アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
令和元年11月1日
アルゼンチン政治情勢(2019年9月)
2019年10月作成
在アルゼンチン日本大使館
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 政府及び中央銀行による資本規制
1日,亜政府及び中銀は更なる外貨流出による通貨下落やインフレ等を防ぐため,個人・法人への外貨購入規制や輸出企業に対する輸出代金の国内還流とペソ転義務付けなどの新たな資本規制を発表した。8月28日の短期国債等の返済期限延長に続く措置で,本年9月2日から12月31日までの時限付措置となっている。
イ 失業率10.6%に増加
国家統計局(INDEC)は,2019年第二四半期の失業率が10.6%であったと発表した。この数値は,マクリ政権下及び直近13年間で最も高い数字であった。
ウ 大統領選挙候補者による討論会での発言順発表
26日,選挙管理委員会(Cámara Nacional Electoral: CNE)は,10月13日と20日に実施される大統領選挙候補者討論会での発言順を発表した。13日は,マクリ大統領(「変革のために共に」)が最初の発言者で,アルベルト・フェルナンデス候補(ペロン党「全国民のための戦線」),デル・カーニョ候補(「統一左派戦線」),ゴメス候補(「我々の戦線」),エスペール候補(「覚醒戦線」),ラバーニャ候補(「連邦合意」)の順となっている。20日は,マクリ大統領,デル・カーニョ候補,ラバーニャ候補,エスペール候補,フェルナンデス候補,ゴメス候補の順となっている。
エ マクリ大統領選挙キャンペーンの再開
28日,マクリ大統領は,10月27日の大統領選挙に向けた選挙キャンペーンを再開した。8月11日の予備選挙後の経済的混乱沈静化のため,大統領職を優先させ選挙キャンペーンを控えてきたが,「Sí se puede(Yes we can)」のスローガンの下,28日のブエノスアイレス市を皮切りに本選挙までに国内30都市を訪問する予定。
オ 貧困の拡大
30日,国家統計局(INDEC)は,2019年上半期の貧困率が35.4%に達したと発表した。貧困状態にある国民は14.4百万人に上り,極貧層も2018年同時期の4.9%から7.7%に増加し,人数では3.1百万人となった。
(2)国会
ア 2020年予算案の提出
16日,ラクンサ財務大臣は,2020年予算案を国会に提出した。なお,野党ペロン党は,同予算案の審議については,10月27日の大統領選挙後に行い,12月10日の政権交代後に採決すると発表している。今回の予算案提出は,亜国内法上9月に予算案を国会に提出することが義務づけられていることから行われた形式的なものと見られている。
イ 緊急食料法の成立
18日,緊急食料法が上院全会一致で可決・成立した(下院は,12日に賛成222,棄権1,反対0で通過済)。本議決により,2002年から実施されている食料支援法が2022年末まで延長され,貧困層向けの食料支援予算が50%増額されることになった。9月に入り,食料支援を求める社会開発省前での座り込み,デモ行進などが頻発していたほか,教会代表者が大統領に食料支援を直接要求するなど,支援への声が高まっていた。
(3)司法
ア 大統領選挙予備選挙結果発表
4日,選挙裁判所は,8月11日に実施された大統領選挙予備選挙結果を発表した。最多得票候補のペロン党「全国民のための戦線」のアルベルト・フェルナンデス候補は,47.78%,与党「変革のために共に」のマクリ大統領は,31.79%の得票率で第2位であった。
イ クリスティーナ・フェルナンデス前大統領の海外渡航許可
10日,連邦刑事裁判所は,フェルナンデス前大統領から出されていたキューバへの海外渡航(11~16日)を許可した。キューバで療養中の子女の見舞いのためであり,同前大統領は,8月にもキューバを訪問している。
(4)その他
ア 緊急食料支援等を求めるデモ
4日,7月9日通りから国会前及び社会開発省前に至る広い範囲で,緊急食料支援,期限付の緊急社会支援法の延長,最低賃金の引き上げ等を求めるデモが行われた。7月9日通りでは,通行が妨げられメトロバスを含む交通に混乱が生じた。参加者の中には,テントを用意して夜を明かすものもあり,デモは,翌5日午前中まで続けられた。
10日には,7月9日通りオベリスク周辺から5月広場にかけて,政府関係機関職員の労働組合(ATE)とアルゼンチン労働者連合(CTA)が呼びかけた緊急食料支援及び雇用の確保等を要求するデモが実施された。また,緊急食料支援法を求め,社会運動グループCTEPが,ブエノスアイレス市内のショッピングモールに横断幕を張るなどの表明行為を実施した。7月9日通りでは,11日にも,ポロ・オブレロ及びバリオス・デ・ピエといったピケテロ・グループが中心となり,デモが実施された(ブエノスアイレス市によれば,6,000人が参加)ほか,11日午後からは,社会開発省前で,FOL,FPDS等の社会団体やピケテロ・グループにより48時間座り込み(2,000人ほどが夜間も滞在)が行われた。
イ チュブット州給料未払い問題及び教員による24時間ストライキ
5日,チュブット州の公立学校教員への給料未払いに端を発したストライキが,同州及びパタゴニア地域の周辺州を中心に実施された。学校のスト以外にブエノスアイレス市中心部では,同日,7月9日通りのオベリスク周辺からチュブット州事務所を通り,教育省及び5月広場まで教員によるデモも行われた。また,17日にチュブット州でデモに参加した教員2名が帰り道で死亡した事故が起きたことを契機として,給料支払い問題の解決を求め,教員組合CTERAの呼びかけで19日にも全国規模でのストライキが実施された。
