アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2025年3月)
1 内政
(1)ミレイ政権
●ミレイ大統領の施政方針演説(1日)
1日、ミレイ大統領は、第143回通常議会の開会に際し、下院で施政方針演説を行った。同演説では、政権1年目の、経済をはじめとする各分野での実績を強調し、政権幹部の尽力に謝意を表した他、財政均衡の義務化や財政目標の設定を含む基本法の作成を進めていることを明らかにした。また、IMFとの新たな合意の重要性を強調し、右に向けた議会の支持を要請した。
●バイアブランカ市における洪水被害に対する政府の対応(7日)
ア 7日、ブエノスアイレス州バイアブランカ市において、豪雨による大規模な洪水が発生し、公式発表では、死者16名、行方不明者94名の他、災害発生後、500名以上の住民が避難し、同市の人口の7割にあたる約22万人が被災したとされる。
イ 9日、政府は今回の洪水被害の発生を受け、国家として3日間喪に服すことを決定した旨、及び被災地に対し100億ペソを給付する旨発表した。
ウ 11日、ブルリッチ治安相及びペトリ国防相は被災地を視察し、現地で対応に当たる軍や治安部隊の幹部や州・市政府当局と支援活動につき協議した。また、12日、ミレイ大統領は、カリーナ・ミレイ大統領府長官、フランコス内閣官房長官、ブルリッチ治安相等と共に被災地を訪問した。同日、政府は、被災地支援を目的とした2000億ペソの特別基金の設立を発表した。
エ 今回の洪水被害に際し、メローニ伊首相、ネタニヤフ・イスラエル首相が、犠牲者への追悼の意や政府・同市に対する連帯を表明した。
オ 15日、政府は、バイアブランカ市でスターリンク社がインターネットを無料で提供した件に関し、イーロン・マスク同社CEOに謝意を表明した。
カ ミレイ大統領は、同市での洪水被害を受け、11日から予定していたチリ訪問を中止した他、上記被害に加え、その後の退職者によるデモ等も考慮し、20日からのスペイン訪問及び23日からのイスラエル訪問を取りやめた。
●IMFとの新規資金提供プログラム実施に係る大統領令の公布(11日)
ア 11日、政府は、新たにIMFとの合意を目指す拡大信用供与措置(Extended Fund Facility)について、行政府による締結を承認する必要緊急大統領令(DNU)を公布し、議会に送付した。
イ 19日、下院は、賛成129票、反対108票、棄権6票で、同DNUを承認した。同日、大統領府は、今回の下院での承認に祝意を表明した。
(2)選挙
●選挙管理委員会による2025年中間選挙日程の公表(13日)
13日、選挙管理委員会(CNE)は、2025年の連邦議会中間選挙日程を公表した。主要な日程は、8月7日(政党連合登録締切)、8月17日(候補者リスト提出締切)、10月26日(本選挙投票日)等。
●ブエノスアイレス市議会選挙の候補者リスト締切(28日)
28日、ブエノスアイレス市議会選挙(5月18日実施)の候補者リスト提出が締め切られた。主な候補者は、アドルニ大統領府報道官(与党「自由の前進」)、ラレタ前ブエノスアイレス市長(野党連合「戻ろう、ブエノスアイレス」)等。
(3)治安情勢
●退職者によるデモ活動の過激化(12日)
ア 12日、年金受給額の調整に抗議する退職者によるデモ活動(定例、毎週水曜実施)が連邦議会議事堂前で行われた際、前週の政府の強硬な対応を受け、「バラス・ブラバス」と呼ばれるプロサッカーチームのフーリガン集団や左派の社会活動家等が合流したことで過激化し、反ピケテロプロトコルを適用して事態の鎮圧に臨んだ連邦治安部隊と衝突し、多数の負傷者及び逮捕者を出す事態となった。両者の衝突で、ブエノスアイレス市警察のパトカー2台や路上の大型ごみ収集箱が燃やされる等の破壊活動も行われた。
