アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
平成30年10月22日
アルゼンチン政治情勢(2018年9月)
2018年10月作成
在アルゼンチン日本大使館
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア マクリ大統領による経済情勢を踏まえての亜国民に対するメッセージ発出
3日午前,マクリ大統領は,亜国民に対して,約25分のメッセージ(録画)を発出し,IMFとの支援プログラム再交渉に言及しつつ,閣僚数削減等を含む,財政健全化をさらに推し進める旨述べた。
イ 省庁再編
3日,マクリ大統領の亜国民に対するメッセージ(上記1(1)ア)を受けて,閣僚数の削減を伴う省庁再編が発表された。この措置により,省庁は19省から10省((1)内務・公共事業・住宅省,(2)外務・宗務省,(3)国防省,(4)財務省,(5)生産・労働省,(6)運輸省,(7)司法・人権省,(8)治安省,(9)保健・社会開発省,(10)教育・文化・科学技術省に再編された。なお,今次省庁再編に伴い,吸収された省庁の大臣は,新たに新設された国務大臣として全て留任した。
ウ 2019年の財政収支均衡前倒し達成に向けた政策パッケージの発表
3日,マクリ大統領のメッセージ(上記1(1)ア)を受け,ドゥホブネ財務大臣は,2019年の財政収支均衡前倒し達成に向けた政策パッケージを発表した。これにより,基礎的財政収支の均衡を1年前倒して2019年に達成(―1.3%からゼロへ)すべく,更なる歳出削減(主に公共事業の削減:GDP比0.7%相当),交通機関やエネルギー関連の公共サービスの補助金削減(公共料金の値上げ,国から州政府への移管)(同0.5%)),2020年までの暫定的な輸出税導入(1.1%相当の歳入増)等が実施される。一方,同措置によって影響を受ける貧困層への対策維持・強化も盛り込まれた(一時金の支給や貧困層向け無償食堂の強化等)。
エ 2019年政府予算案の提出
17日,ドゥホブネ財務大臣は,2019年予算法案を議会下院に提出した。3日に発表された政策パッケージ(上記1(1)ウ)に従い,同法案は,歳入は3兆7,213億ペソ(対前年比+41.8%),一次歳出は3兆7,213億ペソ(同+24.5%)と基礎的財政収支を均衡させる内容となった(なお,債務償還費を含む歳出総額は4兆3,173億ペソ(同+27.4%)となっており,総合収支は▲5,961億ペソ(同▲22.1%)の赤字)。
オ カプート中銀総裁の辞任とサンドレリス新総裁の就任
25日午前,中銀は,カプート総裁が個人的な事情を理由として辞職する旨発表した。これを受けて,大統領府は,その後任としてギド・サンドレリス(Guido Martin Sandleris)財務副大臣(経済政策担当)を充てることを発表した。
カ IMF再交渉スタッフレベル合意及び新たな金融政策の発表
26日,ドゥホブネ財務大臣はNYにおいて,ラガルドIMF専務理事と共同記者会見を行い,IMFとの再交渉がスタッフレベルで合意に至った旨発表した。これにより,融資額の増加(71億ドル増の571億ドル)の他,2019年末までの融資の前倒し(約190億ドル)等が認められることとなった。
また,同日,サンドレリス亜中銀総裁は,新たな金融政策の枠組み(10月1日より適用)について記者会見を行い,(1)金融政策目標をインフレ率からマネタリーベースに変更,(2)1ドル34-44ペソの為替非介入バンドの設定(上回る場合は1日1.5億ドルの為替介入を実施),(3)インフレ下降の兆候が見えるまでは政策金利を60%から引き下げない,とするといった政策を発表した。
(2)司法・検察:
ア 最高裁長官の交代
11日,最高裁判所総会(最高裁長官及び最高裁判事4名の合計5名で構成)において,ロレンセッティ最高裁長官が10月1日付で辞任し,同日,新たにローセンクランツ最高裁判事が長官に就任することが決定された。
イ 「賄賂ノート」汚職事案:フェルナンデス前大統領等の訴追等
本年8月1日以降取り沙汰されている前政権の政府高官元運転手が書き記した「賄賂ノート(los cuadernos de las coimas)」による汚職疑惑に関し,17日,ボナディオ連邦裁判所判事は,故キルチネル大統領及びフェルナンデス前大統領が,この一連の賄賂の徴収及び受取りを指揮したとして,同前大統領を訴追すると共に,未決勾留及び40億ペソの差押えを行う決定を下した(注:上院議員である同前大統領には,不逮捕等の議員特権があるため,上院の承認なしに未決勾留等が執行されるわけではない。また,同前大統領は他に6件の容疑でも訴追を受けている)。また,同判事は,同様の容疑で他に合計41名の元政府高官及び企業家に対しても訴追を行った。
(3)その他:労組等によるゼネストの実施
25日,労働総同盟(CGT)及びCTA(亜労働者連盟)は,マクリ政権の財政再建政策やIMFとの合意に反対して,24時間のゼネストを実施した。公共交通機関,タクシー(一部)の他,空港,湾岸,銀行,病院(緊急対応のみ受付)等の労組団体がゼネストに加わったため,大都市では市民の生活や経済活動に対する影響が出た。なお,今次ゼネストは,マクリ政権下では4回目((1)2017年4月6日,(2)2017年12月18~19日,(3)2018年6月25日)。
