政治情報
月1回更新

2014年2月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2014年3月作成
在アルゼンチン大使館

1 概要


(1)内政:フェルナンデス大統領は2月に行った複数の演説の中で,物価上昇を引き起こしているとして企業経営者を批判すると共に,賃上げ要求を行っている労組に対する批判を展開した。また,同大統領はそれらの演説の中で,投機的な動きを見せているとして,金融業界,銀行及び反政府系メディア等に対する批判的発言を行った。6日,ディ・レロ連邦検事は,ブドゥー現副大統領が経済大臣であった2010年当時,民間印刷会社「チコーネ・カルコグラフィカ社」の債務返済問題及び同社の売却交渉において,「公務の遂行とは相容れない取引」を行ったとして,同副大統領に対する法廷での尋問をアリエル・リホ判事に要請した。

 

(2)外交:10日付亜外務省プレスリリースは,日本の農林水産省の規則が改正され,低温処理を条件として,今後,亜産スウィートオレンジ(ワシントンネーブル種,ラネラーテ種及びサルスティアーナ種)及びマンダリン(クレメンティン,エレンデール,マーコット及びノバの生果実)の対日輸出が可能になることとなった旨発表した。13日,亜外務省は,12日にベネズエラで発生したデモに関し,亜政府は,ベネズエラ国民によって選挙で選ばれた合憲的な政府に対する明確な支持を今一度表明するとともに,兄弟国(ベネズエラ)において,制度的秩序が直面している明白な情勢不安定化の試みに警鐘を鳴らすという内容のコミュニケを発出した。27日にはハウア・ベネズエラ外務大臣が亜を訪問し,オリーボスの大統領公邸で,フェルナンデス大統領と約1時間に亘り会談した。

 

 

2 内政


(1)フェルナンデス大統領の演説(年金支給額の引き上げ等)

 

(ア)4日,フェルナンデス大統領は大統領府において本年2度目の演説を行い,3月1日以降の年金支給額の引き上げ等について発表した。亜では現政権が09年2月に導入した「スライド制年金法」(Ley de Movilidad Jubilatoria)により,年に2回(3月及び9月),年金支給額が改定される仕組みになっているが,フェルナンデス大統領は,本年3月1日以降の国家社会保障機構(ANSES)による公的賦課方式の年金の引き上げ率を11.31%とし,前年同月比では27.35%の増額となる旨発表した(注:昨年9月の年金引き上げ率は14.41%)。これに伴い,3月1日以降の退職年金(Jubilación)の最低支給額は2,757ペソに,平均支給額は4,804ペソに,最高支給額は20,199ペソに,それぞれ引き上げられることとなった。

 

(イ)フェルナンデス大統領は今次演説の中で,今回の引き上げは約736万人の年金受給者に資するものであると発表するとともに,2009年に「スライド制年金法」が導入されて以降,年金(支給額)は約300%引き上げられていると発言した。また,フェルナンデス大統領は(亜における)93.8%の年金受給率は,中南米地域で最高の水準であると発言するとともに,「経済学者の中には(この年金政策を)ポピュリズムと呼ぶ者もいるだろうが(中略),我々(亜政府)は,個人消費と企業投資による経済の成長と発展(の成就)を信じている」と述べた。

 

(ウ)また,今次演説において,フェルナンデス大統領は,年に一度,新学期に給付される教育支援手当を,170ペソから510ペソに引き上げることも併せて発表した(注:同制度は,世帯月収が3万ペソ以下の家庭,または父親か母親の単独月収が1万5千ペソを下回る家庭の5歳〜17歳の子供を対象に給付される手当のこと)。

 

(エ)今次演説の中で,フェルナンデス大統領は,企業が物価上昇を引き起こしているとして批判するとともに,企業に国内での投資を進めるよう求めた。また,賃上げを要求している労組に対しては,「『今の給料では食べていけない』と言うアントニオ(注:政府支持派の労働総同盟(CGT)の代表を務めているアントニオ・カロー氏のこと)の発言を聞いたが,餓死する亜国民がいるとは自分は考えてはいない」と発言し,「賃金上昇だけが解決方法だと思っているなら,それは状況を見誤っている。そのように考える者たちは,各労組のリーダーの下にいる何千人もの労働者だけが不利を被る道に向かっている」と批判した。

