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2010年3月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2010年4月作成
在アルゼンチン大使館

 


I.概要


(1)内政面では、フェルナンデス大統領が第128回通常議会開会式において一般教書演説を行った。また、同開会式開催中に、政府は、「債務削減及び安定性のための建国二百周年基金」を創設するための緊急大統領令を廃止する一方、新たに、外貨準備を用いた「債務削減基金」の創設を定める緊急大統領令を発出した。議会において、「債務削減基金」の創設を定める緊急大統領令、金融取引税の地方交付率の引き上げを定める金融取引税改正法案、マルコ・デル・ポント中銀総裁の同意人事等の審議が行われる予定であったが、与野党間の駆け引きにより上下両院ともに定足数を満たすことができず、審議は4月以降に延期となった。


(2)外交面では、フェルナンデス大統領が、ムヒカ・ウルグアイ大統領就任式及ピニェラ・チリ大統領就任式に出席するためウルグアイ及びチリをそれぞれ訪問した。また、フェルナンデス大統領は、亜大統領として16年振りにペルーを訪問したほか、ボリビアを訪問しモラレス・ボリビア大統領とともに天然ガス関連の二国間合意文書署名式に出席した。他方、クリントン米国務長官、ヴェスターヴェレ独外相、バラージュ・ハンガリー外相、アハロノビッチ・イスラエル治安相、天野IAEA事務局長等が訪亜した。

 

II.内政


1.フェルナンデス大統領の議会演説


(1)1日、フェルナンデス大統領は、下院本会議場で行われた第128回通常議会開会式において、約1時間半に亘り一般教書演説を行った(通常議会の会期は、3月1日〜11月30日)。


(2)一般教書演説の要旨は以下のとおり。


(イ)大地震が襲ったチリに対して、連帯を表明し、緊急援助を実施する。


(ロ)亜には、フェルナンデス大統領が統治する現実の国とメディアが作り上げる仮想の国が存在する。現実の国では、経済成長、外貨準備の積み上げ、失業率及び貧困の削減、社会保障の拡充等の実績を上げているが、これらは、キルチネル前政権が発足した2003年5月25日以降の一貫した経済・政治モデルのおかげである。また、国家の積極的な政策介入により、2009年の国際経済危機の影響も軽微であった。他方、仮想の国では、政権を妨害するのみであり、全てが最悪の状況にある。


(ハ)教育及び人的リソースの育成は、政権の基本方針の1つであり、GDPの6%を教育予算に当て、過去7年間で1,000以上の学校を建設した。


(ニ)小麦、牛肉、トウモロコシが不足すると言われていたが、2009年、430万トン以上の小麦が輸出され、また、牛肉のヒルトン枠も99.99%を達成した。(今年は)豊作が期待できる。


(ホ)人権問題に進展は見られるが、司法に対して、(軍政期の人権侵害の)責任者に対する裁判の迅速化を要求する。


(ヘ)マルビナス紛争終了以降、国軍は面目を失い、影を潜めているが、本来の国軍の役割を取り戻すべきであり、防衛産業回復のための施策等を打ち出した。


(ト)亜は国際的に孤立していると言われているが、亜は、G20、南米諸国連合(UNASUR)等のメンバーであり、今日ほど、国際的なプレゼンスを有していた時はない。


(チ)英国は、地理的にも、歴史的にも、法的にもマルビナス諸島の主権を正当化できないが、亜は、引き続き、外交、国際法の枠組みで働きかけを行っていく。


(リ)亜は、政治権力及び経済権力から独立している司法、また、クラリン紙の意図に従うことなく民法及び刑法を基に判決を下す判事を必要としており、司法改革が必須である。


(ヌ)(フェルナンデス大統領は、)二百周年基金創設のための緊急大統領令を廃止し、また、国際機関への債務返済を可能とする政令、及び外貨準備を用いて債務返済を可能とする緊急大統領令に署名し、通常議会はこれら3つの施策とともに始まった。同施策は、全州及び経済にポジティブな影響を及ぼすだろう。

 

2.外貨準備を用いた基金創設を巡る動き


(1)1日、政府は、2つの緊急大統領令(DNU)及び1つの政令を発出し、裁判所の仮処分により効力が停止されていた「債務削減及び安定性のための建国二百周年基金」を創設するための緊急大統領令を廃止する一方、新たに、外貨準備を用いた「債務削減基金」の創設等を措置した。同緊急大統領令等の概要以下のとおり。


