政治情報
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2010年4月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)

2010年5月作成
在アルゼンチン大使館

 


I 概要


(1)内政面では,下院本会議において,外貨準備を用いた「債務削減基金」の創設を定める緊急大統領令の無効決議案が可決された。また,上院本会議において,マルコ・デル・ポント中銀総裁の同意人事案が可決された。更に,上院本会議において,金融取引税改正法案が審議・採択されたが,同法案の可決如何を巡り,可決されたとみなす野党と未可決であるとみなす与党が対立した。


(2)外交面では,フェルナンデス大統領が,核セキュリティ・サミットに出席するため訪米し,オバマ米大統領と初の二国間会談を実施したほか,潘基文国連事務総長及び胡錦濤中国国家主席とも会談した。また,メドヴェージェフ露大統領が訪亜し,露大統領の初の訪亜となった。更に,ムヒカ・ウルグアイ大統領,ピニェラ・チリ大統領等も訪亜した。

 

II 内政


1 外貨準備を用いた基金創設を巡る動き


(1)7日,上院本会議及び下院本会議において「債務削減基金」創設を定める緊急大統領令の是非につき審議される予定であったが,両院ともに,与党側が審議を拒否して欠席し,野党側も定足数を満たせず,それぞれ延期となった。


(2)3月1日の通常国会開会以降,定足数割れにより,上院本会議開催に至らない状態が継続していたところ,8日,コボス副大統領(上院議長)は,憲法及び上院議会細則に基づき,全国紙2紙において,7日の上院本会議に欠席した議員36名の氏名を掲載し,14日に開催予定の上院本会議への出席を呼びかけるとともに,今後本会議に欠席した議員には20%の減給処罰を課す旨決定した(12日付クラリン紙及び13日付アンビト・フィナンシエロ紙に掲載)。


(3)13日,反キルチネル勢力により定足数が満たされ,下院本会議(特別セッション)が開催され,外貨準備を用いた「債務削減基金」の創設を定める緊急大統領令の無効決議案が審議され,14日未明,賛成140票,反対93票,棄権6により可決された。なお,同大統領令が無効となるためには,今後上院での可決が必要となる。


(4)21日,上院の予算委員会及び経済委員会の合同委員会からの要請に応じ,ブドゥー経済相,ペッシェ中銀副総裁,レドラド前中銀総裁等が同合同委員会に出席し,外貨準備を用いた債務返済に関する質疑に応答した。ブドゥー経済相は,同委員会での質疑に応え,同基金の資金のうち,既に11億米ドルを債務返済のために使用した旨説明した。


(5)27日,上院の経済委員会,予算委員会及び地方交付金委員会の合同委員会が開催され,28日,外貨準備を用いた「債務削減基金」の創設を定める緊急大統領令とほぼ同内容の法案(ベルナ上院議員(ペロン党)提出)を承認する意見書が採択された。なお,与党側は,合同委員会開催前に,同法案に,「外貨準備を用いた「債務削減基金」の創設を定める緊急大統領令は,本法案が上下両院で採択された後に廃止される」旨の条項を加えた由。

 

2 金融取引税改正法案を巡る動き


(1)6日,フェルナンデス大統領は,3月29日に州知事17名との会合を行ったのに引き続き,野党州知事4名(リオス・ティエラデルフエゴ州知事(共和国平等党),ビネル・サンタフェ州知事(社会党),ブリスエラ・カタマルカ州知事(急進党)及びコロンビ・コリエンテス州知事(急進党))を大統領官邸に招き,昼食会を開催した。同昼食会において,フェルナンデス大統領は,地方交付金の安定的かつ公平な分配を実現するための施策として,「社会公平基金」創設に関する審議の実施を提案したほか,2011年に金融取引税を廃止する可能性につき再び言及した由。