 

(オ)さらにフェルナンデス大統領は,「国家とは政治的・制度的建造物であり,人々は国家の役割をはっきりさせなければならない。90年代の新自由主義は,『国家は何の役にも立たない,全てを民営化しよう,市場が全てを解決するだろう,それで全てのことが流れていく』と主張したが,当時は亜において多くの物事が機能していなかったこともあり,多くの人が純粋にこれ(新自由主義の主張)を信じた。(中略)我々(亜国民)は,何故(90年代に)かかる考え方を信じさせられたのかということに関して,また(90年代に亜が)「企業国家」になりかわることを望んでいた時,何を誤ったのかということに関して,忘れずに自己批判を行うべきである」と発言した。その上で,同大統領は,「今日,議論になっているのはポピュリズムか否かということではなく,社会の中で,国家が有すべき役割は何かということである。(中略)少なくとも自分が大統領である限り,亜国家は「企業国家」になりかわることは決して無く,国民(の運命)を運に任せたりはしない」と述べた。

 

(2)フェルナンデス大統領の演説(金融業界等に対する批判)

 

 12日,フェルナンデス大統領は,公共事業及び投資に関する発表を大統領府で行い,同演説の中で,前日のラジオ番組内で流された,デ・ラ・ルーア政権下で経済省の経済政策長官であったミゲル・ベイン経済コンサルタントの発言を引用し,「(亜に対しては,国内外で)財政不安定化の試みが存在し,(中略)市場は中銀の外貨準備高を空にするというアイディアとともに,かなり傲慢な態度をとり,亜政府を宙に舞わせる(崩壊させる)ことを企図していた」と述べ,投機的な動きを見せているとして金融業界,銀行及び反政府系メディア等を批判する発言を行った。また,モノの値段を引き上げているとして,大型スーパーマーケット等の経営者を攻撃した。21日にブエノスアイレス州フロレンシオ・バレラ市で社会保障プログラムに関する演説を行った際にも,フェルナンデス大統領は,販売業者,納入業者及び流通業者等に対し,価格を引き上げることによって,「黄金の卵を産む雌鳥(注:亜のこと)を殺さないでほしい」と要請した。

 

(3)フェルナンデス大統領の術後の経過観察

 

 13日21時頃,フェルナンデス大統領はファヴァロロ財団病院において,大統領府の医師団が計画した術後の経過観察を行うための2種類の検査を受けた(注:同大統領は昨年10月8日に慢性硬膜下血腫の摘出手術を受けた)。同日22時頃,同医師団は,いずれの検査結果も正常であった旨発表した。当地報道によると,今回フェルナンデス大統領が受けた検査は,神経画像検査及び心電図検査であり,今次検査は約20分ほどで終了した。

 

(4)ブドゥー副大統領に対する尋問の要請

 

(ア)6日,ディ・レロ連邦検事が,ブドゥー現副大統領が経済大臣であった2010年当時,民間印刷会社「チコーネ・カルコグラフィカ社」の債務返済問題及び同社の売却交渉において,「公務の遂行とは相容れない取引」を行ったとして,同副大統領に対する法廷での尋問をアリエル・リホ判事に要請した。また,同検事は,本件への関与が疑われているエチェガライ亜連邦歳入庁(AFIP)長官に対する尋問も要請した。

 

(イ)翌7日,ブドゥー副大統領は連邦裁判所を訪問し,ディ・レロ連邦検事と面会し,関係書類を提出した。同副大統領は,「自分(「ブ」副大統領)は本件とは何の関係もない」と同検事に対して発言した。

 

(ウ)当地メディアは,尋問が実施されるか否かは本件担当のリホ判事の判断に委ねられており未だ不明であるが,本年下半期に行われるのではないかとの推測があり,現役の副大統領が汚職の嫌疑により裁判所で尋問を受けることになるのは史上初のことであると報じた。また,尋問後,訴追免除特権の剥奪を国会が承認し,ブドゥー副大統領が起訴され,有罪判決を受けた場合,量刑は懲役1年〜6年となり(注:刑法第265条が適用された場合),ブドゥー副大統領はその後如何なる公職にも復帰できなくなるとも報じられた。

