政治情報
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2010年8月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2010年9月作成
在アルゼンチン大使館

 

T 概要


(1)内政面では,下院本会議において年金増額法案及び氷河保護法案が可決され,上院本会議において国家統計局(INDEC)改革法案が可決されたほか,立法権限委任法の失効に伴い,輸出課徴金を巡る議論が活発化した。政府は,マスメディアへの働きかけを再び強化し,野党内では,各勢力の内部対立が一層顕著となった。また,マクリ・ブエノスアイレス市長の訴訟問題を巡り,同市議会において特別調査委員会を設置するための決議案が可決された。


(2)外交面では,フェルナンデス大統領が,コロンビアを訪問してサントス同国大統領就任式に出席し,キルチネルUNASUR事務局長が,ベネズエラ・コロンビア間外交関係断絶問題の解決のため両国を訪問し,チャベス・ベネズエラ大統領及びサントス・コロンビア大統領と会談したほか,ティメルマン外相は,外相就任後初めて訪米し,クリントン米国務長官と会談した。また,メルコスール首脳会合にあたり,関係各国首脳等が訪亜した。

 

TT 内政


1 年金増額法案


(1)2日,野党議員等は,年金増額法案につき,上院本会議において可決に足る支持を確保するのは困難と判断し,下院から先に審議を開始する旨決定した。


(2)4日,下院の予算委員会において,急進党,ペロン党反キルチネル派,市民連合及び共和国提案の議員等による,本法案を承認する多数派の意見書,及び,南プロジェクト,社会党及びGENの議員等による,本法案の骨子を承認しつつも財源をより明確に示す条項を盛り込んだ少数派の意見書が採択された。


(3)18日,下院本会議において本法案が審議されたところ,上記多数派の意見書に修正が加えられることなく,賛成票135,反対票89,棄権17により可決され,上院に送付された。19日,フェルナンデス首相は,仮に本法案が成立すれば,政府は拒否権を発動する旨公言した。

 

2 国家統計局(INDEC)改革法案


(1)11日,上院本会議において,国家統計局(INDEC)改革法案が審議されたところ,賛成票39,反対票26,棄権1により可決され,下院に送付された。本法案は,INDECに対する不正な干渉等を抑止するため,職員の再編成,幹部役員の選出方法の改正等の改革を行うもので,同改革の期限を150日間と規定している。


(2)17日,南プロジェクト,共和国提案等の野党下院議員は,同法案がINDEC改革の段取りにつき詳細を規定しておらず,また,上記改革のために充てられた150日間という期限は長過ぎる等主張し,同法案に修正を加えなければ賛成票を投じないという姿勢を示した。

 

3 氷河保護法案


(1)11日,7月14日に下院本会議にて可決されていた氷河保護法案(注:氷河地帯の地下資源採掘等を制限し,氷河保護のために一定の予算を確保するための法案)の条項別審議が行われたところ(注:7月の本会議において,法案全体が可決された後,数名の議員の退場により定足数不足となり,条項別審議は未可決の状態になっていた),条項に修正が加えられることなく可決され,上院に送付された。


(2)政府は,本法案に対し反対の姿勢を維持しているが,13日,フェルナンデス大統領は,仮に本法案が成立しても拒否権を発動しない旨述べた。なお,2008年に同様の法案が成立した際,フェルナンデス大統領は拒否権を発動しており,一部の野党議員の間では,同拒否権発動が,同大統領と地下資源採掘業者の不正な取引に基づくものであったとの疑惑が生じていた。

 

4 立法権限委任及び輸出課徴金を巡る動き


(1)24日,立法権限委任法(注:1994年の憲法改正により立法府に帰属することとなった各種権限を暫定的に行政府に委任する法律)が失効を迎えた。これを受け,野党議員等は,同法により行政府に委任されていたすべての権限が立法府に返還されることを明確化する国会決議案を提出した。


(2)同法の失効により,農作物の輸出課徴金を定める権限が行政府から立法府に返還されることとなった。ただし,同返還がなされても,議会が新たな法律を通じて新たな輸出課徴金の制度を確立するまでは,現在の制度が維持される。


