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2009年6月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2009年7月作成
在アルゼンチン大使館

 

I.概要


(1)内政面では、28日に連邦議会選挙が実施され、与党キルチネル派が、ブエノスアイレス州、ブエノスアイレス市、コルドバ州、サンタフェ州、メンドサ州などの有権者の多い主要選挙区全てで敗北し、全国で約30%の票を獲得するに留まった。同選挙結果を踏まえ、キルチネル前大統領がペロン党党首を辞任し、シオリ・ブエノスアイレス州知事(筆頭副党首)に引き継いだ。また、オカーニャ厚生大臣が辞任し、その後任として、マンスール・トゥクマン州副知事が厚生大臣に任命された。


(2)外交面では、フェルナンデス大統領が、国際労働機関(ILO)年次総会に出席するため、スイス・ジュネーブ訪問した他、タイアナ外相が、大統領就任式、地域・国際会議等に出席するため、エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラ及び米ニューヨークを訪問した。また、キューバ政府から出国許可を得たキューバ人モリーナ医師が訪亜し、約15年振りに亜に住む息子家族と再会した。

 

II.内政


1.連邦議会選挙


(1)28日、上院1/3(8選挙区24議席)及び下院1/2(全24選挙区127議席)の改選連邦議会選挙が実施された。なお、同選挙は4ヶ月前倒しして実施され、12月10日に議席の改選が行われる。


(2)主要5選挙区における暫定選挙結果(内務省発表)は以下の通り。


(イ)ブエノスアイレス州選挙区(下院35議席の改選)(開票率:96.68%)


第1位:UNION-PRO(デ・ナルバエス筆頭候補):     34.58%(13議席)
第2位:勝利のための正義戦線(キルチネル筆頭候補):   32.11%(12議席)
第3位:市民社会合意(ストルビセル筆頭候補):      21.48%( 8議席)
第4位:新たな会合(サバテジャ筆頭候補):          5.56%( 2議席)


(ロ)ブエノスアイレス市選挙区(下院13議席の改選)(開票率:99.65%)


第1位:共和国提案(ミチェッティ筆頭候補):       31.09%(5議席)

第2位:南プロジェクト(ソラナス筆頭候補):       24.21%(4議席)
第3位:市民社会合意(プラット・ガイ筆頭候補):     19.05%(3議席)
第4位:勝利のための人民会合(エレル筆頭候補):     11.63%(1議席)


(ハ)コルドバ州選挙区(上院3議席・下院9議席の改選)(開票率:99.16%)


【上院】


第1位:市民戦線(フエス前コルドバ市長派。フエス筆頭候補):30.63%(2議席)
第2位:急進党(メストレ筆頭候補):           26.70%(1議席)
第3位:コルドバのための団結(現知事派。モンディーノ筆頭候補): 26.05%(0議席)
第4位:勝利のための戦線(アカステージョ筆頭候補):     8.76%(0議席)


【下院】


第1位:急進党(アグアッドゥ筆頭候補):        29.04%(3議席)
第2位:市民戦線(アロンソ筆頭候補):          27.97%(3議席)
第3位:ペロン党(現知事派。フォルトゥーナ筆頭候補): 25.66%(2議席)
第4位:勝利のための戦線(ネブレダ筆頭候補):      9.12%(1議席)


(ニ)サンタフェ州選挙区(上院3議席・下院9議席の改選)(開票率:98.28%)


【上院】


第1位:サンタフェ連邦戦線(レウテマン筆頭候補):   42.26%(2議席)
第2位:市民社会進歩主義戦線(ジウスティニアーニ筆頭候補):  40.59%(1議席)
第3位:勝利のための戦線(レオニ筆頭候補):        7.76%(0議席)


【下院】


第1位:市民社会進歩主義戦線(アルバレス筆頭候補):  39.85%(4議席)
第2位:サンタフェ連邦戦線(ヘルマーノ筆頭候補):     39.84%(4議席)
第3位:勝利のための戦線(ロッシ筆頭候補):        9.56%(1議席)


