1 概要
(1)内政:上旬に国内の20州(注:全国には23州1自治市がある)で州警察による賃上げ目的の抗議運動(出動自粛(スト)、同僚への出動妨害及び警察署の占拠等)が実施され、その間に、国内の18州で一般市民とされる人々による大規模な略奪が発生、14人が死亡した。10日、フェルナンデス大統領は亜の民政移管30周年を記念する祝賀式典に出席し、建国200周年記念博物館で30分弱の演説を行った。中旬から下旬にかけて、首都及びその近郊の一部地域を含む国内各地で、停電とそれによる断水が発生し、抗議する住民等による道路封鎖等が発生した。フェルナンデス大統領は、ブルゲローニ・ブリダス石油会社CEO及びLi Fanrong中国海洋石油(CNOOC)CEOと会合し、エネルギー分野での投資に関し協議した。連邦刑事口頭裁判所(第一審)は、贈収賄の罪で起訴されていたデ・ラ・ルア元大統領ら計8名に対し、無罪判決を言い渡した。
(2)外交:デビード公共事業大臣は,水力発電所及びダム等の大型公共事業への公的融資を求める目的でロシアを訪問した。その後、中国を訪問したキシロフ経済・財政大臣及びデビード公共事業大臣は,中国政府及び中国開発銀行の関係者と会合し,サンタクルス州の2基のダム建設計画の為に予定されている中国からの融資等に関して協議した。ピメンテル伯開発・産業・商業大臣及びガルシア顧問(ルセーフ伯大統領の国際案件担当顧問)が来亜し、カピタニッチ官房長官及びキシロフ経済・財政大臣と会合した。右訪問を受け、デビード公共事業大臣は伯を訪問し、同国の投資家に対し、亜が実行しようとしている190億米ドル規模のインフラ整備関連のプロジェクト15件に関する説明を行った。ボリビアのチョケワンカ外務大臣が来亜し、ティメルマン外務大臣と会合した。
2 内政
(1)フェルナンデス大統領の健康問題と動静
(ア)慢性硬膜下血腫の摘出手術から約2ヶ月後に当たる9日夜、フェルナンデス大統領はファヴァロロ財団病院において脳の神経画像検査を受け、結果が問題のないものであったことから、同病院の神経外科チームにより、航空機(ヘリコプターを含む)での移動許可が出された。
(イ)10日、フェルナンデス大統領はアルゼンチンの民政移管30周年を記念する祝賀式典に出席し、建国200周年記念博物館で演説を行い、その後、大統領府前の特設ステージにて、一般市民と共に国歌を斉唱した(注:その後、同大統領は1月22日の大統領府における新たな社会保障政策の発表式典まで、公式な形では表に姿を現さなかった)。
(ウ)11日、フェルナンデス大統領はファヴァロロ財団病院を訪問し、(計画されていた全検査を完了するため)心臓血管分野の検査を受けた。右検査後、内閣府のスコッチマーロ報道長官が記者会見を行い、検査結果は「異常なし」であったと発表した。
(エ)13日〜15日、フェルナンデス大統領はサンタクルス州リオ・ガジェーゴスに滞在した(注:10月の手術以降、初めての飛行機による移動を実施)。
(オ) 19日、フェルナンデス大統領は大統領府の「白の間」で行われたセサル・ミラーニ中将等の軍関係者の昇格式典に出席した(注:この次に同大統領が報道陣の前に姿を見せたのは、上記(イ)の注のとおり、1月22日の式典であった)。
(カ)21日〜1月7日、夏季休暇の為、フェルナンデス大統領はサンタクルス州エル・カラファテに帰省した(注:この間、国民に対するクリスマス及び新年の挨拶等、映像及び文書によるメディアへの露出は一切なし)。
(2)州警察による賃上げ闘争と大規模略奪の発生
