アルゼンチン政治情勢(2015年1月)
2015年2月作成
在アルゼンチン日本大使館
概要
(1)内政:
(ア)2014年12月末に左足首を骨折したフェルナンデス大統領は,1月前半は安静にしながら大統領公邸にて執務にあたる日が続いた。26日,同大統領は,約1ヶ月振りに公の場に姿を現し,情報庁再編等に関する発表を行った。
(イ)14日,ニスマン連邦検事が,フェルナンデス大統領及びティメルマン外務大臣他を,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件のイラン人容疑者の罪を隠蔽したとの疑いで告発した。その後,大統領等告発に関する議会説明を翌日に控えた18日,同検事の死体が自宅にて発見された。
(2)外交:
(ア)7日,アルゼンチン外務省は,フランスで発生したテロ攻撃を激しく非難しつつ,仏政府及び国民に対する弔意を表明した。
(イ)8日~9日にかけて,ティメルマン外務大臣は,中国の北京にて開催された第1回中国-ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)フォーラムに出席した。また,同大臣は,27日~29日にかけてコスタリカのサンホセにて開催された第3回CELAC首脳会合に,フェルナンデス大統領代理として,出席した。
内政
(1)大統領府・政府:フェルナンデス大統領の復帰演説
26日,フェルナンデス大統領は,約1ヶ月振りに公の場に姿を現し,全国放送を通じて,車椅子姿で国民に対する演説を行い,情報庁の再編につき言及すると共に,2月1日より臨時国会を招集すると発表した。
(2)連邦議会:国家情報法改正法案の提出
31日,政府は国家情報法(Ley de Inteligencia Nacional)の改正法案を議会に提出した。同法案には,情報庁の解体と,連邦情報局(Agencia Federal de Inteligencia)の設立,及び同局長・副局長は行政府が指名し上院が承認すること,また,(当国法令上許容されている)通信傍受業務は検事総長の管轄下に置く等の内容が盛り込まれている。
(3)司法・検察
(ア)新検事任命に対する差し止め
9日,ラビエ・ピコ連邦判事は,ヒルス・カルボ検事総長が2014年12月に改正された刑事訴訟法に基づき,16名の検事を任命した件について,関連の担保法が未整備であることを理由に,任命手続きを差し止めた。
(イ)ニスマン連邦検事によるフェルナンデス大統領他への告発
14日,ニスマン連邦検事は,フェルナンデス大統領やティメルマン外務大臣他が,1994年のイスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件のイラン人容疑者の罪を隠蔽した疑いで,連邦裁判所に告発した。
同検事は,野党の求めに応じ,19日に議会にて事情説明を行う予定であった。
(ウ)ニスマン連邦検事の突然の死
18日,ニスマン連邦検事は,ブエノスアイレス市内の自宅の浴室で,銃と薬莢とともに死体で発見された。19日に議会で本件についての説明を行う予定であったところ,今回の突然の死は社会に大きな衝撃を与えるとともに,自殺や他殺の可能性を含め様々な憶測を呼んだ。
19日,当地メディアは本件を終日報道し,事の真相解明を求めるデモがブエノスアイレス市の5月広場や大統領公邸前をはじめ,全国の主要都市で行われた。
(4)労働組合:労使交渉での賃上げ合意
政府系CGT(労働総同盟)兼金属労働組合代表のカロー書記長は,金属関連経営団と計2000ペソの非課税の一時金を支払うことで,合意した。
また,21日,労働省と鉄道・バス乗車員組合(UTA:Unión Tranviarios Automotor)は,3月以降,5000ペソの月給増額で合意した。
(5)その他:国際ホロコースト追悼記念日式典の開催
27日,フェルナンデス大統領は,イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破テロ事件の生存者及び被害者家族と会合した。また同日,外務省は国際ホロコースト追悼記念日の式典を開いた。ニスマン事件を受け,イスラエル共済組合や在アルゼンチン・イスラエル協会(DAIA)は,初めて外務省とは別に式典を行った。
外交
(1)ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)
(ア)第1回中国-CELACフォーラム
8日~9日にかけて,ティメルマン外務大臣は,中国の北京にて開催された第1回中国-CELACフォーラムに出席した。同フォーラムでの演説にて,ティメルマン外務大臣は,対中関係において,インフラ整備分野での融資が基礎となっているが,アルゼンチンの生産能力向上のため,科学技術,教育,人材育成等の面にも力を入れていく必要があると述べた。
(イ)第3回CELAC首脳会合
27日~29日にかけて,コスタリカのサンホセにて第3回CELAC首脳会合が開催され,フェルナンデス大統領代理でティメルマン外務大臣が出席した。今次会合の結果,ハゲタカファンドとの戦い及び,英国との間でのフォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,アルゼンチンの立場を支持する特別宣言が発出された。また,CELAC諸国首脳は,キューバを支持する特別宣言を発出し,ティメルマン外務大臣も,自身の演説の中で,米国は,キューバへの経済封鎖を直ちに止めるべきであると述べた。
