アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

平成29年4月26日

アルゼンチン政治情勢(2017年3月)

2017年4月作成
在アルゼンチン日本大使館
 
1 内政
(1)大統領府・政府
 (ア)通常議会開会に際するマクリ大統領の施政演説
 1日,連邦議会において第135回通常議会の開会式が行われ,マクリ大統領が就任後2度目となる施政演説を行った。マクリ大統領は,貧困撲滅,社会インフラ,教育,経済政策,交通インフラ,治安,汚職対策及び外交政策等に関する就任1年目の取組と今後の施策を中心とした演説を行った。
 
 (イ)社会緊急事態法の細則に関する大統領令の発布
 10日,官報において,昨年12月に可決された社会緊急事態法(Ley de la Emergencia Pública)の細則を定める大統領令が発布された。同細則では,社会開発省の管轄下で,国民経済審議会の役割及び目的,公的補完給付金の割当て等の詳細が定められた。
 
 (ウ)Procrear(アルゼンチン国民融資計画)の再始動
 11日,マクリ大統領は,低所得者層向けの住宅の建設及び改修に対するマイクロクレジットプログラムであるProcrear(アルゼンチン国民融資計画)を再始動する旨発表した。同計画は,内務・公共事業・住宅省の管轄の下,600億ペソ(250億ペソ:国家予算,300億ペソ:国立ナシオン銀行,50億ペソ:中国資本)の資金が投入される予定。
 
 (エ)レガソーニ健康保険機構(PAMI)長官の辞任
 15日,マクリ大統領からの辞任要請を受け,カルロス・レガソーニ健康保険機構(PAMI)長官が辞任し,後任として,セルヒオ・カシノッティ(前ブエノスアイレス州医療支援事業機構(IOMA)代表)が任命された。
 
 (オ)国家民間航空計画の発表
 6日,マクリ大統領は,国家民間航空計画(Plan Aerocomercial Nacional)を発表した。亜への航空便接続の最適化及び観光客数の増加を目的とした同計画では,アルゼンチン航空のサービス能力の向上,航空市場への新規参入,空港インフラの改善等も目的とされており,政府は同計画に約220億ペソの投入を予定している。さらに,同計画を通じ,2500名の直接・間接雇用の創設も期待されている。
 
 (カ)未申告外貨正規化措置の期日の延期
 23日,連邦歳入庁(AFIP)は,未申告外貨正規化の手続きの期日を本年3月末から4月17日まで延期をする旨発表した。なお,本件に係る決議は22日付官報にて発布された。
 
 (キ)議会中間選挙に向けた選挙スケジュールの発表
 14日,国家選挙管理裁判所は,本年の選挙スケジュールを承認した。議会中間選挙の投票日が10月22日,予備選挙(PASO)が8月13日,政党連携登録の期日が6月14日,予備選挙への立候補届け出期日が6月24日となる旨発表した。
 
(2)連邦議会:医療大麻使用法及び起業家法の可決
 29日,医療大麻使用法(Ley de uso del cannabis medicinal)が議会で可決・成立した。同法により,医療大麻に関する医学的調査や医療大麻から抽出される大麻油が入手可能となる。また,同日,中小企業の経済活性化及び雇用創出を目的とする起業家法(Ley de Emprendedores)が議会で可決・成立した。内容としては,起業家支援のため,収益に対する税金控除やインターネットを通じて最大24時間以内に企業の開設を可能とすることや企業活動を円滑化するための組織の創設等が含まれている。
 
(3)その他: 労組等による連日の大規模デモ実施
 6日から8日にかけて,アルゼンチン国内では,労組や左派系抗議団体等による大規模デモが連日実施された。
 (ア)教員労組によるスト及びデモ
 6日,教員労組は,政府の提示する18%の賃上げに対し,35%の賃金上昇を求めて,一部州を除く全国の公立小中学校において,48時間の全国ストを実施するとともに,ブエノスアイレス市内では,教育省に向けて大規模デモが行われ,約5万人の教員が参加した。
 