(ア)3日午後〜4日にかけて、アルゼンチン第2の都市であるコルドバ州のコルドバ市において、州警察が賃上げを要求し、州内全域で出動自粛(いわゆるストライキ)を行った。これにより、警察力が不在となった同市では、商店及び民家等への大規模略奪が発生した。同略奪発生時、公務でコロンビアに向かっていたデ・ラ・ソタ同州知事は、急遽帰国し、州警察との賃上げ交渉の場に急行した。
(イ)TVでは、略奪を行う人々の様子が報じられ、食糧品、電化製品、バイク、自転車、ベッドマット、ベビーカー、衣料品及びアルコール飲料等、ありとあらゆるものを略奪する様子が繰り返し放送された。また、勤務に出ていた少数の州警察官が、略奪者をゴム弾で駆逐する様子も報じられた。6日時点の報道では、3日午後〜4日にかけて、コルドバ州コルドバ市で略奪の被害に遭った商店は1000軒程度とされ、200名以上が負傷したと伝えられた。略奪者の総数等は不明。
(ウ)デ・ラ・ソタ同州知事は、国境警備隊の配備を中央政府に要請したと発表したが、4日午前8時頃に記者会見に応じたカピタニッチ官房長官は、デ・ラ・ソタ州知事から本件に関する電話連絡は一切受けていないと発言し、「国境警備隊というのは国の治安維持部隊であり、全国を管轄している。チャコ州知事(注:同官房長官は官房長官就任にあたり、現職のチャコ州知事を休職している)としてデ・ラ・ソタ州知事に申し上げたいのは、自分(「カ」官房長官)は(チャコ州知事)在職中に、州警察の出動自粛(ストライキ)に遭ったことは一度もなく、自分(同)は常に(州警察の)状況を注視していたということである。従って、本件は厳密な意味でデ・ラ・ソタ州知事の職責の範囲内にある問題である」と述べ、中央政府は支援のための治安部隊を派遣せず、コルドバ州政府自らが同州警察の賃上げ交渉及び略奪の収拾に対応するべきとの見方を示した。
(エ)4日12時頃、デ・ラ・ソタ州知事が会見を行い、州警察との賃上げ交渉で合意に至った旨発表するとともに、右を受け、州警察が通常勤務態勢に戻ると発表した。同会見において、デ・ラ・ソタ州知事は、今回の略奪は、組織的犯罪集団により計画的に実行されたものであるとの見方を示した。
(オ)5日以降、コルドバ州に続いて、国内の他の19州(注:全国には23州1自治市がある)でも州警察による賃上げ目的の抗議運動(出動自粛、(同僚への)出動妨害及び警察署の占拠等)が実施され、その内の18州で一般市民とされる人々による大規模な略奪が発生し、14人が死亡した。10日時点の亜中規模企業連合(CAME)の発表によると、全国での略奪の被害件数は1900件程度(商店の軒数。民家に対する略奪を含まず)。国内で警察による賃上げ闘争及び略奪等の社会的混乱が発生しなかったのは、サンタクルス州、サンティアゴ・デル・エステロ州、フォルモッサ州及びブエノスアイレス市のみであった。
(カ)9日朝、カピタニッチ官房長官は記者会見に応じ、各州警察の今次抗議運動を「権威主義が漫画になった(Caricatura autoritaria)ようなものだ」と評した。同長官は政府の見解として、一連の賃上げ抗議行動及び略奪を「(社会に)混乱と恐怖をもたらそうとするグループによる意図的な行為」とし、各地におけるその手法の類似性を指摘した。また、同長官は、民政移管30周年(12月10日)の直前にかかる状況が発生していることにつき、これは偶然ではないとの見方を示した。
(キ)9日午前、国の治安省のナンバー2であるベルニ治安活動長官は、全国各地に1万人の国境警備隊員を配備したと発表した(注:一部地域には水上警察官も送られた)。
(3)民政移管30周年記念の祝賀式典
