アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2025年4月)
1 内政
(1)議会
●上院における最高裁判事の大統領令による任命の拒否(3日)
ア 3日、上院は、リホ連邦裁判所判事及びガルシア=マンシージャ最高裁判事の大統領令による任命の承認を、賛成20票、反対51票で否決した。
イ 7日、ガルシア=マンシージャ最高裁判事が辞任を表明した。なお、リホ連邦判事は、3月下旬、現職続投の意向を表明し、最高裁判事就任を辞退していた。
●暗号通貨事件を巡る下院審議(8日)
ア 8日、下院は、暗号通貨事件に関する議会特別委員会設置を求める特別審議を実施し、賛成128票、反対93票で可決した。併せて、同審議では、フランコス内閣官房長官等の政府閣僚に対し、質疑応答を実施することも決定した。
イ 29日、下院で、フランコス内閣官房長官に対する議会答弁が実施された。出席予定だったその他の閣僚は、業務の都合等で欠席した。
(2)経済
●為替規制の撤廃(11日)
11日、政府は、外貨・為替規制(CEPO)の撤廃、為替バンド制度(設定された為替レートの範囲内でレートが需給に応じ自由に推移するようにする)の導入、個人向け外貨購入制限措置の撤廃等を発表した。
(3)治安情勢
●第3回ゼネストの実施(9、10日)
ア 9日、翌日(10日)のゼネストに先立ち、連邦議会前広場前で、労組等による政府に対する抗議活動が、水曜定例の退職者のデモに合流しつつ行われた。
イ 9日半日及び10日終日、36時間のゼネラルストライキが実施された。
●労働者の日に際しての抗議活動の実施(30日)
30日、労働総同盟(CGT)は、労働者の日(メーデー)に際してブエノスアイレス市内で政府に対する抗議のための行進を行った。
(4)選挙関連
●ブエノスアイレス州議会選挙等の前倒し実施の決定(7日)
ア 7日、キシロフ・ブエノスアイレス州知事は、本年の同州議会選挙等の地方選挙を、国政選挙とは別日程となる9月7日に実施することを発表した。
イ 28日、州下院は、州議会選挙予備選挙(PASO)の一時停止を決定した。
●サンタフェ州地方選挙の実施(13日)
13日、サンタフェ州地方選挙(州憲法改革議会選挙等)が行われ、プジャロ同州知事が率いる急進市民同盟(UCR)や共和国提案(PRO)による政党連合が34.6%で勝利した。続いて、ペロン党派、LLAが二位以下についた。
●ブエノスアイレス市議会選挙候補者討論会の実施(29日)
29日、ブエノスアイレス市議会選挙の候補者討論会が実施された。本討論会の視聴率は、1%程度であった。
2 外交
(1)対米関係
●ミレイ大統領の訪米(3~4日)
ア 3日、ミレイ大統領は、フロリダ州マル・ア・ラゴを訪問し、「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」賞の授賞式に出席した。本式典で、ミレイ大統領は、トランプ米大統領の関税提案を受け、国内規制の適正化や要件を満たすために関係各省に指示した旨明らかにした。なお、本式典の出席に際し、ミレイ大統領のトランプ米大統領との対面・バイ会談等は行われなかった。
●ウェルテイン外相のワシントン市訪問(1~3日)
ア 1日、ウェルテイン外相は、訪問先のワシントン市で、ルビオ米国務長官と会談した。本会合で、ウェルテイン外相は、アルゼンチンがベネズエラとの間で有している問題等につき言及した。
イ 3日、ウェルテイン外相は、ラトニック米商務長官及びグリアUSTR代表と会談し、米国の関税措置や二国間貿易等に関し協議した。
●ベッセント米財務長官のアルゼンチン訪問(14日)
14日、ミレイ大統領及びカプート経済相は、アルゼンチンを訪問したベッセント米財務長官とそれぞれ会談した。右会談後、ミレイ大統領とベッセント長官は、共同記者会見を行った。
●ホールジー米南方軍司令官のアルゼンチン訪問(28~30日)
ア 29日、ミレイ大統領及びペトリ国防相は、アルゼンチンを初訪問したホールジー米南方軍司令官と会談し、二国間の防衛協力の強化等につき協議した。
イ 30日、ホールジー司令官は、ウシュアイア市のアルゼンチン海軍の基地を訪問し、同海軍の幹部等と会談した。
(2)その他首脳級の動き(教皇フランシスコ逝去関連は(5)を参照)
●ミレイ大統領のフォークランド(マルビーナス)記念式典への出席(2日)
ア 2日、ミレイ大統領は、ブエノスアイレス市内で行われたフォークランド(マルビーナス)紛争の戦没者・退役軍人の日の記念式典で演説し、アルゼンチンのフォークランド(マルビーナス)諸島等における正当な主権を確認した。
