(1)内政:
(ア)2日,フェルナンデス大統領はS状結腸炎を発症し入院,9日に退院後25日まで大統領公邸にて静養した。
(イ)10日,フェルナンデス大統領の所有会社が告発され,連邦裁判所が捜査を開始した。
(ウ)連邦歳入庁が,企業等の脱税等の取り締まりを強化し,特定企業に対する行政処分や告発を行った。
(2)外交:
(ア)15日,16日,キシロフ経済・財政大臣がオーストラリアのブリスベンで開催されたG20サミットに出席した。
(イ)30日,フェルナンデス大統領は,バスケス新ウルグアイ大統領に電話にて祝意を表明した。これに対し,バスケス大統領は近々訪亜する日を調整する旨述べた。
2 内政
(1)大統領府・政府
(ア)フェルナンデス大統領のS状結腸炎発症
2日,フェルナンデス大統領は,S状結腸炎を発症し入院した。9日に退院したが,安静と経過観察が必要なため,大統領公邸で執務にあたった。これにより,3日に予定されていたバチェレ・チリ大統領の亜訪問は延期された。また,15日に行われたオーストラリアでのG20会議等の一連の公式行事にはフェルナンデス大統領は欠席し,キシロフ経済・財政大臣等が同大統領の代理で出席した。
(イ)連邦歳入庁による行政処分
2日,連邦歳入庁(AFIP)は,アルゼンチンP&G社が輸入品の価格を水増しし,その支払いをスイスにある銀行口座に米ドル送金したことが脱税等にあたるとし,同社の輸出入停止処分及び,同社役員の亜国外退出禁止等の措置を取った。その後,同社は脱税と見なされた額を納めると回答し,AFIPは同社への処分を解除した。
27日,エチェガライAFIP長官は,亜の個人・法人が,スイスに所有する計4,040の口座を通じて脱税していたとし,同口座全てを管理するHSBC銀行を税務裁判所に告発した。
(ウ)豪雨被害者への政府支援発表
4日,カピタニッチ官房長官は,10月末から11月2日までの豪雨で被害を受けた54,000以上の世帯に対し,11月〜2015年1月の間,子供手当,妊娠者手当,家族手当,退職者年金等の受給者に対する給付額を上げると発表した。
(エ)長距離鉄道運営会社の国有化
7日,ランダッソ内務・運輸大臣は,長距離鉄道の運営会社であるフェロセントラル社(Ferrocentral)を国有化する旨発表した。同社はブエノスアイレス市,ロサリオ市,コルドバ市,トゥクマン市,ラ・パンパ市を通る路線を運営していたが,実質的には約1カ月前から内務・運輸省が経営を担っていた。
(オ)YPF社とシェブロン社との秘密合意文書スキャンダル
9日及び10日,当地各紙は,ネウケン州バカムエルタ地区におけるシェールガス・オイル開発において,YPF社(亜石油公社)と米国シェブロン社との秘密合意文書が存在するとのスキャンダルを報じた。各紙によれば,2013年4月に締結された秘密合意では,新炭化水素法の成立(10月29日成立)が投資の条件などとされていた。
これに対し,カピタニッチ官房長官は,秘密合意の存在を否定し,疑惑となっている文書とは,石油・鉱物の資源開発の契約において一般的に行われている契約書であると説明した。
(カ)治安審議会の開催
19日,治安審議会(CSI: Consejo de Seguridad Interior)の全国会議が開催され,ロドリゲス治安大臣,ベルニ治安長官,シオリ・ブエノスアイレス州知事等をはじめ,22州の治安担当長官が出席した。シオリ州知事は,治安改善は優先順位の高い仕事である旨述べ,同課題に対してより多くの人材登用や行政の支援を充実させることの重要性を強調した。
(キ)フェルナンデス大統領の公務復帰と演説
25日,S状結腸炎で2日以来入院し,退院後も大統領公邸にて静養を取りながら執務を行っていたフェルナンデス大統領が,公の場に姿を現し,亜建設会議所年次総会で演説を行った。演説内で,同大統領は,ハゲタカファンドに対する批判を行うとともに,インフラ分野に対する現政権の成果を強調した。
(ク)マソン大統領補佐官によるペロン党員の会食
25日,フアン・カルロス・マソン大統領補佐官(Juan Carlos Mazzon)は,恒例の年末夕食会を催し,約400名のペロン党員が集結した。同補佐官は,会食の目的として,フェルナンデス大統領が,2015年末にペロン党員に大統領のバトンを渡せるよう,党員のエネルギーを集結させるため,と述べた。
(ケ)フェルナンデス大統領による教会改修工事発表
27日,フェルナンデス大統領は,大統領府に教会関係者を招き,主にブエノスアイレス市近郊圏の教会の改修に,約4億ペソの公共工事費を割り当てると発表した。
(2)連邦議会
(ア)カリオー下院議員のUNEN拡大戦線からの脱退
19日,カリオー下院議員(野党・UNEN拡大戦線及び市民連合)が,UNEN拡大戦線から脱退した。同日午前のテレビ番組内で,「ぼんくら達(mediocres)と働くのは不可能」など,同戦線内のメンバーを批判する発言を行った。