(ア)10日、大統領府に隣接する建国200周年記念博物館及び5月広場において、亜の民政移管30周年を記念する祝賀式典が大々的に執り行われた。同博物館で30分弱の演説を行ったフェルナンデス大統領は、州警察による賃上げ闘争、出動自粛並びに国内各地で発生した略奪(上記(2)参照)に対する怒りを露にし、本件は意図的に行われたものであり、民主主義の価値をすり減らそうとする者がいるからこそ発生するとの見方を示した。右演説概要は以下の通り。
(@)「自分(「フェ」大統領)はバカ正直ではなく、偶然性というものを信じない。また、伝染により発生する出来事というものも信じない。伝染により発生するのは、おたふく風邪と水疱と風疹くらいなものである」。(中略)「亜において特定の日に、特定の主人公を伴って発生する出来事は、伝染によって発生するのではなく、外科医のごとき正確さを伴う計画性と実行性により発生するのである」。
(A)「市民社会は(略奪等の)こういった暴力行為を非難し、司法はこれを裁かなければならない」。(中略)「この30年間で軍部を民主プロセスの中に復帰させたように、州警察についても同様のことを行う必要がある」。
(イ)今次式典には、フェルナンデス大統領を始めとする現在の亜政府関係者の他、1983年の民政移管後に国民もしくは議会により選出された亜の元大統領(注:故アルフォンシン元大統領の代わりとして、その息子のリカルド・アルフォンシン下院議員(急進党)、デ・ラ・ルア元大統領(急進党)及びロドリゲス・サア元大統領(PJ)が出席。メネム元大統領(PJ)及びドゥアルデ元大統領(PJ)は欠席)、UNASUR、CELAC及び欧州諸国の外交団、企業関係者、「5月広場の母たち」及び「5月広場の祖母たち」等の人権団体等が参列した。
(ウ)当地メディアは、今次式典には政府支持派の若手活動家を中心に、2万5千人〜3万人の市民が参加したと報じた。21時頃、フェルナンデス大統領は詰めかけた市民に直接挨拶するため、建国200周年記念博物館から5月広場に移動し、特設ステージで市民と共に国歌を斉唱した。
(エ)今次式典は特段の混乱もなく、平和裏に終了したと報じられたが、同時間帯、トゥクマン州及びチャコ州等の国内各地では、大規模な略奪及び警察と略奪を行っている者の衝突等が発生し、死者が出た。当地メディアは、各州における略奪等の社会的混乱のため、今次式典に出席した州知事はわずか5名であったと報じた。
(4)停電・断水
(ア)12月半ば以降、ブエノスアイレス市及びブエノスアイレス州等で、何十年ぶりとも言われる猛暑が続き、連日30度を超える日が続いた。その間、同市及び同州を始めとする国内各地において、一部では2週間以上も続く停電とそれによる断水が発生し、市民等による抗議運動(幹線道路、高速道路及び電車の線路の封鎖等)が拡大した。なお、停電のため、ブエノスアイレス市フローレス地区で近隣住民とともに抗議運動をしていた男性1名(40歳)が、連邦警察の発砲により24日に死亡した。
(イ)カピタニッチ官房長官は、停電防止策の一つとして計画停電に言及したが、これは後に否定された。デビード公共事業大臣は、電力システムは正常に機能していると発表する一方で、停電被害に遭った世帯に対し、電気料金の支払いの面で、割引等の何らかの賠償を行う予定である旨発表した。
(5)デ・ラ・ルア元大統領の贈収賄問題:無罪判決
(ア)23日、連邦刑事口頭裁判所(第一審)は、贈収賄の罪で起訴されていたデ・ラ・ルア元大統領ら計8名に対し、無罪判決を言い渡した。本件は、労働法の改正にあたり、2000年4月、当時のデ・ラ・ルア大統領の指示により、急進党のポンタクアルト上院事務局長(当時)が、複数のペロン党上院議員に対して計430万ペソ(注:当時の為替相場は1ドル=1ペソ)の賄賂を支払い、賛成票を買収したとして起訴された裁判の判決。デ・ラ・ルア元大統領の他に無罪判決を受けたのは、ポンタクアルト元上院事務局長、デ・サンティバニェス元国家情報庁(SIDE)長官、フラマリケ元労働相、アラシーノ元上院議員、コンスタンソ元上院議員、テル元上院議員、ブランダ元上院議員。検察側は6年半まで(の懲役)を求刑していた。