(2)7日,上院本会議において,金融取引税改正法案の審議が予定されていたが,野党側は,メネム上院議員の欠席により定足数を満たすことができず,延期となった。


(3)14日,ボルトロシ議員(キルチネル派,フォルモサ州選出)が,与党側の働きかけにも拘わらず突如出席したことにより,定足数37議席に達し,上院本会議が開催された。上記本会議では,金融取引税改正法案が審議され,翌15日未明に行われた採決結果は賛成35票,反対33票であり,野党側は可決されたとみなした。一方,与党側は,憲法第75条により,地方交付金に関する法律改正のためには上下両院において全所属議員の過半数による賛成(上院では37票)が必要である旨定められているため,今次採決で可決されたとみなされない旨主張した。それに対し,野党側は,憲法第75条の規定の趣旨は,政府への配分の増加等地方の収入を脅かす場合には,上下両院における全所属議員の過半数の賛成が必要であると定めたものであり,今般の改正のように,地方への配分を増額する等地方に有利に改正する場合には,出席議員の過半数の賛成で可決される旨主張した。


(4)15日,フェルナンデス大統領は,全州知事との会合を行うべく,6日に引き続き,残りの反キルチネル派州知事3名(ロドリゲス・サア・サンルイス州知事(ペロン党反キルチネル派),ダス・ネベス・チュブット州知事(ペロン党反キルチネル派)及びマクリ・ブエノスアイレス州知事(共和国提案))を大統領官邸に招き,昼食会を開催した。同昼食会において,フェルナンデス大統領と各州知事は,2011年以降,「社会公平基金」の創設を通じた地方交付金の増額につき協議を行うことで合意に至った由。


(5)16日,コボス副大統領(上院議長)は,金融取引税改正法案が上院で可決されたとし,同法案を下院に送付した。フェルナンデス大統領は,コボス副大統領による同判断は憲法違反であるとし,同副大統領を,賭博場の胴元補佐であるとして批判した。また,エベ・デ・ボナフィニ「五月広場の母」代表(注:軍政期に行方不明となった子供の行方の解明を要求している人権団体の内,キルチネル派組織)は,コボス副大統領に対する弾劾裁判を要請した。一方,野党側は,サンス急進党党首がコボス副大統領に対する急進党の全面的支持を表明したほか,カリオ市民連合代表等も同副大統領を支持する旨表明した。また,フェルネル下院議長に対し,与党側は,金融取引税改正法案を上院に差し戻すよう要請する一方,野党側は,同法案の下院での審議を要請した。


(6)21日,「クロニスタ」紙,「アンビト・フィナンシエロ」紙等にキルチネル派
の州知事14名の連名による,「憲法秩序及び民主主義秩序を侮辱する行為であり,連邦制のセーフガードに対する危険な前例である上院での今次可決判断を拒絶する。」旨記された抗議文書が掲載された。


(7)21日,フェルネル下院議長は,16日に上院から送付のあった金融取引税改正法案につき,上院で未可決であるとして,上院に差し戻した。しかし同日,コボス上院 議長(副大統領)は,受理することなく即座に同法案を下院に再送付した。フェルネル下院議長は,同法案の上院での可決を無効とした一方,最終判断を28日に予定されている下院本会議に委ねるとした。


(8)28日,下院本会議において,金融取引税改正法案が審議される予定であったが,与党側は出席を拒否し,野党側も定足数を満たすことができず,審議は延期となった。

 

3 マルコ・デル・ポント中銀総裁の同意人事を巡る動き


(1)1月7日,政府は政令を通じて,レドラド中銀総裁の後任として,マルコ・デル・ポント・ナシオン銀行総裁を中銀総裁に任命した。同任命には上院の同意が必要であるため,同人は,上院で同意されるまでの間,臨時に中銀総裁を務めることとなった。


(2)7日,上院本会議において,マルコ・デル・ポント中銀総裁の同意人事案が審議される予定であったが,定足数に満たず,延期となった。


(3)14日,上院本会議が開催された。上記本会議において,マルコ・デル・ポント中銀総裁の同意人事案が審議され,賛成35票,反対33票,棄権1により可決された。


(4)22日付官報に,マルコ・デル・ポント氏の中銀総裁任命大統領令が掲載され,発効した。

 