(イ)農牧・水産業関連の改正法案提出
6日,カサミケラ農牧大臣は,亜食料産業強化を目的とした法案の提出を行った。そのうちの一つは,代々民間の農牧関係者が務めてきた亜牛肉振興研究所の所長の職を,農牧大臣が指名するとの規定が盛り込まれており,農牧業関係者の間に懸念が広がった。
(3)司法・検察
(ア)司法評議会議長の選出
20日,判事の推薦や司法府の予算管理を行う亜の司法評議会(Consejo de Magistratura)において,キルチネル派(フェルナンデス大統領支持派)のガブリエラ・バスケス判事が同評議会議長に,同派のクラウディオ・チョラキアン氏が評議会の官房長(事務方)の議長として選出された。評議会は計13名で,キルチネル派が評議会の過半数(7委員)を占めている。
(イ)フェルナンデス大統領所有会社への捜査
10日,フェルナンデス大統領が株式を保有する会社(Hotesur社:フェルナンデス大統領がサンタ・クルス州に持つAlto Calafateホテルの経営請負会社)が,経営報告の義務を怠った疑いでストルビセル下院議員により告発された。20日,連邦裁判所のボナディオ判事は同会社の捜査を開始した。
(ウ)最高裁判所による殺人事件データの発表
27日,サファローニ最高裁判事は,ブエノスアイレス市における殺人事件による死亡者が,2013年に176名であったとする報告書を発表した。ちなみに,2012年は158名,2011年は190名,2010年は168名だった。
(4)労働組合
(ア)年末に向けた労働争議
20日,ブエノスアイレス市の5月広場から連邦議会にかけて,反政府系とされる自治亜労働者連盟(CTA Autonoma)が年末一時金等を求め,デモを行った。
27日,運輸系労組が中心となり所得税の引き下げを要求し,朝4〜7時の短時間スト(労組は「集会」と称した)を行った。
(イ)石油系労組による労働省に対する抗議活動
25日と26日,亜石油・ガス・バイオ燃料労働組合連盟(Federacion Argentina Sindical del Petroleo, Gas y Biocombustibles)は,スト(抗議)を行い,採掘所,精製所等の生産工程が停止した。ガソリンやガスが,2日間供給されず,一部の地域で不足した。
(5)その他
(ア)アルゼンチン航空の会計監査結果の公表
5日,国家総監査局(Auditoria General de la Nacion)は,国営のアルゼンチン航空の2011年から2012年前半期の会計監査の結果報告を示し,約9億8400万ペソの赤字があったことを明らかにした。
(イ)工場爆発事故と竜巻災害による被害
6日,コルドバ州コルドバ市の化学品工場で爆発事故が起こり,最低66名の負傷者が確認され,同工場は操業停止に陥った。また同日,ミシオネス州サン・ビセンテ市で竜巻が発生し,多数の負傷者と260棟以上の家屋が倒壊した。
(ウ)コンサルティング会社による世論調査
27日付当地「エル・クロニスタ」紙は,当地コンサルティング会社の「カルロス・ファラ&アソシアードス(Carlos Fara & Asociados)」社の世論調査結果を公表した。
(i)フェルナンデス大統領の政策への支持
・支持する: 44%
・支持しない: 52%
・無回答: 4%
(ii)解決・改善して欲しい社会課題
・治安改善: 75%(8月:72%)
・インフレ抑制: 40%(8月:39%)
・雇用増加: 30%(8月:26%)
・教育改善: 20%(8月:20%)
・経済: 11%(8月:21%)
(iii)2015年大統領予備選挙における投票
・マサ下院議員(反現政権派:刷新戦線): 23.5%
・シオリ・ブエノスアイレス州知事(現政権派:勝利のための戦線): 20.0%
・マクリ・ブエノスアイレス市長(野党:共和国提案): 17.5%
・ビーネル下院議員(野党:UNEN拡大戦線及び社会党): 5.0%
・コボス下院議員(野党:UNEN拡大戦線及び急進党): 3.8%
・ランダッソ内務・運輸大臣(現政権派:勝利のための戦線): 2.8%
・カリオー下院議員(野党:市民連合): 2.0%
3 外交
(1)フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題
(ア)駐亜英国臨時代理大使への抗議
13日,亜外務省は,バルロウ駐亜英国臨時代理大使に対し,10日にサン・カルロス海峡にて英国の船艦が軍事演習を実施したことに対する抗議書簡を手交した。
(イ)メルコスール議会による支持
