2011年1月アルゼンチンの政治情勢(内政・外交)
2011年2月作成
在アルゼンチン大使館
T 概要
(1)内政面では,シオリ・ブエノスアイレス州知事が,フェルナンデス大統領の次期再選を支持する旨述べたことを皮切りに,キルチネル派の主要政治家らの間で,同再選への支持表明が相次いだ。また,急進党は,次期大統領選挙の候補者選出にあたり,8月に予定されている公式な予備選挙に先立ち,党独自の予備選挙を実施する旨決定した。その他,スペインにコカインを密輸しようとしたアルゼンチン人らが逮捕された他,小麦の輸出制限等に抗議する農牧団体,直接雇用を求める鉄道従業員,賃上げ等を求める穀物搾油業労組等による各種抗議活動が活発化した。
(2)外交面では,フェルナンデス大統領が,クウェート,カタール及びトルコという中東3か国を訪問し,各国首脳等と会談した。また,ティメルマン外相がブラジルを訪問してルセーフ同国新大統領就任式に出席し,パトリオッタ同国外相が訪亜した後,ルセーフ大統領も訪亜した。チリでは,第3回亜・チリ二国間閣僚会合が開催された。また,亜はG77+中国議長国に就任した。
U 内政
1 キルチネル派の動向
(1)13日,シオリ・ブエノスアイレス州知事(ペロン党キルチネル派)は,「フェルナンデス大統領が次期再選を目指すことは,とても良いことであろう」と述べ,同大統領の次期再選への支持を初めて表明した(注:同知事は,キルチネル前大統領の逝去前には,次期大統領選挙への出馬を狙っている可能性があると報じられていたが,同前大統領の逝去後は,フェルナンデス政権への支持を表明しつつ,フェルナンデス大統領の出馬については,同大統領自身の判断を待つと述べるに留まっていた)。
(2)また,14日,モジャーノ労働総同盟(CGT)書記長は,「フェルナンデス大統領こそキルチネル派の代表者であり,同大統領が(次期大統領選挙に)出馬すべきであることは間違いない。国民の大多数がそれを求めている」と述べた。その後,キルチネル派の閣僚,知事,国会議員等の間で,フェルナンデス大統領の次期再選を支持する発言が相次いだ。
2 急進党の動向
(1)24日,急進党執行部の会合が開催され,次期大統領選挙の候補者選出のための予備選挙について協議されたところ,8月14日に予定されている公式な予備選挙に先立ち,同党が独自の予備選挙を実施する旨決定された。同会合には,次期大統領選挙への出馬の意向を示しているサンス上院議員(当時党首)及びアルフォンシン下院議員が出席したが,コボス副大統領は出席しなかった。
(2)同予備選挙の実施日について,アルフォンシン下院議員は早期の実施を希望したが,サンス上院議員は,事前に時間が必要であるとして,より遅い時期の実施を希望していたところ,協議の結果,4月30日に実施する旨合意に至った。
(3)また,同予備選挙の投票権について,サンス上院議員は,無党派支持層も念頭に置いて,党員のみではなく党員以外の国民にも選挙権を与えるよう求めていたところ,協議の結果,急進党員及び無党派の国民に対して,上記予備選挙の選挙権を与える旨合意に至った。
(4)なお,サンス上院議員は,1月上旬,次期大統領選挙への出馬に向けて党首職を辞職する旨申請していたが,今次会合において,同申請が正式に受理され,ロサス筆頭副党首が党首の職に就任した。
(5)25日,ロサス新党首は,コボス副大統領を訪問し,上記予備選挙に参加するよう説得したが,同副大統領は,上記予備選挙に参加する意向はなく,大統領選挙に出馬する場合には8月の公式な予備選挙に参加する旨,書簡にて回答した。
3 コカイン密輸未遂事件