4 緊急大統領令規則法改正法案を巡る動き


 21日,下院本会議で,緊急大統領令の発出に制限を加えるための緊急大統領令規則法改正法案が審議され,賛成142票,反対98票により可決された。同法案成立のためには,今後上院での可決が必要となるが,与党側は,上院で可決された場合には,フェルナンデス大統領が拒否権を発動する見込みである旨示唆した。なお,同法案の主な改正点は以下のとおり。


(1)現行法は,緊急大統領令が,上下両院の双方に拒否された場合にのみ無効(上院・下院の何れかが承認すれば有効)と定めているのに対し,今次改正法案は,上下両院の双方が60日以内に承認した場合に限り有効と定めている。


(2)現行法は,発効済みの緊急大統領令が後日議会によって無効と判断された場合,無効と判断されるまでの間に得られた権利については遡及的効果を持たない旨定めているのに対し,今次改正法案は,遡及的効果を持つと定めている。

 

5 緊急大統領令等を扱う両院常設委員会の構成を巡る動き


(1)3月17日,ラビエ・ピコ連邦判事(行政訴訟担当)は,与党キルチネル派上院議員からの提訴を受け,緊急大統領令等を扱う両院常設委員会の構成につき,上院側の新構成(与党側3名、野党側5名)を定めた上院議長令の効力を一時停止し,以前の上院議長令により定められていた構成(与党側4名、野党側4名)に戻し,アルペロビッチ上院議員(与党側)を委員会メンバーに復帰させるよう命じる仮処分を下した。


(2)3月19日,コボス上院議長(副大統領)は,上記仮処分を不服とし,連邦行政高等裁判所に控訴していた。


(3)29日,連邦行政高等裁判所は,ラビエ・ピコ連邦判事による上記(1)の判決と同様の判決を下した。今次判決につき,コボス上院議長(副大統領)は,上告しない意向を示した。

 

6 司法を巡る動き


(1)8日,アラク司法相は,判事に定期的試験を課すとするロッシ下院議員提出法案に対する政府の支持を表明した。


(2)12日,ロレンセッティ最高裁長官は,判事に定期的試験を課すとする上記法案に反対の意を表明し,判決は裁判当事者,報道及び社会全体によって十分にコントロールされている旨述べた。


(3)12日,クンケル下院議員(キルチネル派)は,司法審議会において,「75歳以上の現役判事は15名存在する。上院での特段の判断がなされない限り,判事の定年を75歳と定める憲法第99条第4項の遵守を要請する。」旨述べた。なお,2000年,最高裁は,憲法第99条第4項につき,1994年の憲法改正時,事前に議会で可決された改正項目を定める法律に,判事の定年については含まれていなかったことから,違法に挿入されたものであるとの判決を下している。

 

7 放送法改正法を巡る動き


(1)5日,政府は,3月25日の連邦裁判所(メンドサ州)による,放送法改正法の効力停止判決を受け,最高裁に上告した。


(2)22日,ボルトロシ下院議員(キルチネル派,フォルモサ州)は,自身も賛成票を投じて可決した放送法改正法につき,再改正法案を提出した。同再改正法案には,移行期間の現行1年から10年への引き延ばし,行政府による放送ライセンス供与の禁止等が盛り込まれている由。野党側は,放送法改正法については司法による判断を待つ必要があるとしながらも,ボルトロシ下院議員提出の再改正法案を歓迎している由。


(3)30日,最高裁は,政府による本件上告を受理した。フェルナンデス大統領は,「法律の効力が司法の仮処分により妨げられるようなことがあってはならない。(最高裁が本件を迅速に処理し,)同法がいち早く効力を発することを望む。」等述べた。

 

8 メディアに対する批判


(1)4月中旬,クラリン・グループ所有のメディアにおいて活動している著名なジャーナリスト12名の写真を氏名入りで掲載するとともに,「多数のメディアを所有する者のために働きながら,独立したジャーナリストとなり得るだろうか。」等の文言を掲載した作成者不明のポスターが街中に出現した。


(2)野党関係者等は,政府が上記ポスター作成に関与していた可能性がある旨示唆したのに対し,与党関係者は同可能性を否定した。29日,主に野党の下院議員は,上記ポスターで批判の対象となったジャーナリストへの連帯を表明した。