 (イ)労組等による反政府デモ
 7日,労働総同盟(CGT)は,労働者連盟(CTA),左派系道路封鎖集団,前政権派(キルチネル派)等の支援を受け,労働者の解雇増大や外国製品輸入の拡大,政府の賃上げ抑制に対する反政府デモを工業生産省前で実施した。デモには,計20万から40万人が参加したとされる。
 
 (ウ)国際女性デーにおけるデモ
 8日,国際女性デーにおけるデモが国会議事堂から5月広場に向けて実施された。同デモには,労組,政党関係者,社会団体等も参加し,性の平等,同一価値労働同一賃金,女性への暴力に対する政府のアクション,性教育プログラムへの支援及び合法で・安全かつ無償の中絶等を求めて,約25万人がデモに参加した。
 
2 外交
(1)日本:飯島三井物産会長のアルゼンチン訪問
 3日,マクリ大統領は,当地訪問中の飯島三井物産会長と会談を行った。飯島会長は,同社が亜の食糧,エネルギー及びインフラ分野への投資拡大に関心がある旨述べた。なお,同会談には,ブルジャイレ農産業大臣及びアラングレン・エネルギー・鉱業大臣等が同席した。
 
(2)米国:亜産レモンの対米輸出に関する一時停止措置の延期
 22日,米国政府は,前政権下で解禁措置が決定されていた亜産レモンの対米輸出に関する一時停止措置を5月27日まで延期する旨発表した。
 
(3)メルコスール:
 (ア)韓国・メルコスール貿易協定開始のための共同宣言の署名
 2日,韓国の周亨煥(チュ・ヒョンファン)産業通商資源部長官は,アルゼンチンを訪問し,マルコーラ外務大臣と会談を行った。また,両者は韓国・メルコスール貿易協定開始の前段階としての予備的対話が成功裏に完結したとする内容の共同宣言に署名を行った。
 
 (イ)メルコスール外相会合の当地開催
 9日,当地において,メルコスール外相による共通市場グループ会合及び対外関係グループ会合が開催された。同会合では,メルコスールの経済・貿易アジェンダ及び組織アジェンダの他,メルコスールの対外関係,特にEUとの貿易交渉に関する話し合いが行われた。
 
 (ウ)第27回メルコスール-EU交渉委員会会合の開催
 21~24日,当地において,第27回メルコスール-EU交渉委員会会合が行われ,両地域の自由貿易交渉が行われた。同会合では,(1)通商,(2)政治対話及び(3)両地域間協力の3分野で将来の連携協定に向けて大きな進展が見られたと報じられている。また,次回の交渉会合は,7月にブリュッセルで行われる予定であり,通商分野については,5月末に,当地で中間会合が開催される予定。
 
(4)オランダ:マクリ大統領のオランダ訪問
 27~28日,マクリ大統領はオランダを公式訪問し,オランダ国王夫妻主催晩餐会,ルッテ首相との首脳会談,オランダ議会訪問,ビジネス投資フォーラム等を行った。また今次訪問を通じて,両国間で8つの文書((1)航空サービス協定,(2)水・下水及び廃棄物プロジェクトへの融資プログラム,(3)休日及び労働プログラム,(4)スポーツ分野協力,(5)雇用及び社会対話促進,(6)ブエノスアイレス港改修,(7)果樹・野菜栽培向上,(8)種子販売における官僚的プロセス改善)に署名が行われた。
 
(5)オーストラリア:ミケティ副大統領のオーストラリア訪問
 20~23日,ミケティ副大統領はオーストラリアを訪問し,20日,首都キャンベルにおいて,マルコム・ターンブル首相と会談を行い,農産加工業振興及び観光開発に共に取り組んでいくことで一致した。また同日,シドニーにおいて,ミケティ副大統領は企業家らとの会合も行った。
 
(6)英国: ハンズ英国際貿易閣外大臣のアルゼンチン訪問
 20日,グレッグ・ハンズ英国際貿易閣外大臣がアルゼンチンを訪問し,カブレラ工業生産大臣,ディエトリッチ運輸大臣及びカプート金融大臣と会談を行った。同大臣は,貿易強化や航空サービスに関する覚書きに署名を行うとともに,英国輸出信用保証庁により,英国から亜輸出向けの12億5千万米ドルの融資枠(クレジットライン)が承認された。
 
