アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
令和2年5月27日
アルゼンチン政治情勢(2020年04月)
2020年5月作成
在アルゼンチン日本大使館
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 新型コロナウイルス対策措置の実施
(ア)価格統制に係る権限の各市長への付与
9日,政令351/2020が公布され,各市長に管轄地域の小規模商店における価格の検査と規制に関する権限を付与した。各市長は,供給法(Ley de Abastecimiento)12条に定める,調査,介入,及び予防措置としての商店閉鎖を実行できるようになった。
(イ)全国強制隔離措置の延長
10日,フェルナンデス大統領は記者会見を行い,全国強制隔離措置を4月26日まで延長することを発表した(本件に係る必要緊急大統領令(DNU)355/2020は11日に公布)。また,DNU365/2020により非居住者の入国禁止も4月26日まで延長した。併せて,同延長に伴い,行政決定490/2020により,障害者・自閉症スペクトラム障害者及びその介護人,銀行活動,車・バイク・自転車のメンテナンス及び修理工場,タイヤ製造,書籍及びIT製品販売(宅配のみ)を強制隔離措置の例外対象とする緩和措置を講じた。
その後,25日,フェルナンデス大統領はさらに同措置及び非居住者の入国禁止を5月10日まで延長した(それぞれDNU408/2020及びDNU409/2020。なお,5月8日にはそれぞれ同24日まで再延長した。)。
イ 社会開発省による市場価格を超える高値での食糧調達
6日,アロジョ社会開発大臣は,社会支援策の一環としての油,砂糖,米等の食糧調達において,市場価格の2~3倍にあたる高値で取り引きしたことを認めた。また7日には,同調達を実施したカルボ社会開発副大臣(社会政策統括担当)に今回の責任を取って辞任するように求め,同副大臣と共に14名の職員が退職することとなった。
ウ フェルナンデス大統領から国民へのメッセージ
21日,フェルナンデス大統領は,全国強制隔離措置発動から1か月経過後のメッセージを自身の公式個人ページを通じて発表した。メッセージでは,強制隔離の1か月を全うしたことは簡単ではなく,亜国民を非常に誇りに思う,強制隔離を実施している国民に感謝していると繰り返しつつ,措置延長への理解を求めた
エ 商用便運航にかかる規制強化
27日付官報で民間航空管理庁(ANAC)は,ANACに認可されていない国内外向け旅客フライトサービスの販売禁止や定期便運行の再編及び非定期便の許可申請の認可は9月1日以降に可能とする旨の2つの規定(143/2020及び144/2020)を公布した。本件については,亜で就航している航空会社や国際航空運送協会(IATA)等から強い反対が上がっている。
(2)国会
ア 野党による現政権への要請
(ア)13日,野党「共和国提案(PRO)」は,マクリ前大統領,ラレタ・ブエノスアイレス市長,ブルリッチ党首,所属国会議員及び地方の指導者等の出席の下,テレビ会議を実施し,(1)国民の健康と経済活動のバランスを取ること,(2)全国隔離措置違反に対する非難,(3)国会活動の再開要請,(4)70歳以上の高齢者の隔離及び保護,(5)全国民一致で協力すべき現況における与党関係者による同党非難停止の要請,等現政権の提案についての声明を発表した。
(イ)14日には「変革のために共に」がテレビ会議を開き,生産部門保護,民主主義の保護,議会の再開及び裁判所の機能回復,連邦財源強化のための基金の設置等を求める文書を発表した(マクリ前大統領,ラレタ・ブエノスアイレス市長,ビダル前ブエノスアイレス州知事,バルデス・コリエンテス州知事,コルネホ急進党党首,ネグリ下院会派長等が署名)。
イ 下院審議再開についての合意
27日,マサ下院議長と各会派長は,下院役員及び各会派長は議場に出席し,他の議員はリモートで参加する形での混合型審議を行うことで審議再開することに合意した。5月にこの方法での審議を実施する予定(5月13日に審議が本格的に再開)。リモート審議実施に必要な議会運営規則は,29日の下院要請・権限・規則委員会で承認された。
(3)司法
ア 司法関係者等の年金改革に関する官報の公布
6日,3月12日に上院で可決・成立した司法関係者及び外交官の年金制度変更に関する法律27546が官報で公布された。
イ 上院リモート審議の有効性に関する最高裁による判断
24日,最高裁判所はクリスティーナ・フェルナンデス上院議長(副大統領)による上院リモート審議の有効性に関する請求を全5裁判官の全員一致で却下した。4人は,具体的に解決すべき事案なくしての司法による介入は適切でなく,加えて上院はどのような審議を実施するのかを自ら決める権限を有しているとし,残りの1人は上院議長の請求は手続きせずに却下されるべきであるとしてそれ以上の理由は表明しなかった。
ウ 一般犯罪受刑者の自宅拘禁を巡る議論
