アルゼンチン政治情勢(月1回更新)

令和6年7月17日

アルゼンチン政治情勢(2024年5月)

※(肩書は全て当時)

1 内政

(1)議会関連
●自由推進法及び税制パッケージ法案の上院委員会審議(7日~)
ア 7日、上院委員会(法務、予算・財務)において、下院を通過した自由推進法及び税制パッケージ法案の審議が開始された。
イ 9日、意見書を取りまとめることができず、委員会審議は休会した。
ウ 13日、委員会審議が再開された。
エ 15日、ポセ内閣官房長官は上院委員会において、第1回目となる行政報告を実施した。
オ 31日、政府は上院委員会において、意見書の可決に必要な賛成多数を獲得し、自由推進法及び税制パッケージ法案を上院本会議に提出した(本会議での審議は6月12日に開始)。

(2)ミレイ政権の動向
●ミレイ大統領の再選を目指す発言(1日)
1日、ミレイ大統領は、オムニバス法案等の下院通過後、ラジオインタビューに応じ、「インフレ克服、雇用創出及び貧困撲滅等の経済政策による国民生活の向上が私に与えられた使命だとすれば、私は再選される可能性が高い」と述べた。また、同大統領は、経済の回復が既に見られていることを強調した。
●ミレイ大統領の自著出版イベント開催(22日)
 22日、ミレイ大統領は、コンサートホールのルナ・パークにおいて、自著「資本主義、社会主義、新古典派の罠」の出版記念イベントを開催した。同大統領は、本イベントで、バンド演奏を伴っての歌唱及び経済学に関する講演を行った。本イベントには、一部閣僚や議員の他、大統領親族等が出席した。
●ミレイ大統領のコルドバ市における演説(25日)
ア 25日、ミレイ大統領はコルドバ市を訪問し、演説を行った。
イ ミレイ大統領は、右演説で、アルゼンチン独立の端緒となった5月25日の革命における自由の理念の重要性を改めて強調した。また、ミレイ大統領は、5月協定の調印後及び自由推進法及び税制パッケージ法案の議会可決後、5月評議会を創設することを発表した他、右法案の承認後、大幅な減税を行うことも併せて発表した。
ウ 今次訪問には、ビジャルエル副大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、全閣僚の他、メネム下院議長等が同行した。
●ポセ内閣官房長官の辞任(27日)
 27日、大統領府は、ポセ内閣官房長官の辞任、及び新たな内閣官房長官としてフランコス内相が就任する旨発表した。今次内閣改造に伴い、内務省は、内閣官房管轄下の部局として吸収された。なお、ポセ長官と共に、シボリ連邦情報局(AFI)長官の辞任も報じられた。
●政府による最高裁判所判事候補者届の提出(27日)
27日、政府は、最高裁判所判事の欠員を埋めるため、リホ判事及びマンシージャ判事を最高司法裁判官候補として擁立し、上院に候補届を提出した。両判事が最高裁判所判事となるためには、上院で3分の2の承認が必要となる。
●人的資本省の配給用食品の管理を巡るスキャンダル(31日)
 31日、人的資本省は、前政権から引き継ぎ、トゥクマン州の倉庫に備蓄されたままとなっている消費期限の迫った食料の管理を巡る問題により、デ・ラ・トーレ人的資本副大臣(子供・青年・家族担当)を更迭した。