(2)チリ
6日,ムニョス・チリ外務大臣及びゴンサレス・ガルシア駐チリ・アルゼンチン大使は,「ラス・レニャス国際トンネル」建設を目的とした二国間機関設立に関する合意文書への署名を行った。
(3)中国
(ア)アルゼンチン・中国外相会談
9日,中国-CELACフォーラム出席のために中国を訪問したティメルマン外務大臣は,王毅中国外交部長と外相会談を行い,昨年7月の習近平国家主席訪アルゼンチンの際に合意された事項,特にアルゼンチン国内での2基のダム建設計画,原発建設計画,交通分野の協力につき協議を行った。
(イ)デ・ビード公共事業大臣と楊駐アルゼンチン中国大使の会談
8日,デ・ビード公共事業大臣と楊駐アルゼンチン中国大使は会談し,原子力,航空宇宙,電子,通信,インフラ投資等のインフラ分野におけるアルゼンチン・中二国間協力について協議を行った。また,アルゼンチンにおける2基のダム建設計画に対する中国からの資金ディスバースの詳細について調整を行った。
(ウ)第4回通貨スワップの実施
13日,2014年7月に中国との間で合意に至った通貨スワップ協定に基づく第4回目の通貨スワップ(約25億元(約4億米ドル相当))が実施された。
(エ)YPF・シノペック間の覚書
28日,ガルッチオYPF(アルゼンチン石油公社)社長及び,Fu Chengyuシノペック会長は,北京にて,アルゼンチンにおける石油,在来型・非在来型ガス・プロジェクト展開に向けた戦略的委員会実現のための覚書への署名を行った。
(4)フランス
(ア)テロ攻撃に対する批判表明
7日,アルゼンチン外務省は,パリにある週刊誌「シャルリー・エブド」本社で同日に発生し,12名以上の死者と多くの負傷者を出した野蛮なテロ攻撃を激しく非難すると同時に,仏政府及び国民に対し弔意を表明するプレスリリースを発出した。
(イ)ティメルマン外務大臣のフランス訪問
10日,中国外遊の帰りに,パリに立ち寄ったティメルマン外務大臣は,仏外務省にて,弔問を行った。また,11日にパリで行われた行進には「一市民」として参加した。
(ウ)在アルゼンチン仏大使館前での抗議行動
11日,在アルゼンチン仏大使館前に,800~1000人が集まり,同テロ攻撃への批判を表明する抗議行動を行った。右抗議行動には,サンス上院議員(UNEN拡大戦線及び急進党)等の野党議員,ロンバルディ・ブエノスアイレス市文化大臣等の出席もあったが,現政権閣僚の出席はなかった。
(5)米国
21日,ティメルマン外務大臣は,新たに着任したマメット駐アルゼンチン米大使の信任状捧呈後,同大使と会談した。
(6)トルコ
4日~6日にかけてトルコを訪問したティメルマン外務大臣は,6日,第7回トルコ大使会議に特別招待客として出席し,国連安保理改革,テロ,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題,ラテンアメリカ統合,ハゲタカファンドとの戦いに関するアルゼンチンの立場を表明した。同日,ティメルマン外務大臣は,タイップ・エルドアン・トルコ大統領との会談,及び,チャヴォシュオール・トルコ外務大臣との会合の機会を設け,アルゼンチン・トルコ二国間アジェンダの見直し等を行った。
(7)ナイジェリア
11日,アルゼンチン外務省は,同日ナイジェリアで起きた19名の死者を出したテロを非難し,ナイジェリア政府及び国民に対し連帯を表明する旨プレスリリースを発出した。
(8)アラブ首長国連邦
29日,アルゼンチンを訪問したラシッド・アフメド・ビン・ファハッド・アラブ首長国連邦環境・水大臣は,カサミケラ農牧・漁業大臣と会合し,バイオテクノロジー及び技術面での二国間協力促進,及び将来的な食料関係の覚書署名等について協議した。
(9)世界貿易機構(WTO)
WTO紛争処理上級委員会は,アルゼンチンの事前輸入宣誓供述制度(DJAI:Declaración Jurada Anticipada de Importación)等の輸入制限措置がWTOの協定違反にあたると判断したことに関し,16日,カピタニッチ官房長官は,WTO判決の内容を分析することは必要不可欠であるが,当該判決により,亜国の貿易管理政策が修正されることはない,ただし,提訴国(米国,EU及び日本)との二国間交渉の基準が作られる可能性はあると述べた。
(10)要人往来
(ア) 往訪
1日 |
ブドゥー副大統領の伯訪問(ルセーフ大統領就任式出席) |
4日~6日 |
ティメルマン外務大臣のトルコ訪問 |
8日~9日 |
ティメルマン外務大臣の中国訪問(第1回中国-CELACフォーラム出席) |
10日 |
ティメルマン外務大臣のフランス訪問 |
19日~20日 |
ティメルマン外務大臣の米国訪問(国連安全保障理事会「国際社会における平和と安全維持のための包括的発展」に関する協議出席) |
22日 |
ブドゥー副大統領のボリビア訪問(モラレス大統領就任式出席) |
27日~29日 |
ティメルマン外務大臣のコスタリカ訪問(第3回CELAC首脳会合出席) |
29日~30日 |
メイエル観光大臣のスペイン訪問(観光市FITUR2015出席) |
(イ)来訪
29日 |
ラシッド・アフメド・ビン・ファハッド・アラブ首長国連邦環境・水大臣 |
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