アルゼンチン政治情勢(月1回更新)
アルゼンチン政治情勢(2026年5月)
1 内政
(1)ミレイ政権
●アドルニ官房長官のスキャンダル
ア 4日、アドルニ官房長官による大統領府での記者会見が再開された。
イ 5日、野党のロドルフォ・タイラデ議員は、アドルニ官房長官の妻について、公用車1台及び連邦警察護衛チーム3組を私的な活動に使用した等下院において発言。同発言に対し、違法スパイ行為の告発を受け、司法当局に釈明書を提出した。
ウ 6日、司法当局は、アドルニ官房長官と同妻に関するブエノスアイレス州税務局(ARBA)への納税情報の秘密保持を解除するよう命じた。
エ 6日、ブルリッチ議員(与党LLA)は、アドルニ官房長官に対し、資産申告書を「直ちに」提出するよう求めた。
オ 9日、司法当局は、アドルニ官房長官による仮想通貨に関連する資金移動を確認した。
カ 13日、検察は、アドルニ官房長官の実弟フランシスコ・アドルニ氏を不正蓄財の疑いで起訴した。
キ 15日、司法当局は、フランシスコ・アドルニ氏に対する税務・銀行秘密の開示を命じた。
ク 19日、ビジャルエル副大統領は、アドルニ官房長官のスキャンダルに関し、「私たちは皆、官房長官の資産申告書を待っている」と述べた。
ケ 同日、官房長官の弟フランシスコ・アドルニ氏は、資産申告書を修正し、相続財産を追加するとともに負債額を増加させたことが報じられた。
コ 20日、ブルリッチ議員は自身の資産申告書を提出した。アドルニ官房長官に圧力をかける意図で提出したと報じられた。
サ 20日、野党は、下院でアドルニ官房長官への問責決議を行うための議会の審議を招集しようとしたが、LLAは、同盟勢力の協力を得て阻止した。
●労働改革
ア 4日、政府は、労働改革に基づく雇用正式化促進制度の施行規則を定め、新規雇用に対する事業主負担の軽減措置などの適用条件と手続きを明確化した。
イ 5日、連邦行政訴訟控訴院は、労働改革訴訟の管轄を労働裁判所から連邦行政裁判所へ確定し、以前労働改革の約80条項の停止を命じたオヘダ判事に、24時間以内の事件送付を命じた。
ウ 7日、最高裁判所は、労働改革の有効性を判断するため政府が提出した同裁判所に対する直接上訴(per saltum)を却下した。
エ 15日、第12連邦行政訴訟裁判所(Juzgado Contencioso Administrativo Federal N°12)判決により、労働改革の施行を阻止するために下されたオヘダ判事の仮処分命令が取り消された。
●5日、軍社会福祉機構の財政・医療サービス危機と巨額の債務を抱える中、同機関の会長が辞任した。
●6日、政府は、クリスティーナ・キルチネル元大統領の年金支給を取り消すよう、最高裁に不服申し立てを行った。
●7日、政府は、国立農業技術研究所(INTA)の職員を対象とした希望退職制度を導入した。
●9日、最高裁判所は、ラ・パンパ州が連邦政府を相手取って提起した税収配分に関する訴訟について、審理を行うことを決定し、連邦政府に対し、この申し立てに対する答弁書を提出するよう、60日間の期限を定めた。
●11日、政府は教育省のプログラムから787億6800万ペソを削減することを決定し、国立大学のインフラ整備に充てられる予算の交付を取り消した。また、国防予算を490億ドル削減し、軍の近代化を凍結した。
●13日、プレスティ国防相は、軍内における軍事防諜機能を復活させ、2006年から施行されていた規定を廃止する決議に署名した。
●15日、司法当局は政府に対し、全国遺伝子データバンクの運営を保証するよう命じた。
●16日、サンティアゴ・カプート大統領顧問は、カリーナ・ミレイ大統領府長官に近いマルティン・メネム下院議長がSNSの匿名アカウントを使用し、大統領顧問とその側近らを攻撃する内容を投稿したと非難した。メネム議長は、疑惑を否定した。
●20日、オリボス大統領公邸とカサ・ロサダの庭園管理の入札情報(7億ペソ規模)をめぐって、カリーナ・ミレイ大統領府長官に対し、個人的な業務のために友人を政府が採用したとして捜査が開始された。
●22日、人的資本省は、政策の策定とその影響を予測するための人工知能システム「ソーシャル・デジタルツイン」構想を発表した。
●判事候補の任命取り下げスキャンダル
ア 26日、政府は、与党の汚職疑惑等を調査したジャーナリストの義理の親戚であるという理由で、マリア・ベロニカ・ミチェッリ判事候補の任命を取り下げるよう求め、スキャンダル化。
イ 29日、判事候補の任命取り下げを理由に、ミレイ大統領は職権乱用の疑いをはじめとする複数の容疑で告訴された。
