アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2018年6月)
2018年7月作成
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア IMFとの合意
7日,亜政府とIMFは,3年間で500億ドルのスタンドバイ取り決め(SBA)による融資枠組みについて事務レベルで合意したことを発表した。また,20日,IMF理事会は,先般合意した内容について承認した。これにより,150億米ドル(融資額全体の30%相当)の即日融資を受けることが可能となった。
イ 5%の賃金上乗せに関する政令の発出
7日,ドゥホブネ財務大臣は,マクリ大統領が15%の賃上げに同意したセクターに対し,5%(7月及び8月に2.5%ずつ)の賃金上乗せを認めるとする内容の政令に署名を行った旨発表した。(同大統領例は8日付官報において発表された。)
ウ 中銀総裁の交代
14日,ストゥルセネヘル中銀総裁よりマクリ大統領に対し,辞表が提出されたことに伴い,同日の緊急会議において,同中銀総裁の辞任が決定され,後任として,カプート前金融大臣の就任が発表された。
エ 閣僚交代
16日,マクリ大統領はカブレラ工業生産大臣及びアラングレン・エネルギー・鉱業大臣の辞任を発表するとともに,シカ元工業生産省産業・商業・鉱業長官及びイグアセル前運輸省道路管理局長をそれぞれ後任とする閣僚交代につき発表した。21日,大統領府において,両大臣の就任式が行われた。
オ 閣僚法の改定
22日付官報(政令575/2018)において,閣僚数を現行の20名から19名とする内容を含む閣僚法の改定が発表された。同法改定において,財務省が金融省の権限を兼任することになった他,鉱業政策の管轄をエネルギー・鉱業省から工業生産省に移行することになり,今後,省庁名もエネルギー省に変更された。
カ 政府及び中銀による中小企業対策の発表
27日,マクリ大統領は,亜中小企業商工会議所(CAME)との会合の場で中小企業対策((1)利子年率29%の中小企業向けの融資,(2)雇用者負担となっている社会保障負担金に関する控除措置の前倒し,(3)融資プログラム「Ahora12」の延長)を発表した。また,翌28日,亜中銀も,中小企業への融資を容易にするための3つの措置((1)中小企業への貸出上限の引上げ,(2)法定準備預金の中小企業向け融資への活用,(3)手形割引に関する規制の廃止)を発表した。
(2)連邦議会:
ア 中絶合法化法案の議会下院の可決
14日,議会下院において,中絶合法化法案が賛成多数(賛成129,反対125,棄権1)で可決され,議会上院に送付された。
イ 行政の効率化に関する3法案の可決・成立
1月に緊急大統領令を通じて発出された行政の効率化を目的とする170の措置は,その後,3つに分割された上で議会に提出されていたが,これら3法案が,議会下院(3月21日)及び議会上院(5月30日及び31日)のそれぞれで可決・成立後,18日,官報にて発表された。
(3)その他:労組等によるゼネストの実施
25日,CGT(労働総同盟)及びCTA(労働者連盟)は,マクリ政権の経済政策に対する抗議,労働者の解雇の停止や賃上げ交渉の再開等を求めて,24時間のゼネストを実施した。現政権下では,3回目のゼネストとなった。今回は,公共交通機関,空港,銀行,公立学校等の各労組団体が加わったため,これらのサービスがストップし,特に,ブエノスアイレス市等では市民の生活や経済活動に対する影響が出た。また,左派系グループ等により,ブエノスアイレス市内へのアクセスする道路の一部が封鎖された他,オベリスコ周辺を含む市内中心部や国内各所でもデモ抗議活動が行われた。(ただし,暴力的な活動は見られなかった。)
2 外交
(1)日本:
ア パタゴニア産牛肉・羊肉の輸出解禁にかかるプレスリリースの発出
29日,亜大統領府はプレスリリースにおいて,日本政府当局より,同日,パタゴニア産牛肉・羊肉の輸出が解禁された旨通知があったことを発表した。28日,亜農産業省も本件に関するプレスリリースを発出した。
イ 武藤経産副大臣及び岡本外務大臣政務官のG20エネルギー転換大臣会合出席
14~15日,バリローチェにおいてG20エネルギー転換大臣会合が実施された。同会合には,ベリー米エネルギー長官,カー・カナダ天然資源大臣等の約20か国の閣僚が出席した他,日本より武藤経産副大臣及び岡本外務大臣政務官が出席した。
(2)英国:ペニャ内閣府官房長官の英国訪問
4~5日,ペニャ内閣府官房長官は英国を訪問した。英国訪問初日の4日,ペニャ官房長官は,セントポール寺院を訪れ,マルビーナス(フォークランド)戦争で亡くなった両国兵士の名誉を讃えた。その後,同官房長官はジョンソン英外相,ゴーブ環境・食糧・農村相,ハモンド英財務大臣及びフォックス国際貿易相らとEUメルコスールFTA交渉等について話し合いを行った。5日,ペニャ官房長官は,ピーター・ヒル英G20シェルパとも会談を行った。