(3)同日,ブルジャイレ下院議員(急進党)等により提出された,輸出課徴金の制度を定める法案が,下院の農業委員会及び経済委員会の合同委員会において審議された。同法案は,大豆以外のすべての農作物に対する輸出課徴金を撤廃し,大豆に対する輸出課徴金を削減するとともに,トウモロコシ及び大豆については,中小規模生産者への優遇措置として,一部返金を行う旨規定している。同委員会において,急進党,ペロン党反キルチネル派,市民連合及び共和国提案の議員等による,本法案を承認する多数派の意見書が採択されるとともに,(ア)社会党及び共和国提案の一部の議員等による,本法案に反対する少数派の意見書,及び(イ)農牧セクター出身の一部の急進党議員による,本法案に反対する意見書が採択された。これらの少数派の意見書は,中小規模生産者への優遇をより徹底するよう主張している。

 

5 ファイバーテル問題


(1)19日,デビード公共事業相は,クラリン・グループが所有するカブレビシオン社がファイバーテルの商標を用いてインターネット事業を展開していることにつき,ファイバーテル社が所持していたインターネット事業ライセンスは,2003年に同社を吸収合併したカブレビシオン社に自動的に移行されたわけではないため,現在カブレビシオン社は同ライセンスを持たずにインターネット事業を展開しているとして,カブレビシオン社に対し,90日以内に同事業を停止するよう命じる旨発表し,20日付官報掲載を以て,同命令(公共事業省通信庁令)が公布された。これを受け,ファイバーテルの利用者等は,同命令を無効とするよう各地の連邦裁判所等に告訴し,また,カブレビシオン社も同様の告訴を行う可能性を示唆した。


(2)反キルチネル勢力の大部分は,上記命令を,クラリン・グループに対する政府の不当な攻撃であるとして,同命令に対する反意を表明し,24日,ピネド下院議員(共和国提案)をはじめとする野党の下院議員等は,同命令を無効とするための法案を提出した。また,ストルビセルGEN党首等は,同命令を無効とするための国会決議案を提出した。

 

6 パペル・プレンサ問題


(1)24日,フェルナンデス大統領は,1976年になされたクラリン社,ラ・ナシオン社等によるパペル・プレンサ社(新聞用の製紙会社)の株式取得は,当時の軍政による人権侵害と関連しており,拷問・脅迫のもとに行われた非合法な取引であったとする報告書を発表し,26日,同容疑により,クラリン社,ラ・ナシオン社等を連邦裁判所に告訴した。


(2)クラリン紙及びラ・ナシオン紙は,上記報告書はモレーノ経済省国内取引長官により作成された虚構に過ぎないと報じ,また,グライベル・パペル・プレンサ社元社長の遺族の証言等を掲載し,上記株式取引は正当なものであった旨主張した。


(3)25日,トナー米国務省副報道官代行は,「亜における報道の自由に対する制限を深刻な問題と捉えている」等述べ,本件につき懸念を表明するとともに,本件が亜米関係に影響を及ぼしかねない旨示唆した。これを受け,26日,ティメルマン外相は,報道の自由の危機についてはむしろ米国の方が問題である旨述べるとともに,本件は亜米関係に影響を及ぼすものではないと述べた。


(4)27日,政府は,新聞用の紙の生産・販売等の事業を国の管理下に置くための法案を,下院に提出した。同法案に対し,急進党,市民連合,ペロン党反キルチネル派及び共和国提案の議員等は,報道の自由を制限するものとして厳しく批判した。29日,社会党及び南プロジェクトを含む野党勢力が同法案に難色を示したことを受け,ロッシ・ペロン党下院議員団長は,特に左派系政党の支持を獲得するために,法案の骨子は保ちつつも修正を加えていく旨述べた。

 

7 急進党の大統領候補を巡る動向


(1)3〜6日,コボス副大統領は,ブエノスアイレス州の5つの市を訪問し,治安,労働,福祉,教育等の問題につき演説を行った。3日,サンマルティン市の演説では,「私は次期大統領を目指す」と明言したが,6日,バイアブランカ市では,「私は上院議長として,また副大統領として,今次遊説を行っている」と述べ,大統領選挙への出馬には言及しなかった。また,19日,同副大統領は,ブエノスアイレス州内の最大選挙区であるラマタンサ市を訪問して演説を行い,年金増額法案,児童手当の拡充,教育制度改革,治安対策等の重要性を主張した。