(3)29日,エベ・デ・ボナフィニ「五月広場の母」代表を始めとする「五月広場の母」約200名は,大統領府前で民衆法廷を開催し,クラリン・グループを始めとする複数のメディアやジャーナリストを,「最後の軍事政権と共謀関係にあり,国家反逆罪の罪を犯した。」として批判した。


(4)30日,フェルナンデス大統領は,政府が表現の自由を保障していることを表明するとともに,報道の独占,及び放送法改正法の施行を阻む判決を批判した。

 

9 軍政期の人権侵害


 27日,最高裁は,1990年にメネム大統領(当時)が,軍政期の人権侵害に関与した疑惑のあるビデラ元大統領(元将軍),マルティネス・デ・オス元経済相及びアルギンデグイ元内相に対して付与した恩赦を違憲とする旨の判決を下した。

 

10 社会闘争


(1)6日,反キルチネル派ピケテロ・グループ(Movimiento Barrios de Pie等)は,ブエノスアイレス州各市,コルドバ州,ロサリオ州,メンドサ州,ネウケン州等において抗議デモを行い,食料品の物価上昇に抗議するとともに,雇用創出プログラムへの平等な参加や子ども扶養手当の適切な支払いを要求した。また,29日にも,ブエノスアイレス州において,同様の抗議デモ及び道路封鎖が行われた。


(2)14日,牛肉・牛肉製品産業労働組合は,牛肉等の輸出が制限されていることにより,雇用に甚大な悪影響が及んでいるとして,抗議デモを行い,約4千人が参加した。同抗議デモを受け,トマダ労働相は,各失業者に600ペソの助成金を供与する旨約束した。

 

11 教会


 19〜24日,ブエノスアイレス州ピラール市において,第99回亜カトリック司教会議総会が開催された。19日,ベルゴグリオ同会議議長は,同総会開会ミサにおいて,高齢者及び子どもの人権の尊重を呼びかけた。

 

III 外交


1 英国


(1)2日(マルビナス戦没者記念日),フェルナンデス大統領は,ティエラデルフエゴ州ウシュアイア市において開催されたフォークランド(マルビナス)紛争戦没者追悼式典に出席し,同式典での演説において,「14,000キロメートル離れた場所の主権など,歴史的にも法的にも地理的にも,また常識的にも持続可能なものではない。英国は,主権ではなく帝国主義を実行している。我々は,マルビナス諸島における主権の要求に加えて,国内及び国際場裡での全ての機会に,知性と忍耐を持って,安保理常任理事国である英国による国連決議違反というダブルスタンダードの見直しを要求していく任務を有する。亜が,軍事力によりマルビナス諸島を領有しようとしているなど,幻想に過ぎず,馬鹿げている。」等述べた。


(2)13日,核セキュリティ・サミットに出席するため訪米したフェルナンデス大統領は,潘基文国連事務総長と会談し,マルビナス諸島領有権問題に関し,英国が国連決議を遵守し交渉の席に就くようにするための潘事務総長の仲介に謝意を表明し,潘事務総長の尽力にも拘わらず英国側からの反応がないことは遺憾である旨述べた。


(3)2月17日,亜政府は,英国によるマルビナス諸島海域における石油採掘準備を阻止すべく,亜本土と同諸島間の運航を亜政府の事前許可制とする政令を公布した。26日付官報に,同政令施行のための水上警察(同政令実施機関)令が掲載され,発効したところ,同令の要旨以下のとおり。


(ア)亜本土とフォークランド(マルビナス)諸島間の運航を予定する船舶は,運航の7日前までに,水上警察に対し,運航事前許可申請書を提出しなくてはならない。


(イ)上記(ア)以外の亜本土から出航予定の船舶は,出航前に,水上警察に対し,その船舶或いは積荷がマルビナス諸島に入港しないという公的証明書を提出しなくてはならない。


(ウ)本令に違反があった場合には,水上警察は,同違反に対する行政措置を講じる。

 

