政治情報
月1回更新

2013年1月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2013年2月作成
在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)内政:亜農牧協会(SRA)所有の大型展覧会施設「ラ・ルラル」の再国有化をめぐる裁判で,連邦控訴裁判所の民事・商事部は,政府による同施設の再国有化を定めた政令第2552号の執行を一時停止する措置を講じた。放送法改正法の違憲性をめぐる裁判に関しては特段の進展はなく,現状は,引き続き控訴裁判所による違憲性の有無の判断が待たれている状態となっている。その他,フェルナンデス大統領は所得税の課税最低限度額を約2年ぶりに20%引き上げる旨発表した。

 

(2)外交:フェルナンデス大統領は,療養中のチャベス・ベネズエラ大統領を見舞う為,キューバのハバナを訪問し,病院にてチャベス大統領の娘と面会した。その後,フェルナンデス大統領はアラブ首長国連邦,インドネシア及びベトナムを訪問した。また,同大統領はチリで開催された「第1回ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)・欧州連合(EU)首脳会合」に出席した。ティメルマン外相及びサーレヒ・イラン外相は,エチオピアのアディスアベバにて,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決に向けた真実委員会を設置するための覚書への署名を行った。


2 内政


(1)放送法改正法をめぐる裁判 

 

(ア)2日,内閣府及び独立行政法人「連邦視聴覚コミュニケーション・サービス機構」(Autoridad Federal del Servicios de Comunicacion Audiovisual:AFSCA)は,放送法改正法の違憲性をめぐる裁判を早めるため,1月の司法機関の夏休みを返上するよう裁判所に対して申し立てた。右訴訟は現在,第二審にあたる連邦控訴裁判所の民事・商事部の下にあるが,4日,同控訴裁判所は最高裁判所の要請により,夏休みを返上する旨決定した(注:但し,1月中には同訴訟に関する特段の進展はなく,現状は,引き続き控訴裁判所による違憲性の有無の判断が待たれている状態)。

 

(イ)3日,人権団体「5月広場の母」(注:亜軍政期の行方不明者問題の真相究明を求める行方不明者家族会)のボナフィニ代表は最高裁判所の前で演説を行い,今後,毎週木曜日に同裁判所の7名の判事一人一人の過去(注:軍事政権との結びつきを示すような過去等を指す)を暴いていくとし,放送法改正法の違憲性をめぐる訴訟で最高裁が政府に有利な判決を下すよう,司法界に対して圧力をかけた。

 

(ウ)28日,フェルナンデス大統領は国営放送を介した演説において,司法による執行停止措置によって,行政府が推し進める各プロジェクトが行き詰まっているとの認識を示し,以下のように述べた。「司法界に対して言いたいことは,執行停止措置に関してである。(放送法改正法の問題にせよ,亜農牧協会(SRA)所有の大型展覧会施設「ラ・ルラル」の再国有化にせよ)実際に亜では執行停止措置と一杯の水ならば,どの判事も断らずに差し出してくれるような事態となっている。右は全く信じがたいことである。自分(「フェ」大統領)が切に判事に対して頼みたいことは,執行停止措置(の乱発)を制限するべきだということである。(司法界は変化のために)何かをするつもりがないからといって,お決まりのように政府の意志に背いて執行停止状態を作り出すべきではない。自分(「フェ」大統領)は犠牲を恐れずに,全ての努力を尽くして仕事をしているが,司法による執行停止措置(の乱発)はそれを躓かせ,経済的に国に大打撃を与える可能性がある」。

 

(2)亜農牧協会所有の大型展覧会施設「ラ・ルラル」の再国有化をめぐる裁判

 

(ア)4日,ブエノスアイレス市のパレルモ地区にある亜農牧協会(SRA)所有の大型展覧会施設「ラ・ルラル」の再国有化をめぐる裁判で,連邦控訴裁判所の民事・商事部は,政府による同施設の再国有化を定めた政令第2552号の執行を一時停止する措置を講じた(注:SRAは政府によるラ・ルラルの再国有化の法的正当性に関する司法の判断が出るまで,政府が定めた同施設からの30日以内の立ち退き請求の執行を停止するよう,12月に司法に対して申し立てていたが,第一審は同申し立てを退けていた)。

 

