アルゼンチン政治情勢(2016年2月)
2016年3月作成
在アルゼンチン日本大使館
内政
(1)大統領府・政府
(ア)子供手当等の増額
11日,マクリ大統領は,子供手当(AUH)支給月額,及び退職者年金の平均支給月額等を,本年3月より約15%増額する旨発表した。
(イ)マクリ大統領と「5月広場の祖母達」の会合
18日,マクリ大統領は,アルゼンチン軍政期の行方不明者及びその子孫の行方を捜す人権団体「5月広場の祖母達」の代表者と会合した。同団体は,同大統領に対し,団体の活動に対する国家による継続的な支援の必要性について述べた。
(ウ)地方交付税交付金の交付決定
25日,マクリ大統領は,大統領令を通じ,これまで中央政府からの移転が留保されていた15%の地方交付税交付金につき,公共事業等の負担を国家政府から州政府に移管することと引き替えに,毎年3%ずつ5年にわたって交付する旨発表した。
(2)連邦議会:臨時上院議会の開会
10日,マクリ大統領は,大統領令を通じ,11日から29日にかけて臨時上院議会を招集した。同議会では,政府が提案した2名の最高裁判事の任命の審議が行われ採択された他,マクリ大統領によって発せられたいくつかの緊急大統領令も承認された。(当館注:上記承認は連邦上院のみで行われるプロセス。)
(3)司法・検察:フェルナンデス前大統領等に対する予審尋問招喚
26日,ボナディオ連邦判事は,2015年に,フェルナンデス前政権が米ドルの先物取引を行ったことで国庫に損害を与えた(当館注:2016年の米ドルのペソ価格を前政権が算出して米ドルを売却したことにより,現状の下落したペソ価格から比較して大きな損害を与えた)とし,フェルナンデス前大統領の他,キシロフ下院議員(前経済・財政大臣),バノリ前中銀総裁等を,4月13日の予審尋問に招喚した。
(4)労働組合
(ア)所得税の課税対象最低額の引き上げ等発表
18日,マクリ大統領は,州知事や労組等を集めた場において,所得税の課税対象最低額を,月収が1万5千ペソから,3万ペソに引き上げる旨の発表を行った。同時に,正規雇用の家庭に対し子供の数に応じて支給される家族手当(asignación familiar)の受給対象者の拡充についても発表しつつ,同拡充により新たに約120万人の子供が裨益する旨強調した。
(イ)公務員組合,及び教員労組によるスト
24日,フェルナンデス前政権下で公務員ポストに任命され,マクリ政権下で解雇された者の処遇を巡り,国家公務員連盟(ATE)は全国ストを行うとともに,大統領府前の5月広場で抗議活動を行った。また,29日,政府の賃上げ率上限を大幅に上回る賃上げ率を要求する教員の各労組は,サンタ・フェ州やネウケン州など国内10州において,24~48時間のストを行った。
(5)その他:野党系社会団体トップの逮捕に対する抗議
17日,フフイ州の野党系社会団体「トゥパク・アマル(Tupac Amaru)」のミラグロ・サラ代表の逮捕・拘束に対する抗議活動が全国で行われ,全国約200の幹線道路が封鎖された。
外交
(1)ホールドアウト問題:NML社等との基本合意
29日,ホールドアウト(残存債務)債権者との問題において交渉仲裁人を務めるポラック弁護士は,アルゼンチン政府が主要ホールドアウト債権者であるNML社他(NML,Aurelius Capital,Dadivon Kempner及びBracebridge Capital)と債務の支払いに関する基本合意に署名した旨明らかにした。これに対し,米財務省は,アルゼンチン政府と債権者の歩み寄りを賞賛する声明を公表した他,国際通貨基金(IMF)は,アルゼンチンが国際金融市場に復帰し,一定の地位を回復するための重要な一歩であったと評する声明を公表した。
(2)チリ
(ア)ブルゴス・チリ内務大臣のアルゼンチン訪問
2日,ブルゴス・チリ内務大臣はアルゼンチンを訪問し,フリヘリオ内務大臣及びブルリッチ治安大臣との会談において,国境ルートの公共事業及び麻薬取引撲滅に向けた協力を強化する旨合意した。また,ブルゴス大臣は,チリの政治犯でアルゼンチンに亡命中のアパブラサ氏の身柄の引き渡しをアルゼンチン政府に求めた。
(イ)ウンドゥラガ・チリ公共事業大臣のアルゼンチン訪問