(イ)今次無罪判決を受け、デ・ラ・ルア元大統領は、「約2年にわたるこの口頭裁判と300に及ぶ証拠によって、真実が明らかにされ、我が政権は汚職に関する如何なる疑いからも解放された。(起訴は)政治的な陰謀の始まりであったが、今回の無罪判決は自らの尊厳と我が政権の尊厳を回復するものである」旨の短いコミュニケを読み上げた。
(ウ)なお、連邦刑事口頭裁判所は、上記無罪判決の中で、併せて、本件の予審における裁判所や国家情報局の違法行為やイバーラ元官房長官等の偽証の可能性、弁護士の行為等を調査するよう求めた。
(6)フェルナンデス大統領とブリダス石油会社CEO及び中国海洋石油CEOの会合
4日、フェルナンデス大統領は、ブルゲローニ・ブリダス石油会社代表及びLi Fanrong中国海洋石油(CNOOC)CEOと会合し、エネルギー分野での投資に関し協議した。
(7)各省庁の人事
(ア)治安省
(@)2日午後、スコッチマーロ内閣府報道長官が会見を行い、フェルナンデス大統領がプリチェリ治安大臣の辞表を受理し、後任としてマリア・セシリア・ロドリゲス緊急支援調整長官(国防省)を任命したと発表した。
(A)ラ・ナシオン紙は、プリチェリ治安大臣の辞任を「更迭」との趣で報じ、その理由として、同大臣が、治安の改善及び麻薬密売組織との戦いに失敗したとフェルナンデス大統領に判断された、という点を挙げた。また同紙は、プリチェリ治安大臣が同省ナンバー2のベルニ治安活動長官と衝突していたと報じ、新しく治安大臣に就任する国防省のロドリゲス緊急支援調整長官のことを、ベルニ長官に近い人物と評し、今回の改造によって、ベルニ長官の省内での権限が強まるとの見方を伝えた。
(B)治安大臣のポストは、2013年5月にガレー大臣(当時)が解任され、翌6月に当時のプリチェリ国防大臣が新たに治安大臣として就任したばかりであったが、同大臣も半年での解任となった。
(C)当地メディアはロドリゲス新治安大臣に関し、06年から社会開発省で人道支援分野の局長を経験した人物であり、アリシア・キルチネル社会開発大臣(注:故キルチネル前大統領の実姉)に近い人物と報じた。また、同大臣はキルチネル派の左派若手活動家組織である「ラ・カンポラ」とも密接な関係にあるとした。ロドリゲス新治安大臣とベルニ治安活動長官は10年来の同僚であるとされており、両者が社会開発省にいた時代は、ロドリゲス新大臣がベルニ長官の部下だったこともあったと報じられた。
(D)4日夜、フェルナンデス大統領出席のもと、大統領府においてロドリゲス新治安大臣の就任式が執り行われた。同日、11月29日に新たに政府により任命された大統領府の薬物依存症予防・麻薬取引対策局(Sedronar)のフアン・カルロス・モリーナ新長官の就任式も執り行われた(注:Sedronarの同ポストは2013年3月より空席になっていた。フアン・カルロス・モリーナ新長官は司祭であり、社会開発省のアリシア・キルチネル大臣に近い人物)。当地報道によると、ロドリゲス新治安大臣及びモリーナ薬物依存症予防・麻薬取引対策計画新長官は、スラムなどでの社会開発活動の経験があり、今後政府は貧困地区における麻薬蔓延の防止に力を入れると見られている。
(イ)内閣府
