(1)内政: 1日,ファブレガ中銀総裁が辞任して新たにバノリ新総裁が就任した他,議会では29日に炭化水素法改正法が成立した。また,17日,フェルナンデス大統領は咽喉頭炎を再発しその後の公式行事出席をとりやめた。
(2)外交: フェルナンデス大統領は26日に再選されたルセーフ伯大統領に対しツイッターを通じ祝意を伝えた。10日,フェルナンデス大統領はプーチン露大統領とテレビ首脳会談を,メディア批判やホールドアウト問題等の意見交換を行った。30日,中国との間で8.14億ドル相当の通貨スワップが実施された他,同日亜が国連経社理の理事国に選出された(2015年から3年間)。
2 内政
(1)大統領府・政府
(ア)ファブレガ中銀総裁の辞任とバノリ新総裁の就任
1日,ファブレガ中央銀行総裁が辞任した。フェルナンデス大統領は,後任にアレハンドロ・バノリ(Alejandro Vanoli)国家証券委員会(Comision Nacional de Valores)委員長を任命した。3日,国家証券委員会の新委員長には,キシロフ経済・財政大臣の信頼が厚いとされるエコノミストのクリスティアン・アレクシス・ギラルド(Cristian Alexis Girard)氏が任命された。
バノリ新総裁は,6日,銀行幹部との懇談会にてペソ価の急激な切り下げは行わない等の発言をした。
(イ)ペロン党全国執行部会議の開催
7日,ペロン党全国執行部の会議が行われた。フェルネル党首(フフイ州知事),カピタニッチ第一副党首(官房長官),カロー第二副党首(労働総同盟書記長(政府派))等が出席し,フェルナンデス大統領のハゲタカファンドとの戦いについて,大統領を強く支持する旨,表明した。
(ウ)フェルナンデス大統領の咽喉頭炎再発症
17日,フェルナンデス大統領は,咽喉頭炎を発症した。7月以来,2回目の同症状の発症となった。発症から48時間は安静が必要とされ,18日から22日までの公式行事出席をキャンセルした。
(エ)ペロン党「忠誠の日」を祝す式典
17日,ペロン党員は「忠誠の日」(Dia de la Lealtad)(当館注:1945年同日,軍事クーデターで拘束されたペロン副大統領の釈放を求め,国民が大統領府前の5月広場に集結した日。その後クーデターは失敗し,ペロン副大統領は釈放,翌年大統領に当選した。)を祝い,ブエノスアイレス市モレーノ通りにはシオリ・ブエノスアイレス州知事やランダッソ内務・運輸大臣を始め多くの大統領候補者が集った。他方,同党所属で反政権派のマサ下院議員は,マルティン・ガルシア島(ラ・プラタ川に浮かぶ島でペロン副大統領が留置された場所)で,現政権を批判する演説を行った。
(オ)プジョー社への消費者保護法違反による罰金命令
22日,コスタ商業長官は,アルゼンチン・プジョー(Peugeot)社に対し,亜新車購入融資プログラム(Pro.Cre.Auto)の対象車種を規定台数分店頭販売に供しなかったとして,消費者保護法に基づきに80万ペソの罰金を課した。更にアルゼンチン・ルノー(Renault)社も,まだ罰金の支払い命令を受けていないが,同じ状況にあると当地紙では報じられている。
(カ)故キルチネル前大統領の追悼式実施
27日,フェルナンデス大統領は,若手キルチネル派組織のラ・カンポラの一部のメンバーと共に,サンタ・クルス州リオ・ガジェゴス市で,故ネストル・キルチネル前大統領の死後4年目の追悼式を行った。亜国内州知事を始め,モラレス・ボリビア大統領等からも追悼メッセージが寄せられた。
(キ)大水害の発生
29日,大雨による大水害が発生し,ブエノスアイレス州だけでも17の市町村が灌水し,約1000人以上(11月に更に雨が降り5000人以上となった)が避難,40万世帯が停電するなどの被害が起きた。これを受け,カピタニッチ官房長官は,気象災害に対応するための緊急委員会を設置することを発表した。
(2)連邦議会
(ア)民・商法改正法案の可決
1日,民法(Codigo Civil)と商法(Codigo Comercial)の改正法案が,下院にて賛成134,反対1,欠席122(ほぼ全ての野党)で可決された。改正された民・商法(Codigo Civil y Comercial)は,2016年1月より施行される。民法については,同性同士の結婚合法化,離婚要件の簡素化(夫婦の片方が離婚の意思を示せば手続きが行える等),養子縁組手続きの迅速化(90日以内),父方・母方の苗字の順番選択制など各種の制度変更が行われた。また,商法については,外国通貨建て債務のペソ価返済を認めるなどの改正が行われた。