イ 同日、ビジャルエル副大統領は、メレラ・ティエラ・デル・フエゴ州知事と共に、同州州都のウシュアイア市で行われた式典に出席した。
●ミレイ大統領のパラグアイ訪問(9日)
9日、ミレイ大統領は、パラグアイを初訪問し、ペーニャ・パラグアイ大統領と会談した。今次首脳会談では、二国間協力やメルコスールにつき協議した他、ヤシレタ二国間公団や両洋間回廊の重要性が確認された。
(3)閣僚級
●メルコスール外相会合の開催(11日)
11日、ブエノスアイレス市で、メルコスール外相会合が開催された。本会合では、メルコスールの近代化や対外交渉を進めることが確認された他、対外共通関税の国別例外品目表の拡大につき協議した。
●ブルリッチ治安相の訪英(28、29日)
ア 28日、ブルリッチ治安相は、英国を訪問し、ジャービス英内務省閣外大臣(安全保障担当)と共に、二国間協力の強化、犯罪組織に関する情報交換や国境警備の強化等を定めた覚書(MOU)の更新に署名した。
イ 同日、ブルリッチ治安相は、クーパー英内相、フィリップス英内務省政務次官(保護及び女性・少女に対する暴力担当)、パウエル英国家安全保障担当首席補佐官等とも、両国の安全保障上の脅威に対する具体的な措置につき協議した。
ウ 29日、ブルリッチ治安相は、英国最大の青少年の拘置施設を視察した他、英国家犯罪対策庁(NCA)及び英外務省関係者と会談した。
(4)国際機関の動き
●IMF理事会における新規プログラムの承認(11日)
11日、IMF理事会は、アルゼンチンに対する新たな拡大信用供与措置を承認した。今回承認されたプログラムは、48カ月で総額約200億米ドルを供与するもので、即時に約120億米ドルがディスバースされる。
●世銀、IDBのアルゼンチン向け支援パッケージの発表(11日)
11日、世銀グループは、アルゼンチンに対する120億ドルの支援パッケージを発表した。同日、米州開発銀行(IDB)も、アルゼンチンを支援するため、3年間で最大100億ドルを融資するパッケージを発表した。
(5)教皇フランシスコの逝去に伴う一連の動き
●教皇フランシスコの逝去に係るアルゼンチン国内の反応(21日)
ア 21日早朝(アルゼンチン時間)に教皇フランシスコが逝去したことを受け、大統領府及び外務省は追悼の意を表する声明を発出した。また、ミレイ大統領及び政府関係者、大統領経験者等の当地政治家の多くが、X上で追悼の意を表した。
イ また、政府は、21日から28日までの7日間の国喪、及び右期間中の公式行事等の中止を発表した。
●ミレイ大統領等の教皇フランシスコの葬儀への参列(26日)
26日、ミレイ大統領は、バチカン市国を訪問し、教皇フランシスコの葬儀に参列した。今次訪問には、カリーナ・ミレイ大統領府長官、フランコス内閣官房長官、ウェルテイン外相、ブルリッチ治安相、ペトベージョ人的資本相、アドルニ大統領府報道官等が同行した。
(6)対中関係
●アルゼンチン・中国議会間の第5回政治対話の開催(15日)
15日、下院にて、アルゼンチン・中国議会間の第5回政治対話が開催された。
●通貨スワップ協定の更新(10日)
10日、中銀は、中国人民銀行との二国間通貨スワップ協定の350億人民元(50億米ドル)の発動済み枠の全額を、12ヶ月間更新することで合意した。
(7)その他
●CELAC最終文書案の手続きに関するアルゼンチンの抗議(10日)
10日、外務省は、9日のラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会合で、アルゼンチンが最終文書案の採択に反対したにもかかわらず、カストロ・ホンジュラス(CELAC議長国)大統領が、当該文書の採択を強行したことに抗議し、同宣言の有効性を認めない声明を発出した。
(8)要人往来
往訪:
米国:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、カプート経済相(2~4日)、ウェルテイン外相(1日~4日)
パラグアイ:ミレイ大統領、カリーナ長官、ウェルテイン外相(9日)
中国:ハリル・カタマルカ州知事、ビダル・サンタクルス州知事(9日)
バチカン市国:ミレイ大統領、カリーナ長官、フランコス内閣官房長官、ウェルテイン外相、ブルリッチ治安相、ペトベージョ人的資本相、アドルニ大統領府報道官、ソテロ外務副大臣(宗務・文明担当)(26日)
英国:ブルリッチ治安相(28、29日)
来訪:
世銀:バンガ総裁(2日)
ウルグアイ:ルベッキン外相
パラグアイ:ラミレス外相
ブラジル:ヴィエイラ外相
ボリビア:ソサ外相(以上、11日のメルコスール外相会合)
米国:ベッセント財務長官(14日)、ホールジー南方軍司令官(28~30日)
中国:Xiao Kaiti Yiming全人代民族委員会副主任委員他(15日)
(了)