アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
平成29年11月22日
アルゼンチン政治情勢(2017年10月)
2017年11月作成
在アルゼンチン日本大使館
在アルゼンチン日本大使館
1 内政
(1)大統領府・政府:
ア 連邦議会中間選挙:暫定結果
(ア)22日に当国で議会中間選挙(上院3分の1及び下院2分の1の議席の改選)が大きな混乱もなく実施された。23日付当地主要紙の報道に基づく暫定結果によれば,与党カンビエモスが,ブエノスアイレス州,ブエノスアイレス市,コルドバ州,サンタ・フェ州及びメンドーサ州の5大都市全てで得票率1位を獲得。また従来ペロン党が強かったサンタ・クルス州等を含む全国24選挙区の内,計13選挙区でも得票率1位を獲得し,全国レベルでも勝利した。
(イ)連立与党は,上院では15から24議席へ(全体の3分の1程度),下院では86から107議席へと(全体の約4割)と大幅に議席数を伸ばすと共に,両院で第一党に躍り出た。
(ウ)今回最も注目された選挙区であるブエノスアイレス州の上院議員選挙において,連立与党カンビエモス(ブルリッチ候補(前教育大臣))が,41.37%で得票率1位となり,フェルナンデス前大統領が率いる市民団結に4.12ポイント差で勝利した。
(エ)なお,全国的にみれば,下院議員選挙区については依然としてペロン党系が24州中9州において得票率1位を獲得,前政権のキルチネル派と穏健派などに分離しているものの,ペロン党としては相応の議席(過半数弱)を維持した。
イ マクリ大統領の演説
30日,先般の中間選挙で勝利したことを踏まえ,マクリ大統領は各界代表者を前に,今後,様々な改革を行っていくために,国民の同意を求めたいとして,約43分に及ぶ演説を行った。その中で,貧困対策,雇用創出,財政均衡の確保の前進のために「基本的な合意(consensos basicos)」が必要であるとし,各セクターとの対話に向け,以下の3つの柱,(1)財政責任・インフラ対策,(2)雇用創出策,(3)公的機関の質の向上について改革を進めていきたいとした。
(2)司法・検察:
ア ブドゥー前副大統領の不正蓄財容疑
3日,ブドゥー前副大統領が関与したとされるチコーネ社の買収を巡る汚職疑惑について,公判プロセスが開始。(11月3日,政治力を行使し,捜査を妨害する恐れがあるとして,上記の一連の不正蓄財容疑で同前副大統領は逮捕された)。
イ カルボ検事総長の辞任発表
12日,エルコリーニ連邦判事はヒルス・カルボ検事総長が検察庁の建物購入を巡って,知人に便宜を図る目的で不正を働いたとされる疑惑に関し,同検事総長の訴追を行った他,700万ペソの差押さえを命じた。
20日,連邦裁判所行政訴訟予審部は,検事総長を解任する場合に「政治的判断(juicio politico:国会での議決)」を必要とするとする現下の法律が違憲との判決を下し,これなしに検事総長を解任する道を開いた。これを受け,30日,カルボ検事総長は本年12月31日で辞任する旨のマクリ大統領宛て書簡を提出し,同大統領はこれを受理。なお,新検事総長の任命については,政府が提案する候補者について,上院議会で3分の2以上の承認後,任命されることとなる。
ウ デ・ビード前連邦企画・公共投資・サービス大臣の逮捕
25日,前政権時の液化天然ガス(2008~2015年)輸入に関する不正購入疑惑及びリオ・トゥルビオ炭鉱資金(2005~2015年)に関する公金横領疑惑に関連し,下院議会は,同前大臣に対する不逮捕特権剥奪に関する弾劾請求を可決した。これを受け,同日,デ・ビード前大臣は,裁判所に自ら出頭し,その場で逮捕された。なお,その後,同大臣は健康上の問題(糖尿病)から,刑務所病院に移送された。
エ フェルナンデス前大統領の予審尋問:AMIA爆破テロ事件に関するイランとの密約疑惑
26日,1994年のイスラエル共催組合(AMIA)爆破テロ事件に関するイランとの密約に関与したとする疑惑に関し,フェルナンデス前大統領は,連邦裁判所の予審尋問に出頭した。同前大統領は,連邦判事の問いに答えることなく,書面回答の提出を行った。
2 外交
(1)米国:
ア オバマ前米大統領のアルゼンチン訪問
6~7日,オバマ前米大統領がアルゼンチンを訪問した。6日,オバマ前大統領はコルドバ市で開催された第2回グリーン経済国際会議に出席した他,同日夜,首都ブエノスアイレスにおいて,企業家等との懇談を行った。翌7日午前中,オバマ前米大統領はマクリ大統領と共に,ブエノスアイレス市内においてゴルフをプレイした。