(イ)5日,フェルナンデス大統領は自身のツイッター上で控訴裁判所の民事・商事部の判事等に言及し,同判事等が行政府及び立法府の決定を棄却することによって政治的支配を実効しており,民主主義のシステムが深刻に損害されていると述べた。

 

(ウ)7日,政府は第二審による執行停止措置を不服として,本件の担当部を民事・商事部から行政訴訟部に移すよう裁判所に対して申し立てた(注:放送法改正法をめぐる裁判同様,政府は本件に関しても連邦控訴裁判所の民事・商事部が反政府の立場をとっていると理解しており,右を避けるべく行政訴訟部への取扱部署の変更を求めた)。

 

(エ)9日,政府は控訴裁判所の民事・商事部の4日の判決(執行停止措置)を不服とし,同部の全判事を忌避した。

 

(オ)24日,上記の忌避を受け,控訴裁判所の民事・商事部は,行政府が司法に意図的に介入することによって司法の機能を阻害し,政府にとって都合のいい判決が出るように圧力をかけていると批判した。


(3)中国からの鉄道車両購入

 

(ア)10日,フェルナンデス大統領は国営放送を通じて演説を行い,中国企業からの鉄道車両の購入について以下のように発表した。

 

(@)亜政府は世界で最も重要な企業の一つ(注:中国のCSR社)とサルミエント線及びミトレ線用の車両購入契約を交わした(注:今次演説中,フェルナンデス大統領は具体的な企業名については一切言及しなかった)。今回の新車両購入及び来月上旬に終了予定のサルミエント線の線路の交換工事は800万人の鉄道利用客に資するものである。

 

(A)サルミエント線及びミトレ線の全車両が新しいものに入れ替わることになるが,それだけの車両数を納入することができるのは,中国のような世界的なレベルに達した工場に限られる。亜の鉄道修理工場には既に1,200人の(鉄道メンテナンス及び修理に携わる)労働者がおり,今回の(中国からの)車両購入契約の中身には右亜労働者の技能育成が含まれている。(今後中国から届く)新車両のメンテナンス及び修理は,亜労働者が亜の工場で行うことになる。

 

(B)新車両の最初の納入は,第1回目の前払い金の支払いから13か月後となり,21か月で全車両の納入を完了する。我々は過去50〜60年で最も重要な鉄道の入れ替え作業及び改善作業を推し進めているが,右には(国が中国から購入し,ブエノスアイレス市が3月9日から運行することになる)地下鉄A線の40両(ママ)の(中国製)新車両も含まれる。現行の車両は廃棄するのではなく,修理して使用することになるので,今後は車両の全体数が増え,鉄道運行ダイヤが現在よりも密になる。

 

(C)国は19の市町村で62の高架工事を実施するとともに,9つの歩道用陸橋を再建する予定である。前述の(中国からの)鉄道購入を含め,全体の鉄道関連投資額は49億ペソとなる。なお,中国製新車両はエアコン及びテレビが完備された非常に近代的なものである。

 

(D)鉄道サービスの質の徹底的な改善を短期間に推し進めるためには,早期の車両納入が絶対的に必要であるが,右に関し(CSR社ほど)早く納入できる企業は他にはなかった。

 

(イ)11日付けクラリン紙は,国から中国に対する新車両購入代金の前払い金の支払いが既に行われたとの理解のもと,第1回目の新車両納入が2014年の2月頃に行われると報じた。同紙によると,今回の政府による車両購入台数は409両であり,225両がサルミエント線に利用され,184両がミトレ線に利用される由。また同紙は,1車両の最終価格を126.5万米ドルと伝えるとともに,CSR社が亜国内に鉄道車両整備工場を建設する可能性につき報じた。


(4)地下鉄A線の閉鎖等

 

(ア)12日,ブエノスアイレス市内を走る地下鉄A線は,老朽化したブルジョワーズ社の木造車両95両を運行から引き上げるため,56日間の予定で閉鎖された。同線は3月9日の運行再開日までに中国製新車両45両を導入するためのインフラ整備を実施する予定。

 

(イ)16日,ブエノスアイレス市政府は地下鉄運営資金を確保するため,同市が管轄する高速道路4線の料金を平均で10%値上げした。

 

(5)外務省人事

 

