アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

平成29年3月23日

アルゼンチン政治情勢(2017年2月)

2017年3月作成
在アルゼンチン日本大使館
 
1 内政
(1)大統領府・政府
 (ア)祝日の変更
 1月23日,政府は政令にて固定祝日を移動祝日へと変更したが,これに対し,野党や人権団体及び与党内から特定の祝日(3月24日,4月2日,6月20日)については,歴史的日付が記憶されるよう固定祝日とすべき旨の強い批判が寄せられたところ,1日,政府は再度これら祝日を固定祝日に戻す旨の発表を行った。
 
 (イ)マクリ大統領による「パタゴニア・プラン」の発表
 9日,マクリ大統領は,リオネグロ州ビエドマで行われた南部地方のインフラ整備を目的とする「パタゴニア・プラン」の記念式典に南部6州の州知事とともに出席した。
 
 (ウ)アルゼンチン郵便公社を巡る政府とSOCMA社の合意に対する批判
 10日,野党(ペロン党前政権派)議員らが,昨年6月に亜郵便公社「コレオ・アルヘンティーノ」を巡る政府とSOCMA社(マクリ大統領の父であるフランコ・マクリ氏の会社)の合意について,マクリ大統領及びアグア通信大臣他を刑事告発した。
 1997年(メネム大統領時代)にSOCMA社にコンセッション契約(30年)で民営化された郵便公社は,2001年の破産時には2.93億ペソの未払いがあったが,政府は,昨年6月,同未払い金を16年間で償還,金利を年利7%とすることでSOCMA社と合意した。しかし,この内容が,未払い金の約98%以上の約70億ペソ以上の実質的な債務免除に相当するとして,与野党から批判が上がったことを受け,16日,マクリ大統領は,郵便公社との協定を無効とし,合意内容の見直しを検討する旨発表した。20日,リホ連邦判事は,公金の横領等の可能性につき,マクリ大統領及びアグア通信大臣他への調査を開始した。また,国家総監査局(AGN)も本件について調査を行うと報じられた。
 
 (エ)年金問題
 15日,国家社会保障機構(ANSES)が年金及び児童手当(AUH:失業者等を対象とする)の支給額の改定(毎年3月及び9月の年2回改定が法律で規定)に関し,技術的な計算式のミスを修正したところ,次回3月の改定における支給額が僅かに減額(12.96%から12.65%へ0.3%の減額)されることが明らかになった。かかる措置に対し,与野党から強い批判の声が上がったため,マクリ大統領は,計算式の修正による年金改定措置を取り消す旨発表した。
 
 (オ)司法改革
 13日付ラ・ナシオン紙は,政府はマクリ大統領の選挙公約の一つである司法の透明性と組織改編を行う準備を進めるべく,汚職の疑いのある連邦判事等の解任に向け動き出した旨報じた。なお,政府は,少なくとも70名の空席ポストに判事を任命していくことも目指している由。
 
(2)連邦議会:臨時国会の開催
 8日,政府は,緊急大統領令(DNU)によって承認された労災法(ART)の改正等に関し議論を行うため,10日~28日まで臨時国会を召集する旨,官報にて発表した。なお,15日,下院において労災改正法が可決され,24日,同法が官報にて公布された。
 
(3)その他: 労組によるスト及びデモの決定
 2日,労働総同盟(CGT)は,3月7日に,労働者の解雇増大等に抗議するための反政府デモを実施することを発表した。また,23日,政府の提示する18%の賃上げに反対する教職員組合は,3月6日及び7日に48時間のストを行うことで合意した。また,17日,銀行労組は銀行側との賃金交渉において,24.28%の賃上げに合意し,予定していた72時間のストを打ち切る旨発表した。
 
2 外交
(1)日本:
北岡JICA理事長のアルゼンチン訪問
 6日,アルゼンチンを訪問した北岡JICA理事長は福嶌駐亜日本大使と共に,ミケティ副大統領,マルコーラ外務大臣及びエチェゴジェン工業生産副大臣とそれぞれ会合を行った。マルコーラ外務大臣との会合では,亜側から,一村一品を通じた地域開発支援に関心が示された他,「改善プロジェクト」の重要性や中南米やアフリカ地域向けの三角協力の現状及び可能性について,双方で前向きな評価が示された。