(3)OAS:フォリー外務大臣のOAS総会出席
4日,フォリー外務大臣は,米ワシントンにおいて開催された第48回米州機構(OAS)総会に出席した。同総会において,フォリー大臣は,ベネズエラ危機に対し,米州民主憲章の適用を求めた。
(4)G7:マクリ大統領のG7シャルルボワ・サミット出席
9~10日,マクリ大統領は,本年G20の議長国を務めることから,トルドー加首相の招待を受け,G7シャルルボワ・サミットに出席した。亜大統領としては,G7サミットへの出席は初。マクリ大統領は,G7サミットのマージンにおいて,トルド-加首相,メイ英首相,メルケル独首相,ラガルドIMF専務理事,マクロン仏大統領,コンテ伊首相,グエン・スアン・フック・ベトナム首相,ゲオルギエバ世銀CEO及びグリアOECD事務総長等と会談を行った。また,マクリ大統領は安倍総理とも立ち話を行った。
(5)パラグアイ:アブド・ベニテス・パラグアイ次期大統領のアルゼンチン訪問
12日,マクリ大統領はアルゼンチンを訪問したアブド・ベニテス・パラグアイ次期大統領と昼食会を行った。同次期大統領は,11日に亜に到着し,同日夜には,フォリー外務大臣等とプライベートの夕食会を共にした。
(6)メルコスール:ミケティ副大統領及びフォリー外務大臣のメルコスール首脳会合出席
17~18日,ミケティ副大統領及びフォリー外務大臣はメルコスール首脳会合に出席するため,パラグアイを訪問した。同会合において,メルコスール各国及び準加盟国の首脳は,今次首脳会合に関する共同声明の他,ベネズエラの人道的及び移民状況に関する声明等に署名した。また,今次会合の枠組において,18日,フォリー外務大臣及びロイサガ・パラグアイ外務大臣との間で,人権分野における二国間の対話協力メカニズム設立に係る覚書が署名された。
(7)ベルギー:アストリッド・ベルギー王女のアルゼンチン訪問
25~27日,アストリッド・ベルギー王女はアルゼンチンを訪問した。25日,アストリッド王女は,フォリー外務大臣との接見を行った他,26日には,マクリ大統領及びアワダ大統領夫人との接見を行った。また,26日,王女に同行したレンデルス・ベルギー副首相兼外相は,フォリー大臣と会談を行った。なお,今次御訪問には,レンデルス副首相兼外相及びペーテルス副首相等の他,130以上のベルギーの企業団(製薬,バイオテクノロジー,輸送・物流,金融サービス,農業,エネルギー及び機械等)が同行した。
(8)チリ:防衛・治安問題に関する対話の実施
15日,チリにおいて,亜・チリ安全保障常任委員会会合(COMPERSEG)が副大臣レベルで行われた。亜側より,ライモンディ筆頭外務副大臣が,チリ側より,シルバ外務副大臣が出席した。同会合において,両副大臣は,UNASUR等を含む地域情勢につき意見交換を行った他,南極物流,リスク管理,災害,人道支援,科学・技術,ジェンダー政策,軍隊等に関する協力の進捗状況を確認した。なお今次会合は,8月に実施予定の外務・防衛2+2協議メカニズムの準備会合ともなった。
(9)ミャンマー:亜産農産品の対ミャンマー輸出
1日,亜外務省はプレスリリースにおいて,外務省,農産業省及びSENASAによる亜産農産品の輸出拡大に関し,4月18日,ミャンマー政府が,亜のジャガイモの対ミャンマー輸出を承認した旨発表した。今次措置は,すでにミャンマーへの輸出が解禁されている亜産大豆,鶏肉及びトウモロコシに加わることとなる。
(10)国連:フォリー外務大臣のNY訪問(国連非植民地化特別委員会への出席)
21日,フォリー外務大臣は,NYの国連本部において実施された国連非植民地化特別委員会におけるフォークランド(マルビーナス)諸島問題に関する会合に出席した。同会合では,マルビーナス諸島の領有権問題の解決に向けて,チリ,キューバ,ニカラグア,ボリビア及びエクアドルから提出された亜と英国間の交渉再開を促す内容の新たな決議が採択された。
(11)要人往来
ア 往訪
●4日: フォリー外務大臣の米国訪問(OAS総会出席)
●4日: トリアカ労働大臣のスイス訪問(第107回ILO総会出席)
●4~6日: ペニャ内閣府官房長官の英国・米国訪問
●9~10日: マクリ大統領のカナダ訪問(G7シャルルボワ・サミット出席)
●17~18日: ミケティ副大統領及びフォリー外務大臣のパラグアイ訪問(メルコ
スール首脳会合出席)
●21日: フォリー外務大臣のNY訪問(国連非植民地化特別委員会への出席)
●22日: ドゥホブネ財務大臣のチリ訪問
●28日: イグアセル・エネルギー大臣の米国訪問(世界ガス会議出席)
イ 来訪
●12日: アブド・ベニテス・パラグアイ次期大統領
●14~15日: 武藤経産副大臣及び岡本外務大臣政務官(G20エネルギー転換大
臣会合出席)
●25~27日: アストリッド・ベルギー王女
(了)
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