政治情報
月1回更新

2014年3月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2014年4月作成
在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)内政:1日,第132回通常国会開会式が開催され,フェルナンデス大統領が2時間45分に亘り一般教書演説を行った。今次演説の中で,フェルナンデス大統領は多岐に渡るテーマに言及したものの,国民の最大の関心事である治安の悪化及びペソ切り下げについては特段語らなかったため,反政府系メディアから批判された。キシロフ経済・財政大臣及びデビード公共事業大臣は,4月以降,ガス料金及び水道料金に充てられている補助金を17〜80%削減する旨発表した。

 

(2)外交:20日〜21日にかけて,ウリバリ・エントレリオス州知事が訪日し,長島日本貿易振興機構(JETRO)理事との会合,小里農林水産大臣政務官表敬,日本柑橘輸入協会訪問,NEC本社訪問,愛知県のトヨタ社工場見学等を行った。

 15日に開催された国連安全保障理事会にて,亜は,ロシアによるクリミア併合を無効とする決議案に賛成票を投じたが,他方,27日の国連総会での決議案採決では,亜をはじめとするメルコスールの創設メンバー(アルゼンチン,ブラジル,パラグアイ,ウルグアイの4ヵ国)は,棄権票を投じた。10日〜11日,フェルナンデス大統領及びティメルマン外務大臣はバチェレ新チリ大統領の就任式に出席するためチリを訪問した。その後,フェルナンデス大統領は17日にバチカンを訪問してフランシスコ・ローマ法王と会談し,19日〜20日にかけてはフランスを訪問し,オランド仏大統領と首脳会談を行った。

 

 

2 内政


(1)第132回通常国会開会式:フェルナンデス大統領の一般教書演説

 

(ア)1日,第132回通常国会開会式が開催され,フェルナンデス大統領が2時間45分に亘り一般教書演説を行った。

 

(イ)今次演説の中で,同大統領は多岐に渡るテーマに言及したものの,国民の最大の関心事である治安の悪化及びペソ切り下げについては特段語らなかったため,反政府系メディアから批判された。昨年同様,本国会開会式に合わせ,議場内外にはラ・カンポラ等のキルチネル派支持団体及び労組関係者等が集団で詰めかけた。

 

(ウ)内政については,フェルナンデス大統領は,従来の攻撃的な調子の演説から一転して,野党との協調関係(コンセルタシオン)を模索するようなトーンで今次演説を締めくくった。但し,司法や企業家に対する攻撃の手は緩めなかった。また,同大統領は今回の演説の中で,2003年のキルチネル派政権誕生以降初めて,道路封鎖等の抗議運動を制限するための法整備の必要性を訴えた。

 

(エ)外交面での言及は,イラン問題,ベネズエラ情勢,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題,一部の米批判といった,僅かなものにとどまった。ベネズエラ情勢に関しては,同大統領はマドゥーロ大統領を擁護するのではないとした上で,ベネズエラの民主主義システムを擁護した。

 

(オ)一般教書演説の概要は別紙の通り。

 

(2)ガス料金及び水道料金に対する補助金の削減

 

(ア)27日,キシロフ経済・財政大臣及びデビード公共事業大臣は,4月以降,ガス料金及び水道料金に充てられている補助金を17〜80%削減する旨発表した。両大臣によると,同削減は4月,6月及び8月の3段階に分けて実施され,ガス料金の補助金削減についてはパタゴニア地域(コロラド川以南)を除く全国を対象とし,水道料金の補助金削減は首都圏が対象となる。キシロフ大臣は今次措置につき,補助金削減による浮いた予算は社会保障費に分配される他,送ガス会社及び配ガス会社のインフラ工事費用に補填されると発表した。

 

(イ)ガス料金については,2ヶ月ごとの使用量を,前年同月比で20%以上削減した世帯は補助金削減の対象外となるため,キシロフ経済・財政大臣は責任感をもった(ガスの節約を行うような)消費を行うよう呼びかけた(注:亜ではガス及び水道料金は2ヶ月ごとに支払う仕組みになっている)。ガスの使用量を5〜20%削減した世帯は,補助金削減幅が縮小される(注:4月7日,本件に関わる決議が官報に掲載され,補助金削減の詳細が明らかになり,ガスについては,当初政府が発表していた最大284%の値上げではなく,実際には最大で500%近くの値上げになると報じられた)。