(2)米国
 (ア)ミケティ副大統領の米国訪問
 1日~4日,米国を訪問したミケティ副大統領は,2日,世界の政治家や宗教指導者を招待した全米祈祷朝食会(Nacional Prayer Breakfast)に参加した。同朝食会では,ミケティ副大統領がペンス米副大統領と短時間の挨拶を交わし,ペンス副大統領からは,ミケティ副大統領が再訪米して米亜関係について協議することを期待する旨の発言があった。
 
 (イ)マクリ大統領とペンス米副大統領との電話会談
 10日,マクリ大統領はペンス米副大統領との電話会談を行い,両者間で,両国の雇用創出及び経済成長を改善させるため,両国がさらに努力を重ねる必要があるとの見方が一致した。両者は,二国間及び西半球の問題に関し,対話を継続することにつき約束するとともに,ペンス米副大統領はトランプ米大統領がマクリ大統領と近いうちに会談を行う機会を望んでいる旨伝えた。
 
 (ウ)マクリ大統領とトランプ米大統領との電話会談
 15日,マクリ大統領はトランプ米大統領との間で約5分間の電話会談を行った。両首脳は,両国の共通テーマにつき話し合うとともに,トランプ米大統領よりマクリ大統領に対し,本年中のワシントン訪問への招待が行われた。
 
 (エ)フリヘリオ工業生産大臣及びカプート金融大臣の米国訪問
 21~22日,フリヘリオ内務・公共事業・住宅大臣とカプート金融大臣は複数の州知事(サルタ州,メンドーサ州及びネウケン州等)とともに米国(ワシントン)を訪問した。21日,カプート金融大臣は,モレノIDB総裁と会合を行った他,22日,両大臣は米州開発銀行(IDB)との間で,地方自治体の強化プログラムに関する約1億2千万ドルの融資につき署名を行った。

(3)スペイン マクリ大統領のスペイン訪問
 21日~24日,マクリ大統領(夫妻)は国賓としてスペインを訪問した。マクリ大統領はラホイ首相との首脳会談の結果,二国間関係が以前の「戦略的パートナーシップ(asociación estratégica)」関係に戻ったとした。また,両首脳は,メルコスール-EU自由貿易協定交渉を強化する必要性につき一致した。さらに,両首脳は,二国間共同声明及び行動計画に署名するとともに,両政府間で,様々な分野における計11の二国間協力文書への署名が行われた。
 
(4)メキシコ
 (ア)マクリ大統領とペニャ・ニエト墨大統領の電話会談
 6日,マクリ大統領とペニャ・ニエト墨大統領の間で電話会談が行われた。亜外務省筋によれば,マクリ大統領はペニャ・ニエト墨大統領に対し,「亜はメキシコが米国との関係においてバランスを見いだすよう期待している。」と述べた。また,メキシコ政府によれば,マクリ大統領はメキシコに対して連帯のサポートを表明すると共に,墨米両国にとって前向きな合意に至るよう希望する旨述べた由。

 (イ)マルコーラ外務大臣のメキシコ訪問
 13日,マルコーラ外務大臣は,ラテンアメリカ・カリブ非核地帯条約機構(OPANAL)の創設50周年式典に参加するため,メキシコシティを訪問し,ビデガライ墨外相と会談を行うとともに,同日,グアハルド墨経済相とも会談を行った。

(5)G20
 (ア)マルコーラ外務大臣のG20ボン外相会合出席他
 16~18日,マルコーラ外務大臣はドイツを訪問し,G20ボン外相会合及び第53回ミュンヘン安全保障会議に出席した。また,マルコーラ外務大臣はドイツ滞在中,ティラーソン米国務長官,ガブリエル・ドイツ副首相兼経済・エネルギー相,クリムキン・ウクライナ外相及びライチャーク・スロバキア外相等とバイ会談を行った。
 
 (イ)マルコーラ外務大臣とテぃラーソン米国務長官との亜米外相会談
 16日,マルコーラ外務大臣はティラーソン米国務長官と亜米外相会談を行った。マルコーラ外務大臣によれば,同会談において,双方は両国が共通の関心事項をアジェンダとして取り組んでいくことで一致した。
 
 (ウ)マルコーラ外務大臣とジョンソン英外相との亜英外相会談
 18日,ドイツ訪問中のマルコーラ外務大臣は,ジョンソン英外相と二国間外相会談を行った。同会談では,マルビーナス(フォークランド)諸島問題について話し合われたが,マルコーラ大臣は,お互い,両国の立場を明確にすることができた,本テーマについては,両国の間で大きな相違があることは確かである旨述べた。
 