4日、内閣府のフアン・ホセ・ムッシ環境長官が辞任し、10日、同ポストにカピタニッチ官房長官に近いとされているオマール・フディス・チャコ州インフラ大臣が就任した。10日、ムッシ前環境長官は、ブエノスアイレス州議会下院議員に就任した。
(ウ)AFIP
9日、マリア・シオマラ・アジェランAFIP税関局長が辞任し、新AFIP関税局長に内閣府のカルロス・サンチェス内閣行政調整長官が任命された。
(エ)経済・財政省
(@)9日、ベアトリス・パグリエリ国際通商長官が、新設されたAFIP関税課長補佐のポストに任命された(注:9日時点では、パグリエリ国際通商長官は同長官ポストと関税課長補佐ポストを兼任)。
(A)13日、経済・財政省の国内取引長官と国際通商長官のポストが商業長官(Secretario de Comercio)として一本化され、同ポストにアウグスト・コスタ国内取引長官が任命された(注:つまり13日、パグリエリ国際通商長官は、同長官ポストを事実上解任されたことになる)。
(オ)外務省
20日、政令第2251号が官報に掲載され、外務省内に新たな副大臣ポスト(マルビナス諸島、南ジョージア諸島、南サンドウィッチ諸島及び南大西洋海域担当:Secretario de Asuntos Relativos a las islas Malvinas, Georgias del Sur, Sandwich del Sur y los Espacios Marítimos Circundantes en el Atlántico Sur) が設置され、同外務副大臣に、PJ「勝利のための戦線」所属のダニエル・フィルムス前上院議員が任命された。
(8)価格合意
20日、キシロフ経済・財政大臣は、2014年1月以降の大量消費向け商品約200点の価格について、複数のスーパーマーケット代表及び納入業者代表と(各店舗間で価格を同じにし、且つ価格を一定に保つという趣旨の)合意に至った旨発表した。同大臣は、今回の価格合意は(政府の指示に基づく)価格凍結ではなく、政府と業界間の自主的な合意であると述べ、同合意は1年間の有効期限を持つと発表した(注:1月6日、同価格合意リストに基づく販売が、ブエノスアイレス市及びブエノスアイレス州都市圏の大手スーパーマーケットで開始された。当地報道によると、1月末以降、政府は同価格合意を全国に拡大していく由。同価格合意は四半期ごとに見直しされることになっている。)
(9)サンティアゴ・デル・エステロ州の州知事及び副知事選挙
(ア)1日、サンティアゴ・デル・エステロ州の州知事・副知事選挙が実施され、現職のサモラ同州知事の夫人のクラウディア・レデスマ・アブダラ・デ・サモラ氏(注:夫婦ともに急進党キルチネル派の「市民戦線」(Frente Civico)所属)が州知事選挙で初当選を果たした。アブダラ・デ・サモラ候補は、2位の革新派拡大戦線(FAP)(注:急進党反キルチネル派等を含む中道左派選挙連合)の候補者に、得票率で約50%差をつけて大勝した。
(イ)当選を果たしたアブダラ・デ・サモラ新知事は「引き続き、我々(州政府)は中央政府にお供していく」と発言した(注:アブダラ・デ・サモラ新州知事の任期は、2013年12月10日から2017年12月9日までの4年間)。
(ウ)2日、アブダラ・デ・サモラ新知事、サモラ現職知事及びネデル新副知事は、オリーボスの公邸を訪問し、フェルナンデス大統領を表敬した。
(エ)10日、アブダラ・デ・サモラ新知事の夫のサモラ前知事は、連邦上院議員(サンティアゴ・デル・エステロ州選出)に就任した。
(10)新下院議員の宣誓式
4日、10月27日の国会議員選挙で当選した127名の新下院議員が、12月10日の就任を前に宣誓を行った。また下院は、次期執行部役員を以下の通り選出した(注:下院の執行部役員を選出するための準備セッションは毎年12月1〜10日の間に開催される旨,下院規則において規定されている)。
