アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和2年1月15日

アルゼンチン政治情勢(2019年12月)

2020年1月作成
在アルゼンチン日本大使館
 
1 内政
(1)大統領府・政府
ア マクリ大統領(当時,以下同じ)による国民へのメッセージ
 5日,マクリ大統領は国営チャンネルを通じ,退任を前に自身の政権を振り返るメッセージを発出した。放送は録画によるもので,経済政策においては十分な成果を上げられなかったことに触れたほか,行政組織や治安の面での改善が見られたこと等への言及があった。また,7日には,5月広場にてマクリ大統領支援者による大統領送別集会が開催され,多数の市民が集まった。
 
イ 新政権閣僚の発表
 6日,アルベルト・フェルナンデス次期大統領(当時)は,新政権の閣僚を発表した。新たに女性・ジェンダー・多様性省,観光・スポーツ省等が設置され,20省に再編された(各大臣の任命は12月11日付官報で公布)。
 
ウ フェルナンデス大統領の就任と新政権発足
 10日,連邦議会下院でアルベルト・フェルナンデス新大統領(第54代大統領)の就任式が実施され,マクリ大統領から大統領綬と杖が引き継がれた。同就任式には,日本から山本幸三特派大使が出席したほか,バスケス・ウルグアイ大統領,ラカジェ・ポウ・ウルグアイ次期大統領,アブド・ベニテス・パラグアイ大統領,ディアスカネル・キューバ大統領,アザール米保健福祉長官,コザック米国務次官補代行,アルケン・イミルバキ中国全人代常務委員会副委員長等の各国代表,亜国会議長,最高裁長官,国会議員及び州知事等国内各界代表が列席した。
 その後,同大統領率いる新政権は,中絶にかかる新規則,医薬品値下げ・価格凍結にかかる国内メーカーとの合意,会社側都合による解雇補償金の2倍ルール(180日間の限定措置),空腹対策のための食料カード配布,輸出税増額,一般子ども手当及び年金受給者への一時金支給等の施策を矢継ぎ早に打ち出したほか,緊急経済対策としての「社会連帯・生産活性化法案(以下1(2)イ参照)」を議会に提出した。
 
エ 州知事就任式への大統領・副大統領の出席
 11日,ブエノスアイレス州知事就任式が実施され,キシロフ州知事が就任した。同式典には,アルベルト・フェルナンデス大統領及びクリスティーナ・フェルナンデス副大統領が出席した。アルベルト・フェルナンデス大統領は,同日実施されたサンタ・フェ州及びエントレ・リオス州知事就任式にも参加した。
 
オ 経済社会委員会設立のための企業及び組合等との合意書署名
 27日,フェルナンデス大統領は,企業,組合,市民社会等で構成される経済社会委員会結成のために,関係団体との合意書に署名した。同委員会結成は,今後国会で審議される予定。
 
カ クリスティーナ・フェルナンデス副大統領のキューバ渡航
 28日,クリスティーナ・フェルナンデス副大統領は療養中の子女と年越しのため,キューバに渡航した。2019年では8回目の渡航であり,2020年1月12日まで滞在した。
                                           
(2)国会
ア 新国会議員の就任
 10日,議会上院及び下院において今次選挙で当選した議員が新たに就任した。
 
イ 社会連帯・生産活性化法(法律第27541号)の成立
 17日,政府は議会下院に「社会連帯・生産活性化法案」を提出した。同法案は,20日に下院で可決された後,21日に上院で可決・成立し,23日に官報で公布された。本法により,歳入増のための個人資産への課税,海外でのクレジットカード支払いへの30%課税,輸出税の引き上げ,年金額等の自動改定の180日間の停止等の措置が取られることになる。
 
(3)司法
ア クリスティーナ・フェルナンデス副大統領(元大統領)によるサンタ・クルス州公共事業汚職事案に関する供述
 2日,フェルナンデス副大統領(元大統領)をはじめとする政府及び企業関係者が,入札に関し不正を働いたとするサンタ・クルス州の道路公共事業に関する汚職事案についての公判で,同副大統領が供述を行った。
 
(4)その他
ア ホロコースト博物館の再開
 1日,修復中であったホロコースト博物館が再開された。開館式にはマクリ大統領,ビダル・ブエノスアイレス州知事(当時),ラレタ・ブエノスアイレス市長等与党(当時)「変革のために共に」の中心メンバーの他,エドゥワルド・デ・ペドロ下院議員(当時),マンスール・トゥクマン州知事,サモラ・サンティアゴ・デル・エステロ州知事,マサ次期院議員(当時)等野党(当時)関係者も出席した。
 