 

(エ)7日朝に定例の記者会見を行ったカピタニッチ官房長官は,本件に関して記者から問われると,「組織的な迫害とメディアのリンチが存在した」と発言し,ブドゥー副大統領はそれらの被害者であるという見方を示した。他方,急進党(UCR),刷新戦線(FR),市民連合(CC),革新派拡大戦線(FAP)及び共和国提案(PRO)等の各野党議員は,今回のディ・レロ検事によるブドゥー副大統領への尋問要請を受け,同副大統領は直ちに公職を退くべきであるとの発言を行い,フェルナンデス大統領に対して,ブドゥー副大統領への政治裁判の実施の是非を国会で直ちに問うため,臨時国会を早急に召集するよう書面にて要請した。

 

(オ)当地紙は,「政府内では,フェルナンデス大統領はブドゥー副大統領を見捨てることは考えていないと言われている」との見出しで,政府は,ブドゥー副大統領が辞任するようなことになれば,政権の弱体化が進むという点を懸念していると報じた。さらに,政府がブドゥー副大統領を見捨てない理由として,当地報道は,本件には故キルチネル前大統領を含む現政権幹部も関与していた疑いがあるので,かかる関与をブドゥー副大統領に喋らせないためとの見方もあると伝えた。

 

(5)臨時上院議長の交代

 

 通常国会開会式の前日に当たる28日,フェルナンデス大統領は臨時上院議長として,ヘラルド・サモラ上院議員(注:前サンティアゴ・デル・エステロ州知事。急進党キルチネル派)を指名し,上院はこれを賛成57票,反対12票の賛成多数により承認した。臨時上院議長は,大統領及び副大統領(注:上院議長を兼ねる)が不在の場合に,臨時上院議長として暫定的に行政権を行使する立場にあり,2011年11月以降は,与党「勝利のための戦線」(PJ)のベアトリス・ロフケース上院議員が務めていた。行政府が新たな臨時上院議長として,「勝利のための戦線」以外の議員を選んだことに対しては,同戦線所属のピチェト上院議員等から批判の声が上がったが,最終的には同議員等も賛成票を投じ,政府に足並みを揃えたと報じられた。当地紙では,今次決定を推し進めたのは,フェルナンデス大統領の側近とされているサニーニ大統領府法制長官であったと伝えられ,その理由として,民間印刷会社「チコーネ・カルコグラフィカ社」を巡り,汚職の嫌疑をかけられ尋問を要請されているブドゥー副大統領(上院議長)の状況が,臨時上院議長をより政治的影響力を持つ人物にする必要性を高めたためと報じられた。

 

(6)刑法改正法案の草稿の提出

 

 13日,フェルナンデス大統領は,サファロニ最高裁判事及び与野党議員等で構成される刑法改正委員会のメンバーと会合し,同委員会より刑法改正法案の草稿を受け取った。刑法改正のイニシアティブ自体は,2012年5月にフェルナンデス大統領自らがとったものであり,同年に政令第678号を通じて,制度化及び法的安定性の強化を目的とする刑法の改正,更新及び統合のための法案作成に着手された。改正案の中身には再犯による加重情状及び無期懲役の削除も含まれており,無期懲役という法定刑に該当する罪を犯した場合,刑罰は最高でも30年の禁固刑となる旨,法案の草稿には明記されていると報じられている。

 

(7)教員労組による賃上げ交渉

 

 21日,政府は全国の教員労組を代表する5つの団体(注:そのうちの4団体が労働総同盟(CGT)の政府支持派に属しており,残りの1つが亜労働者連盟(CTA)の政府支持派(CGT,CTAのいずれにも政府支持派と反政府派のグループが存在する)に属している)と第一回目の賃上げ交渉を行い,政府側が3月,8月及び11月の3回に分けた計22%の段階的賃上げ及び2000ペソの無欠勤手当の給付を提案したのに対し,労組側は42〜61%の賃上げを要求し,交渉が難航した(注:3月20日現在も右交渉は難航している)。