(2)28日,アルフォンシン下院副議長は,次期大統領選挙において自身の後援組織となる国家革新運動(MORENA)の立ち上げを祝す式典を開催した。同式典には,サンス急進党党首が列席し,「我々はアルフォンシン議員の立候補を支持するであろう」等述べた。急進党内のコボス派勢力は,「党首でありながら,一方の候補者への支持を明確に表明してしまったというのは,由々しいことである」等述べ,同党首が公平性に欠けるとして強く批判した。サンス党首は,「私の自由を妨げることはできない」等述べ,コボス派勢力の批判に反発した。

 

8 市民社会合意の動向


(1)10日,ビネル・サンタフェ州知事(社会党)は,輸出課徴金の率を定める権限につき,同権限は議会にではなく政府にあるべきだとする発言をした。カリオ市民連合代表は,ビネル知事の同発言を「農牧セクターに対する裏切りである」として,強く批判した。


(2)11日,アルフォンシン下院副議長(急進党)は,「ビネル知事が述べたことは全く深刻なことではない。急進党内にも,同知事と同様の見解を持つ者がいる」と述べ,ビネル知事の上記発言を擁護した。同知事は,「輸出課徴金には心から反対だが,輸出品の税率を定める政府の権限を否定するわけにはいかない」と改めて述べ,輸出課徴金の削減よりも,中小規模生産者に対する優遇措置の法制化をより重視すべきとの見解を示した。同見解には,コボス副大統領等も支持を表明した。


(3)12日,カリオ市民連合代表は,急進党の指導者等に書簡を送付し,市民社会合意から一時離脱する意向を伝えた。ビネル知事,ストルビセルGEN党首等と対立を繰り返していたことに加え,アルフォンシン副議長が上記ビネル知事の発言を擁護したこと等が直接的な離脱の動機となった由。サンス急進党党首は,カリオ代表の離脱につき,「市民社会合意は,加わるのも自由であり離脱するのも自由である」と述べ,カリオ代表が離脱しても急進党が中核となって市民社会合意を維持していく旨述べた。なお,カリオ代表は,市民社会合意に復帰するか否か,「12月に最終的な判断を下す」とした。

 

9 ペロン党反キルチネル派及び共和国提案の動向


(1)3日,ドゥアルデ元暫定大統領,レウテマン上院議員,デ・ナルバエス下院議員,ソラ下院議員(以上,ペロン党反キルチネル派)及びマクリ・ブエノスアイレス市長(共和国提案)が会合を設け,次期国政選挙の戦略につき協議した。同会合において,レウテマン上院議員は,大統領選挙に立候補する意志はない旨述べ,ソラ下院議員は,ペロン党全体の予備選挙ではなく,ペロン党反キルチネル派の予備選挙への出馬を望むという意向を示した。また,デ・ナルバエス下院議員及びドゥアルデ元暫定大統領は,上記議員等が合意のもとに共通の方針を定めるべきと主張した。


(2)10日,ロメロ上院議員,ソラ下院議員,プエルタ下院議員,ドゥアルデ元暫定大統領及びダス・ネベス・チュブット州知事というペロン党反キルチネル派の指導者等が会合を設け,次期国政選挙に向けた勢力内の統合等につき協議した。しかし,レウテマン上院議員及びデ・ナルバエス下院議員は同会合に欠席した。


(3)マクリ市長は,ペロン党反キルチネル派の大統領候補として出馬する意向はないという姿勢を示してきたが,7日,ロメロ上院議員との会談において,次期国政選挙にあたり,共和国提案がペロン党反キルチネル派と選挙連合を形成する可能性もある旨述べた。


(4)15日,ドゥアルデ元暫定大統領は,「現政権に打ち勝つ唯一の方法は,予備選挙を通じてペロン党の強力な大統領候補を擁立することであるが,マクリ市長はペロン党ではない」と述べ,マクリ市長がペロン党反キルチネル派の候補として大統領選挙に出馬する可能性を否定した。


(5)ドゥアルデ元暫定大統領の同発言を受け,ピネド下院議員(共和国提案)は,「ドゥアルデ元暫定大統領の発言は個人的見解に過ぎない。(次期国政選挙で勝利するために)成すべきことは,分断ではなく統合,破壊ではなく構築である」等述べた。また,17日,マクリ市長は,「選挙連合を形成してほしいとは誰にも頼んでいない。共和国提案は成長を続けており,新たに加わりたい者がいれば加えるまでだ」等述べた。

 