(イ)緊急大統領令第296号/10


「債務削減及び安定性のための建国二百周年基金」(以下、旧基金)創設のための緊急大統領令第2010号/09を廃止する。


(ロ)政令第297号/10


 約22億ドルを上限に、超過外貨準備を用いて、本年期限が到来する国際金融機関への債務返済を実施する。


(ハ)緊急大統領令第298号/10


 本年期限が到来する対民間債務の返済に充てるため、「債務削減基金」(以下、新基金)を創設し、約44億ドルを上限に、超過外貨準備を国庫に移管する。新基金による債務返済をフォロー、検査及び制御するため、両院議長により指名された上下両院それぞれ8名の議員から成る債務返済フォロー両院常設委員会を創設する。


(2)これを受けて、野党反キルチネル派は、外貨準備を用いた基金の創設が凍結されている中、新たな緊急大統領令を通じて、議会開会中に、緊急性のない新基金を創設することは違憲であるとし、同緊急大統領令の効力停止を求めて、保護請求訴訟を行った。


(3)3日、ロドリゲス・ビダル連邦判事(行政訴訟担当)は、議会が緊急大統領令の有効性を審議するとの憲法上の手続きが遵守されるまで、新基金創設のための緊急大統領令の効力を停止するとの仮処分を行うとともに、経済省に対して、中央銀行から移転された資金を利用することを控えるよう命じた。


(4)4日、政府は、上記仮処分を受けて、連邦行政高等裁判所に控訴した。また、フェルナンデス大統領は、公共事業発表のための式典において、「外貨準備を用いて債務を払い続ける。権力を乱用する判事の裁定により、亜を再びデフォルトに陥らせるようなことはしない」等述べ、司法を糾弾するとともに、仮処分に従う意向はない旨示唆した。


(5)9日、最高裁は、コミュニケを通じて、政権を担う責任のある者は、均衡の取れた節度(mesura)ある発言を行うよう求めるとともに、法律は皆に平等に適用される旨警告した。これに対し、フェルナンデス大統領は、「節度(mesura)とは、検閲(censura)のように聞こえる」旨述べ、最高裁は大統領を検閲しようとしている旨批判した。


(6)同日、ベルナ上院議員(ペロン党)は、新基金創設のための緊急大統領令とほぼ同内容と見られる法案を議会に提出した。


(7)15日、緊急大統領令等を扱う議会両院常設委員会が、与党側(7名)全員欠席、野党側(9名)全員出席により開催され、新基金創設のための緊急大統領令第298号/10を無効とする意見書が採択され、下院に提出された。


(8)17日、下院本会議において、上記意見書につき審議していた最中、ラビエ・ピコ連邦判事(行政訴訟担当)が、両院常設委員会の上院側現構成(与党側3名、野党側5名)を定めた上院議長令の効力の一時停止を命じる仮処分を下した(下記6.参照)ため、上記意見書を維持することが出来なくなり、審議が中断された。同状況下で、野党側議員は、カリオ市民連合代表の提案により、旧基金創設を定める緊急大統領令第2010号/09無効案を可決した。なお、与党側議員は、旧基金創設を定める緊急大統領令が緊急大統領令第296号/10により既に廃止されていることを理由として、採決を棄権した。


(9)23日、緊急大統領令等を扱う議会両院常設委員会が同委員会の構成を巡り機能不全状態にあるのを受け、下院の憲法委員会及び予算・財政委員会の合同会合が開催された。同委員会では、野党側議員により、新基金創設を定める緊急大統領令第298号/10を無効とする意見書が採択された。なお、与党側議員は、司法のみが法令を無効であると判断する権限を有しており、野党側は違憲行為を働いているとして途中退場した。


(10)ブドゥー経済相は、それぞれの要請に応じ、25日、下院の予算・財政委員会にて、また、30日、上院の予算・財政委員会にて、外貨準備を利用した対外債務支払い等につき説明した。


(11)30日、連邦高等裁判所は、ロドリゲス・ビダル連邦判事による新基金の創設を定める大統領令第298号/10の効力一時停止を命じる仮処分を無効とする判決を下した。同裁判所は、無効判決の理由として、(イ)議会は、特別議会の自発的召集権を有しているにも拘わらず、同権限を行使せず、本件審議を行ってこなかったこと、また、(ロ)旧基金創設を定める大統領令の効力一時停止を命じる仮処分を、新基金創設を定める大統領令に適用するという仮処分は、旧基金創設を定める大統領令が廃止された現在、有効ではないことを挙げた。上記判決を受け、同日、ランダッソ内務相は、翌週にも新基金を使って対外債務を支払う予定である旨述べた。