(イ)アリシア・テラダ下院議員の繰り上げ当選
22日,日系人のアリシア・テラダ氏(市民連合)が,下院議員に当選した。テラダ議員は,2013年10月の議会選挙で,チャコ州選挙区よりチャコ連合(Union por Chaco)(野党・市民連合,急進党等の連合)の比例候補者リストの二番目で立候補し,一番目のテヘドール議員が21日に辞任したことで,繰り上げ当選となった。任期は2017年まで。
(ウ)炭化水素法改正法案の可決
29日,炭化水素法(Ley de Hidrocarburos)の改正法案が,可決された。
以前は在来・非在来型のエネルギー資源(原油,天然ガス,シェールガス・オイル等)のコンセッション契約(採掘・精製・販売)を州政府が個別に採掘会社等と行っていたが,新法は中央政府が統一した方法で管理することを定めている。具体的には,州政府のコンセッション契約期間(在来型:25年,非在来型:35年,オフショアリグ掘削:30年),コンセッション使用料(当初は12%で,その後18%を限度として延長時に3%ずつ加算可)等が定められた。
(3)司法・検察
(ア)ブドゥー副大統領の汚職疑惑
1日,連邦控訴裁判所判事は,偽造文書による公的手続きの容疑(自らの車両登録に際し偽造した身分証明書で手続きを行った)で,連邦第一審裁判所のブドゥー副大統領に対する起訴を受理した。
14日,上院の資金を不正運用した疑いでブドゥー副大統領(兼上院議長)が告発された。
(イ)複数閣僚の告発
3日,ブドゥー副大統領(当時は経済・財政大臣),ランダッソ内務・運輸大臣(当時は内務大臣),ボッシオ国家社会保障機構(ANSES)長官が,2009年に亜身分証明書(DNI)やパスポートのシステム切り替え事業の入札時に行った職権濫用の疑いで告発された。
また,ジョルジ産業大臣は,産業省の関連する企業に不正に補助金を供与していた疑いが掛けられ,20日に検察による捜査が開始された。
(ウ)最高裁判所長官の空席と人事
12日,ペトラッキ最高裁判事(元長官)が逝去した。また,30日,サファローニ最高裁判事は,本年12月31日で退官する意向をフェルナンデス大統領に伝え,認められた。これにより,最高裁判事は来年以降欠員が出ることとなった(現人数は法定定員の5人)。新たな最高裁判事は,憲法に従い大統領が任命の上,上院の3分の2以上の承認を受ける必要がある。
(4)労働組合
(ア)労働総同盟の再統合に向けた動き
労働総同盟(CGT:Confederacion General del Trabajo)の反政府系リーダーであるモジャーノ書記長と政府系リーダーのカロー書記長が会合を持ち,年内に再統合する方針を発表した。
(イ)年末に向けた労働争議
15日,コスタ商業長官は,インフレによる賃金の補填分を年末の一時金に含めるというトラック労組等の要請を却下した。16日,カピタニッチ官房長官も,労組の要求を支持しない発言を行った。これに対し,同日,亜労働者連盟(CTA)の反政府系グループのリーダーであるミチェリ書記長は,11月20日に年末の一時金4,000ペソの支払い要求するストを行うと決めた。
22日,銀行労組が,所得税の非課税対象額の引き上げを要求し,ストを行った。
23日,自動車部品会社のレアル社の人員削減に対し,自動車労組をはじめとした組合員が高速道路の封鎖及びデモを行ったが,その際,国境警備隊と衝突し,ゴム弾発砲等により20名の負傷者が出た。
(5)その他
(ア)連邦視聴覚コミュニケーション・サービス機構による事業適正化
8日,連邦視聴覚コミュニケーション・サービス機構(AFSCA:Autoridad Federal del Servicios de Comunicacion Audiovisual)のサバテラ代表は,視聴覚コミュニケーション・サービス法(Ley de Servicios de Comunicacion Audiovisual)に基づき,当地メディア大手のクラリン・グループの再編を,政府主導で行うとする事業適正化手続きを開始すると発表した。これに対し,同グループは,同措置の一時中断を求める仮保全措置を裁判所に申請し,31日に半年間の中断が認められた。
