アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

平成29年6月14日

アルゼンチン政治情勢(2017年5月)

2017年6月作成
在アルゼンチン日本大使館
 
1 内政
(1)大統領府・政府
 ア マルコーラ外務大臣の辞任
 29日,マクリ大統領は記者会見を開き,マルコーラ外務大臣が個人的な理由により外務大臣を辞任する旨発表した。その後,ペニャ内閣府官房長官より,新外務大臣として,職業外交官であるホルヘ・フォリー駐仏大使が6月12日に就任する旨発表した。
 
 イ 電気自動車及びハイブリッド自動車の輸入関税の引下げ
 12日,政府は,電気自動車(35%から2%),並びにハイブリッド及び水素自動車(35%から5%)の輸入関税の引下げを発表した。
 
 ウ 自動二輪車セクターの政労使協定
 30日,政府は,自動二輪車の製造業者及び労組との間で,国内生産振興,雇用創出,部品調達率の改善及び輸出増加を目的とする政労使協定に署名した。今後3年間で,年間の国内生産台数を現在の50万台から80万台へ,現地部品調達率を5%から20%へ引上げると共に,4千人の新規雇用創出を目標としている。なお,同目標の達成のため,政府は二輪部品の輸入関税の引下げ(20%から10%)及び完成品の輸入関税の引上げ(20%から35%)を実施するとしている。
 
 エ サンタクルス州の財政赤字問題
 31日,政府は,公務員給与及び年金給付の未払いが続くサンタクルス州政府との間で,財政支援に向け,段階的な財政赤字削減を条件に,7.5億ペソの融資を行うことで合意した。なお,同融資は,ラ・ナシオン銀行が3回(2.5億ペソずつ)に分けて実施予定。
 
(2)司法・検察
 ア 最高裁による「人道に対する罪」の犯罪者に対する減刑適用判断
 3日,最高裁は,軍事政権時代に「人道に対する罪」で有罪判決を受けたルイス・ムニャ氏の刑期日数について,1日を2日とカウントして刑期を2分の1に短縮する法的措置(”2 X 1”)が適用される判決を下した。この判決によって,750名以上の「人道に対する罪」による受刑囚の刑期が減刑される可能性があるとして,議論が巻き起こると共に,人権団体,野党・左派政党は同判決に対する強い非難を表明した。さらに10日,同判決に反対する国民による大規模デモが5月広場において行われ,報道では,約50万人が参加したと報じられた。これらを受け,12日,今次判決を軍事政権時代の「人道に対する罪」に不適用とする内容の法案が議会で可決された。
 
 イ 伯オデブレヒト社によるアリーバス連邦情報局長官への贈賄疑惑
 本年1月,連邦裁判所により,2013年に伯オデブレヒト社が亜国内公共事業に関連してアリーバス連邦情報局長官に対する贈賄を行ったとされる疑惑に関する予審の開始が決定されたのに対し,本年3月,ロドルフォ・コラル連邦判事は,疑惑に関する証拠不十分として同予審を棄却する決定を下していたが,5月12日,同長官に対する汚職疑惑に関する控訴を受け,連邦裁判所は裁判の再開を決定した。なお,11日付けの当地紙では,オデブレヒト社の為替ブローカーのレオナルド・メイレレス容疑者は,ラヴァ・ジャット汚職捜査にかかるブラジルの裁判において,アリーバス長官に対し,約85万米ドルをオデブレヒト社からの賄賂として支払いを行った旨供述したと報じられた。
 
2 外交
(1)日本: マクリ大統領の訪日
 18日~20日の日程でマクリ大統領が公式訪日した。19日に行われた日亜首脳会談において,マクリ大統領は安倍総理との間で戦略的パートナーシップを深化させつつ,両国を強化することで一致し,共同プレス声明が発出された。今次訪日時に,農業,通信分野の協力覚書が署名されると同時に,日本にとって中南米諸国との間で初めてとなるワーキング・ホリデー制度に関する協力覚書の署名が行われた他,日亜投資協定の実質合意が発表された。また,20日,マクリ大統領は,御所において天皇皇后両陛下との御会見を行った他,日亜経済フォーラム,日亜友好議連との懇談会等に出席した。また,同訪問に同行したマルコーラ外務大臣は岸田外務大臣と日亜外相会談を実施した。
 
