1 内政
(1)大統領府・政府の動き
(ア)最低賃金の引き上げ
1日,トマーダ労働大臣は,主要労組との会合にて,最低賃金を3,600ペソから4,400ペソに引き上げることで合意した。本変更は9月から適用され,更に2015年1月には4,716ペソとなることも合意事項に含まれている。
(イ)義務教育の早期開始法案提出
3日,フェルナンデス大統領は,義務教育を4歳から開始する方針(現在は5歳)を発表し,国家教育法(2006年発効)の改定法案を議会に提出した。
(ウ)ミトレ線(鉄道)に新車両導入
8日,フェルナンデス大統領は,ランダッソ内務・運輸大臣と共に,ブエノスアイレス港にて,ミトレ線(ブエノスアイレス市レティーロ駅からティグレ市等北西のブエノスアイレス州近郊都市をつなぐ路線)に最初の30両の新車両を導入する式典に出席した。同車両は中国から輸入され,購入額は約120万米ドルで,追加の車両購入と駅の改装を合わせ総投資額は約2.2億米ドルと算出されている。
(エ)ラテンアメリカで一番高い高層ビルの建設計画告知
9日,フェルナンデス大統領は,ブエノスアイレス市プエルト・マデーロ地区に,335mの高さで,完成すればラテンアメリカで一番高いビルの建設を発表した。亜のリヴァ社が工事を受注し,約25億ペソ(現価約3億米ドル)の予算で5年以内の完成を目指す。
(オ)供給法改定法案可決
18日,連邦下院にて,「生産・消費関係の新規制法案」が,可決された。同法案は,1974年に発効した「供給法」(注:法外な利益を目的とした値上げ等に対し,商品の利益幅設定,参考価格や最高・最低価格の設定に介入する権限を政府(商業庁)に与える法)を強化する目的で制定された。
(カ)居住庁の設立
30日,フェルナンデス大統領は,内閣府の下に,居住庁(Secretaria Nacional de Acceso al Habitat)を設立すると発表した。同大統領は,都市部の公有地や放置された私有地を占拠している者や,スラム街(Villa)と化している場に住む者に,土地所有の権利を合法的に認め,都市社会の一員とすることが同庁の目的であると述べた。初代長官には,ラプラタ国立大学の建築学者で,また社会居住地のための国家土地委員会(Comision Nacional de Tierras para la Habitat Social)の委員長を務めるパスコリニ氏が就任した。
(2)マキシモ氏のラ・カンポラ集会での演説
13日,フェルナンデス大統領の長男マキシモ・キルチネル氏が,若手キルチネル派支持団体「ラ・カンポラ」の集会において,初めて公の場での演説を行い,フェルナンデス大統領の再々選を念頭に置いた発言を行った。(注:大統領の再々選は憲法上認められていない。)集会はブエノスアイレス市内のサッカースタジオで行われ,約4万人のラ・カンポラのメンバーが集まったとされる。また,キシロフ経済・財政大臣を始めとする現政権閣僚や政府系組織幹部も出席した。
(3)2015年大統領選挙
(ア)選挙日程
2日,内務・運輸省選挙局(Direccion Nacional Electoral)は,2015年度の大統領選挙関連の日程を以下の通り発表した。(当館注:亜憲法は,本選挙で大統領が決まる要件に,得票率一位の候補者が45%以上を獲得する,あるいは40%以上の得票率に加え得票率二位の候補者と10%を超える差をつけること,と定めている。もしこの条件に満たない場合,上位二候補者間で決選投票を30日以内に行う。)
(i)政党及び政党連合の登録期限日: 6月10日(水)
(ii)大統領選予備選挙候補者登録期限日: 6月20日(土)
(iii)予備選挙(PASO): 8月 9日(日)
(iv)本選挙: 10月25日(日)
(v)決選投票(本選挙で未決の場合実施): 11月24日(火)までに行う
(イ)Management & Fit社による大統領候補者支持率