10 マクリ・ブエノスアイレス市長の訴訟問題


(1)12日,ブエノスアイレス市議会の本会議において,マクリ市長の盗聴事件への関与を巡る訴訟問題の真相を究明するための特別調査委員会を設置するための決議案が審議され,同決議案が可決された。また,同本会議において,同事件への関与を巡りマクリ市長の公聴会を行うための法案も同時に審議され,同法案も可決された。


(2)上記特別調査委員会は,市議会野党議員12名及び同与党議員5名により構成され,今年の12月15日までに調査結果を報告するものとされた。これに対し,共和国提案は,同委員会の構成員のうち野党議員の比率が不当に多くなっているとして反発したが,19日,やむなく同委員会を承認し,これに参画することを決定した。


(3)23日,上記法案に基づき,ブエノスアイレス市議会において,マクリ市長の公聴会が開催された。同市長は,「本件は訴訟を装った政治的迫害である」との見解を改めて示し,自らの無罪を主張した。野党議員等は,同市長の回答が「部分的である」等述べて批判した。

 

11 ペロン党ブエノスアイレス州支部代表就任式


(1)24日,ラプラタ市において,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長のペロン党ブエノスアイレス州支部代表就任式が行われた。同代表の職は,バレストリーニ同州副知事が務めていたが,同副知事は病気のため4月より休職していた。


(2)上記就任式には,キルチネル前大統領,シオリ・ブエノスアイレス州知事等が出席し,モジャーノ書記長の今次就任への支持を表明した。他方,亜建設労組(UOCRA)を中心とするCGT内の反モジャーノ勢力は,モジャーノ書記長の今次就任を「労働者への裏切り」と称して激しく批判した。また,ブエノスアイレス州内の大部分の市長も今次就任に反対しており,上記就任式に出席しなかった。

 

12 労使交渉


(1)17日,パブロ・モジャーノ(注:モジャーノCGT書記長の息子)率いるトラック運転手労組は,テチント・グループの所有する製鉄会社シデラル社に対し,同社の下請企業で働く約4000人のトラック運転手を,正社員として採用し,残業代の支払い等を遂行するよう要求し,ブエノスアイレス州の5か所で同社の工場封鎖を開始した。21日,同労組の要求を支持する亜運輸労働者同盟(CATT)は,全国規模の道路封鎖を実施する可能性を示唆して圧力を強化した。


(2)23〜24日,トマダ労働相の仲介のもと,上記労組及びシデラル社の代表が会談した結果,労組側は15日間の工場封鎖解除を約束し,シデラル社側は労働法規の遵守を確約することで,暫定的合意に至った。ただし,同合意は,シデラル社に対し,上記トラック運転手を正社員として採用するよう義務付けるものではない。


(3)25日,上記労組は工場封鎖を一時解除したが,「シデラル社が労働条件の改善に関する交渉を無視するようであれば,工場封鎖を再開する」と警告した。

 

III 外交


1 外務省人事


(1)19日,キアラディア外務副大臣(通商・国際経済担当)の辞表が受理され,クレクレル外務次官補(通商・国際経済担当)が,新外務副大臣(通商・国際経済担当)に任命された。


(2)26日,亜外務省は,キアラディア前外務副大臣(通商・国際経済担当)の新在米大使任命に関し,米国からアグレマンが付与された旨発表した。

 

2 メルコスール


(1)2〜3日,亜サンフアン州サンフアン市において,第39回メルコスール共同市場審議会(CMC)及びメルコスール首脳会合が開催され,以下の各国首脳及び代表が出席した。

 

(ア)メルコスール加盟国:フェルナンデス亜大統領(議長国),ルーラ伯大統領,ムヒカ・ウルグアイ大統領,ルゴ・パラグアイ大統領,マドゥーロ・ベネズエラ外相


(イ)メルコスール準加盟国:ピニェラ・チリ大統領,モラレス・ボリビア大統領他


(ウ)被招待国等:エスピノサ・メキシコ外相,ラシード・エジプト通産相,キルチネル南米諸国連合(UNASUR)事務局長,バルセナ国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)事務局長,フェルナンデス・ラテンアメリカ統合連合(ALADI)事務総長,ガルシア・アンデス開発公社(CAF)総裁他