(2)中国:
 ア マクリ大統領の「一帯一路」ハイレベルフォーラムへの出席
 14~15日,中国を訪問したマクリ大統領は北京で行われた「一帯一路」ハイレベルフォーラム関連行事に出席した。同フォーラムにおいて演説を行ったマクリ大統領は,食糧安全保障のテーマにおいて,亜の食糧供給国としての貢献を強調すると共に,南米地域インフラ統合(IIRSA:La Integracion de la Infraestructura Regional Suramericana)と一帯一路構想を結びつけることに関心を持っている旨表明した。また,亜がアジアインフラ投資銀行(AIIB)への加盟も模索している旨述べた
 
 イ 中亜首脳会談
 16~17日,国賓として中国を訪問したマクリ大統領は,習近平中国国家主席と亜中首脳会談を行った。同会談において,マクリ大統領は,両国が信頼に基づく形で構造的な戦略的パートナーとなっていると述べると共に,現在の対中輸出は,3.3億米ドルであるが,食料輸出を少なくとも20億ドルに増加させたいと述べた。なお,両国間で計19の文書が署名された他,亜中共同宣言が発出された。なお,同訪問を通じて,亜は原子力発電所,鉄道,太陽光発電所建設等のインフラ分野で合計約150億ドルの融資を取り付けたとされる他,文化,スポーツ,観光等の分野における協力強化も確認された。また,16日には北京で亜中ビジネス投資フォーラムが開催された。
 
 ウ 上海国際食品・飲料見本市(SIAL)
 18日,中国を訪問したマクリ大統領は,上海で20日まで開催されたSIALにおいて特別招待国である亜のパビリオン開会式に出席した。同式典において,亜生産者らに祝意を表すると共に,今後数年間で亜の食糧輸出を10倍に増やすべく,引き続き一生懸命に取り組んでもらいたいと激励した。
 
 エ マクリ大統領とジャック・マー・アリババ総裁との会談
 2日,アルゼンチンを訪問したジャック・マー・アリババ総裁(企業間電子商取引のオンライン・マーケットを運営する中国大手企業)は,マクリ大統領と会談を行った。会談後,アリババ社と亜投資促進庁との間で,アリババ社のオンライン・プラットフォーム上で,亜の中小企業の産品(生鮮品及びワイン等)を販売する覚書(MOU)への署名が行われた。
 
(3)UAEマクリ大統領のUAE訪問
 中国及び日本訪問を前に,ア首連(UAE)を訪問したマクリ大統領は13日,ムハンマド・ビン・ラシード・アール・マクトゥームUAE副大統領兼首相と会談を行った。同会談において,両首脳は,食糧安全保障,対亜投資,在来型エネルギー及び再生可能エネルギー,観光,スポーツ,科学技術といった分野で協力を行っていくことで一致した。
 
(4)イタリア:マッタレッラ伊大統領のアルゼンチン訪問
 7~10日,アルゼンチンを公式訪問したマッタレッラ伊大統領は,8日,マクリ大統領と首脳会談を行い,二国間における組織犯罪,科学,技術,気候変動対策等に関する8つの協定への署名を行った。
 
(5)メルコスール
 ア メルコスール・CER会合の実施
 4日,当地において,メルコスールとCER(オーストラリア及びニュージーランド経済緊密化協定)との間で会合が行われた。同会合において,両経済ブロック間の対話が再開されたとして同会合の重要性が強調された。
 
 イ 日・メルコスール対話の開催
 5日,当地にて第4回日・メルコスール経済関係緊密化のための対話が開催された。亜側からはライモンディ外務次官(ラ米・メルコスール担当),日本側からは,高瀬中南米局長が出席し,双方の通商等に関する情報・意見交換が活発に行われた。
 
