アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
平成30年1月25日
アルゼンチン政治情勢(2017年12月)
2018年1月作成
在アルゼンチン日本大使館
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 海軍潜水艦サンファンの行方不明事案
11月15日より消息を絶っているアルゼンチン海軍の潜水艦サンファンの行方不明事案について,12月4日,(当地TV番組に出演した)アグア国防大臣は,極限の環境条件及び時間の経過は,乗組員の生存とは相容れないとの海軍の報告を踏まえ,潜水艦サンファンの乗組員の救助オペレーションを中止する旨発言した。また,同日,亜海軍は,可能な手段を尽くして,引き続き潜水艦の捜索を継続するとしている一方,南大西洋で消息を絶った潜水艦サンファンに何が起こったか,最終的に判明しない可能性があることを認める旨の発言を初めて行った。
イ 特別国会の召集
11日,政府は,12月11日~31日まで特別国会を召集する旨発表した。
(2)連邦議会:
ア 年金改革法案の可決・成立
18日から議会下院において審議されていた年金改革法案(11月29日に議会上院で可決済み)が,19日早朝,賛成多数で可決・成立した。
また,20日,政府は官報において,年金算定方法の変更を伴う年金改革法による年金受給額の減少を補完するため,一時金として750ペソ(資格期間を満たしていない場合は375ペソ)の支払い措置を講じる旨の政令を発表した。また,同政令には,AUH(失業者等を対象とする児童手当)及び障害者・高齢者年金の受給者に対する400ペソの一時金の支払い措置も含まれている。
イ 財政合意法案及び財政責任法案の可決・成立
21日,(11月29日に議会上院で可決された)財政合意法案及び財政責任法案が議会下院において審議され,可決・成立した。
ウ 2018年予算法案,税制改革法案及び金融取引税延長・改正法案の可決・成立
27日,(20日,議会下院で可決された)税制改革法案,また,(21日,議会下院で可決された)2018年予算法案及び金融取引税延長・改正法案が議会上院において審議され,可決・成立した。
(3)司法・検察:イスラエル共済組合(AMIA)会館でのテロ爆破事件にかかるイランとの密約疑惑におけるフェルナンデス前大統領の起訴
7日,ボナディオ連邦判事はAMIA会館でのテロ爆破事件にかかるイランとの密約疑惑に関し,フェルナンデス前大統領に対する予防拘禁措置を伴う起訴を行った。また,上院議会に対しでは,上院議員である同氏の不逮捕特の剥奪を要請した。
(4)その他:
ア 年金改革法案の議会での審議に伴うデモ及びゼネストの実施
18日,年金改革法案の審議が行われた際に,議会前では,同法案に反対する左派団体・労組等によりデモ抗議活動が行われた。その最中に,一部が暴徒化し,暴力行為を伴うデモに発展したため,政府は警察等を動員し,放水,催涙ガスやゴム弾等も使用して対応を行った。これにより,162名の負傷者(内,警察側が88名)及び60名の逮捕者が出る結果となった。
18日正午より,労働総同盟(CGT)は全会一致を見ないまま,政府の年金改革法案に抗議するため,全国レベルで24時間のゼネストを実施した。
2 外交
(1)米国:
ア ペニャ内閣府官房長官の米国訪問
1~3日,米国を訪問したペニャ内閣府官房長官は,1日,ケリー米大統領首席補佐官及びマクマスター国家安全保障担当大統領補佐官と会談を行った。また,同長官は,ワデル米国家安全保障担当大統領次席補佐官(1日)やアルマグロOAS事務局長(2日)とも会談を行った。また,同長官は,ジョージ・ワシントン大学においてセミナーに出席した他,ブルッキングス研究所,ウィルソンセンター,インターアメリカン・ダイアログ等の米シンクタンクとの会合を行った。
イ 亜の米国一般特恵関税制度(GSP)への復帰
22日,亜は6年ぶりに米国の一般特恵関税制度(GSP)への復帰を達成した。ライトハイザー米USTR通商代表は,2年の交渉を経て,トランプ米大統領が22日,本措置にかかる署名を行った旨発表した。米GSP制度への復帰により,亜の対象産品の米国市場への関税がゼロとなる。
(2)チリ:マクリ大統領のピニェラ・チリ大統領候補への祝意表明
17日,チリで実施された大統領選挙・決選投票において勝利したピニェラ候補に対し,マクリ大統領は,同日,ツィッターを通じて,同候補の勝利に対する祝意を表明した。(なお,マクリ大統領は,選挙に先立つ15日,動画を通じて同候補への支持を表明した。)