(ア)議長:ドミンゲス下院議員(ペロン党キルチネル派)
(イ)第1副議長:アブダラ・デ・マタラッツォ下院議員(急進党キルチネル派)
(ウ)第2副議長:ヒメネス下院議員(急進党)
(エ)第3副議長:カマニョ下院議員(刷新戦線)
(11)臨時国会の召集
(ア)10日、政府は政令第2089号を官報に掲載し、12月11日〜31日まで、臨時国会を召集する旨発表した。
(イ)30日、カピタニッチ官房長官は毎朝の記者会見において、2月1日以降、臨時国会を召集する可能性がある旨発言した(注:亜の通常国会は3月1日〜11月30日まで)。
3 外交
(1) 中国
(ア)鉄道関係
4日,フェルナンデス大統領は,大統領官邸にて,Zhang Chun中国機会設備工程(CMEC)社長の訪問を受け,同社長との間でベルグラーノ貨物線の1700キロメートルにわたる線路延長,機関車50台の購入,駅の整備等を含む契約書に署名を行った。
(イ)キシロフ経済・財政大臣及びデビード公共事業大臣の中国訪問
8日〜9日にかけて中国を訪問したキシロフ経済・財政大臣及びデビード公共事業大臣は,9日,中国政府及び中国開発銀行関係者等と会合し,中国企業及び亜企業により昨年落札されたサンタクルス州の「ネストル・キルチネル」及び「ホルヘ・セペルニック」の2基のダム建設計画の融資,ベルグラーノ貨物線への中国からの借款,並びに中国元との新通貨スワップ協定締結について協議した。
(2)メルコスール・パラグアイ
(ア)4日,カピタニッチ官房長官及びマンスール厚生大臣はパラグアイを訪問し,マンスール大臣及びバリオス・パラグアイ厚生大臣の間で,二国間で協働してデング熱をコントロールしていく趣旨の合意文書への署名を行った。また,今次訪問中に,カピタニッチ官房長官は,カルテス・パラグアイ大統領と大統領公邸にて会談し,ベネズエラのメルコスール加盟,ジャシレタ・ダム建設時の債務返済問題,パラグアイ産バナナ及びパイナップルに対する亜の輸入制限措置,安全及び防衛分野における技術協力等に関し協議した。。
(イ) 18日,亜外務省は,ベネズエラのメルコスール加盟を承認するパラグアイ政府の決定に対し,「満足と歓喜」を表明するプレスリリースを発出した。
(3)フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題
9日,亜政府は,亜に属する海底,領海の心土,大陸棚部分で許可なく石油と天然ガスの採掘を行った者に罰金を科す旨明記した法律第26915号を官報に掲載した。これに対し,15日,英国政府は,亜の同法律は,フォークランド(マルビナス)諸島に適用することは出来ないとし,亜政府に対する正式な抗議を表明したが,17日,スアイン筆頭外務副大臣は,フリーマン駐亜英国大使を召集し,英国からの右抗議を却下する旨伝達した。
(4)英国
英国政府は,人権侵害に利用される恐れがあるとし,例年同様,英国による武器輸出を禁じる国のリストに亜を含めた(注:亜の他には,アフガニスタン,バーレーン,エジプト,イラン,イラク,リビア,シリア,トルクメニスタンが武器輸出禁止国とされた)。
(5)ロシア
3日〜6日にかけて,デビード公共事業大臣は,水力発電所,ダム,水路,通信塔建設等,現在進行中の大型公共事業への約169億6千6百万米ドルの公的融資を求める目的で,ロシアを訪問した。
(6)ブラジル
(ア)ピメンテル伯開発・産業・商業大臣の当国訪問
