2009年3月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)
2009年4月作成
在アルゼンチン大使館
I.概要
(1)内政面では、フェルナンデス大統領が、第127回通常議会開会式において一般教書演説を行った他、10月25日に予定されていた連邦議会選挙を6月28日に前倒しするための選挙法改正法案が可決された。また、政府は、大豆及び大豆派生品の輸出課徴金収入のうち、30%を地方政府に交付するための「連邦連帯基金」を創設する緊急大統領令を発出したが、同施策等に反対する農牧団体は、フェルナンデス政権発足後通算7回目となる道路封鎖、及び穀物・食用家畜の出荷停止等の抗議活動を実施した。他方、31日、民政移管後初の大統領であるアルフォンシン元大統領が、ブエノスアイレス市内の自宅で肺癌により逝去した。
(2)外交面では、フェルナンデス大統領は、革新主義指導者サミットに出席するためチリに、第2回南米アラブ諸国首脳会合に出席するためカタールに、アルゼンチン週間を祝う式典への出席等のため伯サンパウロに訪問した。また、タイアナ外相は、第2回南米アラブ諸国首脳会合に先立つ準備会合に出席するためエジプトを訪問した他、ガレ国防相は、第1回南米諸国連合(UNASUR)南米防衛評議会(CDS)に出席するためチリを訪問した。他方、インスルサ米州機構(OAS)事務総長、ファルコニ・エクアドル外相、マドゥーロ・ベネズエラ外相、アフヌッシュ・モロッコ農業・漁業相等が亜を訪問した。
II.内政
1.フェルナンデス大統領の議会演説
(1)1日、フェルナンデス大統領は、下院本会議場で行われた第127回通常議会開会式において、約70分に亘り一般教書演説を行った(通常議会の会期は、3月1日〜11月30日)。
(2)一般教書演説のポイントは以下の通り。
(イ)歴代大統領も深刻な危機の中で一般教書演説を行ってきたが、その多くは亜国自らが引き起こした危機であり、一方で、現下の危機は1930年の危機と類似している。
(ロ)国家は消滅すべきであり、市場が資源の正しい分配者であるとする市場原理主義に基づくモデルが実施されてきた。そのモデルにおいては、弱小国や新興国が遂行しなければならない規則が存在する一方で、特定の大国は規則に縛られることなく、世界の経済、金融及び政治を主導してきた。今日、そのモデルは失墜した。
(ハ)次回「金融・世界経済に関するG20首脳会合」において、国際金融機関の改革、国連等の国際政治組織の改革、ブレトン・ウッズ体制の全面的見直し、タックス・ヘブンの廃止、グローバルな需要を喚起・維持するマクロ経済政策に関する合意の確立等提案する予定である。世銀やIMF等の国際金融機関は、新興諸国にコンディショナリティを押しつける方法を改めなければならない。
(ニ)今回の危機は、6年連続で経済成長を達成した2008年に発生した。6年間の成長の累計は約66%に達し、そのうち約47%は国内市場に因るものであった。また、国内市場、輸出、社会的包摂、雇用創出、生産及び実体経済を主軸に置いた政策の賜物である。2003年以降の経済成長は、地方交付金等、及びインフラ関連の公共投資を通じ、各州の財政にプラスの影響を与えた。
(ホ)我々は、引き続き雇用と生産を守るため、記録的な規模のインフラ計画を発表したところであり、我々の景気刺激策はGDPの7%にあたる740億ペソに上る。
(ヘ)昨年、農牧問題の最中に経済省決議125号(穀物輸出課徴金制度の改正)に関する法案を議会に提出したが、同法案を否決するとの議会の決定を自分は受け入れた。多くの場合、党の利害が優先され、成果を挙げることなく、政府の立場を弱めるだけの決定がなされることがある。実際、同法案が可決されていたならば、穀物生産者は現在より低い率の穀物課徴金を支払っていた筈である。他方、中小生産者は補償金を受け取っていた筈であり、また港から離れた場所に所在する生産者には輸送代に対する補助金が出ていた筈である。