 

3.金融取引税改正法案を巡る動き


(1)3日、上院の地方交付金委員会が開催され、金融取引税の地方交付率の引き上げを定める金融取引税改正法案を可決する意見書を提出した。


(2)11日及び17日、上院の本会議において、金融取引税改革法案が審議される予定であったが、定足数に満たず、4月以降に延期となった。


(3)15日、フェルナンデス大統領は、公共事業関連の式典の場で、金融取引税改正法案につき、既に定められている本年度予算に大きな修正を加えるものであるとし、同法案が議会で承認された場合には拒否権を発動する旨述べた。


(4)29日、フェルナンデス大統領は、全州知事と地方交付金の分配につき協議を行うとし、まず、州知事24名のうち、政権寄りの州知事等17名を大統領官邸に招いて昼食会を開催した。同会合において、フェルナンデス大統領は、2011年に金融取引税を廃止する可能性につき言及したほか、地方交付金分配に関する「社会公平基金(Fondo de Equidad Social)」の創設につき審議するために、フェルナンデス首相を委員長とする州知事委員会の設置等につき協議された模様。今後、フェルナンデス大統領は、残り7名の州知事との昼食会を開催する予定。

 

4.マルコ・デル・ポント中銀総裁の同意人事を巡る動き


(1)1月7日、政府は、政令を通じて、レドラド中銀総裁の後任として、マルコ・デル・ポント・ナシオン銀行総裁を中銀総裁に任命した。同任命には上院の同意が必要であり、同人は、上院で同意されるまでの間、臨時に中銀総裁を務めている。


(2)3日、上院において同意の可否に関する委員会が開催され、マルコ・デル・ポント中銀総裁の同意人事が否決され、同否決案が、上院本会議に提出された。なお、同委員会の否決案によれば、外貨準備の国庫への移転を禁止する仮処分が出されているにも拘わらず、新基金創設のために外貨準備を国庫に移転したことから、マルコ・デル・ポント中銀総裁は、同職に不適任であると判断した。


(3)11日及び17日、上院の本会議において、同否決案が審議・採決される予定であったが、定足数に満たず、4月以降に延期となった。

 

5.放送法改正法を巡る動き


(1)8日、メディーナ連邦判事(サルタ州、第一審)は、昨年10月に成立した放送法改正法の議会審議過程に不正があったとして、同法の効力を一時停止する仮処分を下すとともに、議会での審議過程を調査するよう命じた。


(2)25日、オティリオ・ロケ・ロマノ連邦判事(メンドサ州、控訴審)は、昨年10月にアラバル連邦判事(メンドサ州、第一審)が放送法改正法の議会審議過程に不正があったとして同法の効力停止を命じた仮処分と同様の仮処分を下した。同仮処分を受け、マリオット連邦放送委員会総裁は、クラリン・グループの利害に同調して下されたものであるとして、最高裁に上告する意向を示した。

 

6.議会常設委員会メンバー選出を巡る動き


(1)3日、上院において、野党非キルチネル派の出席の下、定足数(全72議席のうち37議席)が満たされ、延期されていた25ある常設委員会の委員長及びメンバーの選出が行われた。非キルチネル派が、13の常設委員会の委員長職を、また、全常設委員会で過半数以上(15名のうち8名以上)を占めることが承認された。更に、緊急大統領令等を扱う、上下両院議員それぞれ8名ずつから成る両院常設委員会のメンバーの変更が承認された。上院からは、2009年12月22日付上院議長令により、キルチネル派議員4名、非キルチネル派議員4名が選出されていたが、今次変更を受け、9日、キルチネル派議員3名、非キルチネル議員5名の構成とする旨定めた上院議長令が新たに発出された。


(2)11日、与党キルチネル派上院議員は、緊急大統領令等を扱う両院常設委員会の新たな構成につき、上院の各勢力の比率に応じた構成とする旨規定する議会細則違反であるとして、連邦行政裁判所に提訴した。