(ホ)メンドサ州選挙区(上院3議席・下院5議席の改選)(開票率:98.23%)


【上院】


第1位:連邦市民戦線-UCR-CONFE(コボス派。サンス筆頭候補):50.04%(2議席)
第2位:勝利のための戦線(ベルメッホ筆頭候補):      25.20%(1議席)
第3位:民主戦線-PRO(アグイナガ筆頭候補):        14.67%(0議席)


【下院】


第1位:連邦市民戦線-UCR-CONFE(マンスル筆頭候補):  48.40%(3議席)
第2位:勝利のための戦線(フェリックス筆頭候補):     27.03%(1議席)
第3位:民主戦線-PRO(マルチ筆頭候補):          14.40%(1議席)


(3)与党キルチネル派は、全国で約30%の票を得て、全24選挙区の内11選挙区で最多得票率を獲得したものの、ブエノスアイレス州、ブエノスアイレス市、コルドバ州、サンタフェ州、メンドサ州などの有権者の多い主要選挙区全て、また、これまで連勝を続けてきたキルチネル前大統領の出身州であるサンタクルス州でも敗北した。その結果、キルチネル派は、議席数を大幅に減らし、下院では過半数を失うことが確実となり、上院では、ペロン党以外のキルチネル派の動向如何では過半数を失う可能性がある。


(4)他方、急進党・市民連合等による選挙連合「市民社会合意」は、全国5選挙区(カタマルカ州、コルドバ州、エントレリオス州、メンドサ州及びサンタクルス州)で最多得票率を獲得するなど躍進し、議席数を大幅に拡大する結果となった。また、マクリ・デナルバエス・ソラによる選挙連合「Union-Pro」は、ブエノスアイレス州及びブエノスアイレス市の主要2選挙区において、最多得票率を獲得した。

 

2.キルチネル前大統領のペロン党党首辞任


(1)29日、キルチネル前大統領は、自らが筆頭候補として出馬したブエノスアイレス州選挙区における敗北など今次連邦議会選挙の結果を踏まえ、ペロン党党首を辞任し、シオリ・ブエノスアイレス州知事(筆頭副党首)に党首を引き継ぐ旨表明した。


(2)シオリ州知事は、党内の求心力を高めるとともに、より多くの対話を醸成することを約束し、30日以降、全国のペロン党州知事及び市長、モジャーノ労働総同盟(CGT。ペロン党第2副党首)書記長等と会談を行い、今後のペロン党の方向性等について話し合いを進める予定である。

 

3.厚生大臣の交代


(1)29日、オカーニャ厚生大臣が辞表を提出し、フェルナンデス大統領により同辞表は受理された。オカーニャ厚生大臣の辞任の理由は、同大臣がデング熱及び新型インフルエンザ対策を巡り政府内で孤立していたこと、医療保険制度を巡るモジャーノCGT書記長との対立等であると見られている。


(2)7月1日、オカーニャ厚生大臣の後任として、マンスール・トゥクマン州副知事が、正式に厚生大臣に就任した。マンスール新厚生大臣は、外科及び公衆衛生の専門家として知られている。

 

III.外交


1.エルサルバドル


(1)1日、タイアナ外相は、フネス大統領就任式に出席するため、エルサルバドルを訪問した。フネス大統領就任式典おいて、タイアナ外相は、フネス新大統領に対し、フェルナンデス大統領の祝意を伝えるとともに、引き続きエルサルバドルとあらゆる分野で協力していく意向を伝えた


(2)また、同日、タイアナ外相は、アレマン中米統合機構(SICA)事務局長との間で、SICAの会合において、亜国のオブザーバー参加を認める合意書に署名した。

 