(1)2日,元空軍参謀総長の子息等3名のアルゼンチン人が,自社用航空機にてスペインの空港に到着したところ,同機に積載された約944kgのコカインが発見され,スペイン警察により逮捕された。なお,同機は,1日,モロン空軍基地(ブエノスアイレス州モロン市)を出発し,エセイサ国際空港(同州エセイサ市)及びカーボヴェルデを経由してスペインに到着したもの。
(2)15日,上記コカインが亜国内で積載された可能性について調査するため,カタニア連邦判事の令状に基づき,エセイサ国際空港及びモロン空軍基地の捜索が執行された。17日,ランダッソ内相は,上記コカインは亜国内ではなくカーボヴェルデにおいて積載されたものであると述べた。しかし,20日,逮捕された3名の内1名は,上記コカインは亜国内で積載されたものである旨証言した。
(3)24日,カタニア連邦判事は,アジャルディ・モロン空軍基地司令を召喚し,事情聴取を行った。同日,同基地司令は,「捜査の透明性を高めるため」という理由で同職を辞職した。
(4)同日,ガレ治安相は,「(上記コカインは)亜国内で積載されていたと考えざるを得なくなってきた」と述べた。26日,プリチェリ国防相は,上記コカインがモロン空軍基地において積載されたことを認めた。しかし,「(本事件に)空軍が関与していなかったことは間違いない」と述べた。
4 農牧問題
(1)12日,主要農牧4団体から成る「連絡委員会」は,小麦の輸出制限等に抗議するため,穀物及び油糧作物の取引を停止するという1週間のストを実施する旨発表し,17日,同ストが開始された。
(2)19日,ブエノスアイレス州バイアブランカ市において,「連絡委員会」は,小麦の輸出制限等に抗議するための集会を開催した。同集会において,ジャンビアス亜農牧連盟(CRA)会長は,「生産者が小麦の正当な価格を獲得するまで,我々は戦いを続ける。取引の停止(注:上記スト)は24日に終わるが,問題が解決されるまで,抗議は継続しなければならない」と述べた。
(3)23日,「連絡委員会」は,予定通り24日を以て上記ストを休止する旨発表した。但し,ジャンビアス会長は,「市場が正常化しなければ,15日後に,再び大規模な抗議集会を開催する」と述べた。これに対し,ドミンゲス農牧相は,「抗議の意味が全くわからない」,「政府が後退りすることはないだろう」等述べた。
(4)25日,「連絡委員会」の主要農牧4団体代表が会合を設け,今後の抗議活動について協議したところ,同委員会は,「差し当たり強硬手段は採らないが,今後とも小麦市場に対する政府の干渉を監視していく」旨発表した。
5 労働問題
(1)7日,労働省庁舎前において,ロカ線(注:半官半民のUGOFE社により運営される鉄道)の間接雇用労働者及びそれを支持する左派政党が,同労働者の直接雇用を求めるデモを行ったところ,労働省は,同労働者約2000名を20日までに直接雇用する旨発表した。同労働者の代表は,同雇用が全て実現されれば,再びデモを行うことはない旨述べた。しかし,期日が経過しても同雇用が一部しか実現されなかったことを受け,25日,上記労働者等は,ロカ線の一部の線路を封鎖する等のデモを行った。
(2)26日,サンタフェ州ロサリオ市近郊において,穀物搾油業労組を中心とする労働総同盟(CGT)同州サンロレンソ市支部の組合員らが,賃上げ,ボーナス支給等を要求して,穀物搾油工場の入口を封鎖する抗議活動を開始した。27日,亜油産業界(CIARA)は,労働省に対し,今次労使交渉を仲介するよう求めた。
V 外交
1 ブラジル
(1)1〜2日,ティメルマン外相はブラジルを訪問し,1日,ルセーフ同国新大統領の就任式に出席した。同外相は,フェルナンデス大統領からの祝意を,ルセーフ新大統領に伝えた。2日,同外相は,パトリオッタ・ブラジル新外相と会談した。両外相は,メルコスールの強化や南米諸国連合(UNASUR)の発展等における二国間の戦略的連携の重要性を確認した他,原子力,国防,科学技術等,両国が共通の関心を持つ分野において協力を継続する旨確認した。また,ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,ブラジルが亜の立場を支持していることについて謝意を表した。