(ト)我々は、放送法の改正など旧弊を排する取り組みを合わせて進めていかなければならない。近い将来、同法改正法案を議会に提出する予定である。また、現下の情況に照らし、政府が経済に適切に介入していくための装置を確保することは重要である。
(チ)我々が進めてきた各種施策は、確かな成果を残しており、評価に値するものであり、更なる理解と協力を求めたい。特に、過去数年の成功を踏まえ、現在製品を販売せずにいられる唯一の経済セクター(農牧業界)の協力を求めたい。過去数年における同セクターの成功は、同セクター自身の努力で勝ち取ったものではないはずであり、我々の安定した為替政策、競争政策等で得られたものであるはずである。
(リ)我々は軍政期に人権を侵害した者に対する司法手続を進めてきている。これまで確かな前進があり、行政府、立法府は多大な努力を行ってきている。しかし、司法の取り組みが遅れているので、今後、司法における前進を期待したい。
2.農牧問題を巡る政府と農牧団体の動向
(1)3日、政府と主要農牧4団体の各代表は、生産省において約5時間に亘り農牧問題について協議を行い、牛肉、小麦、牛乳及び地域特産物に関する4つの合意書に署名した。同会談には、政府側からは、ジョルジ生産相、ランダッソ内相等が出席した他、出席が予定されていなかったフェルナンデス大統領も途中から約2時間ほど出席した。
同会談において、穀物の取引を国家の管理下に置くことを目的とする政府機関を設置することも検討されると見られていたが、この点に関して、フェルナンデス大統領は、現時点では同機関を設置する意向はないとし、必要となれば、本件に関連した法案を議会に提出する旨述べた。
(2)10日、政府と主要農牧4団体の各代表は、穀物及び牛肉に係る輸出課徴金の引き下げ、輸出規制等の主要な懸案事項について協議を行ったが、進展はなかった。
(3)17日、政府と主要農牧4団体の各代表は第4回目の協議を行ったが、穀物(特に大豆)輸出課徴金の引き下げ等を政府が拒否したため、同協議は不調に終わった。
(4)19日、主要野党は、農牧団体の求めに応じ、下院において穀物輸出課徴金の引き下げ法案を審議するための特別会合を召集したが、与党議員の欠席により定足数に至らず(全257議席。定足数129議席のうち、出席者は108名)、審議は行われなかった。
(5)19日、フェルナンデス大統領は、中央政府が受け取る大豆及び大豆派生品の輸出課徴金収入のうち、30%を地方政府に交付するための「連邦連帯基金(Fondo Federal
Solidario)」を創設する緊急大統領令(政令206/2009。20日付官報掲載)に署名した旨発表した。同政令によれば、同基金は、ラ・ナシオン銀行を通じて、本制度に参加する州政府に自動的に交付され、また、その使途は、衛生、教育、病院、住居等のインフラ改善事業に限定され、経常収支補填に用いることは禁止される。
(6)20日、主要農牧4団体から構成される「連絡委員会」は、政府による「連邦連帯基金」創設の発表、穀物輸出課徴金引き下げ法案の審議拒否に不満を示すため、農牧業者に対し、穀物及び食用家畜の出荷停止(牛乳、果物、野菜等の腐りやすい生産物及び旱魃被害を受けている地域の生産物は対象外)、国道脇での抗議集会の開催等の抗議活動を行うよう呼びかけた。この結果、21〜27日にかけて、フェルナンデス政権発足後通算7回目となる上記抗議活動が実施された。
3.カタマルカ州議会議員選挙
(1)8日、カタマルカ州議会議員の改選選挙(2院制。半数議席の改選。上院全16議席のうち8議席。下院全41議席のうち21議席)が実施された。