 

(ウ)27日,フェルナンデス大統領はオリーボスの公邸で演説を行い,今次措置は大幅な公共料金の値上げ(Tarifazo)ではないとし,2003年当時の亜は補助金を必要としていたが,物事(亜情勢)は好転したと説明した。補助金カットの対象にならない産業界に関しては,競争力を維持するために補助金削減の対象外になっているとし,同業界に対し,(キルチネル派の)モデルと国家プロジェクトに参加するよう呼びかけた。

 

(3)反政府系労組による全国規模のストライキの実施予告

 

(ア)現在,亜の大規模労組団体である労働総同盟(CGT)及び亜労働者連盟(CTA)は政府派と反政府派にそれぞれ分裂しているが,26日,CGTモジャーノ派(注:モジャーノ・トラック労組代表が率いるグループ),CGT青と白(注:バリオヌエボ飲食業労組代表が率いるグループ)及びCTAミチェリ派の反政府派3グループは,4月10日に全国規模のストライキを実施する旨発表した。

 

(イ)当地報道によると,上記3グループは,ストライキ実施の理由として,フェルナンデス政権の経済政策,インフレの高進及び公共料金の引き上げ(注:ガス料金及び水道料金に対する補助金の削減)等に対する不満を挙げるとともに,麻薬密売組織対策を含む政府の治安対策への批判,所得税の課税最低限度額の引き上げ及び年金の増額等もストによって訴える予定と発表した。

 

(ウ)労組側は,今次ストでは労組団体による道路封鎖を伴うデモ行進や労組団体代表による演説等は実施しない予定と発表したが,他方で,ストに乗じて反政府系失業者団体(注:CCC,Barrios de Pie等)が道路封鎖等を実施する可能性がある旨マスコミで報じられた(注:4月10日に上記労組3団体は実際にストライキを実施し,とりわけバス,地下鉄及び鉄道等の公共交通機関が動かなかったことから,一般市民の生活に大きな支障があったと報じられた)。

 

(4)2015年の大統領選挙に向けた野党の動き:急進党党首のインタビュー記事

 

 16日付当地紙は,急進党のサンス党首(メンドーサ州選出の上院議員)の2015年国政選挙に対する見方をインタビュー形式で伝えた。同党首の発言概要は以下の通り。

 

(ア)「急進党は今日,2015年の選挙の問題を超える大きな挑戦に直面している(注:2015年には大統領・副大統領選挙の他,国会議員選挙,州知事選挙,地方議会議員選挙,市長選挙等が全国各地で実施される予定)。それは,亜の政治システムに均衡(equilibrio)を取り戻すことである。それは,政党システムを強化することで達成できる問題である。(2001年のデフォルト前まで亜に存在していた,ペロン党(PJ)と急進党の)2大政党制は,,多くの欠陥を有していたが,多くの長所も有していた。2大政党制は,交代,相互コントロール及び期待を社会にもたらしていた。現在,与党(「勝利のための戦線」)は国家権力を乱用することで成立しており,(亜の)行く手には何(の希望)もない。」

 

(イ)(2015年に向けた急進党と他の野党の選挙連合形成の件に関し,)「急進党は,超党派の枠組みにおける背骨でなければならない。急進党は,同党単独では政治システムに均衡を持たせることは不可能であると認めており,だからこそ(野党間の)選挙連合の形成の話があるのである。我々(急進党)は(選挙連合形成に向けた,他党との)合意を終えている。同合意は確固たるものである。(中略)野党間選挙連合を形成する(急進党,社会党,市民連合,南プロジェクト,GEN及びLibres del Surの)6つの全国政党は,新しい選挙連合に名前を付け,選挙戦に出られる状態にある。」

 

(ウ)(全国規模の野党間選挙連合の構図は,各州レベルでは如何に影響しそうかという質問に対し,)「(亜では)各州ごとに異なった世界があるため,それは簡単な問題ではない。各州ごとに(存在する各党の)自治権を尊重しなければならないが,他方で,権限と確信を持って,この全国レベルの野党間合意という傘を各州に広げなければならない。全てが挑戦である。」

 