(2)10日,パトリオッタ・ブラジル外相が訪亜してフェルナンデス大統領と会談し(ティメルマン外相同席),その後,ティメルマン外相及びパトリオッタ外相が共同記者会見を行った。同会見において,ティメルマン外相は,31日に予定されているルセーフ・ブラジル大統領の訪亜に先立ち,「二国間のアジェンダを見直すための好機となった」と述べた上で,今次会談において下記の事項について協議された旨述べた。
(ア)両国による通商監視委員会の活動強化,及び,対第三国輸出拡大のための協力体制の強化。
(イ)国連安保理改革の重要性。
(ウ)両国間のフライト数の増加。
(エ)ワールドカップ及びオリンピックのブラジルでの開催に向け,同国が会場建設やインフラ整備等を行う際に,「両国の企業が受注を共有すること」(注:亜企業も工事等の入札に参画できるようにすること)の必要性。
(3)31日,ルセーフ・ブラジル大統領が訪亜してフェルナンデス大統領と会談し,同会談の後,両国首脳は共同記者会見を行った。同会見において,フェルナンデス大統領は,「亜を(大統領就任後)最初の外遊先にすると決定してくれたルセーフ大統領に感謝したい。このことは亜にとって大変な名誉であると同時に,キルチネル前大統領及びルーラ・ブラジル前大統領が築いた二国間の特別な関係を再確認するものであった」,「現在,世界が危機にあると言われるが,国の成長と国民主権を深く信じる我々(両国)にとっては,「危機にある」のではなく,「変化のなかにある」のである」,「そのため,亜とブラジルの結び付きは,これまで以上のものになるであろう」等述べた。また,同首脳会談において,両国首脳は,下記の文書に署名した。
(ア)共同宣言:主な内容は以下の通り。
●メルコスール,南米諸国連合(UNASUR),G20等の重要性を確認。
●国連安保理改革の重要性を確認。
●WTOによる多角的貿易交渉における両国の立場の調整を継続。また,ドーハラウンドの交渉妥結に向け,メルコスール内での調整を強化。
●両国の大統領及び閣僚の定期的な会談の継続。また,両国による通商監視委員会の活動強化。
●文化の発展促進のためのメルコスール文化基金等の設置。
●観光促進等のための二国間フライト数の増加。
●2011年亜で開催される第34回南極条約協議国会議の重要性の確認。
●デジタルテレビのISDB−T方式採用諸国による会合の開催を検討。
●二国間原子力委員会(COBEN)等を通じた原子力の分野における協力。
●その他,国防,造船業,通信,バイオエネルギー,薬剤開発等の分野での協力。
(イ)計14点の協定:多目的研究炉開発,都市開発,各種インフラ整備,二国間国際橋梁建設,バイオエネルギー等の生産と利用,薬剤開発,二国間の通商促進,対第三国輸出拡大,女性の権利保護等に係る協力等を表明。
2 パレスチナ
2日,ティメルマン外相は,ルセーフ・ブラジル新大統領就任式に出席するため訪問した同国において,アッバース・パレスチナ自治政府大統領と会談した。アッバース大統領は,ティメルマン外相に対し,亜政府によるパレスチナの国家承認(客年12月6日発表)について謝意を表明した。ティメルマン外相は,イスラエル共済組合(AMIA)会館爆破事件(1994年)に関与したとされる当時のイラン政府高官の裁判を実施することの重要性について述べた(注:客年9月,亜政府は,亜・イラン両国の合意の下に選ばれた第三国において同裁判を実施することをイラン政府に提案したところ,イラン政府は,同事件にイラン国民が関与していないことは明らかであるなどとして,同提案を拒否した)。これについて,アッバース大統領は,あらゆる種類のテロに対する強い非難を表明すると共に,AMIA会館爆破事件に関して,できる限りの助力をする旨述べた。