(2)同選挙では、コボス副大統領を支持し、ブリスエラ現州知事(急進党)が率いる「市民社会戦線(急進党及び他の少数政党による会派)」が、約43%の票(上院6議席、下院12議席)を獲得した。ペロン党キルチネル派の「勝利のための正義戦線」は約33%の得票(上院2議席、下院9議席)に留まり、約10%の差で敗北した。
(3)同選挙においては、キルチネル前大統領が積極的に選挙キャンペーンに関与したため、同前大統領の影響力低下を裏付ける結果との論調が広がった。
4.連邦議会選挙の前倒し
(1)13日、フェルナンデス大統領は、「世界が瓦解し、その破片が当国を直撃する中、10月に選挙を実施することは自殺行為である」等述べ、10月25日(選挙法第53条により、国政選挙の実施日は10月第4日曜日と規定)に予定されていた連邦議会選挙を6月28日に実施するため、選挙法改正法案を議会に提出する旨発表した。
(2)同選挙法改正法案は、19日に下院で可決され、26日に上院で可決された(27日付官報掲載)。選挙法改正に伴う今後の連邦議会選挙の日程は以下の通り。
・3月28日(土):選挙公示期限日(選挙の90日前)
・4月28日(火):選挙連合登録期限日(選挙の60日前)
・4月29日(水):選挙キャンペーン解禁日(選挙の60日前)
・5月 9日(土):候補者登録期限日(選挙の50日前)
・6月26日(金):選挙キャンペーン終了(選挙の2日前)
・6月28日(日):議会選挙 (上院1/3(24名)及び下院1/2(127名)の改選)
5.放送法改正法案の発表
(1)18日、フェルナンデス大統領は、ラプラタ市のアルゼンチン劇場において、視聴覚コミュニケーション・サービス法案(所謂「放送法改正法案」)の内容を発表した。
(2) 同法案の主な内容は以下の通り。
(イ)サッカーの試合等、国民的関心の高いコンテンツについては、放映権の分散を図る。重要なサッカーの試合は、地上波テレビで放送する。
(ロ)国産コンテンツの最低シェアは、ラジオの場合、最低70%、テレビの場合、最低60%と定める。映画館で上映されるアルゼンチン映画の最低シェアも定める。
(ハ)中央政府の他、州政府、市政府にも周波数を割り当て、周波数の33%はNGOに割り当てるとともに、大学も放送できるようにする。
(ニ)寡占を避けるため、1社に与える放送ライセンス数の上限を現行の24から10に変更する。
(ホ)電話会社の放送事業への参加を認める。
(ヘ)「視聴覚コミュニケーション・サービス」を監督する機関として、連邦議会議員及び政府代表から成る機関を設置するとともに、大学、NGO、労組等の代表から成る評議会も設置する。
6.治安強化策の発表
(1)27日、フェルナンデス大統領等は、大統領官邸において、ブエノスアイレス首都圏及びメンドサ市を対象とした4億ペソ規模の治安強化策を発表した。
(2)治安強化策の主な内容は以下の通り。
(イ)対象地域のパトロールを強化するために、連邦警察官及び退役軍人4,000名、国境警備隊1,500名等を同地域に追加配置する。
(ロ)防犯対策等を強化するために、パトカー500台、地域安全対策員用携帯電話21,500台、監視カメラ5,000台、GPS1,500台を追加配備する。
7.アルフォンシン元大統領の逝去
(1)31日午後8時半頃、アルフォンシン元大統領(在任期間1983〜89年。民政移管後初の大統領。急進党)は、ブエノスアイレス市内の自宅で、肺癌により逝去した(享年82歳)。
(2)同日、フェルナンデス大統領は、滞在中のロンドンにおいて、同元大統領の死に哀悼の意を表明するとともに、3月31日〜4月2日の3日間を服喪期間とする大統領令の発出を決定した(4月1日付官報掲載)。
(3)4月2日、「民主化の父」として同元大統領を慕った多くの国民が見守る中、同元大統領の遺体はレコレータ墓地に埋葬された。
III.外交
