アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和7年3月6日

アルゼンチン政治情勢(2025年1月)

1 内政

(1)ミレイ政権

●国家再建の年(2日)
 2日、政府は、官報を通じ、2025年を「アルゼンチン国家再建の年」と定めることを発表した。

●港湾総局(AGN)の解散(3日)
 3日、政府は、ブエノスアイレス港及びパラグアイーパラナ河川水路の管理を担当する港湾管理総局(AGP)及び経済省港湾水路担当次官のポストの廃止を発表した。また、併せて、これらの組織の所掌業務を新たに担当する組織として、国家港湾航行局(ANPYN)の設立が発表された。

●ミレイ大統領のホロコースト80周年記念式典への出席(27日)
 27日、ミレイ大統領は、ブエノスアイレス市内のホロコースト博物館で開催された、80周年を迎えるホロコーストの犠牲者追悼式典で演説した。

●大統領府報道長官の辞任(28日)
ア 28日、セレネリーニ大統領府報道長官が辞任を表明した。
イ 2月4日、大統領府報道長官組織が廃止され、所掌業務を、アドルニ大統領府報道官のコミュニケーション・メディア長官組織が引き継ぐことが決定した。

●通商大使の設置(29日)
 29日、政府は、外務省内に通商大使(戦略的開発・投資担当)の役職を新設する旨発表した。右ポストには、戦略的投資の推進や輸出の奨励を通じ、世界市
場におけるアルゼンチンの存在感を高めることに貢献することが求められる。

(2)議会

●臨時議会召集の旨発表(13日)
ア 13日、政府は、1月20日~2月21日の期間で、臨時議会を召集する旨発表した。右会期では、予備選挙(PASO)の一年間の停止や再犯の厳罰化等の複数の議題が扱われる予定。
イ 20日、臨時議会が召集された。

●政府起案の「公職犯罪歴確認法(Ficha Limpia)」法案の議会提出(20日)
ア 20日、政府は、通常議会では与党「自由の前進(LLA)」及び野党連合「祖国のための同盟」等の欠席により不成立となった、野党提案の「公職犯罪歴確認法(Ficha Limpia、汚職歴のある政治家の公職就任を禁じる法案)」法案を加筆・修正し提出した。
イ 主な変更点として、汚職歴のある政治家の閣僚、要職等への任命の禁止や、選挙年の前年に有罪判決を受けた場合の選挙出馬資格の剥奪等が追加された。

(2)各政党の動き

●ブエノスアイレス市議会でのLLAをめぐる動き
ア 29日、PRO所属のブエノスアイレス市議会議員3名は、ブルリッチ治安相に同調し、同市議会のLLA会派に移籍することを発表した。
イ 30日、マラ・ブエノスアイレス市議会議員は、ミレイ大統領の理念に反し、同市議会の増税に関する議決に賛成票を投じたことで、LLAから追放された。

(3)その他

●山火事の発生
ア 16日、チュブト州エプジェン市で山火事が発生した。この火事は一週間以上継続し、3000ヘクタールの土地が焼失したとされる。
イ 30日、リオ・ネグロ州のエル・ボルソン市で山火事が発生した。被害範囲は3800ヘクタールに及び、200以上の家屋が焼失した。2月20日時点で、同市の森林火災は継続中。なお、ア、イの火災の原因は、人為的なものとされる。

●サルタ州ーボリビア国境におけるフェンスの設置(27日)
ア 27日、サルタ州政府は、ボリビアとの国境間に、200mのフェンスを設置することを決定した。本措置は、「グエメス計画」(麻薬密売等に関し、中央政府と協力して国境付近の治安対策等の強化を図るもの)の一環。
イ 27日、ボリビア外務省は、今回の措置への懸念を表明する声明を発出した。
 

2 外交

(1)首脳級

●ミレイ大統領のトランプ米大統領就任式出席(20日)
ア 20日、ミレイ大統領は、トランプ米大統領の就任式に出席した。同日、アルゼンチン大統領府は、トランプ米大統領就任に祝意を表する声明を発出した。
イ ミレイ大統領は、就任式に先立ちゲオルギエバIMF専務理事等と会談した他、就任式前のミサで、メローニ伊首相等の各国首脳と顔を合わせた。なお、就任式では、韓正中国国家副主席と隣席だった。
ウ ミレイ大統領は、就任式後の晩餐会で、ルビオ米国務長官やゴンサレス・ウルティア元ベネズエラ野党大統領候補と顔を合わせた。