(3)経済
●一万ペソ紙幣の流通開始(7日)
ア 7日、アルゼンチン中央銀行は、一万ペソ紙幣の流通開始を発表した。これらの紙幣は、中銀が中国印鈔造幣集団有限公司に発注した7億7,000万枚のうちの一部であり、一般に流通し始めるのは6月頃から、ATMネットワークで利用可能になるまでには数カ月かかると見られている。なお、2024年最終四半期には、二万ペソ紙幣の流通が開始する。
●IMF拡大信用供与措置第8次レビューのスタッフレベル合意(13日)
13日、アルゼンチン政府及びIMFは、拡大信用供与措置の第8次レビューについて、スタッフレベル合意に達したと発表した。IMFは、アルゼンチン政府による安定化計画の断固とした実施により、当初の想定を大幅に上回る実績を達成したことを強調すると共に、脆弱層への支援等も高く評価した。今次合意により、IMF理事会での承認を条件として、アルゼンチンはプログラムに沿った資金援助を受けることができる)。
●ドル化を巡る発言(21日)
ア 21日、ミレイ大統領及びカプート経済相は、アルゼンチン財務幹部協会(IAEF)年次総会に出席した。
イ ミレイ大統領は、本会合における演説の中で、「経済成長による消費拡大に伴って貨幣需要が増加した場合、貨幣の量を固定しながら通貨の自由競争を認めることで、国内のペソの量に対してドルの量が増加していき、ドルに対してペソが非常に少なくなった時、ドル化が達成される」と述べた。
ウ また、ミレイ大統領は、経済成長のための構造改革の重要性を強調し、議会における(ミレイ大統領の見解によれば)財政均衡の崩壊を企図する法案に対し、拒否権の行使を示唆した。
エ また、カプート経済相は、為替・外貨規制廃止に関し、「為替規制及び外貨規制を撤廃しても混乱は起きないだろうとの確信を持てる段階になって初めて、為替・外貨規制をいつ撤廃するか発表できるだろう。現時点ではいつ撤廃されるかを言明することはできない」と述べた。

(4)国内情勢(治安・各州動向)
●鉄道運賃の値上げ(6日)
 6日、鉄道運賃が値上げされた。今次改訂により、地下鉄の運賃が125ペソから547ペソへと値上げされた他、ブエノスアイレス大都市圏(AMBA)では、各走行距離に応じた鉄道運賃が、平均で54%程度増額された。
●第2回ゼネストの実施(9
ア 9日、労働総同盟(CGT)の呼びかけにより、午前0時から24時間のゼネラルストライキが実施された。本ゼネストには、交通関連の労働組合の他、公務員、銀行、サービス業等の業種の労働組合も参加しており、公共交通機関(一部路線バスを除く)、学校、銀行、病院等でサービスが停止された。
イ 航空便は国内線、国際線併せて400便以上が欠航又はスケジュール変更となり、7万人以上の利用客が影響を受けた。また、今回のゼネスト実施により、航空会社が約6,200万ドルの損失を被ったとの試算も報じられた。
ウ ストライキに参加せずに運行を続けたバスに対し、嫌がらせと見られる投石行為が複数発生したものの、ゼネスト全体の影響は、事前の予想に反し、限定的なものに留まった。
●ミシオネス州での暴動発生(17日~)
17日、ミシオネス州の警察官が給与の引き上げを州政府に求め、抗議活動を行った。右に対し、ブルリッチ治安相及びパサラクア同州知事は危機管理委員会を招集し、治安部隊が対応した。同日、道路封鎖を伴う教職員の抗議活動も行われ、後日、医療従事者のデモと共に警察のそれに合流し大規模化した。28日、州政府と警察関係者は給与改善に関し合意し抗議活動が解除された。
●新たな連邦刑事訴訟法の発表(7日)
6日、ブルリッチ治安相とクーネオ・リバロナ司法相は、サンタフェ州ロサリオ市で記者会見を開き、同市等で新しい連邦刑事訴訟法が施行されることを発表した。この制度は、2015年に承認されたもので、検察官の捜査権限を大幅に拡大する内容を含んでいる。これにより、政府は事件の捜査を迅速化させ、事件解決を促進することを企図している。これらの制度は、既にフフイ州及びサルタ州で実施されている。
●キルチネル文化センターの名称変更(7日)
7日、アドルニ大統領府報道官は、定例記者会見において、キルチネル文化センター(CCK)の名称を「自由の宮殿(Palacio Libertad)」と変更する旨発表した。右名称は、必要緊急大統領令(DNU)及び官報への掲載により正式名称となるが、変更の具体的な時期は未定。同センターは、2012年に法案によって故ネストル・キルチネル前大統領の名前が付けられ、本年3月に、同報道官によりキルチネル派の象徴の一つである同センターの名称を変更する旨決定したことを発表していた。

