アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和6年4月10日

アルゼンチン政治情勢(2024年2月)

1 内政

(1)特別議会関連
●オムニバス法案の動向
ア 1日、前月31日の審議を経て、オムニバス法案が原案の664条から386条に縮小された。
イ 2日、下院本会議でオムニバス法案が賛成144、反対109、欠席3名で全体承認された。これにより、6日から個別条文の審議が開始されることが決定した。
ウ 6日、ミレイ大統領は、主要条文の賛成が得られなかったことを受け、委員会審議に差し戻すことを決定した。​ミレイ大統領は、これを対話に応じていたにも関わらず支持しなかった知事等の責任として、ジャルジョラ・コルドバ州知事、サディール・フフイ州知事、フィゲロア・ネウケン州知事、パサラクア・ミシオネス州知事、サエンス・サルタ州知事を「裏切り者」として名指しで批判した。他方、オムニバス法案への支持を表明したリトンド下院議員(共和国提案(PRO))、ピチェト下院議員(連邦連合結集)、急進市民同盟(UCR)の支持に謝意を表した。
エ 15日、具体的な政策決定がなされないまま、特別議会が閉会した。
●必要緊急大統領令(DNU)を巡る動き
ア 19日、メネム下院議長は、DNUを審査する両院委員会のメンバーとなる8人の議員を承認した。
イ 22日、DNUの審査を行う両院委員会の設置が完了し、与党「自由の前進」のパゴット上院議員が委員長に選出された。
ウ 23日、上院で準備会議が開催され、アブダラ上院議長代理が正式に承認された他、副議長にサパグ上院議員(ネウケン人民運動)、第一副議長にロサダ上院議員(UCR)、第二副議長にビゴ上院議員(ペロン党)がそれぞれ就任した。
エ 29日、両院委員会が開かれ、DNUの審議を行った。

(2)新政権の動向
●ビジャルエル副大統領のサンロレンソの戦いの記念式典出席(3日)
 3日、ビジャルエル副大統領は、ペトリ国防相と共に、サンタフェ州サンロレンソ市で開催されたサンロレンソの戦い211周年記念式典に参加した。
●政府要人の解任(9日)
 9日、政府は、ジョルダーノ国家社会保障機構(ANSES)長官(コルドバ州ペロン党)及びロジョン経済副大臣(鉱業担当)(ペロン党)の解任を発表。なお、23日、デ・ロス・エロス弁護士がANSES長官に就任した。
●ミレイ大統領のコリエンテス州訪問(19日)
 19日、ミレイ大統領はコリエンテス州を訪問した。今次訪問は、フリーダム・クラブ財団設立10周年を記念するイベントに招待されてのこと。今次訪問に際し、ミレイ大統領は、バルデス州知事と非公式に会談した。また、右イベントにおける演説では、「国家は犯罪組織である」「議会はネズミの巣窟である」等と述べた。
●ビジャルエル副大統領及びフランコス内相のサルタ州訪問(20日)
 20日、ビジャルエル副大統領及びフランコス内相は、サルタ州で開かれた「サルタの戦い」211周年記念式典に参加した(同内相の地方州への訪問は、就任以来初)。式典後、同内相は、サエンス州知事の他、式典に出席していたハリル・カタマルカ州知事、パサラクア・ミシオネス州知事、ハルド・トゥクマン州知事、サディール・フフイ州知事、バルデス・コリエンテス州知事とそれぞれ会談し、州と国の現状と要望に関し協議した。また、前日の19日には、同副大統領と右州知事5名が非公式に会談した。
●インフラ省廃止(26日)
 26日、政府は、1月25日にフェラーロ・インフラ相が解任されて以降経済省の管轄下に置かれていたインフラ省を正式に廃止し、経済省が公共事業やインフラ政策、全国な水政策、交通・運輸部門及び下線、道路、住宅、都市統合開発政策等の決定権を持ち、内閣府が道路開発企業、アルゼンチン水道公社(AySA)、港湾管理当局を管轄することが決定された。