27日,フェルナンデス大統領は,新型コロナウイルス感染を理由とする一般犯罪受刑者の自宅拘禁を巡る議論に関し,これを認めるべきだと述べた。一方,この件に関しては与党内でも異なる反応があり,司法・人権省内でも意見が対立している。マサ下院議長は被害者に知らせずに受刑者を釈放する裁判官は弾劾の対象になる可能性があると述べつつ反対を表明,これに対し司法審議会のルゴネス委員長は,健康が脅かされる危険な状態にある受刑者を釈放することは弾劾の対象にはならないと述べた。他にベルニ・ブエノスアイレス州治安大臣,アラク同州司法大臣も自宅拘禁に反対を表明した(後の29日,フェルナンデス大統領は,本件は司法が判断することであり政権は干渉していないと述べるなど,本件から距離を取る姿勢を示した)。
(4)その他
ア 国内長距離移動中の外国人他の拘束
2日,フフイ州から移動してきた外国人49人(コロンビア,ベネズエラ,ペルー及びブラジル国籍)を含む61人が乗った長距離バスが,ブエノスアイレス市に入る際に同市警察により止められる事案が発生した。本件については,各国大使館と調整済みでの移送であるフフイ州政府とこれを虚偽とする各国大使館との間で争いが見られた。
イ 大勢の年金生活者による全国隔離破り
3日,3月20日に全国隔離がスタートしてから初めて営業を行った銀行に,年金生活者や社会保険受給者が3月分の支給を受け取るため早朝から長蛇の列を作った。新型コロナウイルスに最も脆弱な高齢者層が集結したため,政府は週末に銀行を開けたり,身分証明書番号による受取日の指定制を導入したりする等の対策を講じた。野党及び市民団体は,この事態を重くみて,政府に更なる善処を求めると共に責任者の処罰を要求した。
ウ ブエノスアイレス市における口等を覆う布等の着用義務化
12日,ブエノスアイレス市は交通機関,商業施設及び公共サービス機関において,マスク等の鼻,口及び顎をカバーする防護品の着用を義務づけた。本政令は15日から発効し,違反には10,700ペソから79,180ペソまでの罰金が科される他商業施設の場合は閉鎖あるいは一時閉鎖の措置が取られる。
エ 2020年3月のインフレ率3.3%
15日,亜国家統計局(INDEC)は,2020年3月のインフレ率が3.3%であったと発表した。上昇率が大きかったのは,教育(14.5%),通信(8.3%),服飾(4.2%)及び食料品(3.9%)。これにより直近12か月の物価上昇率は48.8%となった。
2 外交
(1)中国:新型コロナウイルス対策への中国の支援
17日,フェルナンデス大統領と面会したZou Xiaoli在亜中国大使は,中国政府が亜保健省からの要請に応え,マスク,防護服,簡易検査キット,サーマルカメラ等の支援物資を送付する旨伝えた。亜外務省は24日付プレスリリースで中国の支援に対する謝意を表明た。
(2)チリ:
ア チリ政府によるフェルナンデス大統領への抗議
10日にフェルナンデス大統領が全国隔離延長を発表した際(上記1(1)ア(イ)参照),亜の全国隔離の有効性を示すために他国と共にチリの感染状況を亜と比較したことについて,チリ政府は同国における検査数の多さを強調すると共に国際的な研究機関において同国の取組が高く評価されていることを紹介し,亜の「全面的な隔離(cuarentena total)」とは違う自国の「段階的で知的な隔離(cuarentena progresiva e inteligente)」を擁護した。
イ ソラー外務大臣及びゴンサレス・ガルシア保健大臣とチリの関係大臣とのテレビ会議
15日,ソラー外務大臣とゴンサレス・ガルシア保健大臣は,チリのリベラ外務大臣及びマニャリッチ保健大臣と両国の新型コロナウイルスの状況についてテレビ会議を通じて意見交換した。
(3)フランス:
ア フェルナンデス大統領とマクロン仏大統領との電話会談
18日,フェルナンデス大統領はマクロン仏大統領と電話会談を実施した。フェルナンデス大統領は,欧州及びフランスの新型コロナウイルス感染の状況に対する懸念とフランス国民への連来の意を伝え,IMF及びパリ・クラブの債務にかかる亜の提案に対するフランスの理解に謝意を述べた。
イ ソラー外務大臣とルドリアン仏外務大臣との電話会談
30日,ソラー外務大臣はルドリアン仏外務大臣と電話で1時間以上にわたって会談を行った。両外務大臣は,新型コロナウイルスのパンデミック,帰国を求める両国民への対応を話し合い,ベネズエラ情勢やパリ・クラブについても議論した。会談にはテタマンティ筆頭外務副大臣とチャベス外務大臣首席補佐官が同席した。
(4)南米地域:南米地域国防大臣テレビ会議
8日,ロッシ国防大臣は,ブラジル,チリ,パラグアイ及びウルグアイの各国国防大臣とテレビ会議を行い,パンデミックに対抗するための「保健」の国境を「防衛」のための国境にすべきではないとのメッセージを伝えた。
(5)要人往来
なし
(了)
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