1.チリ
(1)9〜10日、ガレ国防相は、チリを訪問し、第1回南米諸国連合(UNASUR)南米防衛評議会(CDS)会合に出席した。
(2)10日、同会合に出席したUNASUR加盟国の国防大臣等12名は、2009年度「行動計画」に合意した他、加盟各国が平和的かつ協調的な地域の構築を進めることを柱とする最終文書に署名した。また、同会合では、如何なる状況においても、加盟各国の領土の不可侵を尊重することが再確認された他、深刻な事態が発生した場合には、直ちに支援が提供できるよう、情報伝達メカニズムを設置することも合意された。
2.米州機構(OAS)
(1)9〜10日に訪亜したインスルサ米州機構(OAS)事務総長は、9日、大統領府でフェルナンデス大統領と会談し、4月にトリニダード・トバゴで開催される第5回米州サミットのアジェンダ等について話し合った。
(2)10日、インスルサOAS事務総長は、タイアナ外相と会談し、第25回OAS外相会合のフォローアップ会合、第5回米州サミット、第2回人身取引に関するハイレベル会合の準備会合等について話し合った。
3.全世界在外公館長会議の開催
(1)9〜13日、亜外務省において、全世界の亜在外公館長会議が約100名の出席を得て開催された。
(2)9日、「世界の発展における外務省の役割」セミナーが開催され、フェルナンデス大統領は、「本セミナーの目的は、如何に危機に対処するかについて、そのビジョンと問題点を議論することにある」、「ドーハ・ラウンド交渉では、アンバランスな国際貿易が是正されるよう、抜本的な改革を求めなければならない」、「我々のモデルは、競争力ある為替レート、雇用と生産に対するインセンティブに基づいており、その目的は引き続き新たな市場を獲得することにある」等述べた。
(3)10日、「亜生産セクターのための新市場開拓における外務省の役割」セミナーが開催され、タイアナ外相、デビード公共事業相、ジョルジ生産相、マルコ・デル・ポント・ナシオン銀行総裁、ラスクライン亜工業連盟(UIA)代表、ノファル投資促進庁長官及びメイヤー観光長官が演説を行った。
(4)11日、地域別大使会議が開催された他、12〜13日、在外公館長と亜企業関係者との間で約2,000の会談が行われた。
4.ロシア
11日及び18日、タイアナ外相及びラブロフ露外相はそれぞれ、亜・露入国に際し、90日以内の滞在に限り、両国民に相互に査証を免除する旨の「亜・露相互査証免除協定」に署名した。
5.米国
(1)13日、フェルナンデス大統領及びオバマ米大統領は、約30分に亘り電話会談を行った。両大統領は、4月にロンドンで行われる第2回金融・世界経済に関する首脳会合、4月中旬にトリニダード・トバゴで開催される第5回米州サミット等について協議した。また、オバマ大統領より、次回米州サミットに向けて、亜と共に働いていくことへの期待が示された他、テロとの闘いにおける亜の域内におけるリーダーシップ及びハイチの安定・繁栄に向けた亜の努力に謝意が表明された。
(2)27日、訪問先のチリにおいて、フェルナンデス大統領は、バイデン米副大統領と会談し、国際金融危機、二国間関係、米国と中南米の関係等について話し合った。
6.エクアドル
(1)18日、ファルコニ・エクアドル外相は、亜外務省別館サン・マルティン宮殿において、タイアナ外相と会談した。同会談後、タイアナ外相は、「ファルコニ外相とは、国際経済危機、域内統合、二国間関係等様々な議題についてレビューを行った。亜とエクアドルは、近年、44の取極に署名しているが、特に優先度の高い、エネルギー、食糧自給、南南協力の3分野を前進させなければならない」等述べた。
(2)また、同日、両外相は、17日より亜・エクアドルの両代表団によって開催されていた第5回亜・エクアドル政策調整・経済統合常設委員会会合の閉会式に出席した。同会合では、国連改革、人権、リオグループ・南米諸国連合(UNASUR)・米州サミット等の域内フォーラム、二国間関係等の議題について協議が行われた。