(3)ロシア:パトルシェフ露安全保障会議書記のアルゼンチン訪問
5日,アルゼンチンを訪問したパトルシェフ露安全保障会議書記は,ペニャ内閣府官房長官及びポンペオ内閣府戦略長官と会談を行った。この中で,両国の共通の戦略的課題に関する定期的な協議の確立と平和の促進及び世界の安定化に向けた協力強化に関する覚書に署名が行われた。同会談には,ブルリッチ治安大臣,アグア国防大臣及びフォリー外務大臣も同席した。
(4)中国・香港:ビダル・ブエノスアイレス州知事の中国・香港訪問
2~6日,中国を訪問したビダル・ブエノスアイレス州知事は,4日,北京において,王欽敏(WANG Qinmin)全国政協副主席と会談を行った他,王寧(Wang Ning)・北京市副市長と会談を行い,教育及びスポーツ関連に関する覚書に署名を行った。また,6日,約60の中国大企業のCEOらと昼食会を行った。その後,7~8日,ビダル州知事は香港を訪問した。
(5)WTO:
ア WTO閣僚会議開会式及びブエノスアイレス大統領宣言の署名
10日のMC11開会式には,マクリ大統領はじめメルコスール各国の大統領,アゼベドWTO事務局長及びマルコーラMC11議長及びWTO加盟国164カ国から3,500名が出席した。また,同10日,亜,伯,コロンビア,チリ,ガイアナ,墨,パラグアイ,ペルー,スリナム及びウルグアイの10か国は,貿易の多国間制度の保持及び強化する重要性を確認する「ブエノスアイレス大統領宣言」に署名を行った。
イ WTO閣僚会議閉幕及びEU・メルコスールFTA妥結に至らず
13日,10日から当地で開催されていた第11回WTO閣僚会議が閉幕した。今次会議では全体での合意には至らなかったため,閣僚宣言の発表はされなかったものの,70か国の有志国による電子商取引に関する合意が行われた。
また,亜政府は,今次WTO閣僚会議の機会を捉え,ブエノスアイレスにおいてEU・メルコスールFTA妥結に関する発表を行いたいとしていたが,EU側は,亜,伯,ウルグアイ及びパラグアイから構成されるメルコスール側から提出された提案に対し,EU側で検討する時間を要請した。次回交渉は21日のブラジリアで開催予定のメルコスール首脳会議ではなく,2018年1月のブリュッセルでの次回会合に持ち越されることとなった。
(6)メルコスール:
ア メルコスール・韓国FTA
10日,当地を訪問中のキム・ヨンサム韓国通商産業資源部次官は,レイセル亜外務省副大臣(国際経済担当)及びメルコスール交渉官らと会合を行った。同会合において,双方の内部手続きが終了次第,メルコスール・韓国FTAの交渉を早期に開始する重要性について一致した。また,同協定がWTOの規則に整合的かつ,財・サービス貿易,投資,経済協力,相互に関心のある他の分野を含むとの理解を共有した。
イ 第51回メルコスール首脳会合及び第51回共同市場理事会(CMC)
21日,マクリ大統領は第51回メルコスール首脳会合出席のため,ブラジルを訪問した。首脳会合では,伯からパラグアイに議長国が引き継がれた他,共同声明が採択された。また,首脳会合に先立ち20日に開催された第51回共同市場理事会(CMC)に,亜からはフォリー外相が出席した。メルコスール加盟国外相は,世界に対して,メルコスールを開放していくことを確認した。
同21日,同首脳会合の機会に,マクリ大統領及びテメル伯大統領も同席する形で,INVAP社(亜)とイペロ地域圏先端技術地区財団(伯)の間で,ブラジルの多目的原子炉(RMB)プロジェクトの新たな段階を開始するための契約に署名が行われた。
(7)要人往来
ア 往訪
●1~3日: ペニャ内閣府官房長官の米国訪問
●2~8日: ビダル・ブエノスアイレス州知事の中国・香港訪問
●21日: マクリ大統領及びフォリー外務大臣のブラジル訪問(第51回メル
コスール首脳会合及び第51回共同市場理事会(CMC)出席)
イ 来訪
●5日: パトルシェフ露安全保障会議書記
●10~13日: テメル伯大統領,カルテス・パラグアイ大統領,バスケス・ウルグ
アイ大統領,ムニョス・チリ外相,グティエレス・コロンビア商工
観光大臣,グアハルド墨経済大臣,フェレイロス・ペルー通商観光
相,アゼベドWTO事務局長,マルムストローム欧州委員,世耕経
済産業省大臣,岡本外務政務官,野中農水政務官他(WTO閣僚会
議)
(了)
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