前大統領は,マクリ・ブエノスアイレス市長と会談した。マクリ市長は,ウリベ前大統領に対し,「平和と共存が問われる厳しい状況下にあったコロンビアにおいて,貴殿が成した仕事を賞賛する」と述べた。ウリベ前大統領は,マクリ市長に対し,「貴殿のリーダーシップは,ブエノスアイレス市に保証を与え,傑出した指導者を必要とする南米地域に希望を与えた」と述べた。
6 チリ
15日,ダロット筆頭外務副大臣は,訪亜したシュミット・チリ外務次官と共に,両国の経済協力等について協議するための亜・チリ二国間委員会を開催した(注:同委員会は,1984年の亜・チリ平和友好条約において設置されたもの)。同委員会において,2010年の両国の要人往来等にみられた二国間の緊密な関係が確認された上で,各種分野における両国の協力等について協議された。特に,(ア)両国を結ぶアンデス山脈貫通トンネル建設計画,(イ)両国間鉄道建設計画,及び(ウ)両国間の人の移動の自由に係る合意のための特別ワーキング・グループの設置に焦点が当てられた(注:(ア)〜(ウ)は,2009年11月,二国間統合協力規約と同時に署名された3点の追加議定書の内容と同様)。
7 豪州
15日,ティメルマン外相は,メルコスール外相会合(注:下記メルコスール首脳会合の前日開催)への出席のため訪問したブラジルにおいて,ラッド豪州外相と会談した。ティメルマン外相は,アジア地域への農作物輸出における両国の協力,核関連分野における両国の科学者による技術交換等の提案を行った。ラッド外相は,豪州における原子力の平和利用に対する亜の支援について謝意を示した。また,ティメルマン外相は,2011年,亜で開催される第5回FEALAC外相会合を,アジア・中南米間の関係強化のための貴重な機会として重要視している旨述べた。その他,両外相は,G20,WTO及びケアンズ・グループにおける両国の協力関係を好意的に評価した。
8 モロッコ
15日,ティメルマン外相は,メルコスール外相会合への出席のため訪問したブラジルにおいて,マアズーズ・モロッコ貿易相と会談した。両者は,近年の二国間貿易の成果に言及した上で,亜産農業機械の対モンゴル輸出を拡大する可能性等について協議した。また,ティメルマン外相は,2011年にフェルナンデス大統領がモロッコを訪問する意向がある旨述べた。
9 アラブ首長国連邦
15日,ティメルマン外相は,メルコスール外相会合への出席のため訪問したブラジルにおいて,アブダッラー・アラブ首長国連邦外相と会談した。両外相は,メルコスールと,現在アラブ首長国連邦が議長国を務めている湾岸協力会議(GCC)との間の貿易協定交渉を継続し,両ブロック間の経済・通商関係を深化させることの重要性を確認した。
10 メルコスール首脳会合
(1)16〜17日,フェルナンデス大統領はブラジルを訪問し,17日,第40回メルコスール首脳会合に出席した。同首脳会合において,同大統領は,「南米諸国の戦略的連携は,我々が世界規模の深刻な経済危機に立ち向かうことを可能にしてきた。この連携は今後とも重視されなければならない」,「メルコスールは,亜とブラジルが対立しているといった的外れな仮説を打破した」,「企業を支援し,南米地域の経済にポジティブな刺激を与えるために,域内のインフラ事業を推進すべきである」,「ベネズエラのメルコスールへの正式加盟は,南米地域の戦略の確立において極めて重要なステップである。パラグアイが議長国を務める次回のメルコスール首脳会合において,ベネズエラの正式加盟が承認されることを確信している」等述べた。
(2)同日,メルコスール首脳会合の後,フェルナンデス大統領は,ルーラ・ブラジル大統領と会談した。両首脳は,今後とも密接な二国間関係を継続する旨約束した。また,ルーラ大統領は,フェルナンデス大統領の次期大統領再選を支持する旨述べた。
11 要人往来
(1)往訪
9日 |
ティメルマン外相のイタリア訪問(フラッティーニ・イタリア外相と会談) |
12〜13日 |
ブドゥー経済相のフランス訪問(フェルナンデス・パリクラブ議長と会談) |
16〜17日 |
フェルナンデス大統領,ティメルマン外相等のブラジル訪問(第40回メルコスール首脳会合等に出席) |
(2)来訪
1日 |
ボコバ・ユネスコ事務局長(ティメルマン外相と会談) |
3〜4日 |
イベロアメリカ・サミット加盟諸国首脳等(第20回イベロアメリカ・サミットに出席) |
11〜12日 |
バーンズ米国務次官(ティメルマン外相と会談) |
14〜15日 |
ウリベ・コロンビア前大統領(フェルナンデス大統領及びマクリ・ブエノスアイレス市長と会談) |
15日 |
シュミット・チリ外務次官(ダロット筆頭外務副大臣と共に亜・チリ二国間委員会を開催)
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