当地世論調査機関「Management & Fit」社は,8月に行われた同社の世論調査で,2015年大統領選挙の候補者の支持率を公開した。同調査によれば,野党連合・UNEN拡大戦線で誰が出馬するかにより結果が変わるが,仮にビーネル下院議員が候補として出た場合の結果は以下の通り。
(i)マサ下院議員(反現政権派・刷新戦線):25.0%
(ii)シオリ・ブエノスアイレス州知事(現政権派・勝利のための戦線):24.5%
(iii)マクリ・ブエノスアイレス市長(野党・共和国提案):19.1%
(iv)ビーネル下院議員(野党・UNEN拡大戦線):13.4%
同調査に関し,フォルノリ同社代表は,マクリ市長がマサ議員やUNEN拡大戦線への支持を切り崩して人気を上げてきた,と指摘した。
2 外交
(1)ホールドアウト(残存債務)問題
(ア)国債の支払地変更法案可決
11日,「国債の支払地変更法案」が議会にて賛成多数により可決された。同法により,2005年及び2010年の債券交換時に国外で発行した新債券について,債券交換の支払に関する受託機関をニューヨーク・メロン銀行から,亜ナシオン信託銀行又はそれ以外の機関に変更される。29日,亜政府は利払いのための約16億米ドルをナシオン信託銀行に振り込んだ。
(イ)グリエサ米判事から亜政府に対する「法廷侮辱罪」宣告
29日,グリエサ米判事は,亜に法廷侮辱罪を適用することを決定した。支払地変更法を受けて,かねてからNMLファンド及びその他ファンド(いわゆるハゲタカファンド)は,亜に同罪を適用するようグリエサ判事に求めていたところ,亜は2012年の判決に違反したことを根拠に,同罪の適用を受けることとなったが,具体的な処罰内容は不明。
(2)国連総会
(ア)第68回国連総会
9日,米国ニューヨークで第68回国連総会が開催され,ティメルマン外務大臣が出席した。また,「国家債務再編プロセス規制の法的枠組みに関する多国間協定」成立に向けた決議案が,賛成多数(賛成124,反対11,棄権41。欠席16)で採択された。これを受けて,フェルナンデス大統領は,「外交上の大成功」と述べた。
(イ)第69回国連総会
フェルナンデス大統領は,第69回国連総会出席の為21日〜24日にかけて米国を訪問した。そして24日の総会にて約35分間の演説を行った。そこで,米国政府を批判し,そしてハゲタカファンドを「経済テロリスト」と強く非難した。なお,フェルナンデス大統領は,播基文国連事務総長やモレーノ米州開発銀行(IDB)代表等とも会談を行った。
(3)米国
(ア)ティメルマン外務大臣から駐亜米臨時代理大使に対する「内政干渉」警告
15日,ケビン・サリバン駐亜米臨時代理大使が主要紙の中で「亜がデフォルトから抜け出すことが重要」と発言したことに対し,ティメルマン外務大臣は,この発言は内政干渉であるとし,翌16日,同臨代を外務省に呼びつけ抗議を行い,今後同じようなことがあった場合は,同人の国外退去をも検討する旨警告した。
(イ)フェルナンデス大統領の米国政府批判演説
30日,フェルナンデス大統領は大統領府で,グリエサ米判事並びに米国政府を痛烈に批判する約2時間の演説(注:居住庁の新設発表含む)を行った。29日に,ホールドアウト(残存債務)問題での判決の不履行により,亜政府はグリエサ米判事から法廷侮辱罪の適用を受けた直後で,演説内では,同判事による判決への批判や,米国が同大統領に危害を及ぼすことを暗示するような発言をした。
(4)中国
(ア)キシロフ経済・財政大臣等の訪中
8月31日〜9月4日にかけて,亜国内公共事業に対する中国からの融資等につき協議を行うため,キシロフ経済・財政大臣,デビード公共事業大臣,及びガルッチオYPF(亜石油公社)社長が中国を訪問した。
(イ)ファブレガ中銀総裁のスイスでの中国人民銀行総裁との会談