(2)上記会合の主要成果は以下のとおり。なお,今次会合の場で,メルコスール議長国は,亜から伯に引き継がれた。


(ア)メルコスール関税コードの採択


(イ)対外共通関税の二重課税撤廃及び関税収入の分配のためのガイドラインの採択


(ウ)プロジェクト(9件)への構造的格差是正基金(FOCEM)からの資金供給の承認


(エ)メルコスール・エジプト間自由貿易協定の締結


(オ)「メルコスール加盟国・準加盟国首脳による亜大陸棚における石油採掘に関する特別宣言」の採択


(カ)「メルコスール加盟国首脳による対ハイチ特恵貿易に関する宣言」の採択


(キ)メルコスール加盟国首脳による「グアラニ帯水層の保護・持続可能な利用に関する協定」の採択


(ク)ベネズエラ・コロンビア間外交関係断絶問題解決のためのUNASUR臨時首脳会合開催を要請

 

3 ブラジル


(1)3日,フェルナンデス大統領は,メルコスール首脳会合に出席するため訪亜したルーラ伯大統領と二国間定期首脳会談を行い,二国間統合及び地域統合の推進,並びに二国間戦略的パートナーシップの強化に向けた両国の意志を再確認した。


(2)また,両首脳は,亜・サンフアン−チリ・ラセレナ間「Agua Negra」アンデス貫通トンネル建設プロジェクトの進捗状況に満足の意を表明した(注:伯国立経済社会開発銀行(BNDES)は,チリ・亜・パラグアイ・伯を通過して太平洋と大西洋を結ぶ通路の統合推進の一環として,現在実施中の同プロジェクト・フィージビリティー調査に融資している。)ほか,亜におけるその他開発プロジェクト8件への伯の参入可能性につき協議した。


(3)更に,両首脳は,原子力平和利用に関する戦略的パートナーシップを謳う「原子力協力に関する共同宣言」,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関する亜の合法的権利への伯の支持を表明する「マルビナス諸島に関する共同宣言」,及び二国間統合・連携メカニズムを強化するための「サンフアン宣言」に署名した。

 

4 ウルグアイ


(1)7月28日,フェルナンデス大統領及びムヒカ・ウルグアイ大統領は,30日以内に,ウルグアイ川及び同川に排水している全ての農業・産業・都市施設のモニタリングを担うことになる科学委員会(それぞれの国が選定する科学者(ウルグアイ人2名,アルゼンチン人2名)から成る委員会)を,をウルグアイ川管理委員会(CARU)内に設置する旨合意した。


(2)4日,ティメルマン外相は,ウルグアイ川沿いのUPM社製紙工場の環境汚染問題を巡り同工場の撤廃を求めているグアレグアイチュ市民団体代表数名と,外務省において会合を持った。ティメルマン外相は,グアレグアイチュ市民団体代表に対し,亜政府がICJに提出した全ての文書のスペイン語訳を手交するとともに,上記(1)の合意の詳細につき説明した。


(3)19日,ティメルマン外相は,記者会見において,「本日,アルマグロ・ウルグアイ外相に電話し,亜コリエンテス州のミリニャイ川(ウルグアイ川の支流)に建設予定のダムが,ウルグアイ川の環境に悪影響を及ぼす可能性があり,ウルグアイ川規約に反する恐れがあることを伝えた。我々は,コリエンテス州政府に,同ダム建設許可を与えないよう要請しており,同ダム建設を防ぐために司法に訴える可能性も検討している。亜は,ウルグアイ政府からの要請を受けて対応しているのではなく,進んで情報を提供しているのである。」旨述べた。なお,同ダム建設のための企業連合には,亜政府と対立関係にあるクラリン・グループの,アランダ副社長が社長を務める企業等が含まれている。


(4)25日,グアレグアイチュ市民団体は,集会を開き,UPM社製紙工場の環境汚染問題に関する亜政府の対応を不十分であるとして,亜グアレグアイチュ市とウルグアイ・フライベントス市を結ぶ国際橋梁を9月の毎週日曜日の数時間に限り再封鎖する旨決定した。


(5)上記(1)の合意を受け,27日,亜外務省は,UPM社製紙工場の環境汚染問題を巡るICJ訴訟において,亜側書類の作成に携わってきた科学者2名を科学委員会亜側メンバーに任命した。


(6)30日,ウルグアイを訪問したティメルマン外相は,アルマグロ・ウルグアイ外相とともに,上記(1)の合意を受け,ウルグアイ川環境モニタリングに関し,CARU内に設置される科学委員会の構成や,UPM社製紙工場内部立ち入り検査の方針等につき定めた交換公文に署名した。グアレグアイチュ市民団体は,同団体が推薦する科学者が科学委員会メンバーに任命されていないこと等を挙げて,要請事項が十分に反映されていないとし,同交換公文への不服を表明した。