4日〜5日にかけて, ピメンテル伯開発・産業・商業大臣及びガルシア顧問(ルセーフ伯大統領の国際案件担当顧問)が亜を訪問し,カピタニッチ官房長官及びキシロフ経済・財政大臣と会合した。右会合後, ピメンテル伯開発・産業・商業大臣は,(亜への)輸出促進に向け,合意に到ったと述べた。また,カピタニッチ官房長官は,今次会合では,ベネズエラのメルコスール加盟についても協議されたと述べた。
(イ)デビード公共事業大臣の伯訪問
18日〜19日にかけて伯を訪問したデビード公共事業大臣は,伯の投資家に対し,亜が実行しようとしている190億米ドル規模のインフラ整備関連のプロジェクト15件に関する説明を行った。
(7)米国
4日,オバマ米大統領が,演説の中で,米国社会における社会的不平等はアルゼンチンもしくはジャマイカのレベルに達しようとしていると述べ,国内の社会状況の悪化を警告したことを受け,6日,スアイン筆頭外務副大臣は,サリバン駐亜米国臨時代理大使と会合し,社会的不平等撲滅に向けた亜政府の取組及び進展に関する情報を提供した。
(8)イラン
(ア) 亜ユダヤ人団体の要請却下
4日,カニコバ・コラル判事は,昨年1月に亜がイランとの間で署名した1994年の亜イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件解決に向けた覚書を違憲とするAMIA及び在亜イスラエル協会(DAIA)の要請を退けた。
(イ)フェルナンデス大統領と亜ユダヤ人団体の会合
17日,フェルナンデス大統領は,AMIA及びDAIA関係者と会合した。同会合において,シュロッセルDAIA代表は,イランとの間で署名された二国間の覚書は,1994年のAMIA会館爆破事件解決に向けた有効なツールであるとは亜ユダヤ人団体は見なしていないと述べた。
(9)ボリビア
9日,亜を訪問したチョケワンカ外務大臣は,ティメルマン外務大臣と会合し,両国外務大臣は,サルバドール・マサ(亜サルタ州)−ヤクイバ(ボリビア)間の橋の建設に向けた二国間ワーキング・グループを1月に召集することで合意した。また,両国外務大臣は,メルコスール,UNASUR,CELAC,G77をはじめとする国際会合の枠組みでの地域統合についても一致した。
(10)南極
8日〜9日にかけて,ロッシ国防大臣は,2013年〜2014年夏の南極キャンペーン幕開けの為に,公式代表団と共に,マランビオ,エスペランサ及びペトレル基地を訪れ,南極における亜の存在を強調していく旨表明すると同時に,右目的の為に,現在夏季のみ開かれているペトレル基地を常時開ける決定をしたと述べた。
(11)要人往来
(ア) 往訪
3日 |
ティメルマン外務大臣のインドネシア訪問(第9回WTO大臣会合出席) |
3日〜6日 |
デビード公共事業大臣のロシア訪問 |
4日 |
カピタニッチ官房長官及びマンスール厚生大臣のパラグアイ訪問 |
8日〜9日 |
デビード公共事業大臣の中国訪問 |
8日〜9日 |
キシロフ経済・財政大臣の中国訪問 |
8日〜9日 |
ロッシ国防大臣の南極訪問 |
9日〜10日 |
ブドゥー副大統領の南アフリカ訪問(マンデラ元南アフリカ大統領の国葬列席) |
11日〜13日 |
ランダッソ内務・運輸大臣の米国訪問 |
12日〜13日 |
ティメルマン外務大臣のイタリア訪問(第6回イタリア・ラテンアメリカ・カリブ地域会合出席) |
18日〜19日 |
デビード公共事業大臣のブラジル訪問 |
(イ)来訪
(以下の日程で下記要人が当地で会談等を実施したとの情報あり)
4日〜5日 |
ピメンテル伯開発・産業・商業大臣及びガルシア顧問(ルセーフ伯大統領の国際案件担当顧問) |
9日 |
チョケワンカ・ボリビア外務大臣 |