アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和5年6月26日

アルゼンチン政治情勢(2023年5月)

1 内政

(1)大統領選挙に向けた与党連合の動き
●ペロン党大会開催及びCFK副大統領の不出馬再表明
16日、ペロン党大会が開催され、本年の大統領選挙に向けた戦略策定等が協議された。本大会では、既に不出馬を表明しているクリスティーナ・フェルナンデス(CFK)副大統領の大統領選挙立候補を求める合唱が繰り返されたが、欠席していた同副大統領は、大会終盤の時間に合わせ、自身のHPで改めて不出馬の意向を表明する声明を発出した。
●故ネストル・キルチネル元大統領就任20周年記念式典での副大統領演説
25日、CFK副大統領は、故ネストル・キルチネル元大統領の就任20周年記念式典に際して演説し、地方州知事選の一部延期(後述)を決定した最高裁やIMFを批判した。なお、大統領選挙の候補者に関する言及等はせず、自身の政権を含む過去のペロン党政権を称揚する内容にとどまった。

(2)地方選挙
●フフイ州知事選挙
7日、フフイ州知事選が行われ、現職のモラレス同州知事(急進市民同盟(UCR))が後継者に指名していたサディール同州財相(UCR)が49%の得票率で当選した。
●ラ・リオハ州知事選挙
7日、ラ・リオハ州知事選が行われ、現職のキンテーラ州知事(ペロン党)が50%の得票率で再選した。
●ミシオネス州知事選挙
7日、ミシオネス州知事選が行われ、パサラクア州下院副議長(現職知事と同じ社会連合党(ペロン党系地方政党))が64%の得票率で当選した。
●最高裁による地方州知事選挙の一部延期
9日、最高裁は、サンフアン州及びトゥクマン州(何れも現職知事はペロン党)での選挙実施の延期を発表した。これは、両州の野党候補が、両知事の三期目再選は州憲法に抵触すると訴えていたことを受け(州裁判所は右訴えを退けていた)、最高裁が両候補の出馬資格の問題が解決するまで両州知事選挙の延期を決定したものである。本決定に際し、政府は、「民主的プロセス及び州自治に対する干渉」であり、「司法と野党の結託によるもの」と批判した。
●サルタ州知事選挙
14日、サルタ州知事選が行われ、現職のサエンス州知事(サルタ・アイデンティティ党(与党連合寄りの地方政党))が47%の得票率で再選した。
●ラ・パンパ州知事選挙
14日、ラ・パンパ州知事選が行われ、現職のシリオット州知事(ペロン党)が47%の得票率で再選した。
●ティエラ・デル・フエゴ州知事選挙
14日、ティエラ・デル・フエゴ州知事選が行われ、現職のメレジャ州知事(FORJA党(与党連合所属の地方政党))が51%の得票率で再選した。なお、本選挙では、白票の割合が、二番手のステファニ下院議員(共和国提案(PRO))の得票率(10%)の倍近い、総投票数の20%に上った。
●サンフアン州地方選挙
14日、最高裁による9日の決定により州知事選挙が延期されたサンフアン州で州議会議員選挙と市長選挙が行われ、州都サンフアン市長選挙では、現職のバイストロッキ市長(ペロン党)を破り、ラシアル下院議員(生産と労働(野党連合系の地方政党)党首)が当選した。
●ブエノスアイレス市長選挙に向けたPRO統一候補の決定
30日、ラレタ・ブエノスアイレス市長は、大統領選挙と同日程で実施される同市長選挙に関し、事前に同市長とブルリッチ共和国提案(PRO)前党首が発表していた通り、直近のアンケート結果に基づき、PROの統一候補をマクリ同市市政大臣とする旨発表した。
 
