アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和元年7月29日

アルゼンチン政治情勢(2019年6月)

2019年7月作成
在アルゼンチン日本大使館

1 内政

(1)大統領府・政府
ア ピチェト上院議員の副大統領候補としての出馬表明
11日,マクリ大統領はツイッターを通じ,ピチェト上院議員を副大統領候補とする旨発表した。同日,ピチェト上院議員も上院内で記者会見を開き,マクリ大統領からの呼びかけに応じ,副大統領候補として出馬する意向を明らかにした。
 
イ 10月の国政選挙に向けた政党連合の結成
12日,政党連合届けが締め切られ,以下の7つの政党連合から届け出があった。
(1)変革のために共に(与党カンビエモス系),(2)全国民のための戦線(ペロン党キルチネル派+マサ派),(3)連邦合意(ラバーニャ元経済大臣+ウルトゥベイ・サルタ州知事),(4)統一左派戦線,(5)覚醒戦線,(6)我々の戦線,(7)祖国戦線(極右)
 
ウ 大統領選挙予備選挙にむけた立候補者リストの提出
 22日,大統領選挙予備選挙(8月11日実施)の立候補者リストが締め切られた。マクリ大統領-ピチェト上院議員,フェルナンデス元内閣官房長官-フェルナンデス前大統領等10組の立候補があったが,それぞれの所属政党・政党連合からは1組ずつの立候補であったことから,予備選挙での党内争いはなく,予備選挙で1.5%を超える票を得た候補者が,10月27日の本選挙に臨む。
                                           
(2)国会
ア ピチェト上院議員の上院ペロン党会派長辞任
 11日,ピチェト・上院ペロン党会派長は,マクリ大統領の副大統領候補として,大統領選に出馬する旨を上院内で行われた記者会見で明らかにし,同時に上院ペロン党会派長を辞任する旨発表した(議席はそのまま保持)。その後,同会派長には,コルドバ州選出のカセリオ(Carlos Caserio)議員が就任した。
 
(3)司法
ア 元公共事業大臣への有罪判決
12日,連邦刑事裁判所は,キルチネル政権下で公共事業大臣を務めたホセ・ロペス氏に,懲役6年が言い渡した。この事件は,ブエノスアイレス州ヘネラル・ロドリゲス市の修道院で見つかった9百万米ドルに関連し,ロペス元公共事業大臣が汚職により不法所得を得たとして訴えられていたもの。
 
イ クリスティーナ・フェルナンデス前大統領の国外旅行許可
 連邦口頭裁判所は,12日,クリスティーナ・フェルナンデス前大統領から申請されていた7月2~10日のキューバ行きを許可した。キューバで療養中の娘を見舞うための申請で,進行中のサンタ・クルス州の道路公共事業入札に関する裁判への影響はないと判断された。
 
(4)その他
ア 地下鉄E線の延伸
 3日,地下鉄E線にCorreo Central, Catalinas及びRetiroの3駅が新たに開業した。E線利用者は,Retiro駅まで行く場合,これまでのようにC線やバス等に乗り換える必要がなくなり,大幅な時間の節約になる。報道によれば,これにより9万人が恩恵を受けるという。
イ 女性の権利保護及び性差別反対デモ行進
 3日,議会前広場から5月広場まで,人工中絶に関する法の制定,女性への暴力や性差別反対等を訴えるデモ行進が行われた。報道によれば,数千人が参加した。
 