(3)野党動向
●CFK前副大統領の政府批判(14日)
ア 14日、クリスティーナ・フェルナンデス(CFK)前副大統領は、33ページにわたり現政権を批判する文書をSNSに投稿した。同前副大統領は、ミレイ大統領には「議会での合意のシステムの構築」が必要だと述べた。同前副大統領は、ミレイ大統領がメネム政権を称賛していることに関し、メネム政権当時と現代とでは状況が違うにも関わらず、民営化、無分別な開放政策、規制緩和を繰り返すつもりだ、と批判した。
イ また、同前副大統領は、インフレは「(ミレイ大統領の主張するような)財政赤字ではなく、ドル不足と密接に関連している」と強調した他、マクリ政権期の債務問題の原因となったとして、カプート経済相等といったミレイ政権
の人選にも懸念を表明した他、DNUとオムニバス法案を「主要なビジネスグループに合わせたアルゼンチンの法制度の修正パッケージ」と批判した。
ウ これに対し、カプート経済相は、「過去16年間のすべての財政赤字」は、CFK前副大統領が政権の座にいた12年(大統領として2期、副大統領として1期)の間に生み出されたものとし、マクリ元大統領は任期中にその赤字を減らすことに成功しており、ミレイ大統領は1カ月で直接それを解消した、と反論した。

(4)治安情勢
●補助金削減による交通運賃の大幅値上げ(6日)
 6日、ブエノスアイレス大都市圏の交通運賃が値上げされた。バスは一回の乗車が150ペソから270ペソ、後に300ペソに、地下鉄運賃は100ペソから130ペソに値上げされた。なお、同月、電気料金等も値上げされた。
●政府による交通運賃に対する補助金の停止措置(8日)
 8日、政府は、地方のバス会社等に分配している交通運賃に対する補助金の撤廃を発表した。右を受け、15日、ブエノスアイレス市で、全国の市長が会合を行った。これは、連邦市長ネットワーク (コルドバ市、ロサリオ市等の市長で構成される)が主催するもので、市長等は公共交通機関への補助金の廃止を批判し、連邦議員に対し、地方交付金の支出と補助金の公平な分配を要求する法案を提出するよう求めた。
●「チョコバル・ドクトリン」の復活(8日)
 8日、ブルリッチ治安相は、「チョコバル・ドクトリン」として知られる決議956/2018を改めて有効にする旨発表した。これは、治安部隊が、犯罪者の武器所有の有無にかかわらず、死者や重傷者の発生しうる差し迫った犯罪行為に直面した場合に、身分を明かし、銃器等の使用を明言した上での犯罪行為等の停止の要請を経ることなく、殺傷能力のある銃等の武器の使用を許可するものである。この法案は、2019年にフェルナンデス前政権のフレデリック元治安相により廃案となっていた。
●ストライキの発生
ア 5日以降、コミュニティキッチンを運営する様々な社会団体が人的資本省前で食料を要求するデモを開始した。7日、コミュニティキッチンや社会団体の代表者は昨日、全国各地で抗議活動を行い、食料の配達を要求した。その後も、類似の運動が散発した。
イ 21日、列車運転士労組がストライキを実施し、ブエノスアイレス市と地方都市を結ぶ都市間長距離鉄道を除き、列車の運行が停止された。
ウ 22日、医療従事者がストライキを実施し、緊急時を除き、医療サービスの提供を停止した。
エ 23日、左派及びペロン党系の組織が全国で道路封鎖を伴う抗議行動を行い、食料支援等を要請する活動も見られた。
オ 26日、教員労組は、10の州及び市の始業日に合わせ、全国でストライキを実施した。
カ 28日、アルゼンチン航空及びインターカーゴ(国内主要空港でグランドハンドリングサービスを提供)の労組がストライキを実施し、航空便の運航に影響が生じた。