7.ブラジル
(1)19〜20日、フェルナンデス大統領は、「アルゼンチン週間」関連式典出席等のため、伯サンパウロを訪問した。
(2)20日、フェルナンデス大統領は、サンパウロ州工業連盟(FIESP)本部において、ルーラ伯大統領と会談し、次回G20首脳会合で、国際金融システムの改革、IMFや世銀等の国際金融機関の改革の必要性を訴えるとの立場を確認した。
(3)20日、両国大統領は、「亜・伯間のビジネス・チャンス」と題するセミナーの閉会式において、それぞれ演説を行った(同セミナーには両国の企業関係者等約1000名が出席)。また、フェルナンデス大統領は、スカフFIESP会長より、工業連盟大十字勲章を授与された。
(4)なお、フェルナンデス大統領の今次訪伯中、両国企業関係者の間で、造船、航空機、履物、アルファフォール(菓子)、チョコレート、食品、繊維、情報技術、衛生用品、化粧品、出版等に関する30以上の合意が結ばれた。
8.エルサルバドル
23日、フェルナンデス大統領は、エルサルバドル大統領選挙に勝利したFMLN(ファラブンド・マルティ民族解放戦線)のフネス次期大統領に電話し、当選を祝福した。また、両者は、中米及び南米の統合に向けて引き続き働き続けることの必要性につき合意した他、4月中旬にトリニダード・トバゴで開催される第5回米州サミットの機会に会談を行うことを約束した。
9.ベネズエラ
(1)25日、亜外務省において、第5回亜・ベネズエラ常設合同委員会会合がタイアナ外相及びマドゥーロ・ベネズエラ外相の間で開催され、経済・通商及び政治の2つのワーキング・グループでそれぞれ協議を行い、以下5つの文書が署名された。
(イ)科学及び文化推進のための亜SIIC基金及びベネズエラ高等教育省間の覚書
(ロ)農牧分野の開発を強化するための科学技術協力の契約に関する付属文書
(ハ)観光分野での協力プログラムに関する覚書
(ニ)亜・ベネズエラ間の文化交流プログラム申請に関する覚書
(ホ)ハイレベル二国間委員会の創設に関する協定
(2)同日、マドゥーロ外相は、フェルナンデス大統領と会談を行い、国際金融・経済危機、次回米州サミット、南米銀行等について話し合った。
10.革新主義指導者サミット
(1)27〜28日にチリのビニャ・デル・マル市を訪問したフェルナンデス大統領は、革新主義指導者サミットに出席し、国際金融危機及びその対策を中心に演説を行った。
(2)同サミットには、世界の主要な中道左派の首脳等が出席し、国際経済危機、気候変動を始めとする重要問題に如何に対処できるかについて協議が行われ、保護主義反対、国際協力の強化等が強調された。
11.イギリス
(1)28日、訪問先のチリにおいて、フェルナンデス大統領は、ブラウン英首相と会談を行った。同会談において、両首脳は、世界的な需要拡大の推進、国際金融機関の改革、IDB等の地域開発銀行への支援強化、市場への国家の介入拡大等が必要である点で意見が一致した。
(2)また、フェルナンデス大統領は、ブラウン首相に対して、マルビーナス(フォークランド)諸島領有権問題を解決するために早期に交渉を再開するよう要請するとともに、マルビーナス紛争の戦没者家族が、戦没者のための記念碑を除幕するために同諸島のダーウィン墓地を訪問できるよう求めた。これに対し、ブラウン首相は、マルビーナス諸島は民族自決の原則に基づいて統治されており、同諸島民の意向を尊重したい旨述べた他、亜領空を通過するチリと同諸島間のチャーター便の運行を再開(亜が2003年に禁止)したいとの同諸島民の要望をフェルナンデス大統領に伝えた。
12.第2回南米アラブ諸国首脳会合
