アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和5年4月19日

アルゼンチン政治情勢(2023年3月)

1 内政

(1)第141回通常国会開会
 1日、第141回通常国会が開会し、フェルナンデス大統領が施政方針演説を行った。演説では、製造業・農業などを中心に成長の最中にあることを強調し、特に可能性のある資源・エネルギー分野に関し、本年半ばに完成予定のネストル・キルチネル・ガスパイプラインによる輸出増への期待を表明した。対外的には、ロシアのウクライナ侵攻に関する外交的解決を支持したほか、客年12月に就任したルーラ伯大統領との連携を強調した。
(2)ロサリオ市の治安悪化に対する政府の対応
 7日、フェルナンデス大統領は、サンタフェ州ロサリオ市の治安悪化を受け、同市警察官数の増員、マネーロンダリング監視強化や最先端顔認証付き監視カメラの追加設置等の技術的措置を執る内容の声明を発表した。同市では5日、住宅街での銃撃戦で12歳の少年が犠牲になり、翌6日に憤慨した近隣住民が容疑者宅を襲撃する事案が発生した。同市では殺人事件が過去最悪のペースで発生する等、治安情勢が悪化の一途を辿っている。
(3)クリスティーナ副大統領に対する有罪理由公開
 9日、クリスティーナ・フェルナンデス(以下CFK)副大統領への判決理由が公表された。司法側からの判決理由の文書は1616ページにもわたったが、CFK副大統領は直後に行われた自身の講演で、この判決は副大統領の公職追放の目的のためだけのものであるとして批判した。
(4)2023年大統領選挙日程の決定
 16日、選挙管理委員会は、本年大統領選挙に係る諸日程を正式に決定し、予備選挙(PASO)が8月13日、本選挙が10月22日、本選挙で勝敗が決しない場合の決選投票日が11月19日で確定した。
(5)EDESURへの政府介入
 16日、政府は首都圏で起きた停電に対処しなかったとして、電力会社EDESURの取締役社長及び幹部を刑事告発するよう、国家電力規制機関(ENRE)に対し指示するとともに、21日にフェラレシ・ブエノスアイレス州アベジャネーダ市長が代表となり政府による経営介入が行われる旨発表した。今夏歴史的熱波に襲われていたブエノスアイレスの首都圏では、7万人以上に影響を及ぼす停電が繰り返し発生していた。
(6)第3回国際人権フォーラム開催
 20日~24日、第3回国際人権フォーラムが市内各地の会場で開催され、フェルナンデス大統領が開会式に出席したほか、CFK副大統領がプエブラ・グループを迎えて講演した。なお、本フォーラム開催期間中の22日、大統領府では、同じくプエブラ・グループを迎えての会合が実施され、亜の南米諸国連合(UNASUR)再加盟が発表された。最終日の24日は国民の祝日である「真実と正義の日」にあたり、市内各地でデモ行進が実施された。
(7)マクリ前大統領の不出馬発表
 26日、マクリ前大統領は自身のSNSで、野党連合の層の拡大及び団結が重要だと説くとともに、本年の選挙への不出馬を表明した。野党連合候補者の多くはこの発表を英断だとして歓迎する声明を発表した。
 