 ウ メルコスール・SACU(南部アフリカ関税同盟)会合の実施
 31日,南アフリカ(ヨハネスブルグ)において,特恵関税協定における両ブロック間の貿易活性化を目的として,メルコスール・SACU(南部アフリカ関税同盟)間で会合が行われた。亜側からは,サラフィア外務省メルコスール総局長が出席した。
 
(6)EU:モゲリーニEU外務・安全保障担当上級代表のアルゼンチン訪問
 29日,モゲリーニEU外務・安全保障担当上級代表がアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領と会談を行った他,マルコーラ外務大臣とも会談を行った。マルコーラ外務大臣との会談では,メルコスール・EU自由貿易協定の交渉の進捗状況,当地で開催予定のWTO閣僚級会合(本年12月)及びG20会合(2018年)の準備状況等について話し合いが行われた。
 
(7)パラグアイ:ヤシレタ二国間公団の債務問題
 4日,マクリ大統領とカルテス・パラグアイ大統領は,ヤシレタ二国間公団の金融・経済問題の解決及び同ダムの発電能力拡大に関する合意文書に署名した。今回の合意により,アルゼンチンは,ヤシレタ・ダム建設の際の同公団への融資の利子(99.9億ドル)を免除し,残りの債務40.84億ドルについては,今後30年間で返済(最初の10年は猶予期間,残り20年間で返済)されることとなった。なお,同合意文書は両国議会による批准によって発効する。
 
(8)エクアドル
 ア コレア・エクアドル大統領のアルゼンチン訪問
 17日,コレア・エクアドル大統領(当時)がアルゼンチンを訪問した。マクリ大統領は中国・日本訪問のため不在であったため,ミケティ副大統領との会談が行われた他,ベネズエラ情勢及び今後実施予定のUNASUR事務局長選挙等について話し合いが行われた。また,コレア・エクアドル大統領はフェルナンデス前大統領とも会談を行った。
 
 イ マクリ大統領のエクアドル訪問
 24日,マクリ大統領は,エクアドル(キト)を訪問し,モレノ新大統領の就任式に出席したものの,高地による体調不良のため,モレノ大統領との首脳会談をキャンセルすると共に昼食会も欠席した。
 
(9)ドイツ: マル・ドライヤー独連邦参議院議長のアルゼンチン訪問
 9日,マル・ドライヤー独連邦参議院議長はアルゼンチンを訪問し,マクリ大統領と会談を行った。また,翌10日,同議長はマルコーラ外務大臣と会談を行い,二国間関係やメルコスール・EU,G20等に関するテーマについて話し合った。なお,同訪問に同行したドイツ企業によりビジネスフォーラムが開催された。
 
(10)カタール: 第1回二国間政策協議の実施
 18日,カタール(ドーハー)において,第1回二国間政策協議が実施され,亜側からは,スラウビネン外務次官が出席した。両者の間で,二国間の様々なテーマについて話し合いが行われると共に,航空輸送,エネルギー,教育,文化,外交官アカデミー,保健衛生及びスポーツ等の分野での協力促進の重要性につき一致した。
 
(11)北朝鮮: 北朝鮮のミサイル発射に対する非難声明
 3日,15日及び22日,亜外務省は,北朝鮮によるミサイル発射を非難する旨のプレスリリースを発出した。
 
(12)要人往来
 (ア)往訪
●12~13日: マクリ大統領のUAE訪問
●14~18日: マクリ大統領の中国訪問
●18~20日: マクリ大統領の訪日
●18日:    スラウビネン外務次官のカタール訪問
●24日:    マクリ大統領のエクアドル訪問
 
 (イ)来訪
●4日:     イェルザン・アシクバエフ・カザフスタン外務次官
●9日:     マル・ドライヤー独連邦参議院議長
●7~10日:  マッタレッラ伊大統領
●17日:    コレア・エクアドル大統領(当時)
●29日:    モゲリーニEU外務・安全保障担当上級代表
 
(了)