2 外交

(1)要人往来(首脳級)
●フェルナンデス大統領の伯訪問
2日、フェルナンデス大統領は伯を訪問し、ルーラ同国大統領と会談した。両首脳は、伯企業の対亜輸出促進及び、亜のIMF再交渉への伯の支持につき協議した。会談後、同伯大統領は、右交渉を支持する旨表明した。
●ペーニャ・パラグアイ次期大統領の訪亜
29日、フェルナンデス大統領は、訪亜したペーニャ・パラグアイ次期大統領と会談し、二国間関係の強化や、メルコスール、南米諸国連合(UNASUR)等を含む地域統合、ヤシレタ二国間公団の債務問題に関する合意文書等につき協議した。ペーニャ次期大統領からは、米ドルを介さない二国間貿易に関する提案がなされた。
 
●フェルナンデス大統領の南米諸国首脳会合出席
ア 30日、フェルナンデス大統領は、伯で開催された南米諸国首脳会合に出席した。
イ フェルナンデス大統領は、ルーラ伯大統領と会談し、亜のネストル・キルチネル・ガスパイプラインに係る伯企業製品の対亜輸出に対する伯経済社会開発銀行(BNDES)の融資に関する交渉の進捗を歓迎した。
ウ フェルナンデス大統領は、同じく訪伯中のマドゥーロ・ベネズエラ大統領と会談し、二国間関係正常化の重要性を確認するとともに、ベネズエラの国際場裡の各枠組みへの復帰を呼びかけた。

(2)要人往来(閣僚級)
●マサ経済相訪中
29~31日、マサ経済相は中国を訪問した。30日には中国企業3社からエネルギー・インフラ開発向けに総額約10億ドルの融資を取り付けたと報じられている。なお、同日に実施された第8回BRICS新開発銀行(NDB)年次総会では、亜の事前の要請にもかかわらず、伯の対亜輸出に係る融資へのNDBの保証の可能性は議論されなかったものの、伯は亜に対する支援を継続する旨表明した。また31日、マサ経済相は、鉱物資源を扱う複数の中国企業と会談し、亜国内で予定されている各開発計画について協議した。

(3)その他
●亜外務省による、イスラエルの軍事行動に対する声明
10日、亜政府は、ガザ地区におけるイスラエル軍による軍事行動を非難する声明を発出した。同声明では、原因となる対立の回避及び民間人の生命の保護を強く主張し、国際人道法遵守の絶対的な重要性を呼びかけた。翌11日、亜イスラエル協会(DAIA)は上記声明に対し、亜外務省はテロ組織を紛争当事者と規定しており、テロ組織と市民を混同してはならないと抗議する声明文を発出した。

(4)対中動向
●中国企業幹部のフェルナンデス大統領表敬
 16日、フェルナンデス大統領は中国物流サービス企業Wuhan Yangluo Port Service Co.の幹部と会談した。大統領府プレスリリースによれば、亜中間の直行便開設や中国からの観光投資等につき協議したとされる。
●亜企業の、食品見本市「SIAL」への参加
 18~20日、亜の食品関連企業14社は、亜外務省の支援の下、上海で開かれた国際的な食品見本市「SIAL」に参加した。参加を主導したメレディス外務次官(貿易・投資促進担当)は、本見本市への参加は、アジアとの通商関係強化を継続するために不可欠である旨述べた。
●キルチネル下院議員の対中交流
 31日、マサ経済相の訪中に同行したキルチネル下院議員は、復旦大学の昼食会に招かれ、「如何なる圧力もかけずに援助を提供する関係を強調する」と述べた。同日、亜における5G事業参入候補となっているHuawei社を訪問した。右訪問には、オルモス内閣官房副長官らが同行した。

(5)要人往来一覧
ア 往訪
 ブラジル:フェルナンデス大統領、カフィエロ外相、マサ経済相、ロッシ内閣官房長官、ビトベージョ大統領府長官、テタマンティ筆頭外務副大臣(3日、第4回亜伯政策協議)
 中国:マサ経済相、キルチネル下院議員
 カナダ:ローセンワイグ外務次官(外交政策担当)
(18日、亜・加政策協議)
イ 来訪
 カンボジア:CHUM Sounry外務国際協力省長官
      (11日、第1回亜・カンボジア政策協議)
 パラグアイ:ペーニャ次期大統領、アリアナ次期副大統領

(了)

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