ウ 州知事選挙
 6月中に下記10州で州知事選挙が行われた。
(ア)サン・フアン州
 2日の知事選挙で,現職のウニャク知事(ペロン党所属)が再選した。
(イ)ミシオネス州
 2日の知事選挙で,パサラクア現知事後継のエレラ・アウアド現副知事(ペロン党系地方政党所属)が当選した。
(ウ)フフイ州
 9日の知事選挙で,現職のモラレス知事(カンビエモス・急進党所属)が再選した。
(エ)エントレ・リオス州
 9日の知事選挙で,現職のボルデ知事(ペロン党所属)が,約57%の高い得票率で再選した。
(オ)チュブット州
 9日の知事選挙で,現職のアルシオニ知事(ペロン党所属)が再選した。同知事は,マサ前下院議員と良好な関係を築いており,同前下院議員は投票日にチュブット州を訪れていた。
(カ)トゥクマン州
 9日の知事選挙で,現職のマンスール知事(ペロン党所属)が50%を超える得票率で再選した。
(キ)サンタ・フェ州
 16日の知事選挙で,ペロン党のペロッティ候補が当選した。同州は,社会党知事が続いており,ペロン党知事の誕生は12年ぶりとなる。
(ク)フォルモッサ州
 16日の選挙で,現職のインスフラン知事が70%を超える得票率で再選を果たした。同州には再選制限がなく,7回目の再選となる。
(ケ)サン・ルイス州
 16日の選挙で,現職のアルベルト・ロドリゲス・サア知事(ペロン党キルチネル派)が再選した。
(コ)ティエラ・デル・フエゴ州
 16日の選挙で,メレラ・現リオ・グランデ市長(地方党所属)が,現職のベルトネ知事(ペロン党)を破り当選した。
 
エ 大規模停電
 16日,早朝から全国で停電が発生した。同日中に復旧したものの,アルゼンチンだけでなく,ウルグアイ,チリ,ブラジルの一部で5千万人が影響を受けた。(7月3日,ロペテギ・エネルギー国務大臣は,停電は基幹送電線のショートに起因すると発表した。)なお,この日,知事選挙等が予定されていたサンタ・フェ州,フォルモッサ州,サン・ルイス州,ティエラ・デル・フエゴ州では,予定通り選挙が実施された(上記ウ(キ)~(コ))。
 
オ インフォーマルセクターでの労働者増加
 24日,アルゼンチン・カトリック大学(UCA)が,2018年に,インフォーマルセクターでの労働者が49.3%に上ったと発表した。同報告書によれば,インフォーマルセクター労働者の75.9%が年金制度に加入しておらず,51.3%は健康保険を有していない。
 
2 外交

(1)日本: マクリ大統領の日本訪問
27~29日,マクリ大統領が,G20大阪サミット出席のため日本を訪問した(ペニャ内閣官房長官,ドゥホブネ財務大臣同行)。マクリ大統領は,27日安倍総理,28日IMFのラガルド専務理事,29日サウジアラビア皇太子との首脳会談の他,米国,フランス,チリ,カナダ,オーストラリア,英国,韓国の首脳等と立ち話を行った。また,アルゼンチン産品を扱ったフェアを開催したスーパーを視察した。
その他,マクリ大統領は,本サミット中に政治合意に達したEUメルコスール自由貿易協定について,メルコスール議長国として,ボルソナーロ・ブラジル大統領,ユンケル欧州委員会委員長及び関係国首脳とともに発表した。
 
(2)国連:
ア フォリー外務大臣のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件第25回追悼式出席
 24日,フォリー外務大臣は,国連で開催されたスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件第25回追悼式に出席した。この事件は,1994年7月18日,ブエノスアイレスにあったAMIA会館が爆破され,85名が亡くなったもの。フォリー外務大臣は,本件に関する裁判の必要性や反ユダヤ主義撲滅へのアルゼンチンのコミットメントを強調した。
 
イ フォリー外務大臣の国連非植民地化委員会出席
 25日,フォリー外務大臣は,国連非植民地化委員会に出席し,フォークランド諸島,サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島及び周辺海域に関するアルゼンチンの主権を主張した。なお,同委員会では,フォークランド諸島に関するセッションで,アルゼンチンと英国との二国間交渉再開を勧告する決議がコンセンサス採択された。
 
(3)EU:EUメルコスール自由貿易協定の政治合意
27~28日,フォリー外務大臣,シカ生産労働大臣及びエチェベレ農産業国務大臣は,EU-メルコスール間の自由貿易協定交渉のためにブリュッセルを訪れた。28日には,20年に及んだ交渉が,内容に関する合意に達し,G20大阪サミット出席のため日本滞在中のマクリ大統領にも伝えられた。
 