2日,ウンドゥラガ・チリ公共事業大臣はアルゼンチンを訪問し,フリヘリオ内務大臣と会談した。両者は,計3本のアンデス山脈トンネルの建設計画を前進させる旨検討した。フリヘリオ大臣は,同計画には公的・民間投資が必要である旨強調した。
(3)米国
(ア)ケニー米国務省上級顧問のアルゼンチン訪問
3日,ケニー米国務省上級顧問はアルゼンチンを訪問し,マルコーラ外務大臣等と会談した。同会談において,3月後半の核セキュリティ・サミットに合わせたマクリ大統領の訪米及び同訪米の際のオバマ米大統領との会談実現について協議した。また,パトリシア・ブルリッチ治安大臣と会談し,二国間関係強化に向け,米国でのアルゼンチン警察に対する研修の実施等,治安分野における協力についても議論した。
(イ)ブラウン工業生産副大臣(商業担当)の太平洋評議会出席
23日,米ワシントンを訪問中のミゲル・ブラウン工業生産副大臣(商業担当)は,シンクタンク「太平洋評議会(Atlantic Council)」の講演会において,マクリ政権が米国のような「戦略的パートナー」に門戸を開くこと,また,将来的には環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加を望んでいる旨述べた。
(ウ)パトリシア・ブルリッチ治安大臣の米国訪問
25日から27日にかけて,パトリシア・ブルリッチ治安大臣は米ワシントンを訪問した。同大臣は,ジョンソン米国土安全保障長官,コミー米連邦捜査局(FBI)長官,及びローゼンバーグ米麻薬取締局(DEA)等と会談を行い,治安改善や麻薬取引撲滅等に向けた二国間の協力関係の模索について協議した。
(4)ドイツ:ベーマー独外務省国務大臣のアルゼンチン訪問
2日から5日にかけて,ベーマー独外務省国務大臣はアルゼンチンを訪問し,ミケティ副大統領,ペニャ官房長官,マルコーラ外務大臣と会談し,両国間関係の促進につき協議した。また,エステバン・ブルリッチ教育・スポーツ大臣と職業訓練を含む教育分野における人的交流につき協議した。その他,在アルゼンチン独商工会議所において,クリーンエネルギーやインフラ等の分野における投資・開発につき,企業関係者と意見交換を行った。
(5)ブルガリア:プレヴネリエフ・ブルガリア大統領のアルゼンチン訪問
4日から5日にかけて,プレヴネリエフ・ブルガリア大統領はアルゼンチンを訪問した。マクリ大統領及びマルコーラ外務大臣と会談し,アルゼンチンにおける対雹ロケット製造工場建設のためのブルガリアからの投資等,様々な分野における二国間の協力関係を緊密化する旨協議した。
(6)アラブ首長国連邦:アブダッラー・アラブ首長国連邦外務大臣のアルゼンチン訪問
5日,アブダッラー・アラブ首長国連邦外務大臣はアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領等と会談し,今後の両国間関係促進で一致した。また,マルコーラ外務大臣と会合し,両国間の租税情報交換を定めた合意に署名した。更に,プラット・ガイ財務・金融大臣,グティエレス・ネウケン州知事と会合し,アルゼンチン工業連盟(UIA)・アラブ首長国連邦商工会議所連盟間での共同ビジネス審議会の設立に向けた合意,及びネウケン州におけるナウエベ水力発電所建設に向けたドバイの基金からの融資に関する合意に署名を行った。
(7)北朝鮮:ミサイル発射に対する非難声明
7日,北朝鮮によるミサイル発射を受け,アルゼンチン外務省は,「アルゼンチンは北朝鮮による弾道ミサイル技術の使用を非難する」と題する声明を発出した。
(8)国連
(ア)マルコーラ外務大臣の国連訪問
9日から10日にかけて,マルコーラ外務大臣は国連行財政問題諮問委員会(ACABQ)70周年記念非公式会合に出席のため米ニューヨークを訪れ,潘基文国連事務総長と会談を行った。同会談では,マルコーラ外務大臣から4月22日に国連本部で予定される「パリ協定」署名式にマクリ大統領が出席すべく米国を訪問する旨伝えると共に,潘事務総長のアルゼンチン訪問についても話し合われた。
(イ)フォラドリ筆頭外務副大臣の国連安全保障理事会関連会合出席
15日,フォラドリ筆頭外務副大臣は,米ニューヨークの国連本部で開催された国連安全保障理事会のポストMDGs関連会合に出席した。同会合においては,人権問題を巡り,内政不干渉を主張するロドリゲス・ベネズエラ外務大臣との間で議論が展開され,フォラドリ副大臣は「国家が内政干渉を理由に人権への尊重を欠くことはできない」と述べた。