(5)各州の中央政府提訴
●ラリオハ州の中央政府提訴(6日)
 6日、キンテラ州知事は、地方交付金をめぐり、最高裁判所に政府を提訴した。2023年予算では、同州への交付金として470億ペソが予定されていたが、355億ペソしか割り当てられなかったとして、同州に対する債務として93億ペソの支払いを主張している。
●ラパンパ州の中央政府提訴
16日、シリオット・ラパンパ州知事は、交通補助金の撤廃に反対して最高裁判所に訴訟を起こした。同州知事は、中央政府の措置は恣意的であり、各州等地方自治体の自治を軽視しているとして批判した。
●チュブト州の中央政府提訴
ア 21日、トーレス・チュブト州知事(PRO)は、交通運賃に対する補助金撤廃に反対し国を提訴した。
イ 22日、チュブト州からの要請を受け、連邦裁判所は、公共交通機関向け補助金の廃止を撤回する判決を下し、政府に対して、大ブエノスアイレス首都圏(AMBA)以外の地方都市向けの交通運賃のための補助金の停止または削減を行わないよう指示した。
イ 23日、トーレス知事は、オムニバス法案の否決を受け、ミレイ大統領が停止した、各州に対する連邦交付金の配分再開を要請する(パタゴニア地方の全知事が署名した)書面を発出した。また、同知事は、連邦交付金の配分が再開されなければ、州内で生産される石油及び天然ガスの供給を停止する旨発表した。
ウ 上記書面の発出後、ハルド・トゥクマン州知事を除き、23名の州知事及びブエノスアイレス市長が、トーレス知事を支持した。
エ 連邦裁判所は、チュブト州に有利な判決を下し、政府に対して、連邦交付金の配分再開を命令した。政府は異議申し立てを提出する意向。他方、28日、政府は要請に応じ、同州に対し補助金交付を実施。
●ミシオネス州の中央政府提訴(23日)
23日、ミシオネス州政府は、教育予算を巡り、中央政府を提訴した。


2 外交

(1)首脳級の動き
●ミレイ大統領のイスラエル訪問(6~9日)
ア 6日、ミレイ大統領は、イスラエルを訪問。ヘルツォグ・イスラエル大統領と会談し、イスラエル・パレスチナ情勢や人質解放につき協議した。また、ミレイ大統領は、駐イスラエル・アルゼンチン大使館をテルアビブからエルサレムへ移転する決定を再確認した他、ハマスをテロリストに指定する意向を改めて表明し、イスラエルへの支持と連帯を表明した。また、ミレイ大統領は、会談前、嘆きの壁を訪れ、壁の前で祈りを捧げた。
イ アの会談中、ハマスは、大使館移転の意向を強く非難する声明を発表した。また、7日には、アラブ諸国連盟も大使館移転を非難した。
ウ 7日、ミレイ大統領は、ネタニヤフ・イスラエル首相と会談し、二国間貿易関係及びイスラエル・パレスチナ情勢につき協議し、大使館移転の意向を、同首相に対しても伝達した。同首相は、イスラエルへの支持及び連帯、また大使館移転の意向に謝意を表した。また、ミレイ大統領は、ハマスに拉致されたアルゼンチン人の親族とも面会した。
エ 今次訪問には、カリーナ・ミレイ大統領府長官、モンディーノ外相、ワニシュ次期駐イスラエル・アルゼンチン大使が同行した。モンディーノ外相は、カッツ・イスラエル外相、アクニス・イスラエル科学技術相、アヴィ・ディヒター・イスラエル農業・農村開発相と会談した。
●ミレイ大統領のバチカン及びイタリア(ローマ市)訪問(9~12日)
ア 11日、ミレイ大統領は、バチカン市国で行われたアルゼンチン聖人の列聖式に参列した。
イ 12日、同大統領は、教皇フランシスコに謁見し、非公式に会談した。本会談に際し、同大統領は、選挙期間中の教皇に対する不適切な発言を謝罪し、教皇は謝罪を受け入れた。
ウ 同日、ミレイ大統領はローマ市で、マッタレッラ伊大統領、メローニ伊首相とそれぞれ会談し、経済分野での関係深化等、二国間関係につき協議した。
エ 同日、モンディーノ外相は、タヤーニ伊外相、ロッロブリージダ伊農業・食料主権・森林相、ウルソ伊企業メイド・イン・イタリー相、ジョルジェッティ伊経済財政相、フラティン伊環境・エネルギー安全保障相等と会談した。
●ペーニャ・パラグアイ大統領のアルゼンチン訪問(14日)
 14日、ミレイ大統領は、アルゼンチンを訪問したペーニャ・パラグアイ大統領と会談した。本会合で、両首脳は、貿易、投資及びインフラの分野での両国間の統合につき協議した他、パラナ・パラグアイ川水路での海上貿易の問題や、ヤシレタ二国間ダムの共同管理についても協議した。
●セジュルネ仏欧州・外務大臣のアルゼンチン訪問
ア 19日、ミレイ大統領は、アルゼンチンを訪問したセジュルネ仏欧州・外務大臣と会談し、二国間関係の強化及びEU・メルコスールFTA交渉に関する両国の立場につき協議した。
イ 会談後のインタビューで、セジュルネ大臣は、(同FTA交渉で)合意に至らずとも、メルコスール諸国は民主主義という価値観を欧州と共有しており、(FTA交渉の)合意の外で建設的な対話ができると確信している、と述べた。
ウ 同日、モンディーノ外相は、セジュルネ仏欧州・外務大臣と会談した。本会談で、双方は、両国が西側の自由民主主義国としての価値観を共有している点を強調した他、二国間貿易及び投資促進を図る現政権の措置を、予測可能性と信頼を形成するものとして積極的に評価した。また、セジュルネ大臣は、仏企業の対アルゼンチン投資継続の意向を強調した。
エ モンディーノ外相は、IMFの課徴金支払いに対し、仏の支援を要請した他、マルビーナス諸島(ママ)の問題に関するアルゼンチンの立場を改めて表明した。
オ 会談後、モンディーノ外相は記者団に対し、EU・メルコスールFTA交渉に関し、全ての当事者が満足するような合意に至るかは不明とし、最終的には項目ごとに細分化する可能性を示唆した。他方、セジュルネ大臣は、仏は現状の協定に署名することには反対している旨述べた。
●ミレイ大統領とブリンケン米国務長官の会談(23日)
ア 23日、ミレイ大統領は、アルゼンチンを訪問したブリンケン米国務長官と会談した。本会合で、双方は、現政権の改革及びIMF交渉、貿易協定拡大等につき協議した。また、同大統領は、本会合で、民主主義、自由、市場の重要性を強調し、リチウム関連の直接投資推進の意向を表明した。また、双方は、ウクライナ及びイスラエル・パレスチナ情勢及び米州の地域的課題につき協議した。
イ ブリンケン国務長官は、ミレイ大統領との会談後、モンディーノ外相と共に共同記者会見を行い、同大統領との初会談は生産的であったと評価し、アルゼンチンの二国間関係強化の意向を歓迎した。また、食料、エネルギー、鉱物資源分野におけるアルゼンチンの重要性を強調し、アルゼンチンの経済安定化や社会状況改善に貢献しうるパートナーとしての米国の役割を強調した。
ウ また、ブリンケン国務長官は、ウクライナ支持を巡るアルゼンチンとの連帯を強調した他、ミレイ大統領がイスラエルの自衛権行使を支持したことに謝意を表した。
●ミレイ大統領の米保守政治活動協議会(CPAC)出席
ア 24日、ミレイ大統領は、米国で開催された米共和党系の集会である保守政治活動協議会(CPAC)に出席した。
イ 同大統領は、本会合に際し演説し、「市場の定義から言って国家の介入は不要であり、自由な市場は良い結果をもたらす。国家の市場への介入は、技術の進歩を妨げ、経済を破壊する。また、国民に自由を与える法案により、競争的な市場構造に移行しようとすると、政治的「カースト」の抵抗に遭う。しかし、我々はアルゼンチンを再び偉大にすることを諦めるつもりはない。社会主義を増長させてはならず、自由のために戦わなければならない。」と述べた。
ウ ミレイ大統領は、CPACに際してトランプ前米大統領と短時間会談し、トランプ前米大統領のこれまでの支援に謝意を表すとともに、本年の米大統領選挙での勝利を期待する旨伝達した。