イ マクリ大統領とトランプ米大統領の電話会談
18日午後,マクリ大統領はトランプ米大統領と約15分間の電話会談を行った。マクリ大統領はトランプ米大統領に対し,亜産バイオディーゼルの対米輸出の再開,亜産牛肉の対米輸出及び一般特恵関税制度(GSP)の再加入についても,要請を行った。また両首脳は,ベネズエラの政治的危機についても議論を行うと共に,トランプ米大統領は,マクリ大統領による経済改革の取組みを称賛した。
ウ 亜産バイオディーゼルに対するアンチダンピング関税の引上げ
23日,米国は,亜産バイオディーゼルに対して54.36~70.05%のアンチダンピング関税を課すことを決定した。同措置は,マクリ大統領がトランプ米大統領と電話会談を行った5日後に決定された。
エ 米亜友好議連グループの創設
11日付亜外務省プレスリリースは,米議会における米亜友好議連グループが創設された旨発表した。
(2)カナダ:
ア 亜産鶏肉のカナダ輸出の開始
6日,カナダ食品検査庁(CFIA)は,亜産鶏肉のカナダ輸出の船積み証明に対する衛生要件が承認された旨発表した。
イ フォリー外務大臣のカナダ訪問
26日,フォリー外務大臣はトロントにおいて開催された第3回リマ・グループ会合出席のため,カナダを訪問した。また,この機会に,フリーランド・カナダ外相とバイ会談を行った。同会談において,二国間及び地域,特にベネズエラ情勢等について話し合いを行うと共に,二国間の経済関係を引き続き強化していくことで合意した。また,メルコスール・カナダの自由貿易協定交渉の開始に向けた確固たる進捗について祝意を表明した。
(3)ロシア:政策協議の実施
12日,当地において,亜・ロシア政策協議が実施された。亜側からはライモンディ筆頭外務副大臣が,露側からは,リャプコフ(Ryabkov)外務次官が出席した。両国の貿易・投資機会,文化・教育協力,原子力エネルギーの平和的利用,宇宙,南極,議会交流等の分野や総合的戦略的パートナーシップ(Asociación Estratégica Integral)の枠組における二国間関係の強化等について話し合いが行われた。また,ラブロフ・ロシア外相の招待によるフォリー外務大臣の11月のロシア訪問についても言及された。
(4)スイス:政策協議の実施
12日,当地において,亜・スイス政策協議が実施された。亜側からはスラウビネン外務次官が,スイス側からはBenedicto de Cerjat外務省副大臣(米州担当)代理が出席した。両者は,マクリ大統領の就任以来,本年4月のロイタード・スイス連邦大統領の訪亜等,両国の要人往来に代表される良好な二国間関係につき強調すると共に,貿易・投資の増加,インフラ,科学技術及び三角協力,汚職対策,司法協力,文化,人権問題に関する多国間協力,亜のOECD加盟の希望,G20等様々な分野について話し合いを行った。
(5)クロアチア:政策協議の実施
24日,当地において亜・クロアチア政策協議が実施された。亜側からはライモンディ筆頭外務副大臣が,クロアチア側からは,ブシッチ(BUSIC)外務・欧州問題省副大臣が出席した。クロアチア副大臣のアルゼンチン訪問は初。両者は,1992年の外交関係樹立以来の両国の重要な関係につき強調すると共に,貿易・投資の拡大等への取組み,メルコスール・EU交渉プロセスの重要性,両国のOECD加盟希望プロセスに関し,意見交換を行うと共に,気候変動,人権問題等国際会議における協力の可能性についても話し合われた。また,文化協力プログラムの交渉を進めていくことで合意した。
(6)バチカン:ブルリッチ前教育大臣のバチカン訪問
26日,ブルリッチ前教育大臣は,ローマ法王により導入された児童のための学校関連行事の枠組でバチカンを訪問し,ローマ法王と会談を行った。その中で,2018年のローマ法王の中南米訪問の際にアルゼンチンを含める旨検討を求めた由。
(7)ベネズエラ:ベネズエラ情勢に関する第3回リマ・グループ会合
26日,カナダのトロントにおいてベネズエラ情勢に関する第3回リマ・グループ会合が開催され,亜からフォリー外務大臣が出席した。この中で,10月15日に実施されたベネズエラ地方選挙において,妨害,威嚇,操作,社会的強制,投票制限等の不正行為が認められたことに対し,改めて拒絶の意を表するとの内容を含む共同宣言が発出された。
(8)ウルグアイ:マクリ大統領のウルグアイ訪問