2 ウルグアイ


(1)5日,訪亜したムヒカ・ウルグアイ大統領は,フェルナンデス大統領と会談し,亜を経由するボリビア・ウルグアイ間の天然ガス・パイプライン建設の可能性につき協議した。


(2)2007年1月,亜政府は,ウルグアイにおける製紙工場建設問題について,ウルグアイ川規約違反を理由に,国際司法裁判所(ICJ)に対してウルグアイを提訴していた。20日,ICJは,ウルグアイ政府による,ウルグアイ川規約が定める事前通報義務等の手続き上の義務違反については認める一方,環境保全義務等の実質的な義務違反はないとする判決を下した。


(3)20日,フェルナンデス大統領は,外遊先のベネズエラで記者会見を実施し,上記ICJ判決につき,「(ウルグアイ政府が)ウルグアイ川規約を遵守しなかったという亜側の主張を認めるものである。今次判決の最も重要な点は,今後,ウルグアイ川管理委員会(CARU)において事前に協議されない限り,製紙工場を含む如何なる工場も設置することが不可能となる点である。対立を避けるためには,国際条約を遵守する必要がある。」等述べるとともに,ムヒカ・ウルグアイ政権との良好な関係を強調した。


(4)28日,ムヒカ・ウルグアイ大統領が訪亜し,フェルナンデス大統領と会談した。同会談後の記者会見における両首脳の発言概要以下のとおり。


(ア)フェルナンデス大統領は,「今次会談により,亜・ウルグアイ関係の再強化が始まる。今次会談では,ウルグアイ川沿いの製紙工場建設に関するICJ判決を遵守するという両大統領の政治的意思が再確認された。条約を遵守するという政治的意思こそ,対立を防ぐための唯一の道である。両政府は,ウルグアイ川に関する利益調整を行うに最も相応しい場であるCARUに対し,製紙工場による環境汚染の監視等の任務を命じる予定である。」等述べた。


(イ)一方,ムヒカ大統領は,「(製紙工場設置を巡る亜との)長期に亘る対立は,コストが非常に高くつき,また,大変心痛むものであった。しかし,人間は,幸よりも痛みからより多くのことを学ぶものである。我々は,7年間に及んだ対立の痛みから学び,政治的意思をもってICJ判決を遵守していく。CARUの任務を再評価し,CARUが監視任務を十分に遂行できるようにしていく。」等述べた。

 

3 ブラジル


 6日,亜政府は,同日付亜外務省プレスリリースを通じ,ブラジル・リオデジャネイロでの洪水被害につき,亜国民及び亜政府の遺族に対する深い哀悼の意と連帯を表明するとともに,必要な協力を行う用意があることを示した。

 

4 チリ


(1)8日,ピニェラ・チリ大統領は,大統領就任後初の外遊として,企業関係者等を率いて訪亜し,フェルナンデス大統領と会談した。両大統領は,二国間関係強化及び二国間協力推進に向けた両国の意思を改めて確認するとともに,昨年10月にフェルナンデス大統領及びバチェレ・チリ大統領によって署名された二国間統合協力協定(マイプ協定)が定める二国間戦略的パートナーシップ関係を強化していく旨再確認した。


(2)23日,訪亜したラビネ・チリ国防相は,ガレ国防大臣と会談し,二国間共同アジェンダ,南米諸国連合(UNASUR)国防評議会のメカニズム等につき協議した。

 

5 イベロアメリカ・サミット


 7日,イグレシアス・イベロアメリカ・サミット事務局長が訪亜し,本年12月3〜4日に亜・マルデルプラタ市において開催予定の次期イベロアメリカ・サミットにつき,タイアナ外相と協議した。

 

6 ボリビア


 8日,ガルシア・ボリビア副大統領は,ブエノスアイレス大学の招待を受け訪亜し,同大学から名誉博士の称号を受けた。同日,ガルシア副大統領は,フェルナンデス大統領と会談し,二国間協力を含む二国間関係の進捗状況等につき協議した。

 

7 社会主義インターナショナル中南米・カリブ大会


 9〜10日,ブエノスアイレス市において,社会主義インターナショナル中南米・カリブ大会が開催された。同大会において,ベネズエラにおける人権侵害等を批判する最終文書が採択された。

