アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2023年11月)
※肩書はすべて当時。
1 内政
(1)大統領選挙
●決選投票候補者討論会(12日)
12日、大統領選挙決選投票に向けた候補者討論会が行われ、マサ候補(与党連合)とミレイ候補(野党「自由の前進」)が、自身の政策提言を行い、経済、外交政策、教育、保健等のテーマにつき議論した。
●大統領選挙決選投票(19日)
19日、大統領選挙決選投票が行われ、ミレイ候補が55.65%、マサ候補が44.35%の得票率をそれぞれ獲得し、ミレイ候補が当選した。同候補は、勝利演説で、「今日、退廃が終焉を迎え、亜の復興が始まる。今日、国家は政治家とその友人たちの間で分配される戦利品であるという考えは終わった。亜の明るい未来は、リベラルであれば可能だ。亜の状況は危機的だ。漸進主義や中途半端な対策の余地はない」と述べた。また、決選投票後、海外市場で亜銘柄の株価が平均で20%上昇し、亜国営石油公社(YPF)の株価は40%程度急騰した。
(2)新政権への移行
●新旧大統領会談(21日)
21日、ミレイ次期大統領は、フェルナンデス大統領と大統領公邸で会談し、政権移行に向け協議した。本会合では、国内外の様々な議題につき協議し、新旧政府が連携した政権移行チームを発足させることで合意した。
また、22日には、クリスティーナ・フェルナンデス(CFK)副大統領が、ビジャルエル次期副大統領と会談し、政権移行及び議会運営に関し協議したほか、議会等の視察を行った(注:副大統領は上院議長職を兼任)。
●連邦議会による大統領任命(29日)
29日、ミレイ次期大統領及びビジャルエル次期副大統領は、CFK副大統領兼上院議長が議長を務める亜連邦議会により大統領及び副大統領に任命された。これは、上下院議員を集めて行う形式的な任命であり、12月10日の大統領就任式における宣誓式を以て正式に就任する。
(3)ミレイ候補当選後の各政治勢力の動向
●フランコス次期内相とペロン党所属州知事等の会合(28日)
28日、フランコス次期内相は、ペロン党に所属する各州知事等の会合に参加し、フェルナンデス政権の所得税の撤廃等の措置が、政権交代後各州の財政運営に与える影響等に関し協議した。
●変革のために共に(JxC)所属州知事及び議員の会合(28日)
28日、変革のために共に(JxC)に属する各州知事及び国会議員がブエノスアイレス市内で会合を開き、会談後の記者会見で、JxC全体としてはミレイ次期政権との連立を形成しないことを発表した。
2 外交
(1)要人往来(首脳級)
●ミレイ次期大統領の訪米(26~29日)
ア 26~29日、ミレイ次期大統領はカリーナ・ミレイ氏(次期大統領の妹、次期大統領府長官)、ポセ次期内閣官房長官、カプート次期経済大臣、スタンレー駐亜米大使他と米国(ニューヨーク及びワシントン)を訪問し、クリントン元大統領、ドッド大統領特使(元上院議員)と会談したほか、ホワイトハウスでサリバン大統領補佐官及びゴンザレス大統領特別補佐官兼国家安全保障会議(NSC)上級部長(西半球担当)とも会談を行い、IMFとの交渉に焦点を当てつつ、亜の危機的な経済状況につき議論した。
イ ポセ次期内閣官房長官、カプート次期経済大臣は、別途、米財務省及びIMF関係者とも会合した。
(2)要人往来(閣僚級)
●モンディーノ次期外相候補の訪伯(26日)
26日、モンディーノ次期外相候補は伯を訪問し、ヴィエイラ伯外相と会談した。同次期外相候補は、同外相に、ルーラ伯大統領に対する大統領就任式への招待状を手交した。同次期外相候補は、会談後の記者会見で、本会合では、二国間関係やEU・メルコスールFTA等に関し協議したが、亜のBRICS加盟には話が及ばなかった旨述べた。
(3)次期大統領選出に係る各国の対応
●大統領候補に対する国際的な支持(7日~)
7日以降、サンチェス西首相、ルーラ伯大統領、ロペス・オブラドール墨大統領、ムヒカ・ウルグアイ元大統領は、マサ候補に対する支持を相次いで表明し、ミレイ候補には強い批判を表明した。同墨大統領は、「亜のミレイはファシズム主義者であり、教皇にも反対する超保守主義者」と批判した。一方、マクリ前大統領、カルデロン元墨大統領、ドゥケ前コロンビア大統領、ラホイ前西首相、ピニェラ前チリ大統領等はミレイ候補に対する支持を表明した。
●ミレイ候補当選後の各国要人による電話会談及び電話による祝意伝達
ア ミレイ次期大統領は、決選投票での当選後、バイデン米大統領と電話会談し、亜のエネルギー・食料分野につき協議したほか、イスラエル・パレスチナ情勢に関しても意見交換を行った。トランプ前米大統領、ボルソナーロ前伯大統領とはビデオ通話を行った。