18日,マクリ大統領は世界保健機関の非感染症疾患に関する国際会議ハイレベルセグメントに出席するためウルグアイを訪問した。同会合には,カルテス・パラグアイ大統領,バチェレ・チリ大統領及びテドロスWHO事務局長等が出席した。
(9)メルコスール:
ア メルコスール・EU自由貿易協定交渉
2~6日,ブラジリアにおいてメルコスール・EU自由貿易協定交渉会合が行われた。メルコスール側は,EU側が提示した牛肉の輸出枠オファーが不十分として,両ブロックでの合意には至らなかった。次回会合は11月6日(於:ブラジリア),最終ラウンドは12月初旬(於:ブリュッセル)に予定されている。
イ カナダとの自由貿易協定交渉開始
9日,ニュネス伯外相は,メルコスールがカナダとの自由貿易交渉を開始することで合意した旨発表した。同伯外相は,マラケシュで行われたWTO非公式閣僚会合の機会にて,シャンパーニュ加・国際貿易大臣と会合を行ったもの。
ウ メルコスール・EFTA自由貿易協定交渉
17日及び18日,当地において,第2回メルコスール・EFTA交渉が行われ,双方の関心事項の明確化及び短期間で協定署名を実現するための交渉方法が策定された。次回交渉は,2018年4月に予定されている。
(10)WTO:カブレラ工業生産大臣のモロッコ訪問(WTO非公式閣僚会合への出席)
8日,カブレラ工業生産大臣は,マラケシュにおける,(本年12月10~13日に当地で開催される)第11回WTO閣僚会議に向けたWTO非公式閣僚会合に出席した。また,亜からマルコーラMC11議長(前外務大臣)の他,レイセル外務副大臣等が出席した。
(11)IDB/世銀:
ア カプート金融大臣及びドゥホブネ財務大臣の米国訪問
10日,カプート金融大臣は,NYにおいて,シティ・グループCEOのマイケル・コルバット氏と亜における投資の可能性について話し合った。翌11日,IDB理事である同大臣は,ワシントンにおいて,第9回IDB米州・カリブ地域金融大臣会合の議長を務めた他,マヌーチン米財務長官とベネズエラの政治・経済危機等について話し合った。また,12日,同大臣はキム世銀総裁とも会合を行った他,国際金融公社(IFC)及びアジアインフラ投資銀行(AIIB)関係者らと亜の公共事業投資へのファイナンスの可能性にいても話し合いを行った。また,11日,ドゥホブネ財務大臣はワシントンにおいて,世銀・IMF理事会会合に出席した。
イ IDBのアグア・ネグラ・トンネルへの融資承認
17日,IDBは亜とチリを結ぶアグア・ネグラ・トンネルの建設工事に対し,亜へ1億3千万米ドル,チリへ1億5千万米ドルを融資する旨承認した。今回の亜に対する融資の償還期間は25年(内,据置期間は4年半)で,チリの融資の償還期間は11年(内,据置期間は10年)となっているが,IDBからの融資は,同プロジェクトの建設費用である最大15億米ドルまで引き上げられる可能性がある由。
(12)国際刑事警察機構(INTERPOL):孟宏偉INTERPOL総裁のアルゼンチン訪問
26日,マクリ大統領は,孟宏偉INTERPOL総裁と会談を行い,多国籍組織犯罪及びテロ対策等について話し合いを行った。孟総裁は,亜の連邦警察は中南米の中でも優秀な組織であるとして同警察の役割につき強調した。また,同会談に同席したブルリッチ治安大臣は,組織犯罪対策へのINTERPOLの協力が必要である旨言及した。
(13)サッカー・ワールドカップ:2030年サッカーW杯3ヶ国共同立候補の正式表明
4日,マクリ大統領は,大統領府において,バスケス・ウルグアイ大統領,カルテス・パラグアイ大統領と共にインファンティノFIFA会長と会談を行い,2030年サッカー・ワールドカップへ,亜,ウルグアイ及びパラグアイの3ヶ国共同立候補を正式表明した。
(14)要人往来
ア 往訪
●2~3日: フォリー外務大臣の仏(パリ)訪問(OECD開発センター・ハイレ
ベル会合(HLM))への出席)
●8日: カブレラ工業生産大臣のモロッコ訪問(WTO非公式閣僚会合への出
席)
●10~12日:カプート金融大臣及びドゥホブネ財務大臣の米国訪問
●18日: マクリ大統領のウルグアイ訪問
●26日: フォリー外務大臣のカナダ訪問
●26日: ブルリッチ前教育大臣のバチカン訪問
イ 来訪
●4日: バスケス・ウルグアイ大統領,カルテス・パラグアイ大統領
●6~7日: オバマ前米大統領
●26日: 孟宏偉INTERPOL総裁
(了)
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