 

(8)麻薬密売組織の勢力拡大

 

(ア)麻薬の精製・生産に関する政府要人の発言

 

 (@)14日,ロッシ国防大臣は,ラジオ・リバダビアでのインタビューにおいて,「以前,亜は(麻薬の)通り道であって,消費国ではなかったが,今日,その状況は変化しており,亜は消費国になったばかりでなく,さらに深刻なことに精製(elaboración)する国にもなっている」と発言した。

 (A)17日,治安省のナンバー2であるベルニ治安活動長官は,ロッシ国防大臣の上記発言を否定し,「亜は麻薬の生産国(pais de producción)ではない。麻薬の密売組織と日々格闘している我々(治安部隊)は,亜でコカインの生産が行われていないことを承知している」と発言した。また,翌18日には,「亜は麻薬を生産しておらず,亜にはコカインを生産するための地理的条件及び気候条件が存在しない」と同長官は発言し,「(ロッシ国防大臣とは)既に話合い,今は(ロッシ国防大臣は,ベルニ長官と同じ)考え方を完全に共有している」と述べた。

 (B)18日,カピタニッチ官房長官は,ロッシ国防大臣とベルニ治安活動長官の見解の相違に関し,「政府の見解はとても明瞭であり,(ベルニ)治安活動長官が述べた通りである。亜は麻薬の生産国(pais productor)ではない」と発言した。

 (C)18日,ロドリゲス治安大臣もベルニ治安活動長官の発言を支持し,「亜には,コカを栽培する(cultivar)気候条件が存在しない」と発言した。

 (D)上記の閣僚等の発言に関し,当地報道は,大統領府及び治安省は,麻薬の「生産」(producción)をコカの植え付け(plantaciones)のみに限定して言及する方法をとっており,亜で過去数ヶ月の内に発見された,複数の大規模工場における(コカの)ペーストからコカインへの精製(elaboración)過程を考慮していないと伝えた。また,報道では,「ロッシ国防大臣の発言内容を否定するベルニ治安活動長官の発言は,単なる政府内の見解の不一致を示すものではない。現在,亜は金融活動作業部会(FATF(GAFI))及び米国務省により,麻薬の通り道且つ消費国と見なされているが,それに加えて生産国としても見なされるようになると,亜に政治的・財政的困難がもたらされる可能性があるため(ベルニ長官がそれを否定する発言を行ったの)である」との分析がなされた。

 (E)麻薬政治学(narcopolítica)が専門のサン・アンドレス大学のフォーリグ調査員は当地紙の取材に対し,「コカインの生産には4段階ある。第1段階は原材料となるコカの葉の生産であり,葉は生産地においてペースト状にされる。その後の(第2〜第4段階の)行程は,亜でも行われている証拠がある。第2段階はベースとなるペーストの精製,第3段階は同精製ペーストをコカインの塩酸塩に変化させる作業,そして最後に増量剤を加えてからそれを分割するプロセスがある」とコメントした。

 

(イ)サンタフェ州における麻薬組織と州警察の癒着

 

 20日付当地報道は,サンタフェ州司法当局が,カンテロ家及び州警察関係者等で構成される「ロス・モノス」(Los Monos)という麻薬密売組織に関し,違法団体形成の容疑により,これまでに10名のサンタフェ州警察関係者及び25名の麻薬密売組織関係者(企業家及びサッカー関係者を含む)を起訴したと報じた。当地紙によると,ロス・モノスはサンタフェ州最大の都市であるロサリオ市の南部を主な活動拠点としており,最近はビジャ・ゴベルナドール・ガルベス市等の他地域にも進出し,他の麻薬密売組織との間で縄張り争いを繰り広げているとされている。

 

(ウ)米国務省の見解

 