(エ)(急進党はペロニズムの分裂に直面しているが,これは急進党に如何に影響を与えるか,という質問に対し)「ペロニズムの分裂は,均衡についての新たな条件をもたらす。なぜなら,場合によっては,(有権者の)3分の1が非ペロニズム系の選挙連合に結集し,我々(非ペロニズム系選挙連合)が(大きく2つに分裂したペロニズムとともに)三つ巴の戦いに突入し,その結果,我々が(ペロニズム系の一派との)決選投票に突入できる可能性が出てくるからである。2015年の大統領選挙に関する第一のニュースは,決選投票が行われるということである(注:第1位の大統領候補が有効票の45%以上を獲得するか,又は40%以上を獲得し且つ次点候補に10ポイント以上の差をつけた場合には当選が確定するが,これ以外の場合は,上位2候補による決選投票が実施される)。そして第二のニュースは,どの党(選挙連合)が勝とうと,議会では過半数を取れないということである。

 

(オ)(サンス党首は大統領候補になる決意を固めているか,という質問に対し)「完全に覚悟を決めている。自分(「サ」党首)は主役を務め,戦う。自分はやりたい。(中略)急進党が複数の候補者を有していることが価値のないこととして捉えられるべきではない(注:急進党内では,第一次フェルナンデス政権の副大統領を務めたコボス現下院議員も大統領候補になることを狙っていると報じられている)。」

 

(カ)(中道右派政党「共和国提案」(PRO)の)マクリ・ブエノスアイレス市長の動向に関して(注:マクリ市長も2015年の大統領選挙を狙っていると報じられている))「いずれマクリ市長は(反政府系のペロニスタ連合である「刷新戦線」の)マサ下院議員と組んで予備選挙に出馬するか,または我々(非ペロニズム系選挙連合)と組んで選挙に出馬するかを決断するだろう。」

 

 

3 外交

 

(1)日本

 

 20日〜21日にかけて,ウリバリ・エントレリオス州知事が訪日し,長島日本貿易振興機構(JETRO)理事との会合,小里農林水産大臣政務官表敬,日本柑橘輸入協会訪問,NEC本部訪問,愛知県のトヨタ社工場見学等を行った。

 

(2)フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題

 

(ア)フェルナンデス大統領のフランス訪問時の発言

 19日,フランス訪問中にオランド仏大統領と会談したフェルナンデス大統領は,「決断の時に,ダブルスタンダードを持つべきではないというのは基本的なことであり,クリミアの領土の一体性に賛成するのであれば,『常に亜に属していた』マルビナス諸島についても領土の一体性を考慮すべきである」と述べ,フォークランド(マルビナス)諸島に対する亜の立場を強調した。

 

(イ)スアイン筆頭外務副大臣のタイ訪問時の発言

 21日,タイを訪問したスアイン筆頭外務副大臣は,シーハサック・プアンケートケーオ・タイ外務次官と会合し,貿易拡大,人権促進・保護,西語教育促進,大学間協力を含む二国間関係に関して話し合った。また,同会合にて,スアイン筆頭外務副大臣は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し言及し,英国による南大西洋地域の軍事化及び,同地域での不法な天然資源採取に対する懸念を表明した。

 

(ウ)スアイン筆頭外務副大臣のベトナム訪問時の発言

 25日,ベトナムを訪問したスアイン筆頭外務副大臣は,ホー・スアン・ソン・ベトナム外務次官と会合し,国連決議基づくフォークランド(マルビナス)諸島領有権問題の交渉による平和的解決へのベトナムからの支持に対し,亜政府及び亜国民からの謝意を表明した。

 

(エ)スアイン筆頭外務副大臣のシンガポール訪問

 27日,シンガポールを訪問したスアイン筆頭外務副大臣は,Chee Wee Kiongシンガポール外務副大臣と共に,第1回二国間政策協議を開催した。また,両国外務副大臣は,ラテンアメリカ地域及び東南アジア地域情勢に関する協議,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する意見交換を行った。また,国連決議及び国際法遵守の観点から,同問題が,交渉により平和的に解決される必要性に関し一致した。

 

(オ)スアイン筆頭外務副大臣の東ティモール訪問

 29日,東ティモールを訪問したスアイン筆頭外務副大臣は,ルアク東ティモール大統領と会談した。同会合にて,ルアク大統領は,亜の協力につき,フェルナンデス大統領への謝意を表明した。また,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,国連決議に基づく亜・英国間の交渉を支持する旨再表明した。