(イ)亜製衛星打ち上げ
16日,仏領ギアナのクールー・ステーションから,亜製の衛星である「ArSat1」が打ち上げられ,大気圏の軌道に乗った。これにより亜は,米,中,露,日,印,欧州連合,イスラエルに次ぐ8カ国目,かつラテンアメリカでは初の衛星保有国となった。フェルナンデス大統領は,祝辞を贈ると共に,新たに衛星を製造すると発表し,野党も成功を祝した。
(ウ)エチェガライAFIP長官による亜企業家と大統領の関係否定発言
キルチネル家と親しい亜の企業家バエス氏は,亜政府の公金(キルチネル家が横領したとの疑惑もある)をマネーロンダリングした疑いがもたれ,検察に捜査されている。10月に入り,同氏経営の会社が大量の架空領収書を発行したと報道され,連邦歳入庁(AFIP)が調査に乗り出した。21日,エチェガライAFIP長官は,記者会見にて,バエス氏とフェルナンデス大統領の関係につき,財務上のパートナーではないと述べた。
3 外交
(1)メキシコ
(ア)ミード墨外務大臣訪亜
1日,ミード墨外務大臣が,ティメルマン外務大臣からの招待を受け訪亜し,亜・墨二国間戦略委員会協定政治委員会第3回会合が開催された。同会合にて,亜・墨両国は,伝統的な友好関係を再表明すると同時に,二国間関係強化について確認し,ティメルマン外務大臣は,フェルナンデス大統領からのペニャ・ニエト墨大統領への招待を正式発表した。また,両国外務大臣は,亜の抱える債務再編問題の近況に関し分析した他,ミード墨外務大臣は,フォークランド(マルビナス)諸島への亜の合法的権利を支持する伝統的な墨政府の姿勢を再表明した。
(イ)グアハルド墨経済大臣訪亜
9日〜10日かけて,亜・墨二国間通商関係強化を目的に,グアハルド墨経済大臣が訪亜した。今次訪問中,グアハルド経済大臣は,2015年3月の亜墨二国間自動車自由貿易協定の再開,墨ペメックス社及びYPF社代表は年末前に非常にポジティブな発表をすることになるだろうと述べた。
(2)ブラジル
26日に実施された伯大統領選挙でのルセーフ伯大統領の勝利に対し,フェルナンデス大統領は,ツイッター上に「(今次伯大統領選挙の結果は)社会包摂及び社会統合の大きな勝利である。親愛なる仲間であり友人であるディルマ,おめでとう」等,祝意を表明するコメントを掲載した。また,カピタニッチ官房長官も,亜政府は,ディルマ・ルセーフの勝利及びブラジル国民の決選投票への民主的な参加に対し,心からの祝意を伝える旨発言した。右に対し,27日,ルセーフ伯大統領は,フェルナンデス大統領に対し,電話にて謝意を表明した。
(3)ボリビア
12日,フェルナンデス大統領は,61%の支持率をもって3選を果たしたモラレス・ボリビア大統領に,電話にて祝意を表明した。
(4)チリ
16日,ロッシ国防大臣は,チリのバルディビアを訪問し,バチェレ・チリ大統領と面会した。今次訪問の目的は,災害発生時の亜・チリ両国の軍隊団結で,同式典には,両国の兵士2千人以上が参加した他,ムニョス・チリ外務大臣も列席した。
(5)ロシア
10日,フェルナンデス大統領はプーチン露大統領とテレビ首脳会談を行い,メディアに対する批判やホールドアウト(残存債務)問題等につき意見交換を行った。今次会合にて,亜におけるRussia Today(ロシアの政府系報道専門放送局)放送開始及び,亜国営テレビのロシアでの放送が発表された他,プーチン露大統領は,ハゲタカファンドとの闘いにおける亜への支持を表明した。また,フェルナンデス大統領は,亜・露両国は,国際社会におけるマルチ主義や国民間の平和的共生,国家主権を尊重している旨強調した。
(6)中国
30日,7月の習近平中国国家主席訪亜時に署名された亜・中二国間通貨スワップ協定に基づき,8.14億ドル相当の通貨スワップが初めて実施された。
(7)米国
31日,フェルナンデス大統領は,ホールドアウト問題で亜政府と対立するハゲタカファンドのロビイストの1人であるナンシー・ソーダバーグ氏が,オバマ米大統領により米公益機密解除委員会の議長に任命されたことを非難する5頁に亘る書簡をオバマ米大統領に対し発出した。また,同書簡は,フェルナンデス大統領のツイッター上にも投稿された。
(8)パレスチナ
12日,亜政府を代表し,エジプト・カイロにて開催されたパレスチナに関する国際会議に出席したティメルマン外務大臣は,パレスチナ政府に対し,南南協力の枠組みで無条件に連帯を表明する旨発言した。また,亜外務省は,技術,農業,福祉関係の専門家の派遣,飲料水の供給等を実施する予定である旨プレスリリースを発出した。