 24日付当地紙は,ボンファッティ・サンタフェ州知事及びランベルト同州治安大臣が,1月15日にワシントンにおいて米国務省のウィリアム・オスティック南半球問題代表等と会合した際,米側より,亜の中部にあるサンタフェ州,コルドバ州及びエントレリオス州における麻薬密売組織の躍進及び暴力の拡大について,懸念が存在する旨伝えられたと報じた。同報道によると,米国務省は,サンタフェ州ロサリオ市を亜における麻薬密売活動の「拠点」と見なしており,同市においては,2013年に264人が,本年には58人が麻薬密売関連の殺人被害に遭っている。ボンファッティ州知事自身も,2013年10月に麻薬密売組織によりロサリオ市の自宅に銃弾を14発撃ち込まれる被害に遭った。当地報道によると,州警察はこの事件をサンタフェ州政府の麻薬密売組織への圧力に対する麻薬密売組織の報復と見ている。

 

(9)放送法改正法(クラリン・グループによる事業分割案)

 

(ア)17日,クラリン・グループが昨年11月4日に提出した,同グループの事業体系を放送法改正法の規定に適合させるべく,所管事業を6つの独立した会社に分割するという自主提案が,連邦視聴覚コミュニケーション・サービス機構(AFSCA)の査定に合格した。これにより,クラリン・グループは,180日以内に自社事業を6つの独立企業体に分割することとなった。

 

(イ)クラリン・グループの自主提案の中では,6つの独立した企業の各代表に誰が就任する予定なのかは明かにされていない。右に関しては,ウノ・メディオスのビラ代表が19日,(放送法改正法の全条項が最高裁により合憲と判断されて以降)マスコミ各社は,放送法改正法の中身に事業形態を適合させるべく,事業の分割等の自主提案を(AFSCAに対して)行ったが,クラリン・グループはウノ・メディオスの提案内容を真似したものの,同グループはウノ・メディオスように,分割後のそれぞれの会社の経営者に誰を就任させるのかを明らかにしていないとし,かかる提案がAFSCAの査定に合格したことから,政府はクラリン・グループと協定を結ぼうとしていると批判した(注:ウノ・メディオスは,分割後の各社の代表に,現在の同グループの株主やビラ代表等の親族を就任させる予定である旨,自主提案の中身に盛り込んだとしている)。

 

(10)鉄道関係

 

(ア)12日,内務・運輸省政令第41号が官報に掲載され,政府はサン・マルティン線,ロカ線及び南ベルグラーノ線の運営権を委託されている半官半民の「緊急時鉄道運営管理団体(UGOFE)」,並びにミトレ線及びサルミエント線の運営権を委託されている半官半民の「ミトレ・サルミエント運営組織(UGOMS)」を解散し,ミトレ線及びサン・マルティン線の運営権をロッジオ・グループに,南ベルグラーノ線及びロカ線の運営権をエメパ・グループにそれぞれ委託することを発表した。ランダッソ内務・運輸大臣は,今次決定につき,乗客のために鉄道サービスの質を向上することが目的であり,鉄道運営の再編の一環であるとした。ここ数年,鉄道事故を繰り返しているサルミエント線に関しては,引き続き,国の運営下に置かれることとなった(注:UGOFEは,メトロポリターノ社が契約不履行により鉄道運営権を取り消された後,2005年に設立された。また,UGOMSはTBA社が契約不履行により鉄道運営権を取り消された2012に設立された。ロッジオ・グループ及びエメパ・グループは,UGOFE及びUGOMSの両組織に所属し,各線の運営を共同で担ってきたが,ランダッソ大臣は,今次決定は,右のような応急措置的な運営体制を解消することを狙ったものであるとした)。

 

(イ)サルミエント線オンセ駅における駅端への列車の衝突事故(注:51人が死亡,700人以上が重軽傷を負った)から22日で2年となり,同日,事故が起きた午前8時32分にサイレンが鳴らされ,遺族等が故人を追悼した。

 

(ウ)26日,サルミエント線に導入される予定の中国製新車両の最初の1編成がブエノスアイレス市の港で披露され,ランダッソ内務・運輸大臣が演説を行った(注:当初はフェルナンデス大統領が出席予定とされていたが,結局出席しなかった)。本年5月までに同型の中国製新車両で構成される残りの24編成が,中国より輸入されることになっている。

 

(11)シオリ・ブエノスアイレス州知事のニューヨーク訪問

 