 

(3)ウクライナ問題

 

(ア)国連での投票

 15日に開催された国連安全保障理事会にて,亜は,ロシアによるクリミア併合を無効とする決議案に賛成票を投じた。他方,27日,国連総会での決議案採決に際し,亜をはじめとするメルコスールの創設メンバー(アルゼンチン,ブラジル,パラグアイ,ウルグアイの4ヵ国)は,同決議案に対し棄権票を投じた。一部では,亜政府の投票態度は,政府の立場の一貫性のなさを示すものであるという批判の声が上がったが,亜政府は,国連安全保障理事会開催時には,ウクライナ情勢が特に緊迫した状態にあり,暴力を伴う事態に発展する重大な危険が迫った状況で,決議案の検討を行ったが,国連総会で提案された(決議案の)テキストは,ウクライナの内政上の権利に対し国際社会が加えた解釈に基づいた文言を含むもので,右は,同国における内政不干渉の原則に合致しないものであった為棄権した旨説明した。

 

(イ)プーチン露大統領からの電話 

 外務省プレスリリースによれば,25日午前10時(当地時間),プーチン露大統領より,フェルナンデス大統領に電話連絡があった。なお,右電話連絡については,21日に,在亜露大使館から(亜外務省に)要請があった。プーチン露大統領は,フェルナンデス大統領とウクライナ問題に関し話をし,クリミア問題に対する亜政府の立場を認めた。また,プーチン露大統領は,幾つかの国々が国連憲章の原則に関しダブルスタンダードを使っている問題を,同クリミア問題に関する議論に含めるべきであるという亜の姿勢の重要性を強調した。

 フェルナンデス大統領は,亜は,建設的な対話を妨げることにしかならない制裁適用の効果のなさを訴えると同時に,紛争の平和的解決を提案し続けていく旨述べた。

 

(4)ベネズエラ

 

(ア)ベネズエラ情勢に関するフェルナンデス大統領発言

 1日,フェルナンデス大統領は,第132回国会開会式での一般教書演説において,ベネズエラ情勢に関し,「自分(「フェ」大統領)は,ベネズエラ政府やニコラス・マドゥーロ大統領を弁護しに来たのではなく,一つの国の民主主義システムを弁護しに来たのだということをここに明言する。我々は,ボリビアやエクアドルで同様の事態が発生した際にも同じようなことをしてきたし,左からであろうが,右からであろうか,真ん中や奥の方からであろうが,同様の事態が域内各国で発生した際には,やはり同じ行動に出る。民主主義は,右派でも左派でもなく,民意を尊重することだと申し上げたい。(ベネズエラの)野党勢力は,(クーデターを試みるのではなく,政治制度に基づき意志を表明することができる時期を)待つべきである」と述べ,同国における民主主義システムを擁護する旨強調した。

 

(イ)チャベス前大統領一周忌

 5日,ベネズエラで行われたチャベス前ベネズエラ大統領の一周忌には,フェルナンデス大統領は出席せず,ブドゥー副大統領,ティメルマン外務大臣及びドミンゲス下院議長が出席した。

 

(ウ)ティメルマン外務大臣のチリ訪問

 バチェレ新チリ大統領就任式に出席するフェルナンデス大統領に同行したティメルマン外務大臣は,11日,ハウア・ベネズエラ外務大臣と会合し,亜は翌12日に開催されるUNASUR外務大臣会合において,亜は「UNASURは,ベネズエラ情勢に関し協議するのに適当な機関ではあるが,マドゥーロ・ベネズエラ大統領が言っているように,選挙による結果を尊重する」という立場を表明する旨伝えた。

 

(5)フランス

 

 本年2014年が,長期に亘りフランスで暮らした亜人作家フリオ・コルタサルの生誕100周年にあたることで,仏政府より,パリ図書展へ「名誉招待客」として招待を受けたフェルナンデス大統領は,18日〜20日にかけてフランスを訪問し,同図書展開会式への出席の他,オランド仏大統領との会談,エロー仏首相との会談,ド・マルジュリ・トタル社社長との会合,軍事博物館及びナポレオン廟のあるアンヴァリッド(国立廃兵院)にて開催された式典出席等の公務を行った。

