アルゼンチン政治情勢(2015年11月)
2015年12月作成
在アルゼンチン日本大使館
内政
(1)選挙
(ア)大統領選決選投票
22日,大統領選決選投票が実施され,マクリ候補(野党「カンビエモス」)が51.34%を得票し,48.66%の得票率であったシオリ候補(与党「勝利のための戦線」)に勝利し,大統領当選を果たした。
(イ)マクリ次期政権の閣僚発表
25日,マクリ次期政権で官房長官を務める予定のペニャ氏は,新政権の閣僚を発表した。財務・金融大臣に,アルフォンソ・プラット・ガイ元中銀総裁,外務・宗務大臣にスサナ・マルコーラ国連官房長,内務大臣にロヘリオ・フリヘリオ・シウダー銀行総裁が指名された他,リノ・バラニャオ現科学技術大臣の留任が明らかとなった。
(2)連邦議会:国家債務再編における9つの基本原則の批准と国内法化
4日,連邦議会は,9月の国連総会で採択された国家債務再編における9つの基本原則を批准,10日に同原則の国内法を公布した。
(3)司法・検察:
(ア)代理判事法に対する違憲判決
4日,最高裁判所は,本年6月に改正された「代理判事法」につき,司法評議会による恣意的な代理判事任命を許すものであるとして,違憲判決を下した。同時に,同裁判所は,改正代理判事法により新たに任命された代理判事に対し,3ヶ月以内の辞職を求めるとともに,連邦議会に対しては明確な基準で代理判事を選出するための立法措置を要求した。
(イ)中央銀行に対する立ち入り捜査
17日,ボナディオ連邦判事は,バノリ中銀総裁等が国内為替先物市場において国外市場よりも安い値段でドルを供給したことが国庫に損害を負わせたとして,中央銀行に対する立ち入り捜査を実施し,関連書類等を押収した。
(ウ)司法評議会構成員数を定めた法に対する違憲判決
19日,連邦裁判所は,2006年に,司法府において判事の推薦や懲罰等を扱う「司法評議会」の構成員数を20名から13名に減員した法律に対する違憲判決を下し,同法を無効とした。
(エ)地方交付金滞納を巡る違憲判決
24日,最高裁判所は,2001年に法で定められた国税の地方交付金を15%減額するという大統領令に対し,違憲判決を下した。30日,フェルナンデス大統領は,これまで滞納されていた約981億ペソを返済する旨記した緊急大統領令に署名を行った。
(4)労働組合:地下鉄労組の再編
30日,労働省は,ブエノスアイレス市地下鉄に関する労使交渉をこれまで主体的に行ってきた地下鉄・バス運転手組合(UTA:Unión Tranviarios Automotor)に代わり,地下鉄労働者連盟(AGTSyP:Asociación Gremial de Trabajadores del Subte y el Premetro)(UTAから派生していた首都地下鉄関係者連盟(Metrodelegados)の改名組織)を主要労使交渉先として認定するとともに,同連盟を団体公認した。
(5)その他:ウラン濃縮工場の開所式
30日,フェルナンデス大統領は,リオ・ネグロ州ピルカニジェウにおけるウラン235の濃縮工場の開所式にて演説を行った。同大統領は,科学技術,エネルギー供給の自立の必要性を強調し,次期政権以降も,同分野への投資継続を期待する発言を行った。
外交
(1)日本:新駐日本アルゼンチン特命全権大使の任命
23日,フェルナンデス大統領は,駐日本アルゼンチン特命全権大使に,アルゼンチン外務省のアラン・クラウディオ・ベロー法務総局長を任命した旨,大統領令にて公表した。
(2)アラブ・南米サミット:ブドゥー副大統領等の出席
6日,ブドゥー副大統領,スアイン筆頭外務副大臣は,サウジアラビアのリヤドにて開催された第4回アラブ・南米サミットに出席した。同会合の共同宣言には,アルゼンチンが抱えるフォークランド(マルビナス)諸島の領有権を巡る問題の解決等に対する支持が盛り込まれた。
(3)レバノン:ベイルートでのテロに対する弔意等表明
13日,アルゼンチン政府は,同日,レバノンのベイルートで発生した連続自爆テロに関し,外務省声明を通じて,テロとの戦いにおいて関係各国との連携を強化するとともに,レバノン国民・政府に対する弔意及び犠牲者の遺族に対する連帯の意を表明した。
(4)フランス:パリ同時多発テロに対する弔意等表明
13日にフランスのパリで発生した連続テロ事件に関し,同日,フェルナンデス大統領は,ツイッター上で,テロに対する非難と被害者とその家族に対する弔意を表明した。14日,アルゼンチン政府は,遺族等に対する弔意を,外務省声明を通じて表明した。
(5)G20:キシロフ経済・財政大臣等の出席
15~16日,キシロフ経済・財政大臣,デ・ビード連邦企画大臣,ティメルマン外務大臣等は,トルコのアンタルヤで開催されたG20首脳会合に出席した。共同声明において,債務再編に際する集団行動条項が盛り込まれ,キシロフ大臣は,国際通貨基金(IMF)に対して同条項の利用を促すことを期待する旨述べた。
(6)中国:アルゼンチン原子力発電所第4,5号機に対する中国の融資
15日,アルゼンチン原子力電気社(NASA)のアントゥネス社長と,中国核工業集団公司(CNNC)は,アルゼンチンにおける原子力発電所(重水炉)の第4号機及び5号機の建設に関し,中国が融資を行うことを定めた合意に署名を行った。キシロフ経済・財政大臣は,アルゼンチン国内産業を強化するものとして,同署名を賞賛した。
(7)米国:マクリ次期大統領とオバマ米大統領の電話会談
25日,オバマ米大統領は,マクリ次期大統領に電話をかけ,15分程会談を行った。両者は,両国の通商関係の改善等について合意するとともに,エネルギー,気候変動,麻薬取引・テロ撲滅といった分野でも協働すると約束した。会談後,米ホワイトハウス報道官は,多面的な二国間協力の深化,通商関係改善,エネルギー分野での協力の拡充について言及した。
(8)スペイン:ガルシア=マルガージョ外務大臣のアルゼンチン訪問
29日,ガルシア=マルガージョ西外務大臣が,アルゼンチンを訪問し,マクリ次期大統領と会談を行った。同西外務大臣は,次期政権におけるアルゼンチンの市場開放等に関する政策構想を支持するとともに,メルコスールと欧州連合間の自由貿易協定を推進する旨言及した。
(9)要人往来
(ア) 往訪
6日 |
フィルムス外務副大臣(フォークランド諸島等担当)のスイス訪問(マウラー赤十字国際委員会総裁会合) |
9日 |
スアイン筆頭外務副大臣のカタール訪問 |
10日 |
ブドゥー副大統領,スアイン筆頭外務副大臣のサウジアラビア訪問(第4回アラブ・南米サミット出席) |
14~16日 |
ティメルマン外務大臣のトルコ訪問(THINK20,G20首脳会合出席) |
15~16日 |
キシロフ経済・財政大臣,デ・ビード連邦企画大臣のトルコ訪問(G20首脳会合出席) |
(イ)来訪
2日 |
ブシャティ・アルバニア外務大臣 |
12日 |
マトヴィエンコ露連邦上院議長 |
29日 |
ガルシア=マルガージョ西外務大臣 |
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