●27日、連邦裁判所は、国立工業技術研究所(INTI)の600以上のサービスの閉鎖を命じた政府の決定を差し止めた。
(2)議会
●5月中、LLAは、連邦判事及び検察官の候補者の任命案を提出し、複数可決された。
●6日、キルチネル派とLLA間の合意の上、ミレイ大統領の会計監査を担当する両院合同委員会をLLAが掌握することとなった。
●12日、LLAのセバスティアン・パレハ議員は、情報機関監視両院合同委員会の委員長に選出された。
●12日、特許条約に関する法案は委員会で承認されたが、修正が入ったため、上院へ戻された(当法案は1998年に上院でのみで可決されたまま、下院に進むのを待っている状態が2026年まで続いていました)。
●「寒冷地域」法案
ア 13日、「寒冷地域」法案は下院の委員会で可決された
イ 20日、「寒冷地域」法案は、下院で可決された。以後上院へ送付される。
●「私有財産の不可侵性」に関する法案
ア 13日、政府は、「私有財産の不可侵性」に関する法案から、低所得者層の居住地域における立ち退きを可能にする条項を削除した。
イ 20日、当法案は、上院の委員会で修正が入り可決された。
●14日、上院は、メルコスールとシンガポール間FTAを可決した。
●14日、上院は、マイケス司法相の父であるカルロス・マイケス氏が連邦刑事上訴裁判所判事として今後5年間その職に留まることを承認した。また、同日、全国的な銃の自主返納プログラムを2027年12月まで延長した。
●ホールドアウト債権者との合意案
ア 14日、ホールドアウト債権者(他の債権者が債務削減や返済条件の変更に応じる中で、それに参加せず契約どおりの満額回収を求める債権者を指すと言われる)との合意案は、政府から付帯文書が提出されたため、委員会に差し戻された。
イ 19日、上院の予算・財政委員会及び国内経済・投資委員会の合同総会において、ホールドアウトとの合意案を支持する多数派意見書が再び採択された。
●19日、司法改革は、上院の司法・刑事委員会及び予算・財務委員会の合同会議で審議され、可決された。
●20日、政府は、大学財政法改正のための法案を議会に提出した。
●20日、オハラスカ法は、下院で可決された。以後上院へ送付される。
●26日、政府は、ロビー活動規制法案と新規産業大型投資奨励制度(Super RIGI)法案を下院に提出した。
●29日、政府は、会社法改正案を議会に提出した。
(3)デモ・スト
●7日、公務員労働組合(ATE)は、発表された国立工業技術研究所(INTI)の700人の解雇及び1,000の職種の廃止に抗議し、24時間のストライキを行った。
●12日、大学財政法の適用を求める全国大学デモが実施された。
●20日、労働組合、労働者、野党支持者らは、政府の公衆衛生政策を非難し、デモ行進を行った。
●20日、野党・労働組合の一部は、2万5000社の中小企業の廃業を非難し、ミレイ政権に対する抗議活動を行った。
(4)その他
●8日、デミアン・レイデル氏(ミレイ大統領府の元首席顧問)が、国営原子力発電企業ヌクレオエレクトリカ社の法人クレジットカードを不正に使用した容疑で起訴された。
●13日、PJのセルヒオ・ウニャック上院議員は大統領選への出馬を表明した。
●パラナ・パラグアイ水路の入札
15日、汚職捜査局は、パラナ・パラグアイ水路の入札プロセスにおける不正を指摘した。
21日、司法当局は水路の入札中止の申し立てを却下した。
●20日、オラシオ・ロサッティ判事(最高裁判所長官兼司法評議会議長)に対するスパイ行為及び盗撮の疑いについて捜査が開始された。
●21日、最高裁判所は、バカ・ムエルタにおける石油会社に対する環境損害賠償訴訟を却下した。
●28日、上訴裁判所は、クリスティーナ・キルチネル元大統領による特別上訴を棄却し、同氏とその子供たちの資産没収を確定した。
2 外交
(1)対米関係
●1日、前月27日から米国にて開催されていた「アルゼンチン産牛肉週間」が終了した。
●18日、米軍南方軍は、アルゼンチンとの間で、今後5年間にわたるアルゼンチン海域巡回のための技術強化に関する「グローバル・コモンズ(国際公共財)保護」プログラムの実施に向けた合意に達したと発表した。
●20日、米国政府は、アルゼンチンにおける中国の違法漁業に関与したとされる、連邦漁業評議会における外務省代表を務めたパブロ・フェラーラ・ライスベル氏の米国ビザを剥奪した。
●26日、政府は、トランプ米大統領が受けた新たな暗殺未遂事件に対し、最も強い非難の意を表明した。