 

5 ベネズエラ・コロンビア間外交関係断絶問題


(1)5〜6日,ベネズエラを訪問したキルチネルUNASUR事務局長は,5日にチャベス大統領と会談したほか,6日にチャベス大統領及びルーラ伯大統領との三者会談を実施し,ベネズエラ・コロンビア関係につき協議した。6日,キルチネル事務局長は,「コロンビアとベネズエラという偉大な二国民の共存を回復するために,必要なだけの時間をかける冷静さを持とうではないか。」等述べた。


(2)7〜10日,コロンビアを訪問したキルチネル事務局長は,8日,マドゥーロ・ベネズエラ外相とオルギン・コロンビア外相との会談に同席し,ベネズエラ・コロンビア関係につき約3時間に亘り協議した。同会談後,キルチネル事務局長は,10日にチャベス大統領とサントス大統領との二国間首脳会談が実施される予定である旨発表したほか,「UNASUR事務局長として,非常に民主的であった今次二国間外相会合に参加することができ,大変満足している。」等述べた。また,9日,キルチネル事務局長は,サントス・コロンビア大統領と会談し,翌日予定されているベネズエラ・コロンビア二国間首脳会談でのアジェンダにつき約20分間協議した。


(3)10日,キルチネル事務局長は,コロンビア・サンタマルタにおいて開催されたチャベス大統領とサントス大統領との首脳会談に同席した。同会談後,ベネズエラ・コロンビア間外交関係の再開が発表された。


(4)12日,亜政府は,外務省プレスリリースを通じ,コロンビア・ベネズエラ間外交関係再開への祝意を表明するとともに,双方の和解のためにUNASUR事務局長が果たした重要な役割を評価した。

 

6 モロッコ


 6日,サントス・コロンビア大統領就任式に出席するためコロンビアを訪問したティメルマン外相は,ファシ・フィフリ・モロッコ外相と会談した。ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するモロッコの支持に謝意を表明するとともに,南南協力における両国の共通姿勢を強調した。

 

7 コロンビア


(1)7日,コロンビアを訪問したフェルナンデス大統領は,サントス・コロンビア大統領就任式に出席した。フェルナンデス大統領は,同就任式後の記者会見において,サントス大統領の就任演説に関し,雇用回復及び富の再分配を重視する姿勢を重要であるとしたほか,サントス大統領の対ベネズエラ関係についての発言振りは地域の平和を期待させるものであったとした。なお,フェルナンデス大統領には,キルチネルUNASUR事務局長,ティメルマン外相,パンプーロ上院議長,サニーニ大統領府法制長官等が同行した。


(2)12日,亜政府は,亜外務省プレスリリースを通じ,同日未明にコロンビアにおいて発生した爆弾テロ事件を強く批判し,コロンビア国民及びコロンビア政府に対する連帯の意を表明するとともに,全てのテロ行為を拒絶した。

 

8 チリ


(1)8日,亜政府は,亜外務省プレスリリースを通じ,チリの鉱山落盤事故により鉱山内に閉じ込めた作業員への深い憂慮の意と,チリ国民,チリ政府及び作業員の家族への連帯の意を表明し,また,チリ当局が必要とする全ての協力を提供する旨表明した。


(2)13日,チリを訪問したティメルマン外相は,モレノ・チリ外相と会談し,統合プロセス強化等の二国間テーマ,10月14日にチリにおいて開催予定の二国間閣僚級会合,亜・メンドサ−チリ・サンティアゴ間「Cristo Redentor」アンデス低標高地帯貫通トンネル・鉄道建設プロジェクト及び亜・サンフアン−チリ・ラセレナ間「Agua Negra」アンデス貫通トンネル建設プロジェクトの進捗状況等につき協議した。また,ティメルマン外相は,9月18日のチリ独立200周年式典へのフェルナンデス大統領の出席を再確認したほか,チリの鉱山落盤事故への亜政府の憂慮を表明した。


(3)24日,亜政府は,亜外務省プレスリリースを通じ,チリの鉱山落盤事故に関し,作業員33名全員の生存が確認されたことにつき喜びを表明し,チリ政府の作業員救出オペレーションを讃えるとともに,必要な全ての協力を提供する用意がある旨表明した。

 