(3)17日、ラビエ・ピコ連邦判事(行政訴訟担当)は、緊急大統領令等を扱う両院常設委員会の構成につき、上院側の新構成(与党側3名、野党側5名)を定めた上院議長令の効力を一時停止し、以前の上院議長令により定められていた構成(与党側4名、野党側4名)に戻し、アルペロビッチ上院議員(与党側)を委員会メンバーに戻すよう命じる仮処分を下した。


(4)19日、コボス上院議長(副大統領)は、上記仮処分を不服とし、連邦行政高等裁判所に控訴した。

 

7.連邦判事の罷免


 25日、司法審議会は、恣意的権力行使等の疑惑が持たれていた、キルチネル派のファジオナト・マルケス連邦判事につき、職務怠慢を理由として、罷免を全会一致で決定した。司法審議会委員であるサンス急進党党首は、「今次罷免は権力に追従している判事に対するメッセージである」旨述べた。

 

8.ペロン党の動向


(1)昨年の連邦議会中間選挙の後にペロン党党首辞任の意向を表明していたキルチネル下院議員(前大統領)は、10日、チャコ州で行われたペロン党集会において、「2011年の選挙で勝利するために、党務を継続するようにとの同志からの要請を踏まえ、党首に復帰する。我々は、2011年までと言わず、2020年まで亜を統治することを堅く決意している」旨述べ、ペロン党党首への復帰を宣言した。また、同下院議員は、フェルナンデス大統領の政権運営モデル、外貨準備を用いた債務返済、マルコ・デル・ポント中銀総裁の就任を強く擁護する一方で、フェルナンデス政権を妨害するマシーンであるとして野党を糾弾した。


(2)同集会後、ペロン党執行部会合が行われ、キルチネル下院議員が正式にペロン党党首に復帰した他、野党を批判するコミュニケが発出された。なお、ソラ下院議員(党執行部スポークスマン)及びロメロ上院議員(党大会書記官)が、キルチネル下院議員の党首復帰に反対し、党役員職を辞任した。

 

9.軍事クーデター開始記念日


 24日(注:軍事クーデター開始日であり、同開始日を記憶するべく、キルチネル前政権下において、「真実と正義の日」と制定)、フェルナンデス大統領は、「真実と正義の日」記念式典において演説し、「5月広場の母」及び「5月広場の祖母」による(行方不明者問題に関する)これまでの尽力を讃えた他、(行方不明者問題解決のために)司法の公平な適用を要請し、「亜において公正な裁判が行われない場合には、国際司法に訴え出るのに付き添う用意があるが、そのような状況には至らないと信じている」旨述べた。

 

10.アルフォンシン元大統領の一周忌式典


 31日、アルフォンシン元大統領の一周忌式典が執り行われた。レコレタ墓地における式典では、息子であるアルフォンシン下院議員とコボス副大統領が弔辞を述べた。また、急進党執行部は、国会議事堂前で式典を開催し、サンス党首が弔辞を述べた。

 

11.社会闘争


 16〜17日、反キルチネル派ピケテロ・グループ等は、雇用創出プログラムの不公平な実施、社会プログラムの削減、子供手当の支払いの遅延等に反対し、ブエノスアイレス市内各所でデモ行進を行った。また、17日には、同様のデモ行進が、ロサリオ市及び北部の州においても見られた。

 

12.教会


(1)17日、フェルナンデス大統領は、大統領府において、ベルゴグリオ枢機卿(ブエノスアイレス大司教)等の亜カトリック司教会議幹部と会談し、双方は、対話再開の必要性につき合意した。同会談後、亜カトリック教会のオエステルヘルド報道担当は、「(大統領との)会談では、亜情勢一般、より調和の取れた共生を促すことの必要性について話し合った」等述べた。


(2)同日、コボス副大統領も、ベルゴグリオ枢機卿等の亜カトリック司教会議幹部と会談した。同会談において、ベルゴグリオ枢機卿は、三権分立、制度の強化、社会的緊張の緩和等の必要性について強調した一方で、コボス副大統領は、若者の社会復帰のためには、教育が重要性である等述べた。

 

III.外交


1.ウルグアイ


 1日、フェルナンデス大統領は、ムヒカ・ウルグアイ大統領就任式出席のため、ウルグアイを訪問し、ムヒカ大統領に祝意を伝えたほか、南米諸国首脳と会談を行った。なお、同大統領は一般教書演説のため到着が遅れ、新旧大統領交替式典の途中からの出席となった(キルチネル前大統領は就任式典に出席)。

