アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2025年6月)
1 内政
(1)ミレイ政権
●警察機構改革(17日)
17日、政府は、連邦警察を、全国規模で組織的なものを中心に、犯罪捜査に特化した組織に再編することを目的として、連邦捜査部(DFI)の創設を含む連邦警察の組織改革を発表した。
●国旗の日の式典(20日)
20日、ミレイ大統領は、ブエノスアイレス市内で、同日の「国旗の日」を軍と共に祝う式典を主催した。他方、ビジャルエル副大統領は、プジャロ・サンタフェ州知事等と共に、「国旗の碑」のある同州ロサリオ市の式典に出席した。
●第一回5月評議会の開催(24日)
24日、5月評議会(2024年設立)の第一回会合が開催され、フランコス内閣官房長官を議長に、政府指名の6名の顧問が出席した。
●AMIA会館爆破事件の被告人に対する不在裁判の承認(26日)
26日、ラフェカス連邦判事は、本年2月に議会で承認された、被告人の出廷なく裁判を進められる制度を適用し、1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件に関し、イラン及びレバノン国籍の被告10名の裁判を進めることを承認した。
(2)与野党及び地方政府の動き
●CFK元大統領に対する最高裁判所の判決(10日)
ア 10日、連邦最高裁判所は、「公共事業・有料道路」事件における第一審の同元大統領に対する有罪判決を支持し、同元大統領の有罪が確定した。
イ 同事件は、同元大統領が大統領任期中にサンタクルス州の公共事業で特定の建設業者に便宜を図ったとされる事件。
ウ 今回の有罪判決に際し、労働総同盟(CGT)等による高速道路封鎖や同元大統領支持派によるTV局襲撃や国立大学の一部占拠等が行われた他、既存のデモへのペロン党支持者等のデモの合流等が見られた。
オ 有罪判決以降、ペロン党議員・幹部等が出席する会合が複数回開催された。
カ 17日、連邦裁判所は、同元大統領の自宅での服役を条件付きで承認した。
キ 18日、ブエノスアイレス市内で、有罪判決に抗議するデモ行進が4~5万人規模(政府発表に基づく)で行われた。
●ラプラタ市におけるLLA党大会の開催(26日)
26日、ブエノスアイレス州ラプラタ市で与党「自由の前進(LLA)」主催の党大会が開催され、ミレイ大統領や政権閣僚、LLA関係者が演説した。
●州知事の会合(3日)
3日、州知事及び市長23名は、連邦投資評議会(CFI)に際し会合を開催し、中央政府と新たな財政協定につき協議することで合意した。
(3)議会動向
●野党提出の年金増額法案等の可決(4日)
ア 4日、下院は特別審議で、野党提出の年金増額法案や障がい者支援に関する法案等を、5日には、本年の洪水被害の被災地支援法案等を可決した。
イ 4日、ミレイ大統領は、上院でこれらの法案が可決された場合、再び拒否権を発動する意向である旨発表した(24日、同大統領は、議会で承認されたバイアブランカ市(洪水被災地)の緊急事態を宣言する法案に拒否権を発動した)。
●国家情報庁(SIDE)を巡る動き
ア 5月25日、当地主要紙は、政府が国家情報庁(SIDE)を通じて反政府的な人物の監視を強める計画を承認したと報じ、同日に政府が声明で反論した。
イ 6月6日、諜報活動監視に係る両院合同委員会は、ネイフェルトSIDE長官を召喚した。同長官は召喚に際し、上記計画等につき証言した。
(4)治安情勢
●ストライキ・抗議活動の発生
ア 5月下旬より、ガラハン病院(アルゼンチンの国立小児専門病院)の研修医等が待遇改善を求め、ストライキや抗議活動(行進等)を複数回実施した。
イ 10日、パイロット労組がアエロパルケ空港及びエセイサ空港で8時間のストライキを実施。約50便の欠航・遅延で約6000人の乗客に影響が生じた。
(5)選挙関連
●ミシオネス州議会選挙
8日、ミシオネス州議会選挙が行われ、州与党連合が28.6%で勝利した。LLA候補は21.89%で二番手となった。投票率は57.45%であった。
●サンタフェ州地方選挙の実施(29日)
29日、サンタフェ州の市長選挙・市評議員選挙が実施され、サンタフェ市で州与党候補が32%で勝利(州与党は州内選挙区の8割で勝利)し、ロサリオ市ではペロン党候補が30%の得票率で勝利した。投票率は52%程度とされる。
●フォルモサ州議会選挙等の実施(29日)