9 南極条約関係会議


 9日,ブエノスアイレスにおいて,第31回南極研究科学委員会会合及び第22回南極観測実施責任者評議会会合が同時開催された。両会合開会式に出席したティメルマン外相は,亜における南極研究・観測の歴史と現状等につき演説した。なお,両会合には,世界各国から科学者900名以上が参加した。

 

10 スペイン


 9日,ガルソン・スペイン全国管区裁判所判事(停職処分中)が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。同会合後,ガルソン判事は,亜の人権分野における国際的指導力に言及しつつ,「ティメルマン外相の要請に応じ,人権擁護・促進に関する計画の実施のために亜と協働していく。」旨発表した。

 

11 インド


(1)2〜3日,ドミンゲス農牧相は,貿易ミッションを率いてインドを訪問し,パワール・インド農業相と会談した。パワール大臣は,今後数年間,インドでは大豆油・ヒマワリ油への一定の需要が見込まれるとし,「亜は,農産品の信頼できる供給国である。」旨述べた。また,両者は,亜産豆類の対インド輸出増加の可能性,植物衛生分野における協力,食料安全等についても協議した。


(2)9日,ティメルマン外相は,Rengaraj Viswanathan在亜インド大使と会談し,二国間テーマや,G20,テロとの闘い,人権擁護といった国際テーマにつき協議した。また,農業分野に関し,Rengaraj大使は,インドによる亜産大豆油の輸入増加の意向を表明し,2010年の輸入額が15億米ドル(2010年上半期までの輸入額は10.2億米ドル)に達成することへの期待を示したほか,インドにおいて植物油需要が高まりつつあることに言及した。

 

12 米国


(1)10〜11日,外相就任後初めて訪米したティメルマン外相は,クリントン米国務長官等と会談し,中南米情勢,中南米地域におけるコンセンサス強化のための亜の役割,人権,核セキュリティ,二国間貿易関係強化の重要性,二国間諮問会合(2010年中に米国において開催予定)等につき協議した。


(2)また,10〜11日,ティメルマン外相は,フローマン米大統領次席補佐官,レストレポ米NSC上級部長(西半球担当),エンゲル米連邦下院議員,及びセイモア米NSC調整官ともそれぞれ会談し,中南米地域における亜の役割,亜の経済情勢,国際機関の改革の必要性,UNASURの重要性等に関し説明した。


(3)25〜29日,訪亜したマクヘイル米国務次官(広報及びパブリック・ディプロマシー担当)は,フェルナンデス大統領及びティメルマン外相とそれぞれ会談した。ティメルマン外相との会談では,科学技術分野における二国間協力関係,国際平和維持活動における二国間協力等につき協議した。また,マクヘイル次官は,亜商工会議所及びカウンシル・オブ・ザ・アメリカスが共催した「亜の経済的・政治的展望」と題するフォーラムにおいて演説を行った。

 

13 ニュージーランド


(1)12日,マッカリー・ニュージーランド外相が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。両外相は,農業分野での協力推進,ワーキングホリデー・プログラムの成功,両国外務省間政治諮問メカニズムの強化,技術協力の推進,気候変動・人権・鯨の保全等の分野での国際場裡における協力強化,FEALACにおける協力強化,南極に関する科学分野での協力推進等につき協議した。


(2)23〜24日,ジョルジ産業相は,農業機材等の分野に従事する中小企業約20社から成る貿易ミッションを率いてニュージーランドを訪問し,ニュージーランド政府関係者及び企業関係者と会合を行い,二国間貿易・投資関係の強化を図った。

 

14 サンパウロ・フォーラム


 17〜20日,ブエノスアイレスにおいて,第16回サンパウロ・フォーラムが開催され,中南米地域の中道左派政党・左派政党関係者等約600名が出席した。亜における同フォーラム開催は初めてであった。同フォーラムには,ダロット筆頭外務副大臣,キルチネルUNASUR事務局長及びセラヤ・ホンジュラス前大統領も出席した。また,フェルナンデス大統領は,同フォーラム出席者との懇談会を開催した。同フォーラム最終日には,中南米地域を平和地帯とすること,UNASURの重要性,マルビナス諸島主権問題に関する亜への支持等を謳った宣言が採択された。

 

15 イベロアメリカ・サミット


(1)11日,訪亜したイグレシアス・イベロアメリカ・サミット事務局長は,ダロット筆頭外務副大臣と会談し,12月3〜4日,亜マルデルプラタにおいて開催される第20回イベロアメリカ・サミットにつき協議した。