 
2 外交

(1)ミレイ大統領の動静
●米国ロサンゼルス市等の訪問(4~7日)
ア 4~7日、ミレイ大統領は米国ロサンゼルス市を訪問した。今次訪問には、カリーナ・ミレイ大統領府長官、ポセ内閣官房長官、カプート経済相等が同行した。
イ 6日、ミレイ大統領は、投資家や起業家が出席する米シンクタンク・ミルケン研究所主催のグローバル・カンファレンスで演説した。右演説では、自由主義的経済の重要性を説き、政権発足以降の経済改革の実績を強調するとともに、投資先としてのアルゼンチンの有利な条件を強調し、投資を呼びかけた。
ウ 6日、ミレイ大統領は、インファンティーノFIFA会長、イーロン・マスク・テスラ社CEOと会談した。
エ 5日、同行したポセ内閣官房長官、及びカプート経済相は、米国政府高官やゲオルギエバIMF専務理事も出席したグローバル・カンファレンス非公式会合に出席した他、ムニュ-シン前米財務長官主催の夕食会に参加した。
また、6日には、ファーレフ・サウジアラビア投資相やIBM等の企業幹部等とそれぞれ会談した。
●米国サンフランシスコ市等の訪問(27~31日)
ア 28日、ミレイ大統領は、サンフランシスコ市を訪問し、アルトマンOpen AI社CEOと会談した。会談では、アルゼンチンの発展における人工知能(AI)等の技術の重要性を強調した他、自由推進法に含まれる大型投資奨励制度(RIGI)をアピールし、アルゼンチンへの進出を呼びかけた。
イ 29日、ミレイ大統領は、ピチャイ・グーグル社CEO、クック・アップル社CEOとそれぞれ会談した他、AIの専門家等との会合に出席した。
ウ また、ミレイ大統領は、スタンフォード大学のフーバー研究所で講演し、カプート経済相の実績を強調した。他方、同大統領は、外交上対立しているサンチェス・スペイン首相を批判した他、欧州の経済モデルの規制の多さを批判した。講演後、同大統領はライス同研究所所長(元米国務長官)と会談した。
エ 30日、ミレイ大統領は、ザッカーバーグMeta社CEOと会談した。