(2)閣僚級の動き
●モンディーノ外相とクレバ・ウクライナ外相との電話会談
1日、モンディーノ外相は、クレバ・ウクライナ外相と電話会談を行った。本会談で双方は、ロシアによるウクライナ侵攻における、「紛争の平和的かつ交渉による見通し」に関し分析した他、二国間関係強化に関しても協議した。
●モンディーノ外相等とニコルズ米国務次官補との会談
4~6日、モンディーノ外相は、アルゼンチンを訪問したニコルズ米国務次官補(西半球担当)と会談し、二国間の貿易関係の「拡大」につき協議した。また、同次官補は、ポセ内閣官房長官、クーネオ・リバローナ司法相、ブルリッチ治安相、カプート経済相とも会談し、地域的・世界的な課題、経済の安定化、その他の相互の関心分野について協議した。
●モンディーノ外相のミュンヘン安全保障会議出席(16日)
ア 16日、モンディーノ外相は、パネル「変革のための通貨:予算に基づく世界政治」に出席し、IMFのサーチャージ見直しの重要性について強調した他、対アルゼンチン投資の重要性を強調した。また、パネル「重要課題:戦略的鉱物サプライチェーンの強化」に出席し、エネルギー供給国及び鉱物資源のバリューチェーン構築に向けたアルゼンチンの役割を強調した。
イ 16日、同外相は、リンドナー独財相と会談し、アルゼンチン現政権の経済政策とその成果を強調した。また、同日、ブラントナー独経済気候保護省政務官と会談し、EU・メルコスールFTAの早期締結に向けた協力を呼びかけた。
ウ 17日、同外相は、王毅中国外相と会談した。双方は、間もなく国交樹立を迎える二国間関係が戦略的性質を持つことで一致し、二国間の信頼関係を確認した。
エ 17日、同外相は、ファウラー米国務省食料安全保障特使と会談し、食料危機におけるアルゼンチンの世界的な食料供給国としての重要性を強調した。また、生産性向上に向けた二国間の技術協力等につき協議した。
オ 同外相は、この他、ジャイシャンカル・インド外相、ベアボック独外相等とも会談した。
●キャメロン英外相のマルビーナス(フォークランド)諸島訪問(19日)
ア 19日、キャメロン英外相は、英政府高官としては2016年以降、英外相としては2014年以降初めて、マルビーナス(フォークランド)諸島を訪問した。同英外相は、今次訪問の目的を、島々が「英の貴重な一部」であることを明確にするためのものと述べ、主権の問題は議論していないことを強調した。また、同英外相は、同諸島が「長い間、恐らく永遠に」英国の管理下に留まることを期待する旨述べた他、同諸島の兵士墓地や記念碑等を訪問した。
イ メレラ・ティエラ・デル・フエゴ州知事は、同英外相を州の「ペルソナ・ノン・グラータ」と宣言し、同英外相の訪問は、「我々の領土に対する正当な主権を損ない、21世紀の植民地主義を維持しようとする、新たな英国の挑発行為であり、我々はそれを許すつもりはない」と述べた。
エ メレラ州知事の他、キシロフ・ブエノスアイレス州知事、サモラ・サンティアゴ・デル・エステロ州知事、キンテラ・ラリオハ州知事、シリオット・ラパンパ州知事、カフィエロ下院議員(前外相)等も同英外相の訪問を非難した。
オ 同日、アドルニ大統領府報道官は、キャメロン英外相のフォークランド諸島訪問は「英国政府のアジェンダ」であるとして、「我々は他国のアジェンダに発言権を持つ必要はない」と述べた。
●モンディーノ外相のG20外相会合出席(20日)
ア 20日、モンディーノ外相は、リオデジャネイロで開催されたG20外相会合に出席し、アルゼンチンのG20へのコミットメントを再確認した。同外相は、本会合で、財政再建と通貨の安定に向けて取り組んでいることを強調した。
イ 21日、同外相は、全体会合及びハイチ支援に関する特別会合に参加した。同外相は、全体会合の中で、アルゼンチンの取組を強調し、世界経済への定着に向けて進んでいると説明した。また、アルゼンチンはOECD加盟手続きを開始しており、今後投資家にとって法的安全性の向上に貢献し、民間企業にとって魅力的な環境となることを保証すると述べた。