 

8 ポーランド


 10日,フェルナンデス大統領は,ポーランドのカチンスキ大統領夫妻の航空機墜落事故による死亡を受け,コモロフスキ・ポーランド衆議院議長宛てに,遺族及びポーランドに対する亜国民及び亜政府の連帯を記した弔電を送付した。

 

9 核セキュリティ・サミット


 9日〜13日,フェルナンデス大統領は訪米し,核セキュリティ・サミットに出席した。同大統領は,サミット後の記者会見において,「今次サミットでは,核セキュリティの問題が初めて包括的に扱われ,非常に良い会合であった。我々は,核不拡散レジームにかかる全ての現行規制の検討と強化につきコミットする。オバマ米大統領は,2010年末にブエノスアイレスにおいて核セキュリティ・サミット次期シェルパ会合を開催するという自分(フェルナンデス大統領)の提案を支持した。亜は,60年間に亘り,平和目的に限定して原子力開発を行っている国である。南米は非核地域であり,亜・伯間の核物質計量管理機関(ABACC)は,南米における平和に大きく貢献している。亜は,これまでにない国際的役割を担おうとしている。我々は,亜が,相応の国際的位置を占めることができるよう尽力している。我々は,より大国の側に付くというのではなく,我々のアイデンティティーに従って立場を決める。」等述べた。

 

10 米国


(1)13日,核セキュリティ・サミットに出席するため訪米したフェルナンデス大統領は,オバマ米大統領との初の二国間会談等を行った。


(ア)オバマ大統領は,亜が,平和利用のための原子力開発分野において重要な役割を果たしていることや,同分野において地域的リーダーシップを発揮していることにつき改めて言及した。


(イ)一方,フェルナンデス大統領は,「オバマ大統領は,核セキュリティに関する新たな枠組みを創設する前に,既存の枠組みを十分に検討すべきであるという自分(フェルナンデス大統領)の提案に賛同した。」旨述べたほか,オバマ大統領が亜経済状況につき関心を示したのに対し,失業率の上昇を抑えつつ経済危機を克服した政策,内需を維持するための政策,残存民間債務にかかる債券交換等につき説明した。


(2)13日,フェルナンデス大統領の訪米に同行したタイアナ外相は,クリントン米国務長官とともに,核・放射線物質の密輸防止のための協力協定であるメガポート・イニシアティブに署名した。同イニシアティブは,米国と,海上貿易上の主要な港を有する国との間の協力協定であり,同協定に基づき,米国は,放射線探知装置配備,人材育成等の支援を行うこととなる。


(3)13日,フェルナンデス大統領の訪米に同行したデビード公共事業相は,ポネマン米エネルギー省副長官とともに,クリーン・エネルギー技術協力協定に署名した。同協定の目的は,エネルギー効率及びクリーン・エネルギーに関する科学・技術・政治分野の協力を促進することであり,今後設置される二国間エネルギーWGが二国間協力の実施を担うことになる。デビード大臣は,「今次協定は,原子力,人材育成,エタノール及びバイオディーゼル生産のための新技術等を含むもので,歴史的なものである。米産業界及び亜産業界ともに(クリーン・エネルギー分野における)投資に大きな関心を示している。」等述べた。

 

11 中国


(1)13日,核セキュリティ・サミットに出席するため訪米したフェルナンデス大統領は,胡錦濤中国国家主席と会談し,1月の中国訪問延期につき謝罪した。同会談後,フェルナンデス大統領は,「既に胡錦濤主席には(謝罪の)書簡を送付済みであったが,今般実際に会った際に改めて謝罪する必要があると思った。新たな中国訪問日程が検討されているところである。」旨述べたほか,中国への大豆油輸出問題については,現在両国外務省間で協議中であり,両国の貿易関係及び戦略的関係の重要性に鑑み最終的には解決される問題であるとした。


(2)19日,蒋耀平中国商務部副部長は,亜・中国商工産業会議所主催の経済協力フォーラムに出席するため,80名以上の企業関係者を率いて訪亜した。同日,同副部長は,タイアナ外相と会談した。