29日、フォルモサ州議会選挙及び同州憲法改革議会選挙が実施され、同州のペロン党は両選挙で67%の得票率で勝利した。元LLAの候補は20%、LLA候補は11%の得票率を獲得した。投票率は65.8%であった。
2 外交
(1)首脳級
●ミレイ大統領の欧州訪問(6~9日)
6~12日、ミレイ大統領はイタリア、バチカン市国、スペイン、仏を訪問し、以下の日程をこなした。
ア 6日、イタリアを訪問し、メローニ伊首相と会談した。
イ 7日、バチカン市国を訪問し、教皇レオ14世に謁見した。
ウ 8日、スペインを訪問し、マドリード経済フォーラムで、最終登壇者として演説した他、アバスカルVOX党首、ゴンサレス・ウルティア元ベネズエラ野党指導者等と会談した。
エ 9日、仏ニースを訪問し、第3回国連海洋会議に出席した。その後、マクロン仏大統領と会談した。
オ 12日、スペインを再訪し、企業会合や授賞式に出席した。
●ミレイ大統領のイスラエル訪問(9~12日)
6~12日、ミレイ大統領はエルサレムを訪問し、以下の日程をこなした。
ア 9日及び12日、嘆きの壁を訪問した。
イ 10日、ヘルツォグ・イスラエル大統領、ネタニヤフ・イスラエル首相とそれぞれ会談した。
ウ 11日、ハマスに拉致されたアルゼンチン人人質親族と面会した。その後、クネセット(イスラエル議会)で演説し、2026年に在イスラエル・アルゼンチン大使館を西エルサレムに移転する旨発表した。
エ 12日、大学講演や授賞式に登壇した。その後、ネタニヤフ首相と共に、「テロリズムと反ユダヤ主義の戦いにおける自由と民主主義のための覚書」に署名した。
●イスラエルによるイランへの攻撃に対するアルゼンチン政府の対応
ア 15日、アルゼンチン政府は、イランのイスラエル攻撃、及びAMIA会館爆破事件の責任者の一人とされるバヒディ氏のイスラム革命防衛隊司令官への任命を非難する声明を発出した。
イ 16日、ミレイ大統領は、ネタニヤフ首相と電話会談を行った。
(2)閣僚級
●ウェルテイン外相の会談等
ウェルテイン外相は4~12日に欧州を、17~24日に米国を訪問し、以下の日程をこなした。
ア 4日、ウェルテイン外相は、在スペイン・アルゼンチン大使館でゴンサレス・ウルティア元ベネズエラ野党指導者と会談した。
イ 6日、ウェルテイン外相は、イタリアを訪問し、タヤーニ伊外務・国際協力相と会談した。
ウ 17日、ウェルテイン外相は、グテーレス国連事務総長と会談した。
エ 20日、ウェルテイン外相は、グリア米USTR代表、ラムディン米州機構(OAS)事務総長とそれぞれ会談した。
カ 24日、ウェルテイン外相は、米国務省でランドー米国務副長官と会談し、国防・安全保障での協力を推進することの重要性を強調した。キ
キ 26日、ウェルテイン外相は、ラトニック米商務長官、グリア代表と会談した。
●ウェルテイン外相の国連非植民地化特別委員会出席(18日)
ア 18日、ウェルテイン外相は、国連非植民地化特別委員会に出席した。
イ 本委員会では、フォークランド(マルビーナス)諸島等の主権を巡る問題に関する新たな決議が採択され、本問題解決に向けた英アルゼンチン二国間協議の早期再開を要請する国連の呼びかけを再確認した。
(3)その他
●OAS総会におけるアルゼンチンの主張への支持(27日)
27日、第55回OAS総会は、採択された「マルビーナス(ママ)諸島問題に関する宣言」において、本問題に関する英・アルゼンチン間交渉の早期再開を要請し、その平和的解決を図る必要性を再確認した。
(4)対中関係
●中国・アルゼンチン間の航空便の就航予定の発表(19日)
19日、中国東方航空は、2025年12月より、上海・ブエノスアイレス間の、オークランドを経由しての航空便を開通予定である旨発表した。本路線開通にあたっては、規制当局の最終的な承認が条件となっている。
(5)要人往来
往訪:
米国:ウェルテイン外相(17~27日)、クレクレル外務副大臣(国際経済関係担当)(2日、20日)、ラビグネ経済省調整担当長官(生産・商業・産業・農業総括担当)(2日、関税交渉)
伊:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、ウェルテイン外相
バチカン市国:ミレイ大統領、カリーナ長官、ウェルテイン外相、アドルニ大統領府報道官(7日、教皇謁見)
スペイン:ミレイ大統領、カリーナ長官、ウェルテイン外相
仏:ミレイ大統領、カリーナ長官、ウェルテイン外相
イスラエル:ミレイ大統領、カリーナ長官、ウェルテイン外相
来訪:
なし
(了)