(4)米国:
ア フォード国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)の訪亜
 5日,フォード米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)が来亜し,フォリー外務大臣と会談した。会談では,大量破壊兵器の不拡散における両国の協力や原子力エネルギーの平和利用及び不拡散に関する二国間協定と多国間協定等について話し合われた。
 
イ 南方軍司令官の訪亜
 24日,米南方軍Faller司令官が訪亜し,アグア国防大臣及びアルゼンチン軍関係者と会合した。また,滞在中,軍の教育施設や亜平和活動共同訓練センター(CAECOPAZ:Centro Argentino de Entrenamiento Conjunto para Operaciones de Paz)等を訪問した。
 
(5)中国:ペニャ内閣府長官の中国訪問
 23~26日,ペニャ内閣府長官は,ポンペオ内閣府戦略長官と共に中国を訪問し,胡春華副総理と会談した。会談では,二国間の貿易,投資,観光の拡大などが話し合われ,原子力エネルギーの平和利用に関する協力についても触れられた。(その後,同長官は,G20大阪サミットでマクリ大統領と合流)
 
(6)ベネズエラ:第9回国際人道支援メカニズム会合開催
 12~14日,ベネズエラの人道支援に関する第9回国際人道支援メカニズム(MIAH)会合が実施された。会合の結果,現在の国際的な原則と枠組みの下,迅速で効率的かつ効果的な対応の促進によって,共通の体制やプロトコルを確立し,支援活動を調整していくとする「ブエノスアイレス宣言」が採択された。
 
(7)ブラジル: ボルソナーロ・ブラジル大統領の訪亜
 6日,ボルソナーロ・ブラジル大統領が就任後初めて訪亜し,マクリ大統領との首脳会談やアルゼンチン起業との会合等を行った。両大統領は,二国間関係の強化と地域・国際課題に強調しながら取り組んでいく旨の共同宣言を発表した。また,エネルギー相互融通,バイオエネルギーにおける協力,科学技術,鉱業,防衛,原子力分野での協力に関する文書が署名された。
 
(8)コロンビア:ドュケ・コロンビア大統領の訪亜
9~10日,ドュケ・コロンビア大統領が当国を初めて公式訪問した。マクリ大統領との首脳会談等を行い,両大統領共同宣言及びベネズエラ情勢に関する共同声明を発表したほか,次の4文書が署名された。(1)クリエイティブ産業,(2)観光,(3)アグロインダストリー及び(4)汚職防止。
 
(9)インドネシア:マクリ大統領の公式訪問
 26日,マクリ大統領は,日本訪問(G20大阪サミット出席)の往路に,インドネシアを公式訪問し,ウィドド大統領と会談し,貿易促進や関係強化等が盛り込まれた共同声明が発表された。
 
(10)スイス:シカ生産労働大臣の第108回ILO総会出席
 16~19日,シカ生産労働大臣は,ジュネーブで開催された第108回ILO総会に出席し,アルゼンチンの労働制度改革の現状について講演した。
 
(11)要人往来
 ア 往訪
●5~10日 ビダル・ブエノスアイレス州知事コロンビア訪問
●7~9日 ドゥホブネ財務大臣日本訪問(G20財務大臣・中央銀行総裁会議出席)
●16~19日 シカ生産労働大臣スイス訪問(第108回ILO総会出席)
●23~26日 ペニャ内閣府官房長官中国訪問
●24~25日 フォリー外務大臣米国訪問
●24~25日 ドゥホブネ財務大臣米国訪問
●26日 マクリ大統領インドネシア訪問
●27~28日 フォリー外務大臣,シカ生産労働大臣,エチェベレ農産業国務大臣ベルギー訪問(EUメルコスール自由貿易協定交渉)
●27~29日 マクリ大統領,ペニャ内閣官房長官,ドゥホブネ財務大臣日本訪問(G20大阪サミット出席)
   
 イ 来訪
●5日 フォード米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)
●6日 ボルソナーロ・ブラジル大統領
●9~10日 ドュケ・コロンビア大統領
                                   (了)