(2)モンディーノ外相の動静
●OECD閣僚理事会出席(2日、3日)
ア 2日及び3日、モンディーノ外相は、仏を訪問し、OECD閣僚理事会に出席した。本会合でアルゼンチン側にOECD加盟のために実施が必要なプログラムを記したロードマップが正式に提出され、アルゼンチンの加盟に向けた手続きが開始された。
イ 本会合に先立ち、モンディーノ外相は、コーマンOECD事務総長と会談した他、OECD閣僚理事会の枠組で、ドンブロフスキス欧州委員会副委員長、セジュルネ仏外務・欧州相を始めとする仏閣僚等、パルメラン・スイス連邦経済・教育・研究相、ニル・バルカット・イスラエル経済産業相の他、複数の仏企業関係者幹部等と会談した。
●欧州訪問(5~7日)
ア 6日、モンディーノ外相は、ボレルEU上級代表と会談した。本会合でモンディーノ外相は、アルゼンチン・EU間関係における有力な分野や、EUとの経済的交流深化による貿易拡大等の意向を強調した。また、欧州の戦略的パートナーとしてのアルゼンチンの可能性を強調し、EU・メルコスールFTAの早期締結を改めて呼びかけた。
イ 6日、モンディーノ外相は、フィンクホイヤー環境総局長等の複数の欧州委員会関係者、ルーゲNATO事務総長補(政務・安全保障政策担当)、企業関係者等とそれぞれ会談した。
ウ 7日、モンディーノ外相は、ポルトガルを訪問し、ランジェル・ポルトガル外相及びフェレイラ・ポルトガル経済副大臣と会談した。本会合で、モンディーノ外相は、二国間の各議題につき協議した他、EU・メルコスールFTAの早期締結に向け、両国が各ブロック内で協力することを確認した。
エ 7日、モンディーノ外相は、訪問先のポルトガルにおいて、民間部門の関係者が多く出席するラテンアメリカ・カリブ地域開発研究所主催の会合に参加した他、モエダス・リスボン市長と会談した。
●ヴァルトネン・フィンランド外相との電話会談(13日)
13日、モンディーノ外相は、ヴァルトネン・フィンランド外相と電話会談を行った。本電話会談でモンディーノ外相は、ミレイ政権の対外開放、投資誘致等の政策を強調し、投資を呼びかけた。ヴァルトネン外相は、ロシア・ウクライナ紛争に関するアルゼンチンの立場に謝意を表し、アルゼンチンのNATOとの最近の関係を強調し、OECD加盟の意向を歓迎した。また、双方は、EU・メルコスールFTA締結が経済成長に与える意義を確認した。
●米国訪問(16日、17日)
ア 16日及び17日、モンディーノ外相は、米国を訪問した。今次訪問には、ポセ内閣官房長官、シマ外務副大臣(国際経済関係担当)等が同行した。
イ 17日、モンディーノ外相は、ブリンケン米国務長官と会談した。本会合で、双方は、「ハイレベル戦略対話の確立に関するアルゼンチン・米国間の枠組合意」に署名した他、モンディーノ外相は、アルゼンチンが米国との戦略的及び経済的な関係強化に向け積極的に協力する意向であることを伝達した。
ウ その他、モンディーノ外相は、16日にサリバン米国家安全保障担当首席補佐官と、17日にシャンボー米財務省国際問題担当次官補とそれぞれ会談した他、米上下院議員、米民間企業の幹部、ケイトー研究所(リバタリアン系シンクタンク)代表等とも個別に会談した。

(3)対韓国関係
●韓国国会議長のアルゼンチン訪問
 13日、アルゼンチンを訪問中の金振杓(キム・ジンピョ)韓国国会議長は、メネム下院議長及びアブダラ上院議長代理とそれぞれ会談した。金議長は、両会談において、二国間関係を強調すると共に、エネルギー及び鉱物資源等の天然資源投資、及び右に向けた法的安定性確保に対する韓国の関心を伝達した。また、金議長は、メネム下院議長との会談で、両国企業間の投資及び協力促進に必要な、社会保障協定と二重課税防止条約の重要性等を強調した。なお、韓国国会議長のアルゼンチン訪問は38年ぶり。

(4)イスラエル・パレスチナ情勢
●ミレイ大統領のホロコーストの犠牲者追悼式典への参加(8日)
8日、ミレイ大統領は、CCK(当館注:自由の宮殿へ名称変更予定)で、アルゼンチン・イスラエル協会(DAIA)及びホロコースト博物館主催の、ホロコースト犠牲者の追悼式典の閉会式で演説した。ミレイ大統領は、演説の中で、ハマスをナチスになぞらえ、イスラエル支持は「選択肢の一つではなく義務である」と述べ、イスラエル政府と無条件に連携する旨を再度表明した他、「イスラム・テロリズムを非難することは義務である」と述べた。
●パレスチナの国連総会加盟支持決議案への反対(10日)
10日、アルゼンチンは国連総会において、パレスチナの国連加盟を支持する総会決議案に反対票を投じた。2023年12月以降、アルゼンチンは、パレスチナの主張を支持してきた従来の外交方針を転換し、イスラエル・パレスチナ問題に関する国連決議に関し、いずれも米国及びイスラエルと同調する投票行動を見せている。
ICCによるイスラエル政府高官逮捕要請に対する批判(22日)
22日、アルゼンチン政府は、国際刑事裁判所(ICC)の検察官によるイスラエル政府高官への逮捕状の請求に懸念を表明する声明を発出した。右声明で、「特にアルゼンチンは、ICCの検察官が一民主国家の合法的な政府高官と残虐な犯罪の責任者であるテロ組織のリーダー達を同列に並べていることが誤りであると考え、これを拒否する。同様に、ICC検察官の決定は、イスラエルが行使する正当防衛の権利を疑問視している。この権利は国際法で認められている。」等と述べた。