(9)アルジェリア
14日,アルジェリアを訪問したティメルマン外務大臣は,ラマムラ・アルジェリア外務大臣と会合し,法的枠組みに沿って債務編成を行う重要性に関し一致し,両国外務大臣は,ベニヨウネス・アルジェリア通商大臣同席のもと,「アルジェリアの世界貿易機構(WTO)加盟に関する亜・アルジェリア二国間交渉に関する亜・アルジェリア間合意文書」への署名を行った。
(10)シリア
21日,亜政府は,シリアでの内戦により被害を受けた難民受け入れに向け,人道的理由によるビザ発給プログラムを開始した。
(11)国連
30日,186ヵ国中182ヵ国の賛成票により,亜は,2015年1月1日〜3年の任期で,国連経社理(ECOSOC)理事国に選出された。
(12)GAFI
24日,アラク司法大臣は,マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(GAFI)は,マネーロンダリング撲滅において,亜は高い水準を示していると評価し,亜を監視が必要な国を記載した「グレーリスト」から削除する決定をした旨発表した。
(13)ホールドアウト問題
キルチネル家と親しい亜の企業家バエス氏は,亜政府の公金(キルチネル家が横領したとの疑惑もある)をマネーロンダリングした疑いがもたれており,米国ネバダ州の「123」社が本件に関わっている可能性があるとし,同州連邦地区裁判所は同社に対し,情報提供を求めたが,20日,同社は関連情報を有しない旨回答した。本件は,NML Capital社(ハゲタカファンド)が,亜政府の海外資産の差し押さえを目的に,「123」社の資金に亜の公金が含まれている可能性があるとして,同州裁判所に情報提供を要請したことに起因する。
(14)要人往来
(ア) 往訪
5日〜8日 |
バラニャオ科学・技術大臣の訪日(STSフォーラム出席) |
6日 |
ランダッソ内務・運輸大臣のカナダ訪問(第10回「旅行・生物統計学に関するシンポジウム及び展覧会」開会式出席) |
6日〜8日 |
ジョルジ産業大臣のロシア訪問 |
9日〜10日 |
バラニャオ科学・技術大臣のニュージーランド訪問 |
10日〜12日 |
キシロフ経済・財政大臣及びバノリ中銀総裁の米国訪問(国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会出席) |
12日 |
ティメルマン外務大臣のエジプト訪問(パレスチナに関する国際会議出席) |
13日 |
トマーダ労働大臣のペルー訪問(ILO米州会合出席) |
14日 |
ティメルマン外務大臣のアルジェリア訪問 |
15日〜16日 |
デビード公共事業大臣の仏領ガイアナ訪問(人工衛星打ち上げ) |
15日 |
ガルッチオYPF社長のロシア訪問 |
16日 |
ロッシ国防大臣のチリ訪問(2014年亜・チリ連帯部隊の軍事練習列席) |
20日 |
サバテラ金融情報機構(UIF)長のフランス訪問(GAFI総会出席) |
20日 |
シオリ・ブエノスアイレス州知事のウルグアイ訪問 |
21日 |
ロッシ国防大臣のブラジル訪問 |
22日〜25日 |
ジョルジ産業大臣のメキシコ訪問 |
22日 |
マジョラル鉱業長官の中国訪問 |
22日 |
スアイン筆頭外務副大臣のモロッコ訪問 |
23日 |
マジョラル鉱業長官の韓国訪問 |
24日 |
マジョラル鉱業長官の訪日(JOGMEC共催鉱業投資セミナー出席) |
24日 |
ティメルマン外務大臣のペルー訪問 |
26日 |
シオリ・ブエノスアイレス州知事のウルグアイ訪問(ムヒカ・ウルグアイ大統領の家訪問) |
27日〜28日 |
カサミケラ農牧・漁業大臣のイタリア訪問(国際連合食糧農業機関(FAO)主催家族農業に関するグローバル対話議会出席) |
31日〜11月1日 |
ティメルマン外務大臣のコロンビア訪問(第1回メルコスール・太平洋同盟諸国大臣情報会議出席) |
(イ)来訪
(以下の日程で下記要人が当地で会談等を実施したとの情報あり)
1日 |
ミード墨外務大臣 |
9日〜10日 |
グアハルド墨経済大臣 |
16日〜20日 |
グラッソ伊上院議長 |
29日 |
Anh Tran Tuanベトナム商工業省次官 |