ウ 同外相は、ヴィエイラ・ブラジル外相と会談し、両国が戦略的パートナーであることを確認した。また、モンディーノ外相は、現政権の改革についても説明し、将来的に貿易制限を撤廃する方針を強調した。この他、国境管理における特に運輸・エネルギー面での協力や、科学技術協力、原子力や水路、国防等における協力関係についても協議した。
エ また、モンディーノ外相は、ボレルEU上級代表とも会談し、アルゼンチンにとってEUは貿易・投資の重要なパートナーである点強調し、技術導入や対アルゼンチン投資への関心を表明した他、EU・メルコスールFTA締結が現政権の優先事項であると述べた。また、モンディーノ外相は、アルゼンチンが、エネルギー及び鉱物資源分野のバリューチェーン開発におけるEUのパートナーである点確認した。
オ モンディーノ外相は、キャメロン英外相と会談し、両国の関心分野における協力深化につき確認するとともに、ウクライナ侵攻に関しロシア政府の行動を引き続き非難することを表明した。また、双方は、マルビーナス諸島(ママ)の主権に関する問題では、意見の相違があることを認め、モンディーノ外相は、19日の同英外相のマルビーナス諸島訪問に対する不快感を表明し、同諸島におけるアルゼンチンの主権を再確認するとともに、国際社会のマンデートに従って紛争を解決する意思があることを改めて表明した。
カ モンディーノ外相は、この他、オスマン・シンガポール外相、ルトノ・インドネシア外相、パガニーニ・ウルグアイ外相等と会談した。
● ブルリッチ治安相の訪米(21日~)
ア 21日、ブルリッチ治安相は、CPACの開会式に出席し、ミレイ政権における治安政策とその実績に関し説明した他、犯罪組織としてヒズボラとハマスを取り上げた他、国境警備強化にも言及した。
イ 22日、同治安相は、FBI関係者の他、麻薬取締局(DEA)及び国土安全保障省幹部とも会談し、テロ対策、組織犯罪、マネーロンダリング、人身売買、サイバーセキュリティ等の分野における米国の支援及び協力を含む、共通の課題に向けての協働の必要性につき協議した。
ウ 同日、同治安相は、西半球安全保障委員会のパネルに参加し、組織犯罪対処に向けた人工知能の導入等を提案し、サンタフェ州ロサリオ市における殺人事件発生件数の減少及び右に対する部隊及び犯罪対応ツールの貢献を強調した。
エ また、同治安相は、22日のCPACセッションに際し、ブケレ・エルサルバドル大統領と会談し、同大統領の安全保障政策を称賛し、ミレイ政権も、同様の水準に到達するため、安全保障分野で尽力している点強調した。
●ゴピナートIMF筆頭副専務理事のアルゼンチン訪問(21~22日)
ア 21日、ゴピナートIMF筆頭副専務理事は、アルゼンチンを訪問し、カプート経済大臣及びバウシリ中銀総裁と会談した。本会合で、同理事は、アルゼンチンのマクロ経済の安定回復、貧困層の保護及び経済成長率を強化するための継続的な取り組み等につき協議した。
イ 22日、ゴピナート筆頭副専務理事は、ミレイ大統領と会談した他、ポセ官房長官及びフランコス内務大臣とも会談した。
ウ アルゼンチン訪問中、上記閣僚との会談に加え、経営者団体代表、労働組合代表との会談も行った。
●カプート経済相等のG20財務大臣会合出席(28~29日)
ア 28~29日、カプート経済相とバウシリ中銀総裁はサンパウロで開かれたG20財務大臣・中銀総裁会合に出席した。本会合で、カプート経済相は、複数のパネルディスカッションに参加した他、「21世紀の国際課税」「成長・雇用・インフレ・金融の安定に関する世界的展望」「国際債務と持続可能な開発のための資金調達」等の議題に関し議論した。
イ 28日、同経済相らは、ゲオルギエバIMF専務理事と会談した。双方は、今次会談を高く評価し、同専務理事は、安定を回復し、脆弱層を支援し、改革への支持を形成するための当局の持続的な努力を強調した。
ウ 29日、同経済相は、イエレン米財務長官と会談した。同長官は、ミレイ政権の取組を評価し、両国には多くの協力分野があるとして、二国間の財務部門の活発且つ建設的な関係への期待を表明した。
エ 29日、同経済相は、コーマンOECD事務総長と会談し、アルゼンチンのOECD加盟に向けた現状と今後のステップ、及びそのプロセスにおける経済省の役割につき協議した。