(ア)シオリ・ブエノスアイレス州知事は,12日朝よりニューヨークにおいて,200以上の企業及び投資ファンドと会合した。当地報道によると,今次訪問の目的は,ブエノスアイレス州と亜の経済情勢について明るい展望を示し,(亜への)投資を招致することであったとされ,また,商業及び金融の世界において,同州知事が自分自身のことを,信頼できる亜の2015年の大統領候補として示すことであったと伝えられた。

 

(イ)報道によると,今次会合に参加したある米ファイナンス企業の幹部は,シオリ州知事は目新しいことは言わなかったが,亜の情勢を説明しに(米国まで)来たことは重要であったとし,「亜政府があまり多くを語らないため,今回の(シオリ州知事との)コンタクトは意味がある」と述べた。

 

(12)2001年12月19日,20日の抗議行動への鎮圧にかかる裁判の開始

 

 24日,デ・ラ・ルーア政権末期の2001年12月19日及び20日に,ブエノスアイレス市内の五月広場において発生した,反政府を訴える抗議運動の鎮圧により5名の市民が死亡し,複数の重軽傷者が出た件につき,連邦裁判所は,起訴された元治安活動長官及び元連邦警察官を含む17名に対する公判を開始した。

 

 

3 外交

 

(1)日本

 

(ア)1月30日から亜を御訪問された秋篠宮同妃両殿下が,2月3日に当地を御出発された。両殿下御滞在中の御動静について,当地メディアは大きく取り上げた(注:両殿下が御出席された行事などの詳細は1月の定期報告に記載済)。

 

(イ)10日付亜外務省プレスリリースは,日本の農林水産省の規則が改正され,低温処理を条件として,今後,亜産スウィートオレンジ(ワシントンネーブル種,ラネラーテ種及びサルスティアーナ種)及びマンダリン(クレメンティン,エレンデール,マーコット及びノバの生果実)の対日輸出が可能になった旨発表した。同プレスリリースは,「2014年2月7日,日本は亜の甘いかんきつ類に国内市場を開放することを承認した。(中略)日本は,これらの亜産かんきつ類に対し,これまで市場を閉ざしていたが,10年前から亜外務省及び亜農畜産品衛生管理機構(SENASA)が共同で市場開放に取り組んできた。日本との交渉の結果,亜産かんきつ類の品質及び国内で実施される衛生管理並びに品質管理の優秀さが漸く認められた。(中略)この日本市場開放は,アルゼンチンで甘いかんきつ類を生産する生産者らにとって(日本という)ハードルが高く且つ大規模な市場へ輸出する可能性を開くものであり,地方の経済,特に北西部及び北東部の所得向上にもつながるものである。亜政府は,亜産かんきつ類が(日本という)重要な市場の消費者の下へ届く可能性が開かれたことに対し,日本国政府の協力に感謝する。この輸入解禁は,確実に両国の利益につながるであろう」と表明した。

 

(2)メルコスール

 

 ベネズエラのカラカスで2月中旬に実施が予定されていた第46回メルコスール首脳会合の延期が決定された。同会合が延期されるのはこれで3回目となる。

 

(3)UNASUR

 

 20日,ロッシ国防大臣は,スリナムにて開催された第5回UNASUR国防大臣会合に出席した。今次会合開催時には,南米国防学校が設立された他,各国国防大臣は,南米防衛委員会(CDS)2014年行動計画を承認した。また,今次会合開催中に,ロッシ国防大臣は,アモリン伯国防大臣,ピンソン・コロンビア国防大臣,ラトゥール・スリナム国防大臣及び,メレンデス・ベネズエラ国防大臣と会合した。

 

(4)ベネズエラ

 

(ア)ベネズエラ政府への支持表明

 

 13日,亜外務省は,12日に同国で発生したデモに関し,亜政府は,ベネズエラ国民によって選挙で選ばれた合憲的な政府に対する明確な支持を今一度表明するとともに,兄弟国(ベネズエラ)において,制度的秩序が直面している明白な情勢不安定化の試みに警鐘を鳴らす旨,ベネズエラ政府を支持するコミュニケを発出した。