(6)オランダ:マルコーラ外務大臣のオランダ訪問
 20日,マルコーラ外務大臣はオランダを訪問し,3月のマクリ大統領のオランダ訪問に向けた調整を目的として,クーンデルス・オランダ外相と会合を行った。また,マルコーラ外務大臣は,ハーグの国際刑事裁判所(ICC)を訪問し,シルビア・フェルナンデス・デ・グルメンディICC裁判所長等を表敬訪問した。
 
(7)英国:亜与党議員団の英国訪問
 1日,英国の列国議会同盟(IPU)の招待を受けた亜の与野党議員団(ピネド上院議長代理団長)が英国を訪問し,英国議員や政府関係者らと会談を行った。亜側は,官民パートナーシップ(PPP)法や資本市場改正法案の他,再生可能エネルギーやその他インフラ分野の公共入札等について説明した。また,英国側は,亜の経済協力開発機構(OECD)加盟について反対しない旨表明した。
 
(8)ブラジル
 (ア)マクリ大統領のブラジル訪問
 7日,マクリ大統領はブラジルを公式訪問し,テメル伯大統領と首脳会談を行った。同会談で両首脳は,貧困の削減と地域における社会的包摂を向上させることを目的として,その他の経済ブロックや国々との貿易協定を進めるべく,メルコスールの強化を図ることで一致した。なお,首脳会談後,マクリ大統領はオリヴェイラ伯上院議長及びマイア下院議長との会合の他,ホーシャ最高裁長官とも会合を行った。
 
 (イ)カルボ検事総長のブラジル訪問
 16日,カルボ検事総長はロドリゲス行政調査検察官とともに,ブラジルを訪問し,伯との間でオデブレヒト社の関与するラバ・ジャト事件において亜が関与する関連の情報交換を迅速化するための協定に署名を行った。
 
(9)チリ
 (ア)マクリ大統領のチリ訪問
 12日,マクリ大統領はチリを訪問し,バチェレ大統領と共に,ロス・アンデスの独立解放軍による「チャカブコの戦い(1817年2月)」200周年記念式典に出席した。亜智両国は,メルコスールと太平洋同盟の統合を進めることや亜智二国間と同様,中南米諸国とも政治,経済及び文化関係を強化していくことで合意した。そのために,(亜が)メルコスールの議長国及び(チリが)太平洋同盟の議長国である機会を捉え,両ブロックの会合を近いうちに実現できるよう,両国で取り組んでいくことで一致した。
 
 (イ)ドゥホブネ財務大臣のチリ訪問
 23日,ドゥホブネ財務大臣は,チリを訪問し,バルデス・チリ金融大臣と会合を行い,二国間で署名された経済補完協定の進捗状況につきフォローを行った。また,既存の経済補完協定を深化させる決定を行った他,二国間の通行と貿易を向上させるためのエネルギー統合及びインフラ計画やアグア・ネグラトンネル建設のための事前評価プロセスの現状についても評価を行った。
 
(10)ボリビア: コカリコ・ボリビア農村開発大臣他のアルゼンチン訪問
 (ア)6~7日,ボリビアのコカリコ農村開発・土地大臣,エンダラ貿易・統合担当外務次官及びホセ・アルベルト・ゴンサレス・サマニエゴ上院議長は,アルゼンチンを訪問し,ビジャグラ筆頭外務副大臣及びブルリッチ治安大臣,ガルシア移民局長らと亜における移民法の改正につき,会談を行った。亜からは,今次移民法の改正は,反移民政策ではなく,犯罪歴のある外国人に対する政策である旨説明を行った。
 
 (イ)サンチェス・ボリビア炭化水素・エネルギー大臣のアルゼンチン訪問
8日,サンチェス・ボリビア炭化水素・エネルギー大臣はアルゼンチンを訪問し,アラングレンエネルギー・鉱業大臣と会合を行い,亜の国内消費の大部分の供給を担うボリビアとの将来的な天然ガス契約に関する話し合いを行った。
 
(11)ホンジュラス:アグエロ・ホンジュラス外務・国際協力省大臣代行のアルゼンチン訪問
 8日,アグエロ・ホンジュラス外務・国際協力省大臣代行はアルゼンチンを訪問し,マルコーラ外務大臣と両国の関心事項に関する第1回政策協議を行った。両者は,良好な二国間関係につき強調するとともに,二国間の全ての分野における関係を深化させるため,引き続き協力していくことで一致した。
 