 なお,19日に仏大統領官邸エリゼ宮にて実施されたオランド仏大統領との会談にて,両国首脳は,亜の抱える債務返済問題,パリクラブ交渉,亜仏二国間貿易等の二国間経済関係,ウクライナ情勢をはじめとする国際問題等について協議した模様。

 

(6)チリ

 

 10日〜11日にかけて,フェルナンデス大統領は,バチェレ新チリ大統領就任式出席の為チリを訪問した(ティメルマン外務大臣を始め,様々な政党関係者により構成される亜代表団が同行)。10日,フェルナンデス大統領は,バチェレ新チリ大統領と会談し,亜・チリ国境地域での通行,チリのサンティアゴと亜のメンドサ間をつなぐ鉄道の建設等に関し言及した亜・チリ二国間統合協力協定「マイプ条約」(2009年署名)の主要ポイントに関する協議を進めることで一致した。また,同日夜,フェルナンデス大統領は,他の中南米諸国の首脳と共に,ピニェラ前チリ大統領主催の晩餐会に出席。11日に,バチェレ新チリ大統領就任式及び昼食会に出席した後帰国した(ティメルマン外務大臣は,サンティアゴで開催されたUNASUR外務大臣会合出席の為,12日まで滞在)。

 

(7)米国

 

(ア)2015年大統領選挙の有力候補の米国訪問

 (i)マサ下院議員

 24日〜28日にかけて反政府派のペロニスタで,2015年の大統領選挙の有力候補とされているマサ下院議員(「刷新戦線」(Frente Renovador))が, 米国要人との会合,米州評議会への出席等を目的に,米国のワシントン及びニューヨークを訪問した。今次訪問中,マサ下院議員は,24日,米国務省にて,ジェイコブソン米国務次官補(西半球担当)及び,麻薬取引取締に関連する主要関係者と会合し,麻薬取引取締等に関し協議した他,27日には,ニューヨークにて,ルドルフ・ジュリア−二元ニューヨーク市長(同元市長は,マサ下院議員がティグレ市長を務めていた昨年10月の亜の国会議員選挙の直前に,ティグレ市を訪問している)と会合し,亜における治安問題及び刑法改正について話しあった。また,27日夜の米州評議会の場では,企業家らを前に,2015年12月10日に予定されている次期大統領就任式までの日数である623という数字を取りあげ,「亜には終末を迎える政治サイクルがある。民主主義の息子たちが亜の将来の政治を築く責任者となり,ここから新たな段階が始まる」と述べるに留まり,2015年大統領選挙への出馬に関する直接的な言及は避けたものの,モルガン・スタンレー主催のクローズドの会合に出席した出席者の1人が,ラ・ナシオン紙に話したところによると,同会合にてマサ下院議員は,自らが亜の政治的変換を主導する意思を表明したのみでなく,次期大統領選挙で(第1回選で決着がつかずに)決戦投票が行われることはない,第1回選は(8月に)予備選挙なのだから(ママ)と述べた由。

 

 (ii)その他の有力候補の動き

  (a)マクリ・ブエノスアイレス市長は20日,NYにおいてヒラリー・クリントン女史を主賓とする米国ユダヤ人会議主催の夕食会に出席した他,Jack Rosen同会議長との会合,主要銀行のエコノミスト等との会合,アルゼンチン人企業家との会合などを行った。

  (b)ウルトゥベイ・サルタ州知事は25日,ミチェッティ上院議員(PRO)及びストルビツェルGEN党首と共に,NYにおいて米州評議会の公開討論会及び投資家との昼食会に参加した他,ハーバード大学で講演した。

  (c)なお,シオリ・ブエノスアイレス州知事は2月12日にNYを訪問し,米州評議会での講演,同評議会参加企業40社との会合,アルゼンチン人エコノミスト,その他投資家との会合を行っている。

 