(9)パラグアイ:ロイサガ・パラグアイ外務大臣のアルゼンチン訪問
12日,ロイサガ・パラグアイ外務大臣はアルゼンチンを訪問し,マルコーラ外務大臣と会談した。両大臣は,両国間国境における治安問題や麻薬取引等の問題の解決に向け協力していく旨合意するとともに,上記テーマをメルコスールという多国間の場で扱うべきとの意見で一致した。
(10)イタリア・バチカン市国
(ア)レンツィ伊首相のアルゼンチン訪問
15日から16日にかけて,レンツィ伊首相はアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領等と会談を行った。16日,マクリ大統領とレンツィ首相は記者会見にて,今後両国でエネルギー,インフラ事業,食料,麻薬取引・世界規模のテロとの戦いといった様々な分野において協力していく旨明らかにした。また,マクリ大統領は,特に若者への雇用創出のために,国際社会におけるアルゼンチン・伊の二国間関係を見直す旨述べた。
(イ)マクリ大統領等のバチカン市国訪問
27日,マクリ大統領等はバチカン市国を訪問し,フランシスコ・ローマ法王と会談を行った。両者は,テロとの戦い,麻薬取引撲滅,貧困撲滅,格差の解消,アルゼンチン国民の統合等について協議した他,フランシスコ法王はアルゼンチン訪問の関心を示した。
(ウ)マクリ大統領等のイタリア訪問
27日,フランシスコ・ローマ法王との会合後,マクリ大統領は,イタリアのローマにて,レンツィ伊首相と会談を行い,両国間で既に結ばれたエネルギーや食料等の分野に関する協力の約束に関する再確認を行った。また同日,マッタレッラ伊大統領と会合し,対アルゼンチン投資の活性化に向け,本年6月に伊経済ミッション,及び翌7月にマッタレッラ大統領自身によるアルゼンチン訪問が検討されている旨伝えられた。
(11)ブラジル
(ア)ブラウン工業生産副大臣のブラジル訪問
15日,ブラウン工業生産副大臣(商業担当)は,ブラジルのブラジリアを訪問し,開発商工省のゴジーニョ伯通商局長と会談し,今年6月末で期限が切れるアルゼンチン・ブラジル間の自動車協定につき協議を行った。
(イ)モンテイロ伯開発商工大臣のアルゼンチン訪問
18日,モンテイロ伯開発商工大臣はアルゼンチンを訪問し,カブレラ工業生産大臣と会談した。両大臣は,二国間貿易及び自動車協定に関する新たな合意事項につき協議するとともに,二国間貿易委員会を通じて今後も引き続き協議を継続するとの意見で一致した。
(ウ)プラット・ガイ財務・金融大臣のブラジル訪問
18日,プラット・ガイ財務・金融大臣はブラジルのブラジリアを訪問し,バルボーザ伯財務大臣,及びコンチーニョ国家経済社会開発銀行(BNDES)総裁と会談し,アルゼンチンで実施が凍結されている鉄道建設への融資再開について協議した。その他,ヴィエイラ伯外務大臣とも会合を行った。
(エ)ミケティ副大統領のブラジル訪問
23日,ミケティ副大統領はブラジルのブラジリアを訪問し,ルセーフ伯大統領と会談を行った。両者は二国間の政治・経済関係の緊密化等につき話し合い,ルセーフ大統領は,8月のリオデジャネイロ五輪の開会式にマクリ大統領を招待した。その後,ミケティ副大統領は,カリェイロス伯上院議長,ネーヴェス伯上院議員等と会合し,アルゼンチン・ブラジル間議会交流委員会を設置する方向で合意した。
(12)英国:ファロン英国務大臣のフォークランド諸島訪問に対する発言
15日から16日にかけて,ファロン英国防大臣はフォークランド(マルビナス)諸島を公式訪問し,軍事施設を訪問,及び島民コミュニティと会合を行った。ポンペオ内閣府副長官(戦略担当)は,今後のアルゼンチン・英二国間関係の好転につながるものは何もないと述べた。
(13)スロバキア:スロボドゥニク・スロバキア外務副大臣のアルゼンチン訪問
17日,スロボドゥニク・スロバキア外務副大臣はアルゼンチンを訪問し,フォラドリ筆頭外務副大臣と政策協議を実施した。同協議においては,メルコスール・EUの自由貿易協定に向けた交渉及び二国間通商の状況,また人的交流や対アルゼンチン投資の増進等に関する協議が行われた。
(14)ウルグアイ
(ア)マルコーラ外務大臣のウルグアイ訪問