(7)ドイツ
 (ア)ドゥホブネ財務大臣のドイツ訪問(G20財務大臣・中央銀行総裁会議)
 16~18日,ドゥホブネ財務大臣は,ドイツのバーデン=バーデンを訪問し,G20財務大臣・中央銀行総裁会議に出席した。同訪問の機会を捉えて,ドゥホブネ財務大臣は,肖捷・中国財政部長,ミード・クリブレーニャ墨大蔵公債大臣,デ・ギンドス西経済・競争力大臣,ムニューチン米財務長官,モリソン豪財務大臣等とそれぞれバイ会談を行った。
 
 (イ)アラングレン・エネルギー・鉱業大臣のドイツ訪問
 20日,アラングレン・エネルギー・鉱業大臣はドイツを訪問し,再生可能エネルギーに関するベルリン・エネルギーシフト会議に出席し,亜における再生可能エネルギーの開発に関する講演を行った。また,同大臣は,ファティ・ビロル(Fatih Birol)国際エネルギー機関(IEA)事務局長と会談を行い,亜エネルギー・鉱業省とIEAとの間でのエネルギー分野の協力強化を目的とする協力覚書きに署名を行った。
 
(8)フランス:サパン仏経済財務相のアルゼンチン訪問
 30日,ミシェル・サパン仏経済財務大臣がアルゼンチンを訪問し,二国間の新たな経済関係強化を目的として,カプート金融大臣と会談を行った。同会談では,二国間アジェンダの他,亜における仏開発庁(AFD)の将来的な取組みや,メルコスールとEUとの関係及び次回G20会合等に関する話し合いが行われた。
 
(9)ブラジル:ヌネス伯外相のアルゼンチン訪問
 10日,新たに外相に就任したヌネス伯外相がアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領及びマルコーラ外務大臣とそれぞれ会談を行った。マルコーラ外務大臣との会談では,マクリ大統領が2月にブラジルを訪問した際にテメル伯大統領と話し合った二国間アジェンダを改めて確認した。
 
(10)パラグアイ:マクリ大統領のパラグアイ訪問
 16日,マクリ大統領はパラグアイを訪問し,カルテス・パラグアイ大統領と首脳会談を行った。また,両国の閣僚・州知事による第2回共通国境委員会会合が実施された他,5つの文書への署名が行われた((1)人身売買犯罪に関する治安省間の協力協定,(2)国際条約に関する外務省間の制度協定,(3)移民協力に関する趣意書,(4)インターネット網の接続強化実施に関する覚書,(5)財務省間の覚書)。
 
(11)チリ:ピニェラ前チリ大統領のアルゼンチン訪問
 7日,ピニェラ前チリ大統領がアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領と会談を行った。同会合では,太平洋同盟とメルコスールの関係強化をはじめ,その他のテーマに関する対話が行われた。
 
(12)ベネズエラ
 (ア)ベネズエラ情勢に関するOAS加盟国による声明
 23日,亜外務省はベネズエラ情勢に関するOAS加盟国による声明として,亜,伯,加,智,コロンビア,コスタリカ,米国,グアテマラ,ホンジュラス,墨,パナマ,パラグアイ,ペルー及びウルグアイ(14か国)の各政府と共に共同プレスリリースを発出した。同プレスリリースでは,兄弟国ベネズエラにおける情勢に対する深い懸念が表明されると共に, 米州機構(OAS)憲章及び米州民主主義憲章の枠組における民主主義及び人権の擁護・促進に向けたOAS加盟国の義務に関する表明が行われた。
 
 (イ)ベネズエラ最高裁決定に対する懸念
 29日,亜政府は,ベネズエラ最高裁による国民議会の権限及び国民の投票により選出された議員の特権を制限する決定に対し,深い懸念を表明する旨のプレスリリースを発出した。
 
(13)ウルグアイ:ニン・ノボア・ウルグアイ外相のアルゼンチン訪問
 21日,マルコーラ外務大臣は,ニン・ノボア・ウルグアイ外相とラプラタ川管理委員会創設40周年を記念して,マルティン・ガルシア島(両国国境のラプラタ川河口のウルグアイ水域内にある亜領の島)で外相会談を行った。
 