(イ)米国務省による麻薬取引状況に関する報告書

 2日,米国務省は,世界の麻薬取引状況に関する報告書を発表し,亜国内における麻薬消費の増加が,暴力を伴う犯罪の増加に関係している可能性があるとした。また,2013年には,麻薬取締に向けた亜政府の努力が見られたものの,小規模ではあるが,コカイン生産量の増加傾向も見られることから,亜政府は,より多くの資金と人材を麻薬取締に注ぐ必要があるとした。右報告書に対し,5日,ティメルマン外務大臣は,米国は他国の政府に対する評価報告書を発出する権限を有していないと理解している旨述べると同時に,米国は世界の中心的薬物市場になっている旨強調した。麻薬関連犯罪の増大は,最近,アルゼンチンでは非常に問題となり,多くの報道がなされている。

 

(8)バチカン

 

 17日,バチカンを訪問したフェルナンデス大統領は,フランシスコ・ローマ法王と,同法王の宿舎である「カサ・サンタ・マルタ」にて,昼食をとりながら,約2時間半に亘り会合した。フェルナンデス大統領によると,同会合は非常に和やかな雰囲気の中で行われ,フランシスコ法王は,南米及び世界情勢,各地で発生している紛争について分析し,特に欧州地域での若者の雇用と失業率の高さに懸念を示した。右に対し,フェルナンデス大統領は,亜では,教育課程を修了していない若者を対象とした社会包摂プログラムを実施したところ,2013年第4四半期には,失業率はここ10年間で最も低い数値(注:6.4%)を記録した旨説明した。また,フェルナンデス大統領によると,フランシスコ法王は,地域の国々が統合と連帯を維持し,定期的に対話の機会を設けることの重要性を強調した由。

 

(9)イラン

 

(ア)第132回国会開会式でのフェルナンデス大統領演説

 1日,第132回国会開会式での一般教書演説にて,フェルナンデス大統領は,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決に向けた亜・イラン二国間覚書に関し,同覚書は「(本件解決に向けた)最良の方法である」と述べつつも,イラン政府からの回答が未だ得られていないこと認めた。また,同大統領は,本件に関するイラン政府との交渉を容易にする別の方法があれば提案して欲しいと発言し,右発言により一部反政府派議員からは,フェルナンデス大統領が二国間覚書の失敗を認めたと解釈された。

 

(イ)覚書廃止の要求

 2日,在亜イスラエル協会(DAIA)は,同覚書の廃止を議会に求める為に,50万人の署名を集めた「大衆のイニシアティブ」を提出するつもりであると発表した。同DAIA発表は,一部の反政府派議員の支持を集め,18日,反政府派の両院議員は,再度,同覚書の廃止を要請することで一致した。右に対し,20日,ティメルマン外務大臣は,「国会で,フェルナンデス大統領は,反政府派より,より良い提案があるのなら検討する準備があると述べたが,反政府派からの提案はなかった。亜イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に関する問題を政治目的で操作しようとするのは大きな誤りである」と述べ,覚書廃止を求める反政府派両院議員からの要求を拒絶した。

 

(ウ)在亜イスラエル大使館爆破事件追悼式典

 18日,1992年3月17日に発生し,死者29名を出した在亜イスラエル大使館爆破事件の22周年追悼式典が開催され,ショアム・イスラエル外務省ラテンアメリカ担当及びシャビト駐亜イスラエル大使が,反テロ対策の必要性を訴えると同時に,国際社会及び亜政府に対し,テロ行為に資金援助をしたイランに対抗する為に団結するよう要請した(当初,同追悼式典に出席する為に,エルキン・イスラエル外務次官の訪亜が予定されていたが,キャンセルされた)。また,ショアム・イスラエル外務省ラテンアメリカ局次長は,亜司法・人権省のこれまでの取り組みを讃えると同時に,本件解決に向けた調査に進展が見られないことを遺憾に思う旨発言した。亜側からは,アラク司法・人権大臣,スアイン筆頭外務副大臣等が同式典に列席した。

 

(エ)マサ下院議員と世界ユダヤ人会議(WJC)関係者の会合

 27日,米国訪問中のマサ下院議員は,ジャック・ローゼン米国ユダヤ人会議会長と会合した。また,28日のソマーズ世界ユダヤ人会議(WJC)米州局長との会合の際には,ソマーズ局長より,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件解決に向けた亜・イラン二国間覚書に対する懸念が表明された。

 

(10)ウルグアイ

 