 外務省は人事異動を発表し,セシリア・ナオン外務副大臣(国際経済担当)を駐米大使に(21日付で官報に掲載),アウグスト・コスタ経済・財政省経済政策長官補(経済調整・競争力強化担当)をナオン外務副大臣の後任に任命した(28日付で官報に掲載)。同人事により,アルグエジョ駐米大使は駐ポルトガル大使に任命された。

 

(6)所得税の課税最低限度額の引き上げ等

 

(ア)28日,フェルナンデス大統領は国営放送を通じて演説を行い,所得税の課税最低限度額を約2年ぶりに20%引き上げる旨発表した。政府によると,同引き上げ後の所得税の課税最低限度額は,独身の被雇用者の場合は 6,938.70ペソ(月収・純所得),既婚で子どもを2人持つ被雇用者の場合は9,597.60ペソ(同)となり,今次措置により被雇用者の82.52%が所得税の課税対象外になるとした。政府の発表では,今回の引き上げにより80億ペソ以上の税収減となる由。

 

(イ)フェルナンデス大統領は同演説中にインフレについて言及し,「国も含め,皆が努力をしなければならないわけだが,各州知事や市長等にお願いしたいことは,少し分別を持って欲しいということである。インフレは自然現象でも生物学的現象でもなく,全セクターが助長している問題である。現政権は一度も増税したことがないだけでなく,むしろ所得税の課税最低限度額を引き上げ,税収を減らしてさえいる。従って,各州知事や市長に頼みたいことは,インフレに不満を申し立てるのではなく,実際に亜の競争力が付くように政治的行動をとってほしいということである」と発言した。

 

(ウ)当地報道によると,政府支持派の労組団体及び反政府系の労組団体は,給与がインフレ率に応じて上昇しているため,今回の20%の所得税課税最低限度額の引き上げでは不十分であり,負担の軽減にはならないと抗議した他,賃上げについても,両労組団体ともに亜の実際のインフレ率を考慮に入れた上で,最低でも25%の賃上げが必要と主張した。さらに,反政府系の労組団体は,今後,インフレの進行が想定されるゆえ,賃上げ交渉は年に2回実施すべきであると主張するとともに,同労組団体は,政府が上記の要求内容を飲まない場合にはストライキという強硬手段に出ることも辞さない旨表明した。

 

(エ)今回の大統領演説では,本年3月以降の年金の増額についても発表された。「スライド制年金法」(Ley de Movilidad Jubilatoria)により,亜では年に2回(3月及び9月)年金支給額が改定されることになっているが,本年3月1日以降の国家社会保障機構(ANSES)による公的賦課方式の年金の引き上げ率は15.18%となり,右数字は前年同月比では28.33%増となる。改定後の退職年金(Jubilacion)の最低額は1,879.67ペソから2,165ペソに引き上げとなり,退職年金未受給者に支払われる年金(Pension asistencial)の最低額は1,502ペソから1,730ペソに引き上げられる。フェルナンデス大統領は,「現状ではANSESは毎年,亜のGDPの7%にあたる2,640億ペソを年金システムに支払っているわけだが,右数字に今次改定分を加算すると,ANSESは毎年約3,000億ペソを同システムに支払うことになる。これは約724万人の年金受給者に資する政策である。亜はラテンアメリカで最も年金支給が国民に行き渡った国であり(94.3%),近隣諸国では伯が89.5%,ウルグアイが78.9%であり,その他の国々は右数字よりもずっと低くなっている」と述べた。

 

 

3 外交

 

(1) フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題

 

(ア)3日,フェルナンデス大統領は,キャメロン英首相に対しフォークランド(マルビナス)諸島領有権問題解決に向けた二国間交渉を促す国連決議の遂行を要請する書簡を発出した。同日,キャメロン英首相は,フェルナンデス大統領の書簡による交渉要請を拒否し,BBCインタビューにて「戦う準備はできている。我々はフォークランド諸島に強力な軍事力を備えている(…)今年,フォークランド諸島の住民投票が予定されている。亜大統領には,将来を決定するのは住民である点を理解していただきたい。住民は,英国領としての現状維持を望んでいる」旨発言した。右発言に対し,6日,亜外務省は,軍事攻撃を示唆するキャメロン英首相発言を批判するプレスリリースを発出した。

 

(イ)9日,英国政府は,フォークランド(マルビナス)諸島にて通常のパトロール及び島の重要地域の防衛の為に,2ヶ月の任期で英国軍の兵士150名を同諸島に派遣した。

 