イ 現組合長反対派によるUTA事務所の占拠
 16日,バス運転手などで構成される労働組合UTAの事務所を現フェルナンデス組合長の反対派が暴力的に占拠する事件が起きた。占拠はバスを運行する会社の一つであるDOTAという会社の組合員を中心としたストに端を発したもので,けが人や逮捕者が出るに至った。
 
2 外交
(1)日本: 山本幸三特派大使の大統領就任式出席
 10日に実施されたフェルナンデス大統領就任式に山本特派大使が出席した。同特派大使は,大統領就任式出席の他,マサ下院議長,ソラー外務大臣,グスマン経済大臣,ベリス戦略長官等新政権関係者と会談した。
 
(2)米国:政府代表者の大統領就任式への出席とフェルナンデス大統領との昼食会
 11日,大統領就任式出席のため訪亜したコザック米国務次官補代行は,アルベルト・フェルナンデス大統領と昼食を共にした。外務省プレスリリースは,米が亜のIMFとの交渉を支持する旨を伝えたと報じた。
 
(3)中国:アルケン・イミルバキ特使の大統領就任式への出席
 10日の大統領就任式への特使であるアルケン・イミルバキ全人代常務委員会副委員長は,9日アルベルト・フェルナンデス次期大統領と面談した。また,同特使は,10日の大統領就任式終了後,クリスティーナ・フェルナンデス副大統領とも会談した。
 
(4)ブラジル:
ア マクリ大統領のメルコスール首脳会議出席
 5日,マクリ大統領は,ブラジルのベント・ゴンサルベスで開催されたメルコスール首脳会合に出席した。本会合は,大統領としての最後の外遊となった。これに先立つ4日,フォリー外務大臣(当時)及びシカ生産・労働大臣(当時)はメルコスール理事会へ出席した。
 
イ モラウォン伯副大統領の大統領就任式出席
 10日に実施された亜大統領就任式に,モラウォン伯副大統領が出席した。
 
ウ ソラー外務大臣とアラウージョ伯外務大臣とのテレビ会談
 26日,ソラー外務大臣はテレビ会議を通じてアラウージョ伯外務大臣と会談した。1時間半に及ぶ会談中,アラウージョ伯外務大臣はソラー外務大臣に対し,1月末のブラジル訪問に招待した。
 
(5)ロシア:大統領就任式への特派大使の出席
 10日,Konstantin Kosachevロシア議会国際問題委員会委員長は,特派大使として大統領就任式に出席し,同就任式終了後,クリスティーナ・フェルナンデス副大統領と面談した。
 
(6)スペイン: マクリ大統領のCOP25出席
 2日,マクリ大統領は,マドリードで開催されたCOP25に出席しスピーチを行った。関連して同大統領は,サンチェス首相や各国首脳との昼食やフェリペ国王のレセプションにも出席した。
 
(7)ボリビア: モラレス前大統領の政治亡命
 12日,モラレス前ボリビア大統領がアルゼンチンに政治亡命のため到着した。メキシコに滞在していた同前大統領は,キューバからエセイサ空港に到着後,モンターニョ前保健大臣等政権関係者と亡命申請の手続きを開始した。モラレス前大統領は,15日,大統領公邸でフェルナンデス大統領と夕食を共にした。
 
(8)ベネズエラ:ロドリゲス通信大臣(マドゥーロ体制側)の大統領就任式への出席
 10日,ロドリゲス通信大臣は,大統領就任式に出席した。
 
(9)要人往来
 ア 往訪
●2日 マクリ大統領のマドリード訪問(COP25出席)
●4~5日 フォリー外務大臣(当時)及びシカ生産・労働大臣(当時)のブラジル訪問(メルコスール理事会及び首脳会合出席)
●5日 マクリ大統領のブラジル訪問(メルコスール首脳会合出席)
   
 
 
イ 来訪
●10日 山本幸三特派大使,バスケス・ウルグアイ大統領,ラカジェ・ポウ次期ウルグアイ大統領,アブド・ベニテス・パラグアイ大統領,ディアスカネル・キューバ大統領,モラウォン伯副大統領,アザール米保健福祉長官,コザック米国務次官補代行,コレア元エクアドル大統領(大統領就任式出席)
●12日~ モラレス・ボリビア前大統領(政治亡命)
                                   (了)