●ミレイ大統領のダボス会議出席(22、23日)
ア ミレイ大統領は、本会合出席に際し、ゼレンスキー・ウクライナ大統領(22日)、ケラー=ズッター・スイス連邦大統領(23日)等と会談した。
イ 23日、ミレイ大統領は、ダボス会議で演説した。右演説では、資本主義の富を不当に蓄積するために政治家が考案した、(ジェンダー思想等を掲げる)Woke運動の解体の必要性を強調し、同思想が優勢な国やダボス会議をはじめとする国際機関を非難し、国家及び国際機関を縮小するとともに、自由の理念に立ち返ることで、西洋を再び偉大にしよう、と呼びかけた。

(2)閣僚級

●ウェルテイン外相の西半球安全保障フォーラム出席(18日)
 18日、ウェルテイン外相は、訪問先のワシントン市で、西半球安全保障フォーラムに出席した。同外相は、本会合で演説し、同政権の経済政策の成果、規制緩和プロセスの進捗状況、国家安全保障の強化とテロ対策等の取組及び右に対する米国とイスラエルの役割を強調した。

(3)アルゼンチン・ベネズエラ関係

●アルゼンチン国境警備隊員に対する予防措置の承認(1日)
1日、米州人権委員会(IACHR)は、ガジョ・アルゼンチン国境警備隊員がベネズエラ当局に拘束されている件に関し、同隊員を「最悪の事態に至り得る、深刻かつ緊急の状況」から保護するため、予防措置を講じる旨決定した。本決定は、アルゼンチン政府の要請によるもの。

●ミレイ大統領とゴンサレス・ウルティア氏の会談(4日)
ア 4日、ミレイ大統領は、アルゼンチンを訪問したゴンサレス・ウルティア元ベネズエラ野党大統領候補(大統領府プレスリリースでは「ベネズエラ次期大統領」と表記)と会談した。本会合で、双方は、自由で民主的なベネズエラの実現のためのアルゼンチンのコミットメントを再確認した他、マドゥーロ政権を批判した。
イ その他、ガジョ国境警備隊員や、在ベネズエラ・アルゼンチン大使館の庇護下にあるベネズエラ野党関係者5名の現状についても協議された。

●ベネズエラ大統領就任式に係る政府声明(10日)
ア 10日、アルゼンチン外務省は、同日に行われたベネズエラ大統領就任式に際し、ゴンサレス・ウルティア元ベネズエラ野党大統領候補を改めてベネズエラ大統領として認定し、マドゥーロ政権を強く非難する声明を発出した。
イ その他、本声明では、ガジョ国境警備隊員の不当な拘束を批判するとともに、アルゼンチンのベネズエラ国民への支持を再確認し、同国における自由、尊厳、平和の回復に向け、国際社会と協力し続ける旨表明。

(5)イスラエル・パレスチナ関係

●ミレイ大統領の「ジェネシス賞」の受賞(15日)
 14日、ジェネシス賞財団は、「ユダヤのノーベル賞」とも呼ばれる、ユダヤ人やイスラエル社会に対し多大な貢献をした者に授与される「ジェネシス賞」の2025年の受賞者として、ミレイ大統領が選出された旨発表した。

(6)その他

●ウルグアイにおける大使館及び国際機関代表部の統合(16日)
 16日、外務省は、経費削減を理由に、ウルグアイにあるアルゼンチン大使館とラテンアメリカ統合連合(ALADI)及びメルコスールのアルゼンチン代表部を統合し、単一の外交代表部とすることを発表した。

●IMPSA社の民営化(8日)
 8日、経済省は、国とメンドーサ州政府が保有するIMPSA社(冶金・発電・技術部門向けに、タービンや原子炉等の機器を製造)の株式売却に関し、米Arc Energy社を主要パートナーとするIFAコンソーシアムを落札者として仮決定するよう勧告することを決定した旨発表した。

●マリンYPF社長のアジア訪問
ア 1~22日、マリンYPF社長は、液化天然ガスの取引先を探すことを目的として、日本、韓国、中国、トルコ、インド等を訪問した。
イ 22日、YPFは、インド石油天然ガス公社(OIL)等と、年間1000万トンを上限とするLNG輸出に関する覚書を締結した。

(7)要人往来

往訪:
米:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、ウェルテイン外相、カプート経済相(17~20日) 
スイス:ミレイ大統領、カリーナ長官、ウェルテイン外相(22、23日)
 
来訪:
ベネズエラ:ゴンサレス・ウルティア元ベネズエラ野党大統領候補(4日)

 

(了)

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