2 外交

(1)カフィエロ外相のG20外相会合出席(於:インド)
ア 1日、カフィエロ外相はG20外相会合出席のため訪問したインドで、ジャイシャンカル印外相と会談を行った。両外相は、特に近年重要さを増すエネルギー、科学技術等の分野での協力を推進し、経済面では貿易強化、投資促進などの可能性について一致した。またカフィエロ外相は、亜のBRICS参加及びマルビーナス(フォークランド、以下同)諸島の主権問題の亜英間協議再開に対する印の支持に謝意を表明した。
イ 2日、カフィエロ外相はクレバリー英外相と会談した。会談でカフィエロ外相は、2016年の両国外務副大臣共同コミュニケの終了を通告し、マルビーナス諸島の主権に関する国連における議論の再開を提案した。カフィエロ外相は、亜政府が南大西洋に関する英国との新たな二国間アジェンダを採用する必要があると述べた。
ウ 2日、カフィエロ外相はブリンケン米国務長官と短時間の会議を行い、民主主義、人権、食料安全保障と西半球の安全と繁栄について話し合った。
(2)メルコスール首席交渉官会合
 7日~8日、ブエノスアイレス市でメルコスール・欧州連合(EU)の首席交渉官会合が開催された。会談では、両地域の関係が戦略的に重要であることを確認し、互恵的な合意達成のために対話を強化することで一致した。
(3)アブド・パラグアイ大統領訪亜
 10日、フェルナンデス大統領は、訪亜したアブド・パラグアイ大統領と会談した。会談では二国間及び地域的な課題やメルコスールの現状について協議し、増益を続ける二国間貿易をさらに拡大していくことを強調した。
(4)エクアドル元政府高官逃亡事件(駐エクアドル亜大使の追放)
 11日~12日にかけて、汚職疑惑のため在エクアドル亜大使館に避難していたエクアドル・コレア政権時に運輸相を務めたドゥアルテ氏が、在ベネズエラ亜大使館に亡命していたことが発覚し、エクアドル政府は同氏の亡命に関し虚偽の報告をしたとしてフクス駐エクアドル亜大使を国外追放した旨発表した。これを受けて亜政府もモンヘ駐亜エクアドル大使を追放した。
(5)カフィエロ外相のウルグアイ訪問
 16日、カフィエロ外相は、ウルグアイを訪問し、ブスティージョ・ウルグアイ外相と会談した。両外相は、二国間貿易及びメルコスールの枠組での貿易促進、防衛分野での技術的関係の強化について一致した。
(6)マサ経済相のパナマ訪問
 17日、マサ経済相はパナマで開かれた米州開発銀行(IDB)年次理事会に出席し、新たに就任したゴールドファインIDB新総裁と会談し、計2億3500万米ドルを拠出する四つの亜向け融資プログラムに署名した。
(7)フェルナンデス大統領の第28回イベロアメリカ・サミット出席
 24日~25日、ドミニカ共和国で開かれた第28回イベロアメリカ・サミットにフェルナンデス大統領が出席した。会合では、マルビーナス諸島の主権に関する亜英間での交渉再開を求める特別コミュニケが発表された。また、25日にフェルナンデス大統領はサンチェス西首相及びボレルEU上級代表とメルコスール・EU協定に関して協議し、本年7月のEU・CELACサミットが中南米・欧州関係強化にとって重要である旨強調した。
(8)亜米首脳会談
29日、フェルナンデス大統領は滞在先の米国ワシントンにおいてバイデン米大統領と会談した。バイデン大統領は干ばつによる損害を緩和できるよう国際機関において亜を支援する旨述べた。バイデン大統領は、フェルナンデス大統領のリーダーシップを評価し、双方は、世界の食料安全保障やエネルギー資源開発等の分野で投資を促進する戦略的パートナーとしての役割を確認した。会談には、カフィエロ外相、マサ経済相、フェルナンデス治安相、セルッティ大統領府報道官、ティト外相首席補佐官らが同席した。
(9)マサ経済相の訪米
 29日、マサ経済相は米国ワシントンで開かれたIMFとの会合に出席し、干ばつの影響と外貨準備高の不足による亜とのIMF目標の見直しを求めた。IMF理事会は31日にIMF目標の第四次レビューを承認し、約54億米ドルのディスバースが可能になった。
(10) 要人往来
ア 往訪
 インド:カフィエロ外相
 ドミニカ共和国:フェルナンデス大統領、カフィエロ外相
 米国:フェルナンデス大統領、カフィエロ外相、マサ経済相
 
イ 来訪
 パラグアイ:アブド大統領、アリオラ外相
 ウルグアイ:ブスティージョ外相

(了)

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