19日,マルコーラ外務大臣はウルグアイのモンテビデオを訪問し,ニン・ノボア・ウルグアイ外務大臣と会談し,メルコスール,ウルグアイ川の環境ジル訪管理,浚渫,港湾等の分野について協議した。
(イ)ミケティ副大統領のウルグアイ訪問
24日から25日にかけて,ミケティ副大統領はウルグアイのモンテビデオを訪問し,センディック・ウルグアイ副大統領と会談した。両副大統領は,浚渫,ウルグアイ川の環境管理,港湾貨物取扱の自由化,教育等の分野につき協議した他,メルコスール・EU自由貿易締結に向けた交渉についても話し合った。
(15)チェコ:トラパ・チェコ外務副大臣のアルゼンチン訪問
19日,トラパ・チェコ外務副大臣はアルゼンチンを訪問し,フォラドリ筆頭外務副大臣と政策協議を実施した。同協議においては,対アルゼンチン投資,人的交流増進,メルコスール・EUの自由貿易協定に向けた交渉等に関する協議が行われた。
(16)中国
(ア)鄭中国国家開発銀行総裁のアルゼンチン訪問
19日,鄭(Zheng)中国国家開発銀行総裁はアルゼンチンを訪問し,プラット・ガイ財務・金融大臣と会談した。両者は,アルゼンチンにおけるインフラ開発プロジェクト等に対する融資につき協議した。
(イ)プラット・ガイ財務・金融大臣のG20財務大臣・中央銀行総裁会議出席
26日から27日にかけて,プラット・ガイ財務・金融大臣は,中国の上海で開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議に出席し,アルゼンチンの国際金融市場復帰に向けて取り組む旨発言した。その他,出席した各国要人と会談を行い,その中で,グリア経済協力開発機構(OECD)事務総長により,アルゼンチンがOECD加盟国になるための話し合いを始めるため,本年6月に行うOECD関連会合への招待をされた。
(17)フランス:オランド仏大統領のアルゼンチン訪問
24日から25日にかけて,オランド仏大統領はアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領等と会談を行った。24日,両大統領及びマルコーラ外務大臣は,食料,原子力,科学技術,治安・司法共助等,計27の合意文書への署名を行った。
(18)要人往来
(ア) 往訪
8日 |
ブラウン工業生産副大臣(商業担当)のメキシコ訪問 |
9~10日 |
マルコーラ外務大臣の米ニューヨーク訪問(国連本部訪問) |
10日 |
アラングレン・エネルギー・鉱業大臣のボリビア訪問 |
15日 |
ブラウン工業生産副大臣(商業担当)のブラジル訪問 |
15日 |
フォラドリ筆頭外務副大臣の米ニューヨーク訪問(国連安全保障理事会のポストMDGs関連会合出席) |
18日 |
プラット・ガイ財務・金融大臣のブラジル訪問 |
19日 |
マルコーラ外務大臣のウルグアイ訪問 |
22~25日 |
アグア通信大臣のスペイン訪問(携帯電話世界会議出席) |
22~25日 |
ブラウン工業生産副大臣(商業担当)の米国訪問 |
23~24日 |
ミケティ副大統領のブラジル訪問 |
24~25日 |
ミケティ副大統領のウルグアイ訪問 |
25~27日 |
パトリシア・ブルリッチ治安大臣の米国訪問 |
26日 |
プラット・ガイ財務・金融大臣の中国訪問(G20財務大臣・中央銀行総裁会議出席) |
27日 |
マクリ大統領等のバチカン市国,イタリア訪問 |
28日 |
マルコーラ外務大臣のスペイン訪問 |
29日 |
マルコーラ外務大臣のスイス訪問(国連第31回人権委員会特別セッション出席) |
(イ)来訪
2日 |
ブルゴス・チリ内務大臣 |
2日 |
ウンドゥラガ・チリ公共事業大臣 |
2~5日 |
ベーマー独外務省国務大臣 |
3日 |
ケニー米国務省上級顧問 |
4~5日 |
プレヴネリエフ・ブルガリア大統領 |
5日 |
アブダッラー・アラブ首長国連邦外務大臣 |
11日 |
ロッシ・ウルグアイ運輸・公共事業大臣 |
11~12日 |
リブキン米国務次官補(経済・商務担当) |
12日 |
ロイサガ・パラグアイ外務大臣 |
15~16日 |
レンツィ伊首相 |
17日 |
スロボドゥニク・スロバキア外務副大臣 |
18日 |
モンテイロ・ブラジル開発商工大臣 |
19日 |
トラパ・チェコ外務副大臣 |
19日 |
鄭(Zheng)中国国家開発銀行総裁 |
25~26日 |
オランド仏大統領 |
|