2.第39回米州機構(OAS)総会・外相会合


(1)1〜4日、タイアナ外相は、第39回米州機構(OAS)総会・外相会合に出席するため、ホンジュラスを訪問した。第39回OAS総会において、キューバが今後OASの原則等に合致することを条件として、同国のOAS復帰への道筋を開く決議が参加国により採択された。同決議はキューバをOASから追放した1962年の決議を廃止するものであるが、キューバはOASに復帰する意思がない旨表明している。


(2)キューバに対するOAS参加排除措置が解除されたことを受けて、3日、タイアナ外相は、「本日、我々は、時代錯誤、不正義、差別を終了させた。この問題は、過去の冷戦時代から引き継がれたものであるが、この章を閉じることが出来たことを嬉しく思う。キューバのOAS復帰は、亜歴代民主政権の一貫した姿勢であった」等述べた。


(3)4日に実施された第36回OAS外相会合において、マルビーナス(フォークランド)諸島領有権問題ついて、英国に対し、亜との交渉再開を求める亜の主張を支持することが全会一致で承認された。

 

3.グアテマラ


(1)4日、タイアナ外相はグアテマラを訪問し、同国のコロン大統領及びロダス外相と会談を行った。


(2)外相会談において、両外相は、人権分野における協力、公共政策における亜の対グアテマラ技術協力、食糧安全保障、ホワイトヘルメットによる人道的支援等について話し合った。また、両外相は、国際経済危機、地域情勢、国連改革、中米統合機構(SICA)への亜のオブザーバー国としての加入について意見交換を行った。


(3)また、タイアナ外相は、インカルカテラ国連人権高等弁務官事務所グアテマラ支部代表及びカストレサナ・グアテマラ無処罰問題対策国際委員会(CICIG)委員長とも懇談した。

 

4.米国


 4日、フェルナンデス大統領は、在米大使館を通じて、オバマ大統領に親書を送り、第199回革命記念日(5月25日)に際して、同大統領より暖かいメッセージを受け取ったことに感謝するとともに、世界危機を乗り越え、人々の幸福を実現するために、協同し続けることを提案した。

 

5.スペイン


(1)南大西洋に関する会合


(イ)12〜13日、タイアナ外相は、南大西洋に関する会合に出席するため、西カナリア諸島を訪問した。なお、同会合は、大西洋諸国間の協力関係を強化し、政治社会、安全保障及び経済分野において、共通の戦略を策定することを模索するものである。同会談後、タイアナ外相は、「同会合に出席した国は、南大西洋の周辺諸国間の協力及び交流を深めることに関心を有している。これは、南南協力及び南北協力の両方からなる三角協力の側面を持ち、非常に重要である」旨述べた。


(ロ)また、タイアナ外相は、同会合に出席したモラティーノス西外相及びアマド・ポルトガル外相とも会談した。


(2)デ・ライグレシア西外務・協力省イベロアメリカ担当外交長官の訪亜


 8日に訪亜したデ・ライグレシア西外務・協力省イベロアメリカ担当外交長官は、タイアナ外相と会談し、地域及び国際情勢について話し合った。同会談の中で、タイアナ外相は、デ・ライグレシア長官に対し、(ブエノスアイレス市内の)「記憶のための空間(Espacio para la Memoria。元海軍機械学校(ESMA)。軍事政権下で反体制活動家等の収容所となり、激しい拷問が行われた場所として知られ、現在は軍政期の人権侵害を記憶に留める資料館となっている)」及び国立記憶史料館の復元における西政府の協力に謝意を表明した。

 

6.キューバ


(1)12日、キューバ政府は、亜に住む息子家族(1994年に亜に移住し、その後亜国籍を取得した息子、亜人の妻及び2人の子供)に会うため約15年前より訪亜を望んでいたキューバ人イルダ・モリーナ医師に対し、出国許可を与えた。今回右が許可された背景には、2008年5月にキューバ出国が許可され訪亜し、現在亜に在住中のモリーナ医師の母親モレホン女史(90歳)の健康状態の悪化があると見られている。