(ウ)14日,Robathan英国防長官は,英国はフォークランド(マルビナス)諸島への亜の攻撃の可能性はないと考えている旨発言した。また,英国は3月10日及び11日に予定されている住民投票に向け,同諸島の軍事力を強化する準備がある旨述べた。

 

(エ)18日,フォークランド(マルビナス)諸島自治政府は,3月11日及び12日に実施予定の住民投票で,3千人あまりの住民が「フォークランドが今まで通り英国領であることを望むか否か」という質問に答える旨発表した。

 

(オ)15日〜16日にかけてウルグアイにて開催された第7回南大西洋平和協力地帯(ZOPACAS)閣僚級会議にて,米州及びアフリカ諸国は,最終文書にて,亜及び英国政府に対しフォークランド(マルビナス)諸島領有権問題解決に向けた対話を再開するよう伝えると同時に,英国政府に対し同諸島の非軍事化を呼びかけた 。

 

(2)英国

 

 7日,亜政府は,パリーリ大統領府長官の署名が入った公式声明を発出し,ハゲタカファンドによる差し押さえを懸念して,10日から予定されているフェルナンデス大統領のキューバ,その後のアラブ首長国連邦,インドネシア及びベトナム外遊に,大統領専用機「タンゴ01」を使用しない旨発表した。外遊前に時間がなかった為,公開入札は行わず,合計7社に価格の照会を行い,実用的,経済的及び財政的利便性を考慮し,英国航空企業チャップマンフリーボーン社から88万米ドルでジェット機を借り上げる旨決定した。パリーリ大統領府長官は,同公式声明にて,英国の「ザ・サン」紙が,(亜政府は)今次フェルナンデス大統領の外遊に際し,「100万米ドルを支払い,極秘でジェット機を借り上げようとしている」と報道した件に関し,ジェット機借料は,88万米ドルであると訂正した。また,パリーリ長官は,「ザ・サン」紙及びルパート・マードック同紙社長は,キャメロン英首相の選挙キャンペーン中に盗聴を行い,虚偽の情報を流したことで有罪判決を受けた過去があるとし,今回のジェット機借り上げに関する同紙による報道の信憑性に疑問を呈するかのような批判を行った。

 

(3)リベルタッド号の帰還

 

 9日,昨年12月15日にガーナのテーマ港での拘留が解除され,同月19日に亜に向け同港を出港した亜海軍の練習船「リベルタッド」号の帰還を祝し,マル・デル・プラタの海軍基地にて,フェルナンデス大統領が主催し多くの閣僚が出席するなど政府を挙げての祝賀式典が開催され,フェルナンデス大統領のスピーチ,ショー,花火等の催しが,約4時間に亘って行われた。一方,報道では,政府にとってはあたかも「凱旋」であるかのような式典であったが,批判的な立場からは,ぶつけた車の修理を祝うようなものだと批判されていると報じられた。

 

(4)ベネズエラ・キューバ

 

(ア)11日,フェルナンデス大統領は,療養中のチャベス・ベネズエラ大統領を見舞う為,ハバナを訪問し,病院にてチャベス大統領の娘と面会した。また,キューバ滞在中に,フィデル・カストロ前国家評議会議長及びラウル・カストロ国家評議会議長と会合した。

 

(イ)10日,カラカスで開催されたチャベス支持者によるチャベス大統領への連帯を示す大規模な集会には,外遊中のフェルナンデス大統領に代わり,ティメルマン外相が出席した。

 

(5)アラブ首長国連邦

 

 13日〜15日にかけ,アラブ首長国連邦を訪問したフェルナンデス大統領は,ハーリーファ・ビン・ザイード・アール・ナヒヤーン・アラブ首長国連邦大統領との二国間首脳会談(14日),雑誌ブルーンバーグ・マーケットが「2012年世界で最も有力な50人」にノミネートした1人であり、石油の余剰金6500億米ドルを投資資金として有するシェイク・ハメッド・ビン・ザイード・アール・ナヒヤーン・アブダビ投資庁(ADIA)長官との会合(14日),マラドーナ・アラブ首長国連邦スポーツ大使との会合(15日)を実施した他,アブダビにて開催されたエネルギー・サミット開会式(15日)に出席した。また,ハーリーファ・ビン・ザイード・アール・ナヒヤーン・アラブ首長国連邦大統領との二国間首脳会合において,両国は,4件の合意文書(原子力の平和的利用に関する亜・アラブ首長国連邦間協力協定,亜国家宇宙活動委員会(CONAE)・アラブ首長国連邦先端科学技術研究所(EIAST)間覚書,両国領土間での航空サービスに関する亜・アラブ首長国連邦間協定及び亜農牧・漁業省・アラブ首長国連邦環境水資源省間の協力に関する覚書)への署名を行った。