(12)中国:
 (ア)習近平中国国家主席発マクリ大統領宛書簡
 8日,習近平中国国家主席が,マクリ大統領の58歳の誕生日を祝う書簡を送付した旨報じられた。同書簡の中で,習国家主席は,両国の二国間関係は非常に重要であると述べるとともに,包括的な戦略的パートナーシップの更なる促進に向けて共同で取り組むことを提案した。
 
(イ)中亜両首脳間のメッセージ交換
 19日,マクリ大統領と習近平国家主席は,二国間の外交関係樹立45周年を記念するメッセージをお互いに発出し合った。習国家主席のメッセージでは,両国が相互信頼を有する心からの友人且つパートナーである旨強調された。他方,マクリ大統領によるメッセージでは,外交関係樹立以降,二国間関係が段階的に緊密化してきた点が強調されると共に,亜側にはこのプロセスの深化を継続させる用意がある旨付け加えられた。
 
(13)北朝鮮: ミサイル発射に対する非難声明
 12日,アルゼンチン政府は,11日,北朝鮮により中距離弾道ミサイルが発射されたことを改めて強く非難する旨の亜外務省プレスリリースを発出した。
 
(14)アルジェリア:マルコーラ外務大臣のアルジェリア訪問
 26~27日,マルコーラ外務大臣は,アルジェリアを訪問し,セラル・アルジェリア首相と会談を行うとともに,ラムマラ・アルジェリア外相とも二国間外相会談を行った。両国外相は,第5回二国間政策協議を行い,原子力に関する協力を行っていくことを再確認した。
 
(15)国連
 (ア)ビジャグラ筆頭外務副大臣の米国(NY)訪問
 17日,ビジャグラ筆頭外務副大臣は,NYの国連において開催された強制失踪条約採択10周年記念総会ハイレベル会合に参加したが,亜が2017年強制執行委員会選挙の委員候補として擁立するMr. Horacio Ravenna氏も同会合に参加した。
 
 (イ)ビジャグラ筆頭外務副大臣のスイス(ジュネーブ)訪問
 27日,ビジャグラ筆頭外務副大臣はジュネーブで開催された第34回人権理事会ハイレベルセグメント会合へ出席した。同副大臣は,2030の持続的開発アジェンダの実施に向けて,人権の包括的擁護における亜の役割について強調した。
 
(16)核軍縮・不拡散:亜における化学兵器・生物兵器の輸出管理レジーム会合の開催
 14~16日,ブエノスアイレスにおいて,化学兵器・生物兵器の輸出管理レジーム会合(オーストラリア・グループ)が開催された。中南米地域で初となるオーストラリア・グループの会合が亜で開催される機会を捉え,本会合に南米諸国が招待されたことに関し,同グループ加盟国からは,これらの国々と有意義な意見交換ができたとの評価が寄せられた。
 
(17)要人往来
(ア)往訪  
●1日: 亜与党議員団の英国訪問
●1~4日: ミケティ副大統領の米国訪問
●7日: マクリ大統領のブラジル訪問
●12日: マクリ大統領のチリ訪問
●13日: マルコーラ外務大臣のメキシコ訪問
●16日: カルボ検事総長のブラジル訪問
●17日: ビジャグラ筆頭外務副大臣の米国(NY)訪問
●16~18日: マルコーラ外務大臣のドイツ訪問(G20ボン外相会合出席他)
●20日: マルコーラ外務大臣のオランダ訪問
●21~22日: フリヘリオ工業生産大臣及びカプート金融大臣の米国訪問
●21~24日: マクリ大統領のスペイン訪問
●23日: ドゥホブネ財務大臣のチリ訪問
●21~24日: マクリ大統領のスペイン訪問
●26~27日: マルコーラ外務大臣のアルジェリア訪問
●27日: ビジャグラ筆頭外務副大臣のスイス(ジュネーブ)訪問
   
(イ)来訪  
●6日:  北岡JICA理事長
●6~7日: コカリコ・ボリビア農村開発大臣
●8日: サンチェス・ボリビア炭化水素・エネルギー大臣
●8日: アグエロ・ホンジュラス外務・国際協力省大臣代行
  
(了)