(2)14日、モリーナ医師が訪亜し、亜エセイサ国際空港において息子家族と再会後、入院中の母親モレホン女史を訪れた。モリーナ医師は、「母親が瞳を閉じる時、一ヶ月或いは一年先になるかもしれないが、自分はキューバに戻るであろう」旨述べ、亜に永住する意向はないことを明らかにした。

 

7.国際労働機関(ILO)


(1)14〜15日、フェルナンデス大統領は、第98回国際労働機関(ILO)年次総会に出席するため、タイアナ外相、トマダ労働相、バラニャオ科学技術相等と共にジュネーブを訪問した。


(2)15日午前、フェルナンデス大統領は、欧州原子力研究機構(CERN)を視察し、CERNとの間で、複数の協力議定書に署名した。


(3)15日午後、フェルナンデス大統領は、第98回ILO年次総会に出席し、約40分に亘り演説を行い、亜経済モデル(政府の経済活動への介入、雇用維持等)を擁護するとともに、G20会合へのILO参加を求めた。同総会後、フェルナンデス大統領は、ソリス米労働長官とも会談を行い、同長官に対し、9月に米国で開催される次回G20会合にILOが参加できるよう要請した。

 

8.国連


(1)17〜18日に米国ニューヨークを訪問したタイアナ外相は、18日、国連本部において、国連非植民地化特別委員会会合に出席し、マルビーナス(フォークランド)諸島領有権問題について演説を行った。同演説の中で、タイアナ外相は、同領有権問題に関して、亜国と交渉を行うよう求める国連の呼びかけに応じようとしない英国を批判した。また、同会合において、エクアドル、キューバ、チリ、ボリビア及びベネズエラにより提出された、マルビーナス諸島領有権問題の解決に向けて亜英間の交渉再開を求める決議案がコンセンサスで採択された。


(2)タイアナ外相は、17日、デスコト国連総会議長と、また、18日、潘国連事務総長と個別に会談を行った。両会談において、タイアナ外相は、マルビーナス諸島領有権問題について話し合い、安保理常任理事国のメンバーでもある英国が、同諸島領有権問題を解決するために交渉再開を求める国連決議を遵守しない矛盾を指摘した。

 

9.ホンジュラス


(1)28日、ホンジュラスにおいて、軍のクーデターによりセラヤ大統領が国外追放されたことについて、フェルナンデス大統領は、現下のホンジュラス情勢及びセラヤ大統領の状況について憂慮している旨表明した。


(2)同日、タイアナ外相は、亜外務省プレスリリースを通じて、「亜政府として、クーデターの企みを断固として拒絶する。我々は、直ちにセラヤ大統領の復職及びロダス外相をはじめとして拘束されている閣僚の解放が実現するよう求める」等述べた。


(3)また、30日、タイアナ外相は、セラヤ大統領に対するクーデターへの拒絶を示すべく、駐ホンジュラス亜大使の任命延期を決定した旨発表した。

 

 

10.要人往来

 

(来訪)

 

5月31日-6月1日  タイアナ外相のエルサルバドル訪問(フネス大統領就任式への出席等)
6月1-4日  タイアナ外相のホンジュラス訪問(第16回米州機構(OAS)総会への出席)
6月4日  タイアナ外相のグアテマラ訪問(コロン大統領及びロダス外相との会談)
6月14-15日  フェルナンデス大統領等のスイス・ジュネーブ訪問(国際労働機関(ILO)年次総会への出席)
6月17-18日  タイアナ外相の米ニューヨーク訪問(国連非植民地化特別委員会会合に出席等)
6月30日-7月6日  タイアナ外相の米ワシントン訪問(米州機構(OAS)緊急会合への出席)


(2)往訪

 

6月8日  デ・ライグレシア西外務・協力省イベロアメリカ担当外交長官(タイアナ外相との会談)


  
  
  

 

 

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