 

(6)シリア

 

 14日,スイスの提案により,シリアで起きている人権侵害等の問題の国際刑事裁判所への付託を要請する国連安全保障理事会への書簡に,58ヵ国が署名したが,亜は署名をせず,18日の投票の際にも同提案に対し賛成票を投じなかった。

 

(7)インドネシア  

 

 16日〜17日にかけ,インドネシアを訪問したフェルナンデス大統領は,16日,到着を出迎えたマルティ・インドネシア外務大臣と二国間の経済協力及び通商関係強化の必要性に関し協議した。また,17日,ユドヨノ・インドネシア大統領との二国間首脳会談が実施され,両国首脳は,共同声明において,今次会合は,貿易増進,原子力の平和的利用,農牧業,観光,バイオエネルギー,製薬分野,家畜衛生,交通,スポーツ,健康及び教育等の分野での協力促進に繋がったと述べた。また,今次会合では,航空サービス,農業及び漁業,投資分野での協力協定への署名が行われた。

 

(8)ベネズエラ

 

 16日〜17日にかけベネズエラを訪問したデビード公共事業大臣は,マドゥロ・ベネズエラ副大統領,ラミレス・ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)総裁,ハウア・ベネズエラ外相と会合した。ハウア外相と会談では,エネルギー,食品,デジタルテレビに関する協力を含む通信分野での経済協力に関し協議された他,マドゥロ副大統領との会合後,デビード大臣は「亜政府はベネズエラ政府と米,牛乳,牛肉,鶏肉の輸出を180百万米ドル増加させることで合意し,ベネズエラ政府は,燃料油と石油の供給を維持する旨述べた」と話した。

 

(9)ベトナム

 

 18日〜21日にかけベトナムを訪問したフェルナンデス大統領は,ホーチミンにて,クチトンネル視察(ベトナム戦争史跡),クアン・ホーチミン市人民委員長との会見等を終えた後,21日,ハノイにて,サン・ベトナム国家主席との会談及び昼食会に出席した。右会合においては,バイオテクノロジー,精密農業,原子力の平和的利用,再生可能エネルギー等幅広いテーマが扱われた。また,同日,フェルナンデス大統領は、ズン・ベトナム首相との会見及びベトナムの大手企業代表18名との懇談を実施した。

 

(10)CELAC

 フェルナンデス大統領は,1月26日から27日にかけ,サンティアゴ・デ・チリにて開催された第1回ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)・欧州連合(EU)首脳会合に出席(デビード公共事業大臣,ジョルジ産業大臣,ジャウアル農牧・漁業大臣,キシロフ経済政策長官,スアイン筆頭外務副大臣,パグリエリ国際通商長官等同行)すると共に,ルセーフ伯大統領,ペニャ・ニエト・メキシコ大統領,メルケル独首相及びピニェラ・チリ大統領との間で二国間首脳会談を実施した。今次会合にて,ルセーフ伯大統領,サントス・コロンビア大統領,ペニャ・ニエト・メキシコ大統領及びピニェラ・チリ大統領が,ラテンアメリカ・EU間の貿易規制の緩和促進に関心を示したのに対し,フェルナンデス大統領は,「新興国の産業は,既に産業が発展したEU諸国とは対照的な状況にある。我々の産業,特に国民に被害が出ぬよう,このような不均整な状況を考慮する必要がある」との見解を示し,右に反対した。

 

(11)イラン

 

(ア)AMIA会館爆破事件解決に向けた真実委員会設置に関する覚書  

 

 27日,ティメルマン外相及びサーレヒ・イラン外相は,エチオピアのアディスアベバにて,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決に向けた真実委員会を設置する為,覚書への署名を行った。本件署名の予定については事前に公表されておらず,両国外相は,第20回アフリカ連合首脳会議にオブサーバーとして参加するという名目でエチオピアを訪問した。  