 

2.米国


(1)1〜2日、クリントン米国務長官が訪亜し、1日、フェルナンデス大統領と会談した。同会談後の記者会見において、フェルナンデス大統領は、対ハイチ支援、対チリ支援、核セキュリティ・サミット等につき協議した充実した会談であったとし、「英及び亜が、国連決議に則り、マルビナス諸島の主権に関し交渉できるよう、亜英両国の友好国である米による調停を要請した。亜と米は、ホンジュラス問題につき異なる立場にあることは明白であるが、我々は、意見が異なるからといって交渉しない訳ではない」等述べた。


(2)一方、クリントン長官は、ハイチへの亜要員派遣、テロとの闘い、核不拡散に関する亜の尽力への謝意を表明し、「フォークランド(マルビナス)諸島問題に関し、亜英両国に対し、強制することはできないものの、対話が本件のような問題を解決するための適切な手段であると信じている。ホンジュラス問題につき、率直な意見交換を行った。ホンジュラスにおいて自由且つ公平な選挙が実施されたことは、同国の歴史のページをめくる時が来たことを示すものであると考える。ホンジュラス問題につき率直な意見交換を実施できたことは、米亜関係が常に良好であることを示すものである。米亜両国は、相違点よりもより多くの合意点を有している」等述べた。また、クリントン長官は、対外債務削減に関して、亜が大きな進展を成し遂げてきたとして、祝意を表明した。

 

3.ドイツ


(1)7〜9日、ヴェスターヴェレ独外相は、南米諸国歴訪の一環として、企業関係者及び国会議員を率いて訪亜した。8日、フェルナンデス大統領は、ヴェスターヴェレ外相とともに、亜建国200周年記念事業として亜独両国が共催する「科学のトンネル」展示会の開幕式に出席した。同開幕式において、両者は、亜と独の関係が戦略的関係である点を強調した。


(2)8日、タイアナ外相は、ヴェスターヴェレ外相と会談し、2010年フランクフルト図書展への亜の「名誉ゲスト国」としての参加、5月18日にマドリードで開催予定の中南米カリブ・EU首脳会合等について協議した。また、両外相は、映画共同製作に関する協定にも署名した。

 

4.フランス


 8〜9日、デビード公共事業相は、原子力の民生利用に関する国際会議(於:OECD会議場)に出席するため仏を訪問した際、ボルロー仏エコロジー・エネルギー・持続可能開発・海洋相、及びドヴェジャン仏景気対策実行担当大臣とそれぞれ会談し、亜仏間のエネルギー分野における協力につき協議した。

 

5.チリ


(1)1日、フェルナンデス大統領は、一般教書演説の冒頭で、対チリ支援につき言及し、「チリに、医療関係者54名を派遣すると共に、浄水器3機及び電力発電機4機を輸送する予定である」旨述べた。また、同大統領は、亜民間セクターも、生鮮食品以外の食料1,800トン以上及びボトル入り飲料水50万リットル以上をチリに送付予定である旨述べた。


(2)10〜11日、フェルナンデス大統領は、ピニェラ・チリ大統領就任式に出席するため、チリを訪問した。10日、フェルナンデス大統領は、バチェレ・チリ大統領と会談し、チリ地震の状況につき協議した。


(3)11日、フェルナンデス大統領は、ピニェラ大統領就任式に出席した。同就任式後、フェルナンデス大統領は、「地域統合プロセスは、各国のその時々の大統領が有するイデオロギーを超えたところにある。南米諸国連合(UNASUR)では、政治思想の異なる大統領が共存しているが、我々は、例えばボリビアの(政治危機の)際も、UNASURとして、イデオロギーを超えたところにある価値を保持しようとし、イデオロギーの違いが障害になることはなかった。これこそが民主主義である。南米地域における統合プロセスは、各国大統領が、富の配分について異なる考えを有しているからといって、妨げられるものではない」等述べた。

 

6.ハンガリー


 12日、バラージュ・ハンガリー外相が訪亜し、タイアナ外相と会談した。同会談後、バラージュ外相は、「(タイアナ外相との会談は)非常に興味深いものであった。ハンガリー外相の訪亜は13年振りであったため、我々は二国間関係の見直し・レビューに努めた。両国は大変良好な関係を有しており、亜には約5万人のハンガリー人が在留している。また、両国は、科学技術協力において優れた成果を挙げており、今後一層協力を推進していくべきである。二国間貿易は、潜在力をかなり下回ったものとなっているため、我々は同分野において尽力しているところである」等述べた。