イ その他電話で祝意を表明した各国要人は以下のとおり。
(ア)首脳級:ヘルツォグ・イスラエル大統領、ゼレンスキー・ウクライナ大統領、ユン韓国大統領、マクロン仏大統領
(イ)閣僚級:キャメロン英外務・開発相、メローニ伊首相
(ウ)その他:教皇フランシスコ。
●ミレイ候補当選に対する祝辞書簡、祝電の送付
ミレイ次期大統領に対し、プーチン・ロシア大統領は祝電を送付した。また、習近平中国国家主席は、Wang Wei駐亜中国大使経由で祝辞書簡を送った(中国は別途、報道官記者会見でミレイ次期大統領に祝意及び亜との友好関係継続の意向を表明した)。
●ミレイ候補当選に関するXへの投稿
ミレイ候補当選に際し、X上に投稿した主要国及び国際機関関係者は以下のとおり。
ア 首脳級:ハチャトゥリャン・アルメニア大統領、モディ印首相、ラカジェ・ポウ・ウルグアイ大統領、ラッソ・エクアドル大統領、ペトロ・コロンビア大統領、ボリッチ・チリ大統領、コルティソ・パナマ大統領、ペーニャ・パラグアイ大統領、ルーラ伯大統領、ボルアルテ・ペルー大統領、
イ 閣僚級:ブリンケン米国務長官、サリバン米国家安全保障担当首席大統領補佐官、キャメロン英外務・開発相、ラトリー英外務・開発省米州・カリブ担当政務次官、ボレルEU上級代表、オルバン・ハンガリー首相、
ウ その他:トランプ前米大統領、アバスカル西極右政党VOX党首、ピニェラ前チリ大統領、ボルソナーロ前伯大統領、マチャド・ベネズエラ野党「ベンテ・ベネズエラ党」大統領候補、ゲオルギエバIMF専務理事
●ミレイ候補の当選後のマルビーナス諸島(ママ、以下同)を巡る応酬
ア 20日、スナク英首相は、報道官を通じ「G20のメンバーとして、また実りある貿易関係を有する国として、強力で生産的な関係の発展を期待する」とミレイ候補の当選に祝意を表した一方、英政府にとり、フォークランド諸島の問題は既に解決済の問題であり、英の立場を見直す予定はないと強調した。
イ 21日、亜外務省は、上記アの発言に抗議する声明を発出した。右声明では、亜政府はこのような表現を拒否するとともに、同諸島の領有権に関し亜英間に紛争が存在していることは、1965年の国連総会決議2065(XX)によって認識されており、その後の右総会及び脱植民地化特別委員会等様々な場所で幾度となく繰り返されていること、及び民主化以降の40年の歴史の中で、亜政府は英国に対し二国間交渉再開を要求し続けていることを強調した。
(4)イスラエル・パレスチナ情勢
●ハマスの攻撃に関する亜政府の対応(7~8日)
ア 1日、亜外務省は、ガザ地区におけるイスラエル軍の難民キャンプ攻撃を非難する声明を発出。上記声明に対し亜イスラエル協会(DAIA)が亜の対応を非難する抗議文を発表。同日、ペロン党所属の上院議員が自身のXアカウントで、ハマスを非難し、自衛権を行使するイスラエルへの絶対的支持を表明する内容を投稿、マサ候補が右投稿をリポストした。
イ 2日、カフィエロ外相は、スポリアリッチ国際赤十字委員会(ICRC)総裁と電話会談を行い、ガザ地区におけるアルゼンチン人の人質の即時且つ無条件の解放の必要性を確認した。また、野党「自由の前進」のモンディーノ次期外相候補は自身のXに「国民と領土を守るために自衛権を行使するイスラエルへの絶対的な支持を確認する。ハマスと交渉の余地はない」と投稿、ミレイ候補がこの投稿をリポストした。
ウ 7日、亜政府が国際協力人道支援庁(ホワイトヘルメット)を通じて支援物資を送付した(翌8日にエジプト着)。これらの支援物資は、浄水剤40万錠、消毒剤5万7600セット、各種医薬品、医療キット、粉ミルク、各種衣料品及び靴等が含まれる。
エ 24日、亜外務省は、カタールによる調停及びエジプト・米国の調整に謝意を表し、右の帰結としての停戦、及びそれに伴うハマスの人質解放開始及び国際人道援助の受け入れ増加を歓迎するとともに、ガザ地区にいる全ての人質の解放を改めて要請した。
オ 27日、亜政府は、人質となっていた亜国籍の6名の解放を歓迎した。
(5)対中動向
●アルゼンチン・上海ビジネス投資フォーラムの開催(14日)
14日、亜外務省で「アルゼンチン・上海ビジネス投資フォーラム」が開催された。右フォーラムでは、中国貿易促進委員会と亜投資国際貿易庁の間で、貿易と生産投資の促進に関する協力及び活動についての覚書が署名された。
(6)要人往来一覧
ア 往訪
米国:ミレイ次期大統領、ポセ次期内閣官房長官、カプート次期経済相
伯:モンディーノ次期外相
イ 来訪
なし
(了)
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