アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和4年9月21日

アルゼンチン政治情勢(2022年8月)

2022年9月作成
在アルゼンチン日本大使館



1 内政

(1)政府:
ア 経済省人事
 3日、マサ経済大臣(経済・生産開発・農牧漁業を所管)が就任し、副大臣等の人事及び当面の経済財政政策の方針が発表された。また2日同新大臣は就任に先立ち下院議員及び下院議長を辞任し、モロー下院議員(マサ新大臣率いる「刷新戦線」所属)が新たに下院議長に就任した。
 21日、マサ経済大臣は、エコノミストのルビンステイン氏を経済副大臣(経済計画担当)に任命する旨発表した。
イ 7月インフレ率
 11日、国家統計局(INDEC)は7月の消費者物価指数(インフレ率)が過去20年間で最高となる前月比7.4%の上昇となった旨発表した。
ウ 経済関連の政策
(ア)牛肉の輸出制限措置の緩和
 29日、政府は、本年9月から牛肉の輸出調整量を緩和し、毎月さらに4,500トンの牛肉の輸出を認める旨発表した。
(イ)自動車セクターに係る輸出税の減免
 31日、マサ経済相は、トヨタ・アルゼンチン社サラテ工場を視察し、自動車及び自動車部品の輸出が2020年比で増加した分については輸出税を免除することを改めて発表した。
(2)「公共事業・有料道路」事件:
ア クリスティーナ副大統領に対する求刑
 22日、クリスティーナ・フェルナンデス(以下、クリスティーナ)副大統領が起訴されている「公共事業・有料道路」事件(同副大統領が大統領を務めていた際にサンタ・クルス州の公共事業で特定業者に入札の便宜を図ったとされる事件)の口頭審において、同事件を担当するルシアーニ検事が懲役12年及び公職からの永久追放を求刑した。
イ 政府プレスリリースの発出
 22日、大統領府は、亜司法府を非難するプレスリリースを発出し、同事件に関する最終陳述及び求刑において表明されたクリスティーナ副大統領に対する司法及びメディアによる迫害行為を非難し、同副大統領への連帯を表明した。
ウ クリスティーナ副大統領の抗弁 
 23日、クリスティーナ副大統領は、上院内の自身の執務室にて、約1時間半に及ぶ抗弁を自身のSNSでライブ配信し、担当検事、野党、メディア等に対する批判を行った。
エ フェルナンデス大統領の不適切発言
 24日、フェルナンデス大統領がテレビ番組に出演し、同事件を担当するルシアーニ検事と「イラン覚書事件(クリスティーナ副大統領が大統領時に、イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の容疑者を隠匿するイラン政府との覚書に署名した疑い)を担当し自宅で死亡が確認されたニスマン検事とを比較し、「ニスマン検事は自殺したが、ルシアーニ検事が同じようなことをしないよう願う。」と不適切な発言をし問題視された。
オ 野党によるフェルナンデス大統領の弾劾要請の提出
 25日、野党連合は、上記フェルナンデス大統領の発言はルシアーニ検事を「威嚇し、脅迫し、不快にさせる」発言であり、大統領の司法権の行使及び係争中の事件に関し意見することを禁止する憲法第109条に違反するとして同大統領の弾劾を要請する法案を下院に提出した。
カ クリスティーナ副大統領自宅周辺における大規模支持集会
 26日、ラレタ・ブエノスアイレス市長(野党)は、クリスティーナ副大統領自宅周辺をバリケードで囲むとともに同市警察を配置する旨命じたことを受け、27日朝、与党ペロン党は、同自宅前で上記措置に対する抗議デモを実施。19時頃、マクシモ・キルチネル下院議員(同副大統領の子息)が同副大統領の自宅に入ろうとしたところ市警察が同下院議員を殴打し、汚い言葉で罵ったことを受けて与党関係者が抗議。21時頃、ラレタ市長が会見を行い、暴力的行為を働いたのは集会参加者であり、近隣住民の安全のために市の介入義務がある旨表明した。22時頃、同副大統領が自宅から聴衆に向かって演説し、「市警察による暴力行為」を非難した上で参加者に帰宅を促しようやく散会した。
 
2 外交

(1)中国:
ア 7日、バカナルバハ駐中国亜大使は、中国中央テレビ(CCTV)のインタビューにおいて、ペロシ米国下院議長による台湾訪問は中国に対する挑発であると非難した。これに関し、カフィエロ外相は当地ラジオ番組で、亜は一つの中国の原則を支持しており、ペロシ議長の台湾訪問を挑発であると述べる一方、「第三国が実施する外国訪問や使節団派遣につき言及することは亜大使の役割ではない」とした。
イ 12日、マサ経済相はZou Xiaoli駐亜中国大使の表敬を受け、亜中経済関係等につき協議した。また15日、中国はティエラ・デル・フエゴ州における肥料工場建設を発表した。
ウ 29日付当地主要紙「クラリン」は、中国Xiaomiが亜進出を決定し、ティエラ・デル・フエゴ州で携帯電話の生産を開始する旨報じた。
(2)インド:
 25~26日、ジャイシャンカル・インド外相が訪亜し、フェルナンデス大統領表敬や外相会談が行われた。
(3)ドイツ:
 24日、カフィエロ外相は、訪亜したリントナー独外務省国務大臣と会談した。
(4)コロンビア:
 6~7日、フェルナンデス大統領はコロンビア大統領就任式に出席し、ペトロ・コロンビア大統領、カストロ・ホンジュラス大統領及びアルセ・ボリビア大統領と会談等を行った。
(5)ベネズエラ:
 11日、亜司法当局が、フロリダの裁判所の決定に従いイラン人及びベネズエラ人搭乗の貨物機の押収を決定したことに対し、ベネズエラのマドゥーロ政権は亜政府を批判し、機体及び乗組員の返還を求めるキャンペーンをベネズエラ国内で展開した。
(6)NPT運用検討会議
 1日、カフィエロ外相は、第10回NPT運用検討会議に出席し演説を行った。
(7)米州協会・米州評議会共催会議:
 18日、ブエノスアイレス市において米州協会(AS)と米州評議会(COA)共催の会議が開催され、マサ経済相らが演説を行った。
(8)ラテンアメリカ開発銀行:
 19日、マサ経済相は、ディアス・グラナドス・ラテンアメリカ開発銀行(CAF)総裁と会談し、CAFによる7.4億ドルの開発融資契約への署名を行った。
(9)CELAC-CAF共催セミナー:
 18日、当地において、亜が議長国を務めるラ米カリブ諸国共同体(CELAC)は、ラテンアメリカ開発銀行(CAF)と共催でセミナーを実施した。ムヒカ元ウルグアイ大統領、サンペール元コロンビア大統領らがパネリストとして参加し、閉会式ではフェルナンデス大統領が演説を行った。
(10)要人往来:
ア 往訪
 米国:カフィエロ外相(NPT運用検討会議)。
 コロンビア:フェルナンデス大統領他(大統領就任式)。
イ 来訪
 ドイツ:リントナー外務省国務大臣。
 インド:ジャイシャンカル外相。
 CELAC-CAF共催セミナー:ムヒカ元ウルグアイ大統領、サンペール元コロンビア大統領、ディアス・グラナドス・ラテンアメリ カ開発銀行(CAF)総裁他。
 

(了)