 

7.イスラエル


(1)12日、亜外務省は、プレスリリースを発出し、イスラエル政府による東エルサレムにおける新たな住居1,600軒の建築発表につき、国際法及び国連決議違反であり、和平交渉再開の障害であるとして、深い憂慮を示した。


(2)15〜17日、アハロノビッチ・イスラエル治安相が訪亜し、タイアナ外相と会談したほか、在亜イスラエル大使館爆破事件18周年追悼式典に出席した。同式典には、亜側から、タイアナ外相、アラク司法・治安・人権相、シレオニ教育相、トマダ労働・雇用・社会保障相等が出席した。また、16日、アハノロビッチ治安相は、タイアナ外相と会談し、イラン核問題が世界の脅威であることを強調するともに、イスラエル共済会館(AMIA)爆破事件解明に向けた調査の進展を讃えた。

 

8.ロシア


(1)16日、リャブコフ・ロシア外務次官が訪亜し、タイアナ外相と会談し、本年4月14〜15日のメドヴェージェフ・ロシア大統領の訪亜準備につき協議した。タイアナ外相は、「(両国は、)政治・経済分野において、国際場裡で一層協働していくことに関心を有している。一例としては、亜が、ロシアのWTO加盟を強く支持していることが挙げられる。また、我々は、投資・貿易、原子力、宇宙空間、産業、科学技術等の多様な分野において協力していきたいと考えている」等述べた。


(2)29日、亜外務省は、プレスリリースを通じて、同日ロシアで発生した地下鉄テロ事件につき、今次テロ行為を強く非難するとともに、ロシア政府及び遺族・被害者に対し、亜政府・亜国民の連帯の意を表明した。

 

9.英国


(1)19日、ヒルOAS亜代表部大使は、インスルサOAS事務局長に対し、フォークランド(マルビナス)諸島周辺海域における英国による石油探査・採掘活動に関し、一方的行為である旨批判する文書を手交した。


(2)29日、フォークランド(マルビナス)諸島周辺海域において石油探査を行っていたDesaire Petroleum社は、探査の途中結果として、まだ低質な石油しか発見できていないが、探査作業を終了するまでは推定埋蔵量や採掘継続如何等については判断を下せない旨発表した。

 

10.ペルー


(1)21〜23日、フェルナンデス大統領は、亜大統領として16年振りにペルーを訪問した。22日、フェルナンデス大統領は、ガルシア大統領と会談し、「我々亜の責任により、長年に亘りペルーと距離ができてしまっていたことにつき、ペルー国民に対し、常に申し訳なく思っていた」等述べた。ガルシア大統領は、フェルナンデス大統領が、90年代の対エクアドル武器販売によって生じた問題を克服する必要性を認めたことにより、二国間友好関係強化に寄与したとして、同大統領に対し、大十字勲章を授与した。


(2)上記会談後、フェルナンデス大統領及びガルシア大統領は、二国間戦略的パートナーシップ・補完・協力協定等の署名式に出席した。同署名式において、フェルナンデス大統領は、「ペルー国民の心を傷つけた昔の出来事を克服するために今般ペルーを訪問した。ペルー国民は、我々の大陸における最後の植民地支配を拒絶するための神聖なる任務(注:1982年のフォークランド(マルビナス)紛争を指す。)において、亜国民と共に戦うため、航空機、パイロット及びミサイルを提供した国民である。南米諸国の統合強化により、200年前には植民地という楔からの開放を得たように、今度は不平等及び貧困という楔からの開放を求め団結して闘っていきたい」等述べた。


(3)一方、「ガ」大統領は、「(フェルナンデス大統領の今次訪問により、)生じるべきではなかった腹立たしい出来事に終止符を打つことになった。中南米地域は統合し、平和、貧困及び社会不平等の原因となる軍事支出の減少のために、協働していくべきである」等述べた。

 