(14)北朝鮮:北朝鮮のミサイル発射に対する非難声明
 7日及び22日,亜外務省は,6日及び21日の北朝鮮によるミサイル発射を非難する旨のプレスリリースを発出した。
 
(15)フィリピン:亜産牛肉のフィリピン市場への輸出
 亜外務省は,2日付プレスリリースを通じて,亜産牛肉のフィリピン市場への輸出が許可された旨発表した。
 
(16)アラブ首長国連邦
 (ア)ハマド・アブダビ投資庁(ADIA)長官のアルゼンチン訪問
 13~15日,ハマド・ビン・ザイード・アール・ナヒヤーン・アブダビ投資庁(ADIA)長官がアルゼンチンを訪問した。14日,マクリ大統領との会談では,ア首連からの投資の可能性につき話し合いが行われた。また,同長官は,ミケティ副大統領及びマルコーラ外務大臣等とも会談を行った他,石油,鉄鋼,農牧,食料,不動産開発,エネルギー,金融等の亜経済セクター関係者とも会合を行った。
 
 (イ)アブダッラー・アラブ首長国連邦外務国際協力大臣のアルゼンチン訪問
 17~20日,アブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン・アラブ首長国連邦外務国際協力大臣はアルゼンチンを訪問し,17日,ミケティ副大統領及びマルコーラ外務大臣と会談を行った。同会談では,科学技術,原子力,宇宙,観光,文化,スポーツ,保健衛生,国際人道援助分野での協力促進が協議された他,両外相により,査証要件等にかかる3つの覚書への署名が行われた。また,両国の経済貿易担当閣僚による第1回二国間合同委員会が行われた
 
(17)イスラエル: 航空サービス協定の署名
 15日,マルコーラ外務大臣は,Ilán Sztulman駐亜イスラエル大使との間で,二国間航空サービス協定に署名を行った。同協定を通じ,両政府は法的枠組を創設し,二国間の航空サービス分野の協力を進めていくことになる。ディエトリッチ運輸大臣は,エル・アル航空(イスラエルの国営航空会社)とアルゼンチン航空がコードシェアに向け第一歩を踏み出したことに祝意を表した。
 
(18)ケニア:モハメド・ケニア外務・国際貿易長官のアルゼンチン訪問
 14日, アミナ・モハメド・ケニア外務・国際貿易長官がアルゼンチン訪問をし,マクリ大統領及びマルコーラ外務大臣とそれぞれ会合を行った。二国間外相会談では,両国関係をさらに深化させる分野における将来的な行動について話し合われるとともに,二国間技術協力協定に署名が行われた。
 
(19)国際会議:「安全な学校に関する第二回会合」の亜開催
 28~29日,当地において「安全な学校に関する第二回会合」が実施された。亜からは,ビジャグラ筆頭外務副大臣等が出席した。
 
(20)要人往来
 (ア)往訪  
●16日: マクリ大統領のパラグアイ訪問
●16~18日: ドゥホブネ財務大臣のドイツ訪問(G20財務大臣・中央銀行総裁会議)
●20~23日: ミケティ副大統領のオーストラリア訪問
●20~24日: ドゥホブネ財務大臣の英国訪問
●27~28日: マクリ大統領のオランダ訪問
   
 (イ)来訪  
●2日: 飯島三井物産会長
●2日: 周亨煥・韓国・産業通商資源部長官
●7日: ピニェラ前チリ大統領
●9日: ヌネス伯外相,ロイサガ・パラグアイ外相,ニン・ノボア・ウルグアイ外相(メルコスール外相会合)
●10日: ヌネス伯外相
●10日: オルティス・コスタリカ外務副大臣
●13~15日: ハマド・アブダビ投資庁(ADIA)長官
●14日: チュア・シンガポール外務次官
●14日: モハメド・ケニア外務・国際貿易長官
●17~20日: アブダッラー・アラブ首長国連邦外務国際協力大臣
●20日: ハンズ英国際貿易閣外大臣
●21日: ニン・ノボア・ウルグアイ外相
●22日: ボンバ独連邦交通・デジタルインフラ副大臣
●30日: サパン仏経済財務大臣
●30日: シェスタコフ・ベラルーシ外務副大臣