(3)14日,タイアナ外相は,中国・青海省での地震被害につき,遺族及び中国政府に対する深い哀悼の意を表明するとともに,楊潔チ中国外交部長に書簡を送付し,亜政府及び亜国民の連帯と哀悼の意,及び協力の用意があることを伝えた。

 

12 ロシア


(1)14日,メドヴェージェフ露大統領が訪亜し,フェルナンデス大統領と会談したほか,両大統領立ち会いの下で,原子力エネルギー分野をはじめとする以下の二国間協力協定等署名式が行われた。


(ア)亜露企業委員会・露亜企業委員会間の協力協定
(イ)亜乗馬連合・露騎馬スポーツ連合間の協力協定
(ウ)亜スポーツ庁・露スポーツ省間の協力覚書
(エ)亜公共事業省・露国営公社ロスアトム社間の原子力エネルギー平和利用に関する協力枠組協定
(オ)亜運輸庁・露国営鉄道公社間の亜鉄道近代化のための協力覚書
(カ)地質・石油・天然ガス調査協力協定
(キ)亜国防省へのヘリコプター2機供給協定
(ク)植林に関する覚書
(ケ)宇宙開発に関する覚書
(コ)亜建国200周年及び亜露外交関係樹立125周年に関する両国大統領の共同宣言


(2)上記署名式後の記者会見において,フェルナンデス大統領は,「メドヴェージェフ大統領は,亜の200年の歴史において,初めて訪亜した露大統領である。加えて,亜建国200周年及び二国間外交関係樹立125周年という節目の年の訪問となった。今般署名した原子力エネルギー平和利用に関する協力協定では,(原子力発電所建設のための)必要資材の50%が亜国産でなければならないと規定されていることから,今後の大規模な投資と雇用創出が想像できよう。」等述べた。


(3)一方,メドヴェージェフ大統領は,上記記者会見において,「先般(注:2008年12月)のフェルナンデス大統領の訪露以降,二国間関係は発展した。両国の関係は,成熟した,戦略的関係である。近年の二国間貿易は何倍にも増加しており,国際金融危機後に30%減少したものの,危機前には約20億米ドルに達していた。(今般の原子力エネルギー平和利用に関する協力協定締結により)露国営公社ロスアトム社が亜に進出し,数十億米ドル規模の対亜投資が行われる予定であり,また,雇用創出等にも繋がるだろう。」等述べた。

 

13 エクアドル


 15日,パティーニョ・エクアドル外相が訪亜し,タイアナ外相と会談した。両外相は,5月4日に亜で開催予定のUNASUR首脳会合,UNASURによる対ハイチ支援,二国間貿易,二国間の航空便数の増加等につき協議した。なお,パティーニョ外相は,タイアナ外相に対し,エクアドルとコロンビアが外交関係を断絶していた間,在コロンビア亜大使館がエクアドルの利益代表を務めたことにつき謝意を表明した。

 

14 ベトナム


 15〜17日,ズン・ベトナム首相は,多くの企業関係者・報道関係者を率いて訪亜した。16日,フェルナンデス大統領は,ズン首相と会談し,二国間関係強化に向けた両国の意志を再確認した。その後,両首脳は,風力発電設備製造工場建設に関する協力合意書,文化交流協定,エネルギー分野における協力協定等の二国間協定等署名式に出席した。フェルナンデス大統領は,記者会見において,「韓国で開催されるG20首脳会合への出席に併せて,本年11月頃にベトナムを訪問するよう招待を受けた。ベトナムとの関係を強化するために,同国を訪問したい。」等述べた。

 

15 オーストラリア


 16日,クリーン・オーストラリア貿易相が訪亜し,タイアナ外相と会談した。両大臣は,G20,ドーハ・ラウンド,オーストラリア・ニュージーランド経済緊密化協定(CER)・メルコスール間の関係強化,両国航空会社間の提携の可能性,原子力分野における協力,亜の鉱山分野へのオーストラリアによる投資,農業技術協力等につき協議した。

 