(5)その他
●スペインとの関係悪化(3日~)
ア 3日、プエンテ・スペイン運輸・持続可能モビリティ相は、社会労働党(PSOE)の集会において、ミレイ大統領を「とてつもない悪人」であり、「何らかの薬物を摂取している状態」と述べた。右発言を受け、アルゼンチン大統領府は抗議声明を発出し、ベゴーニャ・スペイン首相夫人の汚職疑惑、移民問題等、サンチェス・スペイン政権の抱える問題に対して批判を行った。
イ 4日、スペイン外務・EU・協力省は、アルゼンチン大統領府の上記発表を事実無根とする声明を発出した。
ウ 7日、アルバレス・スペイン外相は、アルゼンチンとは「外交上の危機はない」と発言し、アドルニ・アルゼンチン大統領府報道官は定例記者会見において、「(スペインとの外交上の問題は)解決済みである」と述べた。
エ 19日、ミレイ大統領はスペインを訪問し、VOX党のイベント「Europa Viva 24」に出席した。ミレイ大統領は、同イベントにおける演説の中で、社会主義を批判し、西側諸国の価値観の重要性を強調した他、ベゴーニャ夫人は「腐敗している」と発言する等、サンチェス・スペイン首相を貶める発言を繰り返した。同日、ミレイ大統領の発言を受けスペイン政府は、駐アルゼンチン・スペイン大使を召還することを発表し、ミレイ大統領に公式の謝罪を求めた。また、ミレイ大統領が訪問時に会談した企業を含むスペインの主要な多国籍企業は、ミレイ大統領の発言を非難する声明を相次いで発出した。
オ 19日、スペイン政府は、スペイン大使を正式に離任させた
カ 20日、ミレイ大統領はテレビインタビューの中で、スペインに対する謝罪を拒否するとともに、スペインとの関係悪化の背景に、サンチェス首相の顧問の一人であるフェルナンデス前アルゼンチン大統領の存在を指摘した。
●アルゼンチン海軍と仏海軍の合同演習の実施(4日)
ア 4日、アルゼンチン海軍は、海軍基地から近いマル・デル・プラタ沖で、仏海軍との合同軍事演習(PASSEX)を実施した。
イ 9日、仏海軍の水陸両用ヘリコプター空母「トネール」及びフリゲート艦「ゲプラット」は、ウシュアイア市を訪問しアルゼンチン海軍と交流した。
●ミレイ大統領のBBCインタビュー(6日)
ア 6日、BBCは、ミレイ大統領へのインタビューを公開した。
イ 右インタビューでは、構造改革で必要となる負担の大部分は国庫にかかっており、脆弱層を含む国民には負担がかかっていないと述べた。また、経済改善の兆しが見えるまでには一定の時間がかかるが、現時点ではいくつかの部門で成長傾向が見られ、回復の兆候を示していることを強調した。
ウ マルビーナス(フォークランド)諸島の主権を巡る問題に関しては、2月のキャメロン英外相の同諸島訪問が外交的な挑発行為に当たるとは考えておらず、現政権としては、本件解決に向け、冷静な対応・議論の下、長期的な交渉プロセスを平和裏に進める意向であることを表明した。
エ イスラエル・パレスチナ情勢に関しては、イスラエルの自衛権を擁護すること、及びイスラエル・パレスチナ紛争において、イスラエルは過剰行為を行っておらず、国際的なルールに従って行動しているとする旨表明した。
オ 共産主義を支持しない旨改めて表明し、過去に共産主義体制を採用した国を「殺人体制」と形容するとした。他方、中国に対し「殺人体制」と形容するのか、という質問に対しては明言せず、また、習近平国家主席については、接点が多くない現状に鑑み、評価を避けた。
ブラジル南部の洪水被害に対するアルゼンチン政府の支援(6日~)
