アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2023年6月)
1 内政
(1)大統領選挙に向けた動き
●スキアレッティ・コルドバ州知事(ペロン党非キルチネル派)の動向
5日、野党連合の全国事務局会議が開催され、ラレタ・ブエノスアイレス市長が穏健派ペロン党員(非キルチネル派)のスキアレッティ・コルドバ州知事の加入を提案し、ブルリッチ共和国提案(PRO)前党首及びマクリ前大統領から強い反発を受けた。議論の結果、スキアレッティ・コルドバ州知事は与党連合から離脱して独自の党派連合「我々の国のための行動」(Hacemos por Nuestro País)を組織した。
●「刷新戦線」党大会開催
10日、「刷新戦線(Frente Renovador)」の党大会が開催され、マサ経済相が演説した。同経済相は、与党連合から統一候補を出すのが望ましいが、予備選挙(PASO)に複数の候補を出すのであれば、刷新戦線もそこに参加するだろう、と述べた。
●政党連合登録の締切(14日)
14日、本年10月の選挙に向けた政党連合の届け出が締め切られた。これに際し、与党連合「全国民のための戦線(Frente de Todos)」は連合名を「祖国のための同盟(Unión por la Patria)」に変更する旨発表した。届け出があった政党連合は以下の通り。(1)与党連合「祖国のための同盟」、(2)野党連合「変革のために共に(Juntos por el Cambio)」、(3)自由の前進(La Libertad Avanza)、(4)我々の国のための行動、(5)左派戦線(Frente de Izquierda)、(6)新MAS(Nuevo Movimiento Al Socialismo)。
●候補者リスト提出締切(24日)
24日、本年選挙に係る予備選挙(PASO)の候補者リストの提出が締め切られ、大統領(副大統領)候補として、与党連合からマサ経済相(ロッシ大統領府官房長官)、野党連合からラレタ・ブエノスアイレス市長(モラレス・フフイ州知事)、ブルリッチPRO前党首(ペトリ元下院議員)、その他ミレイ下院議員(ヴィジャルエル下院議員)、スキアレッティ・コルドバ州知事(ランダッソ下院議員)ら計9組の立候補があった。
●CFK副大統領の航空機返還記念式典での演説(26日)
26日、ブエノスアイレス市国際空港で独裁政権時代の航空機返還記念式典が行われ、クリスティーナ・フェルナンデス(CFK)副大統領、マサ経済相らが登壇した。CFK副大統領は、予備選挙の候補者リストにつき言及し、社会的課題に取り組むため統一候補にする必要があった旨述べ、マサ経済相を支持する姿勢を見せた。
(2)地方選挙
●サン・ルイス州知事選挙
11日、サン・ルイス州知事選挙が行われ、野党連合から出馬したポッジ下院議員(PRO)が、53%の得票率で、与党連合から出馬したロドリゲス・サア現知事(ペロン党)に勝利し、1983年以来の政権交代を果たした。
●トゥクマン州知事選挙
11日、トゥクマン州知事選挙が行われ、与党連合から出馬したハルド現同州副知事(ペロン党)が58%の得票率で当選した。
●メンドーサ州予備選挙(PASO)
11日、メンドーサ州で知事選を含む予備選挙が行われ、現職知事の推薦するコルネホ上院議員(UCR)が45%の最多得票率で通過した。二位のペトリ元下院議員は、24日に野党連合の副大統領候補として出馬することが発表された。知事選挙を含む同州本選挙は9月24日に行われる予定。
●コリエンテス州議会議員選挙
11日、コリエンテス州議会議員選挙が行われ、同州与党(野党連合系)の候補者が、上院議会改選5議席のうち4議席を、下院議会改選15議席のうち11議席を獲得した。
●チャコ州知事選挙(PASO)
18日、チャコ州知事選挙の予備選挙が行われ、個人ではカピタニッチ現知事(ペロン党)が36%の最多得票率を獲得したものの、全体では野党連合が42%を獲得した。同州の本選挙は9月17日に実施される予定。
●コルドバ州知事選挙
25日、コルドバ州知事選挙が行われ、スキアレッティ現知事が推薦するジャルジョラ・コルドバ市長が42%の得票率で当選した。
●フォルモサ州知事選挙
25日、フォルモサ州知事選挙が行われ、インスフラン現知事が69%の得票率で再選した。
(3)その他
●チャコ州女性失踪事件
2日、チャコ州在住の一般人女性セシリア・ストルズィゾウスキー氏が失踪し、後日同氏の配偶者や親族数名(同地社会運動団体幹部)が、殺害及び証拠隠滅を図った容疑で相次いで逮捕された。なお、本件に関し、配偶者の両親(幹部、政界進出を画策)とカピタニッチ同州知事の関係が取り沙汰されたことで、18日の同州知事選予備選挙で野党が優勢になる等の影響が見られた。
●フフイ州憲法改正に伴う抗議活動の激化
15日、フフイ州議会は、抗議等の活動における道路封鎖等の禁止等の内容を含む同州憲法改正案を承認した。これに伴い、右改正に反対するデモが州内各地のほかブエノスアイレス市等でも行われ、デモ隊と治安部隊が衝突し、負傷者が出る事案も発生した。モラレス州知事は、与党連合はこれらの抗議活動に資金提供をしているとして、連邦政府を非難した。これに対し、フェルナンデス大統領は、本事案は同知事の責任によるものと反論し、国際的な人権基準を遵守するよう求めたほか、国際機関や人権団体からも批判を受けた。