(2)18日,ティメルマン外相は,第20回イベロアメリカ・サミットを,12月3〜4日,亜マルデルプラタにおいて,「社会的包括のための教育」を中心テーマとして開催する旨正式に発表した。なお,12月1〜2日に調整会合が,また,12月3日午前に外相会合が開催される予定。

 

16 パキスタン


 18日,亜政府は,亜外務省プレスリリースを通じ,パキスタンにおける洪水被害につき,100万リットルの水を浄化するための薬剤を緊急輸送する旨発表するとともに,在パキスタン亜製薬企業から医薬品の提供を得る可能性を模索している旨公表した。

 

17 欧州


 24日,ティメルマン外相は,在亜ベルギー大使館で開催された在亜欧州大使グループ昼食会に出席し,国際情勢,メルコスール・EU間貿易協定交渉,亜と欧州各国の二国間関係等につき協議した。同昼食会には,ベルギー,ハンガリー,スペイン,ドイツ,スロバキア,イタリア,ブルガリア,ルーマニア,ギリシャ,イギリス,オーストリア,オランダの大使等が出席した。また,クレクレル外務副大臣(通商・国際経済担当)及びスタンカネリ国際経済交渉総局長も同席した。

 

18 カナダ


 25日,訪亜したヴァンローン・カナダ国際貿易相は,ティメルマン外相と会談し,二国間関係及びカナダ・メルコスール関係の強化,G20等の国際場裡における二国間協力等につき協議した。また,ヴァンローン大臣は,亜産牛肉に対するカナダ市場の早期解放の重要性を強調した。

 

19 イラン


 30日,亜政府は,亜外務省プレスリリースを通じ,イランにおいて同国国民が石打ちによる死刑を宣告された事態につき,深い憂慮を表明するとともに,イラン政府に対して同処刑の執行停止を呼びかけた。

 

20 パラグアイ


 31日,ティメルマン外相は,パラグアイを訪問し,ルゴ・パラグアイ大統領及びラコニャタ・パラグアイ外相とそれぞれ会談した。ルゴ大統領との会談では,国境地帯の交通の改善を図るために二国間委員会を設置することで合意したほか,二国間貿易関係,移民問題等につき協議した。ラコニャタ外相との会談では,二国間の重要テーマを推進していくために,60日毎に外相会合を実施することで合意した。

 

21 ハイチ


 31日,ハイチにおいて,UNASUR・ハイチ復興技術事務局開所式典が執り行われ,同式典に,プレヴァル・ハイチ大統領,コレア・エクアドル大統領(UNASUR議長国),フォロニエル亜大統領府外交顧問(キルチネルUNASUR事務局長代理)等が出席した。また,同事務局代表として,マタロージョ亜司法省人権問題顧問が任命された。

 

22 要人往来


(1)往訪

2〜3日 ドミンゲス農牧相のインド訪問(パワール・インド農業相と会談)
5〜6日 キルチネルUNASUR事務局長のベネズエラ訪問(チャベス・ベネズエラ大統領等と会談)
7日 フェルナンデス大統領のコロンビア訪問(サントス・コロンビア大統領就任式に出席)
7〜10日 キルチネルUNASUR事務局長のコロンビア訪問(ベネズエラ・コロンビア外相会談に同席,サントス・コロンビア大統領と会談,ベネズエラ・コロンビア首脳会談に同席)
10〜11日 ティメルマン外相の米国訪問(クリントン米国務長官等と会談)
13日 ティメルマン外相のチリ訪問(モレノ・チリ外相と会談)
23日 ティメルマン外相の米国訪問(バレンスエラ米国務次官補等と会談)
23〜24日 ジョルジ産業相のニュージーランド訪問(ニュージーランド政府関係者等と会談)
30日 ティメルマン外相のウルグアイ訪問(アルマグロ・ウルグアイ外相と会談)

 

(2)来訪

2〜3日 メルコスール加盟国首脳等(第39回メルコスール共同市場審議会(CMC)及びメルコスール首脳会合に出席)
3〜5日 山川総務審議官(デビード公共事業相等と会談)
11日 イグレシアス・イベロアメリカ・サミット事務局長(ダロット筆頭外務副大臣と会談)
12日 マッカリー・ニュージーランド外相(ティメルマン外相と会談)
25日 ヴァンローン・カナダ国際貿易相(ティメルマン外相と会談)

 

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