ア 6日、アルゼンチン外務省は、3日にブラジルのリオ・グランデ・ド・スル州を中心に発生した洪水被害に関し、ブラジルに人道支援(アルゼンチン連邦警察の20名の部隊と複数の警察犬で構成される旅団、国際協力人道支援庁(ホワイトヘルメット)の後方支援専門家、人員・貨物の輸送機、浄水タブレット、輸送・避難用ヘリコプター3機、浄水プラント2基、救急医療チーム、アルゼンチン海軍戦術ダイバー、ボートを装備した技術部隊等)を申し出た。
イ 9日、アルゼンチン政府は、空軍の輸送機Cー130ハーキュリーズで、アルゼンチン陸軍所有の浄水プラント2基、及び右の操作を行う担当者8名、ホワイトヘルメット提供による浄水タブレットをブラジルに送付した。
ウ 13日、アルゼンチン国防省は、レイテ・リオ・グランデ・ド・スル州知事の支援要請を受け、人命救助、後方支援、避難所管理を支援するための人員(軍人8名)を正式に移送した。
●南極でのロシアによる石油発見(11日)
ア 11日、ロシアが、アルゼンチンが領有権を主張している南極地域の海域で石油を発見した旨報じられた。ロシアの報告によれば、埋蔵量は約5110億バレルで、サウジアラビアの2倍、アルゼンチンのネウケン州にあるバカ・ムエルタの30倍と推定されている。ロシアにより石油が発見された海域は、アルゼンチンの他、英国、チリが主張する南極地域とも重複している。
イ 13日、モンディーノ外相及びディ・チアロ外務副大臣(マルビーナス・南極・南大西洋担当)は、駐ロシア・アルゼンチン大使を通じ、ロシア政府に対し、今回の発見に至った調査の目的につき説明を要請した。
ウ なお、7月1日、ロシア側より、今回の発見は、南極条約で認められている地質学的研究を行っていた際のものだとする回答があった旨報じられた。
エ なお、20~30日、インドのコーチにおいて、第46回南極条約諮問会議(ATCM)が開催された。
●アルゼンチン海軍と米海軍の合同演習の実施(5月30日~6月3日)
ア 5月30日~6月3日、アルゼンチン海軍は、マル・デル・プラタ沖で米海軍との合同軍事演習(PASSEX)「ガウチョ・グリンゴII」を実施した。今次演習は、北大西洋条約機構(NATO)の基準に準拠した他海軍との相互運用を高め、海上機動部隊の編成を想定した手順等の確認を行うもの。
ウ 30日、ペトリ国防相は、アイザック統合参謀本部長等同行の下、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」に乗船し、今次演習を視察した。
イ なお、こうした両国間の共同演習の実施、及び今次演習に伴う同空母の来訪は、2010年以来14年ぶり。また、今回の米海軍の来訪及び演習実施は、大西洋及び南太平洋でブラジル、チリ等の海軍と米海軍が共同で行う国際演習「南洋2024(Southern Seas 2024)」の一環。
 
(6)要人往来一覧
ア 往訪
 米国:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官、カプート経済相(4~7日、27~31日)、ポセ内閣官房長官(4~7日、16、17日)、モンディーノ外相(16日、17日)
 フランス:モンディーノ外相(2日、3日)
ブリュッセル:モンディーノ外相(5日、6日)
ポルトガル:モンディーノ外相(7日)
 スペイン:ミレイ大統領、カリーナ・ミレイ大統領府長官(18日、19日)
イ 来訪
 ウクライナ:スヴィリデンコ第一副首相兼経済相(13日)
韓国:金振杓(キム・ジンピョ)国会議長(13日)
 チリ:バン・クラベレン外相(27日、アルゼンチン・チリ外相会合)

 

(了)

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