ファブレガ中央銀行総裁は,7日にスイスのバーゼルで周小川中国人民銀行総裁と会談し,二国間通貨スワップ協定に基づくスワップの実施について話し合った。第1回目のスワップは8億米ドル相当で,今年中に実施される見通し。その後増額していき,最終的には110億米ドル相当のスワップが実施される模様と報じられた。
(5)バチカン
20日,バチカンを訪問したフェルナンデス大統領は,フランシスコ・ローマ法王と3時間に亘る昼食・会合を実施した。フェルナンデス大統領が,フランシスコ・ローマ法王と面会するのは,今回で3度目となる。
(6)ロシア
15日〜17日にかけ,ジョルジ産業大臣,ビアンコ外務副大臣,アフロンティYPF(亜石油公社)副社長等は,露への輸出増加を目的に,食品分野を中心とする亜企業110社の企業家と共にロシアを訪問した。その中で,亜・露ビジネスセミナー及びワールドフード展示会における亜パビリオンの開会式や,亜・露二国間経済協力政府間委員会第11回会合等に参加した。
(7)世界銀行
9日,世銀は,2015年から2018年の間,年10〜12億米ドルの融資を行う「対亜新戦略計画」を承認した。これは亜のパリクラブ債務返済や投資紛争解決国際センター(ICSID)に対する支払いが実現したためとされる。
(8)フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題
17日〜18日にかけて,元コロンビア大統領であるサンペール南米諸国連合(UNASUR)事務総長が,亜を訪問し,フェルナンデス大統領及びティメルマン外務大臣と会談した。18日,亜外務省のウェブサイトには,「事務総長は,マルビナス諸島,南ジョージア諸島,南サンドイッチ諸島及び排他的経済水域における亜の主権主張に対し,南米諸国連合の支援とコミットメントを繰り返し述べた」と記載された。
(9)要人往来
(ア) 往訪
8月31日〜9月4日 |
キシロフ経済・財政大臣,デビード公共事業大臣の中国訪問 |
4日〜9日 |
ファブレガ中央銀行総裁のスイス訪問 |
5日 |
ロペス金融長官の中国訪問 |
9日 |
ティメルマン外務大臣の米国訪問(第68回国連総会出席) |
9日 |
ファブレガ中央銀行総裁の中国訪問 |
12日 |
ティメルマン外務大臣のケニア訪問 |
13日〜14日 |
ティメルマン外務大臣のエジプト訪問 |
15日 |
ジョルジ産業大臣のロシア訪問 |
15日 |
バラニャオ科学技術・生産革新大臣のオーストリア訪問 |
16日 |
バラニャオ科学技術・生産革新大臣のスロバキア訪問 |
16日 |
シオリ・ブエノスアイレス州知事のドイツ訪問 |
16日〜18日 |
ロッシ防衛大臣の米国訪問 |
17日 |
バラニャオ科学技術・生産革新大臣のポーランド訪問 |
18日〜20日 |
フェルナンデス大統領のバチカン訪問 |
19日 |
バラニャオ科学技術・生産革新大臣のクロアチア訪問 |
20日〜23日 |
デビード公共事業大臣のオーストリア訪問(第58回国際原子力機構(IAEA)総会出席) |
21日〜25日 |
フェルナンデス大統領の米国訪問(第69回国連総会出席) |
22日 |
マサ下院議員の米国訪問(カリフォルニア州シリコンバレーのサイバネティックス企業訪問) |
22日 |
マクリ・ブエノスアイレス市長の米国訪問(C40(世界大都市気候先導グループ)サミット出席) |
24日 |
メイヤー観光大臣のフランス訪問 |
26日 |
ティメルマン外務大臣のスイス訪問(第27回国連人権理事会出席) |
(イ)来訪
(以下の日程で下記要人が当地で会談等を実施したとの情報あり)
3日 |
カベージョ・ベネズエラ国会議長 |
12日 |
ロイサガ・パラグアイ外務大臣 |
17日 |
スケレマニ・ボツワナ外務国際協力大臣 |
17日〜18日 |
サンペール南米諸国連合(UNASUR)事務総長 |
29日 |
バレストラッツィ国際刑事警察機構(INTERPOL)執行委員長 |
30日 |
アニファ・アマン・マレーシア外務大臣 |