11.IAEA


 24〜27日、天野IAEA事務局長が訪亜し、25日、フェルナンデス大統領及びタイアナ外相とそれぞれ会談した。会談後、タイアナ外相は、「IAEA事務局長が当国を訪問したことに誇りを感じる。これは、約60年にわたる平和目的の原子力開発、そして、これを引き続き強化していこうとする、亜の姿勢が評価されたことを意味する。天野事務局長とは、これまでのIAEAと亜の幅広い協力関係、また、原子力平和利用の分野で第3国を支援していく可能性等につき意見交換した。この他、核セキュリティ・サミット、NPT運用検討会議についても意見交換を行った」等述べた。他方、天野事務局長は「亜は、原子力開発における非常に重要且つ興味深い取組みを行っており、また、非常に有能な人材を多く擁しているところ、就任以来、ぜひ亜を訪問したいと考えていた。今次訪問では、様々な人々と意見交換を行い、また、IAEAの活動に資する亜国内の取組みを視察することが出来るため、自分にとって大変に有益な訪問である」等述べた。

 

12.ボリビア


 26日、フェルナンデス大統領は、ボリビアを訪問し、両国建国200周年記念事業に出席した後、モラレス・ボリビア大統領とともに天然ガス関連の二国間合意文書(天然ガスパイプライン建設計画及びボリビア産天然ガスの対亜販売合意文書)署名式に出席した。フェルナンデス大統領は、同署名式において、「我々は、大衆意志の自由な表現の保障を唯一の目的として、我々の兄弟国ボリビアが困難な状況に置かれていた時、完全なる連帯を示したが、これは、南米統合プロセスの賜である。ボリビアのアイデンティティー形成プロセスは、モラレス大統領選出により完了した。内政干渉の意図は何ら無いが、同プロセス完了のために協力した亜及びその他諸国は、モラレス大統領の勝利、つまりボリビア国民の勝利のために僅かではあるが参加できたと感じている。キルチネル前大統領が困難な状況下のボリビアを支援したように、亜は常にボリビアと共にあるだろう」等述べた。

 

13.ベナン


 28〜30日、エウズ外務・アフリカ統合仏語圏・在外ベナン人相が訪亜し、29日、タイアナ外相と会談した。両大臣は、両地域間のテーマや主要な国際テーマのほか、通信分野における協力や農業分野における協力についても協議した。また、両大臣は、科学技術分野における共同プロジェクトの形成、専門家・技術者交流、農業・植林・牧畜・水産・鉱山分野における情報交換を目的とする科学技術協力協定に署名した。

 

14.コロンビア


 30日、タイアナ外相は、「FARCにより12年間人質とされていたモンカヨ伍長が解放されたことは、亜政府の大きな喜びである。全ての努力は、人質解放達成のためになされることが重要である。コロンビアにおける全ての人質の解放を達成するために、亜政府は如何なる協力をも行う用意がある。亜政府は、国際人道法の深刻な侵害である市民の誘拐を非難し、人質の即時且つ無条件解放を呼びかける」等述べた。

 

15.要人往来


(1)往訪

1日 フェルナンデス大統領のウルグアイ訪問(ムヒカ・ウルグアイ大統領就任式に出席)
8〜9日 デビード公共事業相のフランス訪問(原子力の民生利用に関する国際会議に出席)
10〜11日 フェルナンデス大統領のチリ訪問(ピニェラ・チリ大統領就任式に出席)
11〜12日 ジョルジ産業・観光相のドイツ訪問(国際観光展に出席)
21〜22日 ブドゥー経済相のメキシコ訪問(IDB年次総会に出席)
21〜23日 フェルナンデス大統領のペルー訪問(ガルシア・ペルー大統領と会談)
25日 ビアンチ商工中小企業長官のブラジル訪問(ラマーリョ・ブラジル開発商工省次官と会談)
26日 フェルナンデス大統領のボリビア訪問(モラレス・ボリビア大統領と会談)


(2)来訪

1〜2日 クリントン米国務長官(フェルナンデス大統領と会談)
2日 ローズ汎米保健機構(PAHO)長官(フェルナンデス大統領と会談)
7〜9日 ヴェスターヴェレ独外相(フェルナンデス大統領及びタイアナ外相と会談)
12日 バラージュ・ハンガリー外相(タイアナ外相と会談)
15〜17日 アハロノビッチ・イスラエル治安相(タイアナ外相と会談)
16日 リャブコフ・ロシア外務次官(タイアナ外相と会談)
24〜27日 天野IAEA事務局長(フェルナンデス大統領及びタイアナ外相と会談)
28〜30日 エウズ外務・アフリカ統合仏語圏・在外ベナン人相(タイアナ外相と会談)

 

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