アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2020年05月)
2020年6月作成
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 新型コロナウイルス関連
(ア)全国強制隔離措置の継続
8日,フェルナンデス大統領は,全国強制隔離措置の5月24日までの延長(4回目)を発表した(同延長に関する緊急必要大統領令(DNU)459/2020は11日に公布)。次段階として「斬進的な再開」を掲げ,国民の移動を同措置前の75%まで引き上げる等緩和措置を講じ,具体的には地域の実情に合わせて各州知事が検討するとした。但し,感染拡大が懸念されるブエノスアイレス首都圏(AMBA)については,引き続き厳しい措置を適用することとした。
なお,23日には同措置を再度延長(5回目)し,6月7日までとすると発表した(延長を定めるDNU493/2020は25日に公布)。
(イ)フェルナンデス大統領から国民へのメッセージ
10日,フェルナンデス大統領は,自身の公式個人ウエッブサイトに「得たものを大事にしよう」と題するメッセージを掲載した。メッセージでは国民一人ひとりの努力に感謝を表明すると共に引き続き国民一丸となって新型コロナウイルスからお互いを守る努力を続けようと訴えた。
(ウ)アルゼンチン科学者による検査キットの開発
15日,フェルナンデス大統領は,大統領公邸にてアルゼンチンの研究者グループが開発した迅速検査キット「NEOKIT-COVID-19」を発表した。現在実施されているPCR検査が7時間かかるのに対し,このキットでは2時間以内に結果を得ることができる。
(エ)ブエノスアイレス州貧困地区での集団感染と隔離措置
24日,ブエノスアイレス州アベジャネーダ市及びキルメス市に跨がる貧困地区アスール地区で,53名の感染が確認された。ブエノスアイレス州の貧困地区でこの規模の集団感染が発覚したのは初めてであり,同地区は周辺部から強制隔離された。
イ 国家社会保障機構(ANSES)長官の交代
2日公布された政令428/2020及び429/2020によりANSES長官がバノリ前長官からラベルタ新長官へと交代した。ラベルタ新長官は,任命を受けるまでブエノスアイレス州開発長官を務めており,ペロン党キルチネル派内の政治グループの一派であるラ・カンポラに属している。
ウ 大統領と副大統領との会談
5日,オリーボスの大統領公邸でフェルナンデス大統領とクリスティーナ・フェルナンデス副大統領が約3時間に亘り会談した(内容については報じられていない)。
エ 2020年度予算の修正
11日付官報で公布されたDNU457/2020をもって,政府は2020年度予算の支出を4,980億ペソ増やすことを決定した。緊急家族手当(IFE),失業保険給付の拡大,自営業者のためのゼロ金利融資等新型コロナウイルスによる影響への対応措置による支出が増えたためとしている。また,新型コロナウイルスによる緊急事態に対処する必要がある場合,同DNUによりカフィエロ内閣官房長官に法令による制限を超える予算配分権限を付与した。
オ 生活必需品の価格及び通信料金の統制
(ア)生活必需品の上限価格統制措置延長
18日付決議133/2020をもって,政府は生活必需品の上限価格統制措置を6月30日まで延長することとした。同措置により生産者,仲介業者,スーパーマーケット及び商店は3月6日時点での有効価格を6月30日まで維持する義務が生じる。
(イ)通信料金の凍結
18日,政府は固定電話・携帯電話・インターネット及びケーブルテレビ等の通信料金を8月31日まで凍結するとした。また,料金支払いが不可能な人には限定的なサービスへのアクセスを検討するとした。
カ フェルナンデス大統領の地方訪問
21日,フェルナンデス大統領は,サンティアゴ・デル・エステロ州とトゥクマン州を訪問した。3月20日に全国強制隔離措置が始まって以来初の地方訪問であり,公共事業の竣工式や生産を再開した企業訪問等を行った。また,28日には,フォルモサ州とミシオネス州を訪問した。
(2)国会
ア 国会審議再開
13日,上下院とも議場出席とリモートを組み合わせた形で審議を再開した。
イ 医療関係者に関する法案等の可決・成立
21日,上院はリモート審議を開催し,医療及び治安関係者を含む日常生活維持に必要な活動に従事している者への所得税の6か月間免除にかかる法案,パンデミックに対峙する医療従事者保護プログラム創設法案及び赤十字の国家との法的関係に関する法案を全会一致で可決した(下院は13日に通過済み)。
(3)司法
ア クリスティーナ・フェルナンデス副大統領への起訴取り下げ
14日,汚職対策室(Oficina de anticorrupción)は,クリスティーナ・フェルナンデス副大統領及び2人の子女が起訴されているHotesur事案(当館注:同副大統領が所有するHotesur社に,同副大統領に近い企業家から多額の不明な資金が支払われていた問題。この資金は亜政府の公共事業上乗せ分や賄賂の還流でないかとして公金横領及びマネーロンダリングが疑われている事案)とLos Sauses事案(当館注:同副大統領一家によって設立されたLos Sauses社の不動産ビジネスを通じて公金横領,公文書偽造,マネーロンダリングが行われたと疑われている事案)を取り下げると発表した。フェリックス・クロウス汚職対策室長は,両事案はマネーロンダリングに関するもので,汚職対策室ではなく金融情報部(UIF)の管轄であるため,汚職対策室は原告にはなり得ないと説明した。