(3)対中関係
●アルゼンチン産ニジマスの対中輸出解禁
1月29日、中国政府は、アルゼンチンの淡水養殖場で生産された冷凍ニジマスの輸入を承認した。
●駐中国アルゼンチン大使の任命
 20日、政府は、マルセロ・サルビア氏を駐中国大使に任命した。

(4)ロシアによるウクライナ侵攻2周年
●ロシアによるウクライナ侵攻2周年式典(23日)
ア 23日、本使は、クレメンコ駐アルゼンチン・ウクライナ大使の招待に応じ、ブエノスアイレス市議会で開かれたロシアによるウクライナ侵攻2周年に際してのウクライナとの連帯を表明する式典に出席した。
イ 本式典で、本使は、「我々は、自由と独立を守るために2年間戦い続けてきたウクライナ国民の勇気と忍耐力に改めて敬意を表する。ロシアによるウクライナ侵攻は、武力による一方的な現状変更の試みであり、国際的な平和と安全保障の根幹を揺るがす脅威であるとともに、国際社会の権利の侵害であるため、到底容認できない。民主主義と法の支配を重視する日本は、これまでも、そしてこれからも、ウクライナに対する支援を継続していく。また、唯一の被爆国として、今次侵攻においてロシアの核兵器使用に対する深刻な懸念を表明する」と述べた。
●アルゼンチン外務省声明(24日)
ア 24日、アルゼンチン外務省は、ロシアによるウクライナ侵攻から2年が経過したことを受け、声明を発出した。右声明で、アルゼンチンは、ロシアの侵略行為を改めて強く非難するとともに、違法な武力行使並びにウクライナ領内における軍事作戦の即時致死、部隊・兵士の即時撤退を求めた。
イ アルゼンチンは、国連憲章及び国際法の一般原則を固く支持し、ウクライナ国内の子どもの強制移送に対する懸念を表明した。また、ロシアによる民間人に対する暴力行為や核関連施設に対する攻撃を非難し、市民を苦しめる行為を回避するよう呼びかけた。
ウ また、アルゼンチンは、外務省国際協力・人道支援庁(ホワイトヘルメット)の戦争地域からの避難等のミッション支援を強調した。
エ また、アルゼンチンは、全ての当事者に対し、紛争の段階的縮小を改めて要請し、外交・対話こそ公平で持続的な解決策を見出す方法である点強調するとともに、右に対し、双方にとって建設的な約束を実現するために努力しているアクターの取組を評価した。