ウ 左派グループによるデモ
24日午後,雇用政策などの実施を求めて,ポロ・オブレロを初めとする左派系ピケテロ・グループが中心となり,Pueyrredon橋などの主要道路を約3時間閉鎖し,5月通りのアルゼンチン工業連盟(UIA)前から,5月広場までデモ行進を実施した。
エ 航空労働組合によるスト
30日午後,アルゼンチン航空及びアウストラル航空の労働組合がストを実施した。エセイサ空港とアエロパルケで105便に遅れや欠航が出たため,1万人以上が影響を受けた。
2 外交
(1)日本: 新大使のマクリ大統領への信任状奉呈
9日,日本,インド,イスラエル,フランス及びフィンランドの5カ国の大使がマクリ大統領に信任状を奉呈した。
(2)米国:
ア イバンカ・トランプ大統領補佐官及びサリバン米国務副長官の訪亜
4日,イバンカ・トランプ米大統領補佐官とサリバン米国務副長官がフフイ州を訪問した。本訪問は,米国政府が実施している女性の経済的エンパワーメントに関するプロジェクトに関連するものであり,両氏は,地元NGO事務所や女性企業家の訪問も行った。また,同訪問に合わせ,米海外民間投資公社(OPIC)による道路拡張・補修事業への4億ドルの融資決定が発表された。
イ マクリ大統領の第74回国連総会出席
24日,マクリ大統領は,第74回国連総会において一般討論演説を実施した。本訪問には,フォリー外務大臣,ポンペオ内閣府戦略長官が同行した。
(3)スペイン:アルベルト・フェルナンデス大統領候補のスペイン訪問
8月11日に実施された亜大統領選挙予備選挙で最多得票を獲得したペロン党「全国民のための戦線」のアルベルト・フェルナンデス大統領候補は,2~5日にかけてスペインを訪問した。当初から予定されていたカミロ・ホセ・セラ大学での講演の他,3日にボレル外務大臣及びグリンスパン・イベロアメリカ会議事務局長,5日には,サンチェス・スペイン首相やサパテロ元首相とも会談した。また,滞在中,サンタンデール銀行,BBVA,テレフォニカ等の企業代表との面談も行われた。
(4)ポルトガル: アルベルト・フェルナンデス大統領候補のポルトガル訪問
6日,ペロン党「全国民のための戦線」のアルベルト・フェルナンデス大統領候補は,ポルトガルを訪れ,コスタ・ポルトガル首相と会談した。
(5)中国:
ア 魏鳳和中国国防部長の来亜
4日,中国の魏鳳和国防部長が来亜し,マクリ大統領を表敬したほか,アグア国防大臣と会談した。亜兵士の中国での訓練や国連平和維持活動への共同参加等に関する二国間協定が署名されたほか,中国側からから亜へ移動可能な病院設備の供与が約束された。
イ 大豆粕の輸出に関する合意
10日,農牧漁業省は,プレスリリースを通じ,中国への大豆粕の輸出に関して合意したと発表した。この合意は,20年に及ぶ交渉の成果であり,中国は5億頭の牛豚を擁する大豆粕消費世界第一の国であることから,アルゼンチンにとって大きなチャンスであるとしている。
(6)ボリビア: アルベルト・フェルナンデス大統領候補のボリビア訪問
19日,ペロン党「全国民のための戦線」のアルベルト・フェルナンデス大統領候補は,ボリビアを訪問し,モラレス大統領他と会談した。
(7)ペルー:アルベルト・フェルナンデス大統領候補のペルー訪問
20日,ペロン党「全国民のための戦線」のアルベルト・フェルナンデス大統領候補は,ペルーを訪問し,ビスカラ・ペルー大統領と会談した。また,経済団体代表者
と昼食を,ムニィス・リマ市長及びペルー国会関係者と夕食を共にした。
(8)要人往来
ア 往訪
●2~6日 | アルベルト・フェルナンデス大統領候補(ペロン党「全国民のための戦線」)のスペイン・ポルトガル訪問 |
●19~20日 | アルベルト・フェルナンデス大統領候補(ペロン党「全国民のための戦線」)のボリビア・ペルー訪問 |
●24日 | マクリ大統領,フォリー外務大臣及びポンペオ内閣府戦略長官米国訪問(国連総会出席) |
●23~26日 | ラクンサ財務大臣及びサンドレリス中銀総裁米国訪問(投資家及びIMFとの会合等) |
●27日 | ピチェト上院議員(与党「変革のために共に」副大統領候補)ブラジル訪問 |
イ 来訪
●4日 | イバンカ・トランプ米大統領補佐官及びサリバン米国務副長官(フフイ州訪問) |
●4日 | 魏鳳和中国国防部長 |
(了)
バックナンバー
2019年
|
|
|
|
|||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2018年
|
|
|||||||||||
2017年
|
||||||||||||
2016年
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|||
2015年
|
||||||||||||
2014年
|
||||||||||||
2013年
|
||||||||||||
2012年
|
||||||||||||
2011年
|
||||||||||||
2010年
|
||||||||||||
2009年
|
||||||||||||
2008年
|
||||||||||||
2007年
|
||||||||||||
2006年
|
||||||||||||
2005年
|
||||||||||||
2004年
|
||||||||||||
2003年
|
||||||||||||
2002年
|