イ マクリ前大統領及び前連邦情報局(AFI)長官等に対する捜査
26日,カーマニョAFI長官(Interventora)は,マクリ前大統領他を違法スパイ活動で告発し,連邦検察官が捜査を開始することになった。告発によれば,前大統領政権時の2016年6月から,AFIが少なくとも80人の与野党政治家,企業家,労働組合関係者,ジャーナリスト,知識人等の電子メールを司法の承認を得ずに監視していた疑いがある。
(4)その他
ア 全国強制隔離措置に関するデモ等
(ア)社会団体による政府支援を求めるデモ
6日,ポロ・オブレロ等複数の左派系社会団体が,無料食堂への政府支援不足により食糧が不足していることを訴え,ブエノスアイレス市中心のオベリスコ周辺で社会的距離を保ちながらデモを実施した。また,13日にも同じ場所で強制隔離措置による貧困拡大に対する具体的な支援を求めるデモが実施された。
(イ)マル・デル・プラタにおける商業セクターによる活動再開要求
21日及び22日,ブエノスアイレス州マル・デル・プラタ(当地有数のリゾート地)において,商業セクター従事者が経済的打撃を受けていることにつき街頭デモを通じて訴え,商業活動の即時再開を要求した。
(ウ)ブエノスアイレス市及びブエノスアイレス州ティグレ市での抗議行動
25日,ブエノスアイレス市の5月広場周辺において,右派及び急進リベラル派系によるSNSの呼びかけに応じた200人ほどの若者が憲法で保障された権利を侵害しているとして,強制隔離措置終了を呼びかけ,また政府による各種保健措置への反対を主張し抗議行動を行った。また,同日夜にも市内各地区で鍋をたたいて抗議するカセロラッソが行われた。
その他,ブエノスアイレス州ティグレ市においても,強制隔離措置に反対する400台ほどの車両によるデモが実施された。
イ アルゼンチン航空とアウストラル航空の合併
5日,アルゼンチン航空のセリアニ社長は,グループ会社であるアウストラル航空を吸収合併すると発表した。新型コロナウイルスの世界的な流行により航空会社が打撃を受けている状況の中,コストを削減し効率を上げることを目的としたもの。なお,人員や機材削減の予定はないとしている。
2 外交
(1)イタリア: フェルナンデス大統領とコンテ伊首相の電話会談
4日,フェルナンデス大統領はコンテ伊首相と電話会談を実施し,新型コロナウイルスの状況と債務再編のプロセスを検討した。会談は30分ほどであった。
(2)ドイツ:ソラー外務大臣とマース独外務大臣との電話会談
7日,ソラー外務大臣はマース独外務大臣と電話会談を実施した。両大臣は,二国間関係の戦略的重要性について一致し,両国共通の課題やパンデミックの世界経済に与える影響について分析した。また多国間主義を擁護する必要性について一致した。
(3)スウェーデン:フェルナンデス大統領の発言に対する対応
8日,全国強制隔離措置の延長を発表した際,フェルナンデス大統領がスウェーデンの緩やかな対策と死亡者数等の多さを例に挙げて,亜の全国隔離を正当化する旨の発言を行ったことに対し,在スウェーデン大使館は11日ホームページ上で自国の取組を説明しお互いに学ぶことのできる他国との対話は常に歓迎すると述べた。
(4)チリ・ブラジル:フェルナンデス大統領の説明資料の間違いについての指摘
24日,23日夜のフェルナンデス大統領による強制隔離延長発表の中で用いられた感染者数や死亡率の各国比較についての資料の中で,自国の数値に間違いがあるとして,在亜チリ大使及び在亜伯大使館がそれぞれツイッターにおいて指摘した。
(5)フランス:マクロン大統領からの革命記念日祝辞
25日,亜外務省は,フェルナンデス大統領がマクロン仏大統領から革命記念日を祝福する書簡を受け取った旨発表した。
(6)イスラエル:フェルナンデス大統領とネタニヤフ・イスラエル首相との電話会談
25日,フェルナンデス大統領は,ネタニヤフ・イスラエル首相と電話会談を実施した。両者は,メルコスールを通じた貿易関係強化のための対話の促進,新型コロナウイルスの状況及び対策について話し合った他,ネタニヤフ首相は革命記念日に敬意を表した。
(7)ベネズエラ:ソラー外務大臣のベネズエラ避難民への連帯を示す国際ドナー国会合出席
26日,ソラー外務大臣は,西・EU主催「ベネズエラ避難民への連帯を示す国際ドナー国会議(テレビ会議)」に出席した。同会合は,EU及び西政府がUNHCR及びIOMの支援を得て開催したもの。
(8)プエブラ・グループ会合:フェルナンデス大統領の第5回プエブラ・グループ会合出席
15日,フェルナンデス大統領は,第5回プエブラ・グループ会合(テレビ会議)に出席した。同会合には他に,ルーラ元伯大統領,コレア前エクアドル大統領,ムヒカ元ウルグアイ大統領,モラレス前ボリビア大統領,サンペール元コロンビア大統領,ルゴ元パラグアイ大統領,サパテロ元西首相,エンリケス=オミナミ元チリ大統領候補等が出席した。また,ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ教授も出席した。
(9)要人往来
特になし (了)
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