(5)その他
●当地韓国大使のアルゼンチン外相首席補佐官表敬(2日)
2日、バートフェルド外相首席補佐官は、李容洙(イ・ヨンス)駐アルゼンチン韓国大使の表敬を受けた。同首席補佐官は、同大使に対し、第3回民主主義サミットの開催に対するアルゼンチンの支持を伝達した。また、双方は、朝鮮半島情勢について議論し、同首席補佐官は、北朝鮮のミサイル実験や北朝鮮の人権状況に対するアルゼンチン側の懸念を表明した。
●OECD加盟
5日、経済協力開発機構(OECD)は理事会を開催し、アルゼンチンのOECD加盟に関しミレイ政権が作成したロードマップを採択した。ミレイ政権発足後、加盟の意向を示した書簡をOECDに提出していた。
●ペトロ・コロンビア大統領との関係悪化(24日)
ア 24日、ミレイ大統領は、CPAC出席に際しコロンビアのメディアのインタビューに応じ、「彼(ペトロ大統領)はコロンビア人にとって致命的な疫病である」等と述べた。
イ 同日、ペトロ大統領は、Xで右発言を批判し、「市場の自由は、幸福の生産の役に立たない。市場の自由と自由を混同するのは非常に愚かだ。今日のいわゆる「リバタリアン」は、自由とは、人間を経済大国に隷属させることだと信じており、古いナチスの目標を擁護・再生産している」と投稿した。
ウ 同日、コロンビア政府も、「ミレイ大統領のペトロ大統領に対する無責任で無礼な声明を、最も強く、断固拒否する」とする声明を発出した。
 
(6)要人往来一覧
ア 往訪
 米国:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、ブルリッチ治安相
    (21~24日:CPAC出席)
 イスラエル:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、モンディーノ外相(6~9日:イスラエル訪問)
 バチカン市国:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、モンディーノ外相、マクリ・ブエノスアイレス市長、サモラ・サンティアゴ・デル・エステロ州知事(9~12日:教皇謁見)
 イタリア:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、モンディーノ外相(12日:ローマ市訪問)
 ドイツ:モンディーノ外相(16~18日:ミュンヘン安全保障会議出席)
ブラジル:モンディーノ外相(20~21日、G20外相会合)、カプート経済相、バウシリ中銀総裁(28~29日、G20財務大臣会合)
 
イ 来訪
 英:キャメロン外相(19日:マルビーナス(フォークランド)諸島訪問)
 パラグアイ:ペーニャ・パラグアイ大統領(14日)
 仏:セジュルネ欧州・外務大臣(19日)
米国:ブリンケン国務長官、ニコルズ国務次官補(西半球担当)、サリバン国家安全保障担当大統領首席補佐官(23日、ニコルズ次官補のみ4~6日にもアルゼンチンを訪問)、ルビオ上院議員(20日)
 IMF:ゴピナート筆頭副専務理事(21日)
 サンマリノ:ベッカーリ外務・国際経済協力・通信長官(26日)

(了)

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