16 ベネズエラ


(1)08年11月,カリオ市民連合代表は,政府関係者が対ベネズエラ通商において不法な取引を行っているとして,キルチネル前大統領,デビード公共事業相,ウベルティ元国道コンセッション監督機構(OCCOVI)総裁等を告発し,ブエノスアイレス市連邦裁判所に提訴していた。13日,本件訴訟の担当判事の求めに応じて,サドウス元駐ベネズエラ亜大使(02年〜05年在任)は,以下の証言を行った。


(ア)被告等は,対ベネズエラ通商により生じた利益9000万ドルを引き出して不正に流用することにより新たな利益をあげ,それを着服していた。


(イ)亜・公共事業省職員等は,ベネズエラに製品を輸出しようとする亜・企業家に,輸出額の15〜20%相当の賄賂を要求し,実際にそれを受け取っていた。


(ウ)賄賂の取引はウベルティ元OCCOVI総裁の監督の下で行われていた。


(2)18〜21日,フェルナンデス大統領は,ベネズエラを訪問した。19日,フェルナンデス大統領は,ベネズエラ独立宣言200周年記念式典に出席した後,同周年記念国会特別セッションにおいて演説し,「国民が独立の意を決した時,軍力であれ経済力であれ,それを防ぐことはできない。独立200周年を迎えた今,我々の国民は,第二の独立を遂げようとしている。中南米統一の鍵は,我々の多様性や歴史的違いを認めることである。」等述べたほか,英国によるマルビナス諸島周辺海域における石油採掘活動に関し,「21世紀の鍵ともなる天然資源を巡る闘いである。国連決議の遵守に関する国際的ダブルスタンダードをなくす必要がある。」等述べた。


(3)20日,フェルナンデス大統領は,チャベス・ベネズエラ大統領と会談した後,エネルギー,食料,技術等の分野における14の合意文書署名式に出席した。また,これら合意文書のほかにも,貿易分野における複数の合意文書の署名が行われた。

 

17 WTO


 21日,ラミーWTO事務局長が訪亜し,タイアナ外相とドーハ・ラウンドにつき協議した。タイアナ外相は,「ドーハ・ラウンドが頓挫していることは明らかであるが,我々は,このような意見交換の場を与えてくれたラミー事務局長に感謝している。亜は自らの立場を有しており,ラミー事務局長は亜の立場について十分承知している。」等述べた。一方,ラミー事務局長は,「世界経済・金融危機により,市場開放の重要性が明らかとなった。我々は,まだドーハ・ラウンドの結論に至ることができていないが,結論に至ることは可能であり,また必要である。」等述べた。

 

18 要人往来


(1)往訪

 

9〜13日 フェルナンデス大統領の米国訪問(核セキュリティ・サミットに出席,オバマ米大統領と会談)
18〜21日 フェルナンデス大統領のベネズエラ訪問(ベネズエラ独立200周年記念式典に出席,チャベス・ベネズエラ大統領と会談)
19〜21日 トマダ労働相の米国訪問(G20労働大臣会合に出席)
21〜25日 ブドゥー経済相の米国訪問(G20等に出席)

 

(2)来訪

 

5日 ムヒカ・ウルグアイ大統領(フェルナンデス大統領と会談)
7日 イグレシアス・イベロアメリカ・サミット事務局長(タイアナ外相と会談)
8日 ピニェラ・チリ大統領(フェルナンデス大統領と会談)
8日 ガルシア・ボリビア副大統領(フェルナンデス大統領と会談)
14日 メドヴェージェフ露大統領(フェルナンデス大統領と会談)
15日 パティーニョ・エクアドル外相(タイアナ外相と会談)
15〜17日 ズン・ベトナム首相(フェルナンデス大統領と会談)
16日 クリーン・オーストラリア貿易相(タイアナ外相と会談)
19日 蒋耀平中国商務部副部長(タイアナ外相と会談)
21日 ラミーWTO事務局長(タイアナ外相と会談)
23日 ラビネ・チリ国防相(ガレ国防大臣と会談)
28日 ムヒカ・ウルグアイ大統領(フェルナンデス大統領と会談)


 

 

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