  17日,ティメルマン外務大臣は,ハウア・ベネズエラ外務大臣に,同国にて民主主義に基づく政府を壊そうとする試みが行われていることに対する懸念を表明すると同時に,「ベネズエラのマドゥーロ政権を倒そうとする者は,同政府が少し前に実施された選挙にて勝利したことを知らないのだ」と述べた。また,カピタニッチ官房長官,ガレー米州機構(OAS)亜代表部大使等も,ベネズエラ政府に対する連帯を表明した。

 21日,フェルナンデス大統領がブエノスアイレス州フロレンシオ・バレラ市において同市の社会保障プロジェクトに関する演説を行った際,ベネズエラ情勢に関連して,平和と民主主義の尊重は,全世界において,万人のために護られなければならない価値であると述べ,民主主義尊重の重要性を強調した。

 

(イ)ハウア・ベネズエラ外務大臣の来亜

 

 27日,ハウア・ベネズエラ外務大臣は,ベネズエラの現状に関する説明,以前より計画されていたマドゥーロ・ベネズエラ大統領の訪亜に向けた準備を目的に,亜を訪問し,オリーボスの大統領公邸で,フェルナンデス大統領と約1時間に亘り会談した。また,同会談後,ハウア・ベネズエラ外務大臣は,ティメルマン外務大臣と共に,大統領府にて,ベネズエラの現状に関する講演を行った。

 

(5)フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題

 

 英国の週刊誌サンデー・エクスプレスは,「亜政府は,本年の防衛費を33.4%増加させた。右増額は,これまでで最高である」と報じ,英国政府は,亜政府の軍事費増額を懸念していると報じた。右に対し,ロッシ国防大臣は,インフォニュースにて,「亜は,紛争を目的とした防衛政策を行う国ではない。亜の南大西洋に関する政策は明確にされており,国際法の枠組みに従い,対話を求める」旨亜政府の立場を表明した。

 

(6)イラン

 

 5日,当地主要紙の1つであるラ・ナシオン紙は,亜外務省は,イラン政府からの回答が得られないことを理由に,昨年1月27日に署名された1994年亜イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件の解決に向けた二国間覚書の実行に向けての動きを中断したと報じた。右見解の根拠として,同紙は11日に市内ホテルで実施された駐亜イラン臨時代理大使主催のイスラム革命記念日のレセプションに,亜外務省関係者が誰も出席しなかったこと,最近,イランとの同覚書に関する交渉が中断していること,並びにイスラエルから戦闘機を購入する計画が進む等,亜政府のイスラエル政府への接近が見られることを挙げたが,亜外務省は,同覚書に関する交渉は続いている旨発表した。

 

(7)イスラエル

 

 21日,イスラエル政府は,ティメルマン外務大臣に対し,イスラエル訪問の招待状を正式に発出した。また,1992年の在亜イスラエル大使館爆破事件の22年目の追悼式典(注:式典は3月18日。但し,同爆破事件は3月17日に発生)に出席する為,イスラエルより外務次官が訪亜予定である旨発表した。

 

(8)カタール

 

 17日,貿易・投資促進ミッションとして,カタールを訪問したティメルマン外務大臣(ビアンコ外務副大臣(国際経済関係担当)同行)は,同国のエネルギー・産業大臣,環境大臣,経済・貿易大臣との会合を実施した。経済・貿易大臣との会談では,大臣級合同貿易委員会を設立するための合意文書への署名を行った他,エネルギー・産業大臣との会談では,圧縮天然ガス分野での協力の可能性に関し協議した。農業分野については,カタール側より,乾燥地帯における農業生産の為の遺伝子の応用と亜のバイオテクノロジーに対する関心が示された。

 また同日,今次訪問に参加した,飲食料,食料加工機械,ソフトウェア,建設機材,動物用バランス食品に関連する亜の企業家と,35以上のカタール企業との間で,約140の会合が行われた。

 

(9)アラブ首長国連邦

 