(1)4日、タイアナ外相は、エジプトで開催された第2回南米アラブ諸国首脳会合の準備会合に出席した。
(2)31日、フェルナンデス大統領は、カタールのドーハで開催された第2回南米アラブ諸国首脳会合に出席し、概要以下のとおり演説を行った。
(イ)「21世紀において容認され得ない植民地的飛び領土、つまり、我々のマルビーナス諸島を有する英国は国連の関連決議を遵守すべきである」との文言が(本日採択された)ドーハ宣言に盛り込まれたことに深い感謝の意を表明する。
(ロ)ベルリンの壁が崩壊して以降、軍事・技術・経済面で弱小な国々ばかりが、規則や国連決議を遵守しなければならない一方で、大国は国連決議に違反することができるという世界が構築された。マルビーナス諸島及びパレスチナ問題は、亜や他の国の権利及び国際機関等の規則が遵守されないという酷い例である。
(ハ)オバマ米大統領は、世界平和の観点から、中東問題にポジティブに介入することができると考える。亜国は、イスラエルとパレスチナ両国の平和的共存に貢献するために、パレスチナに大使館を開設する旨の約束を果たした。
13.パレスチナ暫定自治政府
(1)31日、訪問先のカタールにおいて、フェルナンデス大統領は、アッバース・パレスチナ暫定自治政府大統領と会談した。同会談において、アッバース大統領は、フェルナンデス大統領に対し、ラマラにおける亜大使館の開設、イスラエルがガザ地区に侵攻した際の亜の支援、ガザ地区再建のための人道支援に感謝の意を表した。また、両首脳は、相互に訪問招請を行った。
(2)同会談後、フェルナンデス大統領は、「イスラエルと共存するパレスチナ国家が存在することへの我々のコミットメントを改めて表明する」旨述べた。
14.要人往来
(1)来訪 |
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3月9-10日 |
インスルサ米州機構(OAS)事務総長(フェルナンデス大統領等との会談) |
3月18日 |
ファルコニ・エクアドル外相(タイアナ外相との会談等) |
3月25日 |
マドゥーロ・ベネズエラ外相(第5回亜・ベネズエラ常設合同委員会会合への出席) |
3月25日 |
アフヌッシュ・モロッコ農業・漁業相(ジョルジ生産相との会談) |
(2)往訪 |
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3月1日 |
フェルナンデス経済相のポルトガル訪問(イベロアメリカ経済相会合への出席) |
3月3-4日 |
タイアナ外相のエジプト訪問(第2回南米アラブ諸国首脳会合に先立つ準備会合への出席等) |
3月9-10日 |
ガレ国防相のチリ訪問(第1回南米諸国連合(UNASUR)南米防衛評議会(CDS)への出席) |
3月12-14日 |
フェルナンデス経済相及びレドラド中銀総裁の英ロンドン訪問(第2回金融・世界経済に関する首脳会合に先立つ経済相会合への出席) |
3月19-20日 |
フェルナンデス大統領の伯サンパウロ訪問(アルゼンチン週間を祝う式典への出席等) |
3月22-24日 |
コボス副大統領(兼上院儀長)及びフェルネル下院議長のポルトガル訪問(第5回イベロアメリカ議会フォーラムの準備会合への出席) |
3月27-28日 |
フェルナンデス大統領のチリ訪問(革新主義指導者サミットへの出席等) |
3月27-30日 |
フェルナンデス経済相のコロンビア訪問(第50回米州開発銀行(IDB)年次総会への出席) |
3月30日 |
デビード公共事業相の伯訪問(ロバオ伯鉱山・エネルギー相との会談) |
3月30-31日 |
フェルナンデス大統領のカタール訪問(第2回南米アラブ諸国首脳会合への出席等)
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