(2)その他
●1日、メルコスールとEU間の暫定貿易協定が発効した。
●1日、ミレイ大統領は、マーク・カーニー加首相と電話会談を行い、国際情勢、アルゼンチン経済情勢について協議した。
●ロシア・フェイクニュースネットワークの検挙
ア 1日、連邦警察は、フェイクニュースのネットワークを率いたとして、ミレイ政権が告発したロシア人男性を逮捕した。
イ 7日、移民庁は、同ロシア人を国外退去させた。
●イスラエル企業告発(4日)
ティエラ・デル・フエゴ州政府は、イスラエル規制当局が、フォークランド(マルビーナス)諸島における法的及び地政学的なリスクを隠蔽していたと主張し、同国のナビタス・ペトロリアム社を告発した。
●イラン非難(5日)
政府は、イランによるUAEの民間・経済インフラや海運施設への攻撃を強く非難し、ホルムズ海峡の自由航行確保と核・弾道ミサイル問題を含む安全保障のための実効的合意の必要性を訴えた。
●ベネズエラの政治犯問題(6日)
政府は、ベネズエラの政治犯問題について、再び米州機構(OAS)に抗議した。
●18日、政府は、イスラエルのエル・アル航空に対し、アルゼンチン・イスラエル間の定期便運航を認可した。
●22日、キルノ外相及びルゴーネス保健相は、世界保健機関(WHO)の総会において、アルゼンチンが2026年3月17日付で同機関から脱退することが承認されたと発表した。
●27日、政府は、エボラ出血熱の感染拡大を受け、コンゴからアルゼンチンへ向かう貨物船3隻の入港を阻止した。
●29日、ミレイ大統領は、フリードリヒ・メルツ独首相と電話会談を行った。
●29日、政府は、ガザへ向かう人道支援キャラバンに参加していたアルゼンチン人2人がリビア東部で拘束されたことを確認し、関係国及び国際機関と連携して支援と早期釈放に向けた対応を続けていると発表した。
●31日、ミレイ大統領は、コロンビア大統領選挙に関し、決選投票に進む「祖国防衛派」党アベラルド・デラエスプリエジャ候補を称賛した。
(3)ボリビア情勢
●16日、政府は、南米諸国との共同声明で、ボリビアにおける抗議活動と道路封鎖による人道状況の悪化に懸念を示し、同国政府への支持と対話による平和的解決を呼びかけた。
●同日、政府は、ボリビアに空軍のC130輸送機を派遣し、食糧等生活必需品のラパス県に向けた輸送支援を行うと発表した。
●19日、政府は、モラレス・ボリビア元大統領による、上記輸送機を通じてアルゼンチンがボリビアに武器を提供したとの主張を否定した。
●21日、政府は、「米州の盾」の枠組みにおいて、ボリビアを支援する新たな地域声明に賛同した。
(4)要人往来
往訪:
米国:モンテオリバ治安大臣(4日~6日、アルゼンチンの米国ビザ免除プログラムへの参加に向けた取組・麻薬取引、組織犯罪、情報交換、移民管理、安全基準に関する協力調整)、ミレイ大統領、キルノ外相、カプート経済大臣(5日~6日、第29回ミルケン研究所グローバルカンファレンス出席)、プレスティ国防大臣(6日、第11回西半球安全保障会議出席)、サンティアゴ・カプート大統領顧問(13日~14日、米国務省関係者との会合)、キルノ外相(26日、国連安全保障理事会公開討論会参加、チェコ・インドネシア・バーレーン・リベリア・パナマ・中国の外相とのバイ会談)
コスタリカ:キルノ外相(8日、デルガド大統領の就任式典出席)
ウルグアイ:キルノ外相(12日、ウルグアイ外相とウルグアイのパイサンドゥー市で計画されているグリーン水素・e燃料製造施設について協議)
イタリア・バチカン:ペトベッロ人的資本大臣(25日~30日、教皇との会合)
チリ:キルノ外相、モンテオリバ治安大臣(28日、在サンティアゴ南米地域による国際組織犯罪対策への取組に関するイベント出席)
来訪:
ユダヤ人の互助組織ブリス代表団(5日、ミレイ大統領との会合)
シャヴィエール・ポルトガル外務副大臣(11日、キルノ外相との会合)
リンコン・チリ・エネルギー大臣(14日、キルノ外相との会合)
ベクテル米建設大手企業ベクテル(Bechtel)会長兼CEO(18日、キルノ外相との会合)
ナムダール米国国務省領事担当次官補(19日、キルノ外相との会合)
ムシオ・ブラジル国防大臣(26日、プレスティ国防大臣との会合)
英国の実業家兼宝石鑑定士オストロ氏(29日、ミレイ大統領との会合)
米国下院議員団(29日、ミレイ大統領及びキルノ外相との会合)
反ユダヤ主義監視・対策率いるラビ・カプルーン大使級特使及び、米国務省のアシェンドルフ氏、ロハス氏(29日、ミレイ大統領との会合)(了)