2 外交
(1)日本:北海道胆振東部地震に関する亜外務省プレスリリース
7日,亜外務省は,6日に北海道胆振東部を襲った地震に関し,哀悼と連帯の意を示すプレスリリースを発出した。
(2)米国:
ア マクリ大統領とトランプ米大統領との電話会談
4日,マクリ大統領は,トランプ米大統領と15分以上の電話会談を行った。両首脳は,ワシントンにおいて両国の経済チームによって行われる会合に関する意見交換を行った他,トランプ大統領は,マクリ大統領の招待を受入れ,ブエノスアイレスG20サミットの機会に同国へ公式訪問を行う旨表明した。
イ マクリ大統領の第73回国連総会出席
23~25日,マクリ大統領は第73回国連総会出席のため米国(NY)を訪問し,一般討論演説を行った他,トランプ米大統領主催レセプション,メルコスール首脳会合及びグローバル市民賞受賞式(2016年に安倍総理も同賞を受賞)へ出席,またサンチェス西首相やカネル・キューバ国家評議会議長等と会談を行った。
また,今次マクリ大統領訪米に同行したフォリー外務大臣は,メルコスール・シンガポール外相会合,リマ・グループ会合,ベネズエラ移民に関するハイレベル会合等に出席した他,サリバン米国務副長官等と会談を行った。
ウ 米共和党及び民主党議員団のアルゼンチン訪問
19日,マクリ大統領は,アルゼンチンを訪問したエドワード・ロイス米下院外交委員会委員長(共和党)率いる米超党派議員団の表敬訪問を受けた。米議員団からは,マクリ政権による改革への支持や亜のOECD加盟プロセスへのサポートが表明された。
(3)ドイツ:マクリ大統領とメルケル独首相との電話会談
12日,マクリ大統領はメルケル独首相と約15分間電話会談を行った。メルケル独首相より,亜が実施している改革プロセス,特にIMFとの交渉を支持する旨表明があった。また,両首脳は,EU・メルコスールFTA交渉やG20サミットのアジェンダ等について意見交換を行った。後者に関し,メルケル独首相より,本年11月末のブエノスアイレスG20サミットへ出席する旨言及がなされた。
(4)ベネズエラ:ベネズエラ情勢に係る国際刑事裁判所への付託
26日,亜外務省は,プレスリリースを発出して,亜,加,コロンビア,チリ,パラグアイ及びペルーの6か国が,2014年2月12日以降,ベネズエラにおいて行われたとされる人道に対する罪について,国際刑事裁判所(ICC)に対し,捜査の開始を要請する書簡を発出した旨発表した。
(5)アゼルバイジャン:亜アゼルバイジャン政策協議の実施
11日,当地において,亜アゼルバイジャン政策協議が実施された。亜より,ライモンディ筆頭外務副大臣が,アゼルバイジャンよりKhalafov外務副大臣が出席した。双方は,両国間の様々なアジェンダについて協議を行った他,11月8日に,両国の外交関係樹立25周年記念式典を行うことで一致した。
(6)G20:
ア G20教育大臣会合・雇用大臣会合及び合同会合
5~7日,メンドーサにおいて,G20教育大臣会合・雇用大臣会合及び合同会合が開催された。これら会合には,日本より,それぞれ林文部科学大臣,牧原厚生労働副大臣等が出席した。
イ G20貿易・投資大臣会合
14日,マル・デル・プラタにおいて,G20貿易投資大臣会合が開催された。同会合には,日本より,中根外務副大臣,平木経済産業政務官等が出席した。
(7)メルコスール:
ア 韓国・メルコスールFTA交渉の実施
11~14日,ウルグアイ(モンテビデオ)において,第1回韓国メルコスールFTA交渉ラウンドが実施された。亜より,ライモンディ筆頭外務副大臣が出席した。
イ メルコスール・カナダFTA交渉の実施
17~21日,カナダ(オタワ)において,第3回メルコスール・カナダFTA交渉ラウンドが実施された。双方は,2019年末までには交渉プロセスの終了を目指して取り組んで行くことで合意した。なお,次回交渉は12月3~4日,ブラジルで開催予定。
(8)EU:ホイヤー欧州投資銀行(EIB)総裁のアルゼンチン訪問
10日,マクリ大統領は,アルゼンチンを訪問したホイヤー(Mr. Werner HOYER)欧州投資銀行(EIB)総裁の表敬を受けた。同総裁は,マクリ政権による改革をサポートしていく旨述べた。
(9)要人往来
ア 往訪
●23~25日: マクリ大統領等の米国(NY)訪問(第73回国連総会出席)
●23~26日: フォリー外務大臣米国(NY)訪問(第73回国連総会出席)
●25~26日: エチェベレ農産業国務大臣の中国訪問
イ 来訪
●4~6日: 林文部科学大臣及びアコスタ米労働長官等(G20教育・雇用大臣
会合等)
●5~7日: 牧原厚生労働副大臣(G20教育・雇用大臣会合等)
●10日: ホイヤー欧州投資銀行(EIB)総裁
●13~15日: 中根外務副大臣,平木経済産業政務官,フォックス英国際貿易大臣
及びペクジャン・トルコ商業大臣等(G20貿易・投資大臣会合)
(了)
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