アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和2年3月1日

アルゼンチン政治情勢(2020年03月)

2020年4月作成
在アルゼンチン日本大使館
 
1 内政
(1)大統領府・政府
ア 外務省における女性・ジェンダー局の設置
 6日,亜外務省は,プレスリリースで同省内に女性・ジェンダー局を設置する旨発表した。
 
イ 新型コロナウイルス対策措置の実施
  • 衛生緊急事態令の公布
 13日,政府は衛生緊急事態を宣言する必要緊急大統領令(DNU,2日付)を公布し,感染地域から帰国した者を14日間の強制隔離の対象とした。
(イ)学校閉鎖
 15日,教育省は16日から学校を閉鎖すると発表した。なお,閉鎖中も学習を進めるため同省はインターネットを通じた自習教材等の提供,メディア等を通じた教育番組を提供している。
  • 非居住外国人の入国禁止 
 16日,非居住外国人に対し,15日間亜への入国を禁止するDNU274/2020が公布された。その後,同措置は4月26日まで延長されている(4月15日時点)。
(エ)強制隔離措置の実施 
19日,フェルナンデス大統領は20日から31日まで「社会的,予防的,強制的隔離(以下,強制隔離と表記)」を実施する旨記者発表を行い,一部の例外を除く全居住者及び滞在者に必需品の買い物等を除く外出を禁止した。同措置に関するDNU297/2020は,20日に公布された。その後,同措置は4月26日まで延長されている(4月15日時点)。
(オ)亜居住者及び海外居住アルゼンチン人の帰国禁止 
 27日,DNU313/2020により,アルゼンチン居住者及び海外に居住・滞在するアルゼンチン人の帰国が31日まで原則禁止された。
(カ)60日間の解雇禁止措置と企業への支援策 
 31日,DNU329/20が官報で公布され,60日間の正当な理由のない解雇または仕事の減少や不可抗力による解雇及び同様の理由による一時解雇が禁止された。
 
ウ 医薬品の無償化
 10日,フェルナンデス大統領は,国家年金受給者社会サービス機構(PAMI)の加入者のうち,60歳以上の年金受給者を対象に170種類の医薬品を無償化すると発表した(11日より実施)。対象となる医薬品は3600品目に亘るとみられている。
                                           
(2)国会
ア 第138回通常国会の開会 
 1日,第138回通常国会が開会され,フェルナンデス大統領が就任後初めてとなる施政方針演説と開会宣言を行った。
 
イ 法曹関係者及び外交官の年金法改正案の成立
 12日,議会上院で裁判官・検察官などの法曹関係者及び外交官の年金を引き下げる法案が賛成41票,反対21票で可決・成立した。本改正により,年金額が直近10年の報酬平均の82%とされる他,法曹関係者の場合は定年退職年齢が60歳から65歳へ段階的に引き上げられ(女性は60歳定年を選択可能),年金受領のために必要な年金制度加入30年のうち,最低10年間司法機関に勤続するか,中断した場合や役職によっては15年以上の勤務歴が必要とされることになる。
 
(3)司法
ア 裁判関係書類の紛失
10日,企業家クリストバル・ロペス氏及びファビアン・デ・ソサ氏(当館注:同人らは,ペロン党キルチネル派に近い立場)が告訴されているオイル・コンブスティーブレ社倒産事件に関連する連邦歳入庁(AFIP)の書類が紛失していることが明らかになった。担当のペレス・カサード判事は,48時間以内に見つけるように命じた。
 
イ 法曹関係者の大量退職
 12日に上院で可決・成立した法曹関係者の年金引き下げ(上記2(イ))に関連して,13日までに裁判官,検察官及び人権擁護官の62名が退職を申し出た。新しい制度では,退職年齢が60歳から65歳に引き上げられ(女性は60歳も選択可),年金額は直近10年間の給料平均の82%となる等現行制度より待遇が下がることになる。
 
(4)その他
ア ペロン党大会の開催
 5日,正義党(Partido Justicialista,通称:ペロン党)の党大会が開催された。フェルナンデス大統領とクリスティーナ・フェルナンデス副大統領は出席しなかったものの,カフィエロ内閣官房長官,デ・ペドロ内務大臣,ロッシ国防大臣等現政権閣僚も出席した。また,コルドバのペロン党関係者が10年ぶりに,サルタの関係者が5年ぶりに参加した他,全国からの出席者があった。同党では本年5月に党首選挙を予定している。
 
イ 国際女性デーのデモ行進
 9日,国際女性デー(8日)に関連して人工中絶合法化と女性への暴力反対等を訴える大規模デモ行進が全国的に実施された。ブエノスアイレス市では17時より7月9日通りから国会までのデモ行進が実施され,地方においても教員組合を中心としたストやデモ行進実施された。
 
ウ 農業事業者によるストの実施
 9日,フェルナンデス政権による大豆への輸出税引き上げに反対する農業事業者によるストが実施された。本ストは,4日に亘り実施され,地方によっては道路封鎖なども行われた。
 
2 外交
(1)中国:新型コロナウイルス対策への中国の支援  17日,フェルナンデス大統領は,大統領公邸でZou Xiaoli在亜中国大使の訪問を受け,同大使はマスク,防護服,ゴーグル,簡易検査キット,サーマルカメラ等の物質支援を伝えた。24日,亜外務省はプレスリリースで中国の支援に関する謝意を表明した。
 
(2)ブラジル:マサ下院議長のブラジル訪問  4~5日,マサ下院議長はブラジルを訪問し,ボルソナーロ大統領と会談した他,マイア・ブラジル下院議長等議会関係者と会合した。
 
(3)ウルグアイ:ソラー外務大臣のラカジェ・ポウ大統領就任式出席 1日,ソラー外務大臣はラカジェ・ポウ・ウルグアイ新大統領就任式に出席した。ソラー大臣には,チャベス外務大臣特別補佐官及びイリバルネ次期駐ウルグアイ大使が同行した。
 
(4)カナダ:ソラー外務大臣とロドリゲス・カナダ下院自由党会派長との会談  3日,ソラー外務大臣は,訪亜中のロドリゲス・カナダ下院自由党会派長と会談した。同会談には,テタマンティ筆頭外務副大臣,チャベス外務大臣特別補佐官及びペレス・ガビロンド外務次官(外務担当)も同席した。
 
(5)G20:フェルナンデス大統領の新型コロナウイルスに関するG20首脳テレビ会議への出席  26日,フェルナンデス大統領は,新型コロナウイルスに関するG20首脳テレビ会議に出席し,「人道的緊急事態世界基金」の設立を呼びかけた。同会議には,カフィエロ内閣官房長官,ソラー外務大臣,グスマン経済大臣,ビトベージョ大統領府長官及びベリス大統領府戦略長官が同席した。
 
(6)要人往来 ア 往訪
 
●1日 ソラー外務大臣ウルグアイ訪問(大統領就任式)
●4~5日 マサ下院議長ブラジル訪問
   
   
 イ 来訪
●3日 ロドリゲス・カナダ下院自由党会派長
   
                                   (了)