イ 17日、ブルリッチ治安相は、「バラス・ブラバス」を違法な結社とみなし、同団体への罰則を強化する「バラス・ブラバス」対策法案を発表した。
●「真実と正義の追悼記念日」のデモ行進(24日)
ア 24日、軍政期最後のクーデターの日から49周年にあたる真実と正義の日に際し、左派政治家や労組指導者を中心に、政府に対する抗議活動が行われた。
イ 同日、政府は同追悼記念日に関する動画を公開した。また、政府は、独裁政権下における軍の行動に関するあらゆる文書の機密解除を命じた他、文書を国家の総合アーカイブに送付する旨発表した。
(4)その他
●CFK元大統領の最高裁への控訴(31日)
31日、CFK元大統領は、2022年12月に連邦裁判所により有罪判決が宣告され、2024年11月に連邦刑事上告裁判所が右判決を支持した「公共事業・有料道路事件」に関し、連邦最高裁判所に控訴することを発表した。
●貧困率の発表(31日)
31日、国家統計局(INDEC)は、2024年下半期の貧困率が38.1%であったと発表した。極貧率(収入が基本的な食料の合計支出額を下回る世帯)は8.2%であった(同年上半期の貧困率は52.9%、極貧率は18.1%)。
2 外交
(1)首脳級
●ミレイ大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領の電話会談(17日)
17日、ミレイ大統領は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領と電話会談を行った。本電話会談で、双方は、二国間関係やロシア・ウクライナ間の和平プロセスの状況等につき協議した。また、ミレイ大統領は、洪水被害を受けたバイアブランカ市に対する、ゼレンスキー大統領の連帯の意思の表明に謝意を表した。
(2)閣僚級
●カリーナ・ミレイ大統領府長官のカナダ訪問(3~5日)
ア 3日、カリーナ・ミレイ大統領府長官は、トロントで開催された鉱業関連イベント「PDAC 2025」に出席し、銅をはじめとする鉱物資源の投資機会を強調し、大型投資奨励制度(RIGI)に関しアピールした。
イ 4日、カリーナ長官は、ハイダー・カナダビジネス評議会会長と会談した他、カナダ米州評議会では、カナダの鉱業関連企業幹部向けに講演を行った。
ウ 5日、カリーナ長官は、アルゼンチンで鉱業関連の投資事業を展開している複数のカナダ企業幹部とそれぞれ会談した。
●ウェルテイン外相のランドー米国務副長官との電話会談(27日)
27日、ウェルテイン外相は、ランドー米国務副長官と電話会談を行った。本電話会談で、双方は、二国間の戦略的関係強化の重要性を確認した他、在ベネズエラ・アルゼンチン大使館における亡命希望者の状況や、ベネズエラ当局に不当に拘束されているガジョ・アルゼンチン国境警備隊員の状況に関し協議した。
(3)その他
●CFK元大統領の米国入国禁止措置の発表(21日)
ア 21日、ルビオ米国務長官は、在職中の重大な汚職事件への関与を理由とし、クリスティーナ・フェルナンデス(CFK)元大統領及びデ・ビド元連邦企画・公共投資・サービス大臣を、2024年の米国務省対外活動及び関連プログラム歳出法第7031条c項に基づく指名の対象とすることを発表した。
イ 同項では、重大な汚職に関与した外国公務員及びその近親者を、米国務長官が公開又は非公開で指名することを義務付けており、今回の措置により、上記2名及びその近親者の米国への入国が、原則的に不可能となる。
(4)要人往来
往訪:
カナダ:カリーナ・ミレイ大統領府長官、ルセロ経済副大臣(鉱業担当)、キルノ経済副大臣(金融担当)、スカレスカ投資貿易庁長官、オレゴ・サンフアン州知事、コルネホ・メンドーサ州知事、キンテラ・ラリオハ州知事(3~6日)
来訪:
なし
(了)