10日,南米南部共同市場(メルコスール)議会(Parlasur)は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題における亜への支持を表明しつつ,「可能な限り迅速に平和的且つ決定的解決方法を見出すべきである。」との声明を出した。
(2)G20サミット
15日,16日,S状結腸炎を発症し療養中のフェルナンデス大統領に代わり,キシロフ経済・財政大臣がオーストラリアのブリスベンで開催されたG20サミットに亜代表として出席した(ティメルマン外務大臣同行)。同大臣は,最終成果文書にソブリン債再編問題に関する言及が盛り込まれたことにつき,満足の意を表明した。
(3)米国
(ア)米公益機密解除委員会議長の任命に対する亜政府の抗議
10月31日,フェルナンデス大統領は,オバマ米大統領に対しホールドアウト問題で亜政府と対立するハゲタカファンドのロビイストの1人であるナンシー・ソーダバーグ氏が,オバマ米大統領により米公益機密解除委員会の議長に任命されたことを非難する5頁に亘る書簡を発出した。4日,米国務省スポークスパーソンは,同氏は亜債権者との訴訟問題には何ら関係がない旨述べた。
(イ)亜裁判所による米国裁判所への国際司法共助要請
13日,キルチネル家と親しい亜の実業家ラサロ・バエス氏のマネーロンダリング疑惑を巡り,カサネロ連邦裁判事は,亜外務省を通じ米国裁判所に対する国際司法共助要請を行い,バエス氏の資金移動等,米国における全ての情報の提供を求めた。
(4)中国
(ア)Zhu Zhixin中国国家発展改革委員会副主任との会合
16日,キシロフ経済・財政大臣は,オーストラリアにて,Zhu Zhixin中国国家発展改革委員会副主任と会合し,フェルナンデス大統領の中国訪問時期について協議した。その結果,2015年上旬の訪中の可能性が取り上げられた。
(イ)カサミケラ農牧・漁業大臣の訪中
24日,中国を訪問したカサミケラ農牧・漁業大臣は,Zhi Shuping中国国家質量監督検査検疫総局(AQSIQ)との間で,中国による亜産ソルガムの輸入解禁を約束する植物衛生に関する議定書への署名を行った。また今次訪問により,亜産梨及びリンゴの中国輸出に関する議定書(2014年7月署名)が発効した。
(5)ウルグアイ
30日夜,フェルナンデス大統領は,同日実施されたウルグアイ大統領選挙で当選したバスケス・ウルグアイ新大統領に電話にて祝意を表明した。これに対し,バスケス新大統領は,近々亜を訪問すべく具体的な日付を確定するよう調整を開始する旨述べた。
(6)チリ
3日に,亜智平和友好条約締結30周年を祝うべく,バチェレ・チリ大統領の訪亜が予定されていたが,フェルナンデス大統領の病状により,訪問は延期された。
(7)国際司法裁判所
11日,亜外務省は,国際司法裁判所(ICJ)裁判官選挙に亜代表として立候補していたスサナ・ルイス・セルッティ氏の立候補を取り下げる旨発表した。
(8)要人往来
(ア) 往訪
6日 |
デビード公共事業大臣のボリビア訪問(モラレス・ボリビア大統領と面会) |
6日 |
マクリ・ブエノスアイレス市長のパラグアイ訪問(カルテス・パラグアイ大統領と面会) |
7日 |
ティメルマン外務大臣,スアイン筆頭外務副大臣及びべルニ治安活動長官のモナコ訪問(インターポール総会出席) |
10日 |
ティメルマン外務大臣のウルグアイ訪問(第13回Parlasur特別会合出席) |
11日 |
スアイン筆頭外務副大臣のイタリア訪問 |
12日 |
シレオニ教育大臣のバチカン訪問(フランシスコ・ローマ法王と面会) |
13日〜16日 |
キシロフ経済・財政大臣及びティメルマン外務大臣のオーストラリア訪問(G20サミット出席) |
17日〜19日 |
ティメルマン外務大臣の米国訪問 |
18日 |
ブスタマンテ農牧・漁業副長官の中国訪問 |
19日 |
メイヤー観光大臣のフランス訪問(2015年第37ダカールラリー(チリ・ボリビア・アルゼンチンを横断)公式発表出席) |
24日 |
ティメルマン外務大臣のチリ訪問(メルコスール・太平洋同盟間セミナー出席) |
24日 |
カサミケラ農牧・漁業大臣の中国訪問 |
27日 |
カピタニッチ官房長官及びキシロフ経済・財政大臣のブラジル訪問 |
29日 |
ティメルマン外務大臣のメキシコ訪問(ブックフェア開会式出席) |
30日 |
カサミケラ農牧・漁業大臣のベトナム訪問 |
(イ)来訪
(以下の日程で下記要人が当地で会談等を実施したとの情報あり)
4日 |
バレーラ・チリ国防大臣 |
10日〜15日 |
フォミチェフ露経済発展副次官 |
12日 |
ロイサガ・パラグアイ外務大臣 |
12日 |
サンペール南米諸国連合(UNASUR)事務総長 |
14日 |
コノバロフ露司法大臣 |
26日 |
ダチッチ・セルビア外務大臣 |
26日 |
ババイエフ・アゼルバイジャン経済産業次官 |