 ティメルマン外相は,本件に関し「(今次覚書署名により)亜の司法機関が,イラン人容疑者の取り調べを行う。(…)亜が最悪のテロ攻撃を受けてから約19年を経て,主犯格の容疑者への調査が可能となる。(…)亜政府は,亜イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件を,国家に対するテロ行為及び人類に害を及ぼす犯罪と同じように扱い真実と正義を要求、追求している。それ故,本合意文書は歴史的な(覚書)である。真実と正義を求めたこれほどまでに長い戦いの後、全ては裁判所に持ち込まれる」と述べた。また,フェルナンデス大統領は,ツイッターを通じて,「これは歴史的覚書である(…)歴史的であるというのは,本爆破事件後に起こったのは失敗とスキャンダルであったからだ。(当時の)裁判はぺてんで,担当裁判官は告訴された。歴史的であるというのは,我々は決して本爆破事件が無関係な地政学的関心の為にチェスの駒のように利用されることを許さないからである」と発言した。

 

(イ) 覚書署名に対する国内外での反応

 

(@)亜ユダヤ人コミュニティー

 

 27日夜,イスラエル共済組合(AMIA)及び在亜イスラエル協会(DAIA)関係者は,本件覚書署名に対し,どのような立場を示すか協議し,28日,同覚書は合法的なものではない旨主張するプレスリリースを発出した。29日,ティメルマン外相が,イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の被害者家族と会合したところ,家族の間から真実委員会の委員候補としてスペイン人の元裁判官,バルタサール・グスマン氏及びチリ人の弁護士,法学教授で,米州人権委員会の委員長を務めた経験のあるクラウディオ・グロスマン氏の名前が挙がった模様。 

 

(A)野党  

 

 野党は,本覚書により,亜の司法機関のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件への介入が取り止めになってはならないと主張し,28日、急進党(UCR)は,覚書への署名を非難するプレスリリースを発出した。

 

(B)イスラエル

 

 28日,イスラエル外務省は,プレスリリースを発出し,覚書署名に失望しており,本件詳細に関する説明を求め,ファウスティーノ駐イスラエル亜大使を召集する予定であり,シャビット駐亜イスラエル大使は,本件の意図を明確にする目的で,ティメルマン外相との会合を要請している旨発表した。

 

(C)米国  

 

 28日,ヌーランド米国務省報道官は,「我々は常に本件爆破事件の犯人を裁判にかけることを望んできた。亜政府が,(今回の覚書署名により)右裁判の実現に近づくことができると考えるのであれば,我々は様子を見ようと思う。我々の立場は18年間変わっておらず,犯人を裁く為に,イラン政府は亜当局に全面的に協力すべきであると考えている」と述べた。

 

(12)中国

 

 29日,亜原子力発電会社(Nucleoeléctrica Argentina S.A)及び国営・中国核工業集団公司(CNNC)間で、原子力に関する合意文書2件への署名が行われた。

 

(13)要人往来

 

(ア) 往訪

 

3日 ティメルマン外相スイス訪問(チューリッヒでのイランとの二国間会合)
10日 ティメルマン外相ベネズエラ訪問
11日〜12日 フェルナンデス大統領キューバ訪問
13日〜15日 フェルナンデス大統領アラブ首長国連邦訪問
14日〜15日 マジョラル鉱業長官のカナダ訪問
15日〜16日 スアイン外務副大臣ウルグアイ訪問(第7回ZOPACAS閣僚級会議出席)
16日〜17日 デビード公共事業大臣ベネズエラ訪問
16日〜17日 フェルナンデス大統領インドネシア訪問
18日〜21日 フェルナンデス大統領ベトナム訪問
27日〜28日 フェルナンデス大統領チリ訪問(CELAC首脳会合出席)
28日 ティメルマン外相エチオピア訪問

 

(イ)来訪

 

24日 エロー仏首相
25日 アンシプ・エストニア首相
27日〜29日 ライダー国際労働機関(ILO)事務局

 

(14)今後の主要外交日程(予定等)

 

  ティメルマン外相英国訪問
15日〜16日 ロレンシーノ経済大臣ロシア訪問(G20経済大臣サミット出席)