2 外交
(1)要人往来(首脳級)
●フェルナンデス大統領のボリビア訪問
1日、フェルナンデス大統領はボリビアを訪問し、アルセ同国大統領と会談した。両首脳は、リチウムや二国間貿易等につき協議したほか、南米地域の統合の重要性を再確認した。会談後、両首脳は、二国間相互電力接続プロジェクトの送電設備開通式典に出席した。
●フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長の訪亜
13日、フェルナンデス大統領は、訪亜したフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と会談し、EU・メルコスールFTAの進捗状況を確認したほか、亜・EU間で「一次産品の持続可能なバリューチェーンに関する戦略的パートナーシップに関する覚書」の署名が行われた。
●フェルナンデス大統領の亜伯外交関係樹立200周年記念式典出席
26日、フェルナンデス大統領は、伯を訪問し、ルーラ同国大統領と首脳会談を行った。会談後、両首脳は亜伯外交関係200周年記念式典に出席し、伯からフェルナンデス大統領に対し南十字星国家勲章が授与された。また、共同記者会見の中で、フェルナンデス大統領は、両国の友好関係とマルビーナス(ママ、以下同)諸島を巡る伯の支援を強調した。
(2)要人往来(閣僚級)
●マサ経済相訪中
5月29~6月3日、マサ経済相は中国を訪問した。1日には上海でルセーフBRICS新開発銀行(NDB)総裁と会談し、同総裁は、本年8月に南アフリカで行われるNDB会合で、亜のNDB加盟採択が行われる旨約束した。
1日から2日にかけて、マサ経済相は北京で政府幹部らと会談し、各種合意のほか、本年8月に失効するスワップ協定を更新し、総額約1300億元(180億米ドル相当)のスワップ上限枠を取り付けたとされる。
●国連脱植民地化特別委員会(C24)
20日、米国で国連脱植民地化特別委員会(C24)が開かれ、カフィエロ外相が出席した。右会合では、マルビーナス諸島の主権を巡る問題の早期解決に向けた亜英二国間交渉の再開を求める決議が採択された。
同日、カフィエロ外相は、グテーレス国連事務総長とも会談し、同事務総長に対し右諸島問題解決への仲介を要請した。これに対し、同事務総長は1982年の国連総会決議37/9に則り手続きを進めることを約束した。
●第53回米州機構(OAS)総会
23日、テタマンティ筆頭外務副大臣は、米国で開かれた第53回米州機構(OAS)総会に出席した。同副大臣は、OASが西半球の平和と安定、協力において、また、人権と民主主義、法の支配の促進に貢献している点等を強調するとともに、今次総会で「マルビーナス諸島の問題に関する宣言」が採択されたことを受け、米州地域の継続的な支援に謝意を表明した。
また、本会合において、ポチャック亜司法・人権省次官(人権保護・国際担当)が米州人権委員会の委員に選出された。
(3)その他
●メルコスール社会サミット
1日、カフィエロ外相は、2023年前期のメルコスール議長国として、オンライン形式でメルコスール社会サミットを主催した。本会合には、アリオラ・パラグアイ外相やブスティージョ・ウルグアイ外相、レイバ・コロンビア外相や、市民組織・社会運動組織の代表らが参加し、持続可能な開発等のテーマにつき意見交換が行われた。
●2023年世界気象機関(WMO)事務局長選挙
1日、世界気象機関(WMO)事務局長選挙が行われ、サウロ亜国立気象局長官が選出された。女性の選出及びラ米地域からの選出は今回が初めて。
●カフィエロ外相のBRICS友好国外相会合オンライン出席
2日、カフィエロ外相は、BRICS友好国外相会合にオンラインで出席し、グローバルな課題は一方的には解決できず、「サウス」諸国の特殊性も考慮されるべき点に触れたほか、亜の外交政策の原則を確認し、現在の国際情勢により途上国が再び大きな影響を被っている旨述べた。
●国際海洋法裁判所(ITLOS)裁判官選挙
14日、第33回国連海洋法条約締約国会合(SPLOS)にて国際海洋法裁判所(ITLOS)裁判官選挙が行われ、亜から立候補していたアルマス・フィルター候補が当選した。
(4)要人往来一覧
ア 往訪
米国:テタマンティ筆頭外務副大臣、トデスカ外務副大臣(国際経済関係担当)
中国:マサ経済相
ブラジル:フェルナンデス大統領、カフィエロ外相
モロッコ:ビゾッティ保健相、トデスカ外務副大臣
アルジェリア:ビゾッティ保健相、トデスカ外務副大臣
エジプト:ビゾッティ保健相、テタマンティ筆頭外務副大臣、トデスカ外務副大臣
ヨルダン:テタマンティ筆頭外務副大臣
イ 来訪
スロバキア:パヴーク政務局長(8日、第4回亜・スロバキア政策協議)
UAE:ハーシミー国際協力担当国務相
ポルトガル:ヴィエイラ・ダ・シルヴァ閣議大臣
欧州連合:フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長
(了)
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