 13日,亜を訪問したアルマグロ・ウルグアイ外務大臣は,ティメルマン外務大臣と会合した。2時間以上に及んだ会合後,両国外務大臣は,「コストを下げ,輸出品の出荷を容易にする」目的で,マルティン・ガルシア運河の浚渫(深さ34フィート)を進めることで合意した旨共同発表を行った。また,ウルグアイ河の浚渫を開始し,「ウルグアイ河への国際橋建設を目的とした技術面・経済面・環境面でのフィージビリティー調査」実施の為,入札を行うことについても解決した旨説明した。

 

(11)ペルー

 

 25日,ペルーを訪問したマクリ・ブエノスアイレス市長は,ウマラ・ペルー大統領と会談し,ラテンアメリカの現状及びブエノスアイレスのペルー人コミュニティーに関し40分以上に亘り協議した。また同会合にて,マクリ市長は,2015年に実施される次期大統領選挙に出馬する意向を述べた。

 

(12)エルサルバドル

 

 18日,亜外務省は,3月16日に選挙最高裁判所により正式に当選が発表されたサンチェス・セレン大統領及びオスカル・オルティス副大統領に対し,祝意を表明するプレスリリースを発出した。

 

(13)要人往来

 

(ア) 往訪

 

3日 ティメルマン外務大臣のスイス訪問(第25回国連人権理事会出席)
5日 ブドゥー副大統領,ティメルマン外務大臣,ドミンゲス下院議長のベネズエラ訪問(チャベス前大統領の一周忌式典出席)
5日 マジョラル鉱業長官のカナダ訪問(2014年カナダ探鉱・開発協会総会(PDAC)出席)
7日 ティメルマン外務大臣の米国訪問(ウクライナ問題に関する国連安全保障理事会理事国会議出席)
9日 ブドゥー副大統領のボリビア訪問
10日〜11日 フェルナンデス大統領及びティメルマン外務大臣のチリ訪問(バチェレ新チリ大統領の就任式出席。ティメルマン外務大臣は12日まで滞在)
10日〜11日

バラニャオ科学技術大臣のベルギー及びポルトガル訪問

12日 ティメルマン外務大臣のチリ訪問(UNASUR外務大臣会合出席)
13日 メイヤー観光大臣のドイツ訪問(亜使節団の長としてベルリン観光市出席)
16日 ウリバリ・エントレリオス州知事の中国訪問
17日 フェルナンデス大統領のバチカン訪問
19日〜20日 フェルナンデス大統領のフランス訪問
19日〜22日 バラニャオ科学技術大臣のフランス訪問
20日〜21日 ウリバリ・エントレリオス州知事の訪日
21日 スアイン筆頭外務副大臣のタイ訪問
24日〜25日 ブドゥー副大統領のオランダ訪問(核安全保障サミット出席)
24日 トマーダ労働大臣のスイス訪問
25日 ティメルマン外務大臣のベネズエラ訪問(ベネズエラ情勢に関する協議を目的としたUNASUR外務大臣会合出席)
25日 スアイン筆頭外務副大臣のベトナム訪問
25日 ロッシ国防大臣のチリ訪問(2014年FIDAE国際展示会出席)
27日 スアイン筆頭外務副大臣のシンガポール訪問
28日〜29日 カピタニッチ官房長官及びキシロフ経済・財政大臣のブラジル訪問(第55回米州開発銀行(BID)総会出席)
28日 ガルッチオYPF社長・CEOのマレーシア訪問
27日〜28日 ティメルマン外務大臣,ジョルジ産業大臣,カサミケラ農牧・漁業大臣のメキシコ訪問
29日 スアイン筆頭外務副大臣の東ティモール訪問
31日 ブドゥー副大統領のスペイン訪問(スアレス元西大統領葬儀列席)

 

(イ)来訪

 

(以下の日程で下記要人が当地で会談等を実施したとの情報あり)

 

10日 ポンス・エクアドル農業大臣
13日 ロドリゲスUNASUR事務局長
13日 アルマグロ・ウルグアイ外務大臣
13日 国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)オノレ代表
14日 ボルヘス伯開発大臣及びガルシア・ルセーフ伯大統領特別顧問(国際問題担当)
18日〜19日 ゴメス・オレア西外務省イベロアメリカ局長
21日 オスティック米国務省西半球問題代表(南米南部担当)