 23日,アラブ首長国連邦・ドバイにて開催された食品見本市「Gulfood2014」に出席したティメルマン外務大臣は,亜は食の安全を保証する旨約束すると同時に,世界貿易機関(WTO)に対し,自由市場のみに従事するのではなく,ドーハ・ラウンドで着想を得た開発の精神を取り戻すよう要請する演説を行った。

 

(10)サウジアラビア

 

 26日,亜を訪問したビン・イブラヒム・アル・ヤンダン・サウジアラビア外務副大臣は,第3回亜・サウジアラビア二国間政策協議実施の為,スアイン筆頭外務副大臣と会談し,二国間協力,国連安全保障理事会の改革の必要性等,多岐に亘る二国間・多国間問題に関する協議を行った。

 

(11)中国

 

 エチェガライ亜連邦歳入庁(AFIP)長官及びPeijun中国税関第1次官は,亜中二国間で二国間貿易に関する詳細な情報交換実施を開始することで一致し,24日,2004年より交渉を行ってきた協定への署名を行った。本件に関し,AFIPは,「今次署名により,二国間での海外貿易に関する情報交換が行われることで,両国における法律の正しい適用が保証される」旨コミュニケを発出した。

 

(12)インド

 

 17日〜21日かけて,バラニャオ科学技術大臣はインドを訪問し,17日には,グローバルビジネスフォーラム「BioAsia2014」の開会式に出席した。また,同国閣僚との会合,科学技術センター訪問を実施した後,メンビエル科学技術省国際関係局長と共にニューデリーを訪問した。

 

(13)ボリビア

 

 ボリビアにて死者55名,行方不明者11名を出した洪水の発生に伴い,亜外務省ホワイト・ヘルメット委員会は,被災者キャンプでの援助活動を行う専門家を派遣した。

 

(14)グレナダ

 

 3日から4日にかけて訪亜したスティール・グレナダ外務大臣は,3日,ティメルマン外務大臣と会合し,協力,経済・通商関係を中心とした二国間関係に関する分析を行った他,両国が最近出席したラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)会合の結果を見直した。また,二国間関係に加え,特にカリブ地域の島国に影響を与えている気候変動問題等,グローバル問題についても協議した。今次会合の機会に,ティメルマン外務大臣は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するグレナダからの亜政府への支持に対し,感謝の意を表した。

 

(15)コートジボアール

 

 5日,亜を訪問したディビ・コートジボアール外務大臣は,ティメルマン外務大臣と会合し,農業,牧畜,産業開発,人権分野における二国間協力の可能性に関し協議した。両国外務大臣は,アフリカ及びラテンアメリカ地域の利益を守る為に,国際機関において協働して取り組みを行っていく旨約束した。右会談後,両国外務大臣は,技術協力に関する二国間合意文書への署名をおこなった。また,ティメルマン外務大臣は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関するコートジボアールからの亜政府への支持,特に国連非植民地化委員会における支持に対し,感謝の意を表した。

 

(16)要人往来

 

(ア) 往訪

 

17日〜21日 バラニャオ科学技術大臣のインド訪問(グローバルビジネスフォーラム「BioAsia2014」の開会式出席)
17日〜18日 ティメルマン外務大臣及びビアンコ外務副大臣(国際経済関係担当)のカタール訪問
20日 ロッシ国防大臣のスリナム訪問(第5回UNASUR国防大臣会合出席)
22日 オリベリ外務副大臣(宗務担当)のバチカン訪問(ポリ・ブエノスアイレス大司教の枢機卿への任命式列席)
23日 ロペス金融長官のオーストラリア訪問(G20諸国経済大臣および中央銀行総裁会合出席)
23日 ティメルマン外務大臣のアラブ首長国連邦訪問(食品見本市「Gulfood2014」出席)
26日

ロッシ国防大臣のハイチ訪問(国連ハイチ・ミッションに参加する亜部隊を訪問)

28日 キシロフ経済・財政大臣のブラジル訪問

 

(イ)来訪

 

(以下の日程で下記要人が当地で会談等を実施したとの情報あり)

 

4日 スティール・グレナダ外務大臣
5日 ディビ・コートジボアール外務大臣
26日 ビン・イブラヒム・アル・ヤンダン・サウジアラビア外務副大臣