3 ウルグアイ
(1)7日,アルマグロ・ウルグアイ外相が訪亜し,ティメルマン外相と会談した。同会談において,アルマグロ外相は,ラプラタ川沿いのウルグアイ・コロニア県に製紙工場を新設するという民間企業の計画を,ウルグアイ政府が認可したことについて,ティメルマン外相に説明した。アルマグロ外相は,「新しい工場は,(環境汚染等を生じさせることなく操業するための)より高度な技術を持っている」等述べた。ティメルマン外相は,「今次(工場新設)計画は,ラプラタ川規約を尊重しているため,亜としては,同計画について異論はない」,「(新設予定の工場が)環境を破壊することは到底ない」等述べた。また,同外相は,ウルグアイは,ラプラタ川管理委員会(CARP)を通じて,上記工場新設の進行状況について,亜への報告を継続しなければならない旨述べた。また,両外相は,ラプラタ川の環境保護のため,ラプラタ川規約の他に,両国政府の協力に係る新たな法的枠組みを形成する必要がある旨同意した。
(2)UPM社製紙工場の撤去を求めて抗議活動を行ってきた亜エントレリオス州グアレグアイチュ市の市民団体は,新設の製紙工場が環境汚染の原因となる可能性を指摘し,工場新設に反対の姿勢を表明した。
4 米国
(1)9〜10日,バレンスエラ米国務次官補が訪亜し,10日,同次官補は,ティメルマン外相と会談した。同会談において,両者は,南米地域の問題解決における南米諸国連合(UNASUR)の重要性,科学技術,不拡散,麻薬取引対策等について協議した。その他,ティメルマン外相は,米国が,牛肉,柑橘類等の一部の亜製品の輸入を制限していることについて不満の意を表明したが,これについて,同会談後の記者会見では,「報復措置よりもポジティブな手段を考えたい」と述べた。その後,バレンスエラ次官補は,ガレ治安相,シオリ・ブエノスアイレス州知事,ウリバリ・エントレリオス州知事等と会談した。
(2)25日,オバマ米大統領が,一般教書演説において,3月にエルサルバドル,ブラジル及びチリを訪問する意向を示したが,亜には言及しなかったため,亜政府内に懸念が生じている旨各紙が報じた。これに対し,米国務省は,オバマ大統領が亜を訪問しない理由は,亜が国政選挙を控えた状況にあるからであると説明した。
5 G77+中国
(1)12日,国連本部において,亜のG77+中国議長国への就任式典が開催され,アルグエジョ国連常駐代表が出席した(注:当初,ティメルマン外相が出席する予定であったが,米国の悪天候によりフライトがキャンセルされたため,同外相の代理としてアルグエジョ代表が出席した)。同式典において,アルグエジョ代表は,ティメルマン外相の代理として演説を行ったところ,同演説の概要は以下のとおり。
(ア)亜政府の名において,亜のG77議長国就任に対し,満足の意を表明する。亜の立候補に対して支持と信頼を寄せてくれた中南米・カリブ諸国に謝意を表したい。また,支持してくれた全てのG77諸国にも謝意を表したい。
(イ)我々の国民の正当な願いを実現するために,G77の利益は,国際的アジェンダの中心を占めなければならない。そのためには,G77諸国の連帯と協力が不可欠と確信している。
(ウ)建設的な対話を通じて,世界の国々の間に平和と信頼を醸成する必要がある。武力による対立は,諸国民を苦しめ,深刻な人権侵害を引き起こす。すべての国家,特に,核兵器等の武力を有する国家は,平和と安全の構築のため,段階的な軍縮に向けた努力を行い,その予算を開発に向けて行かなければならない。
(エ)亜は,独立当初からあらゆる形態の植民地主義と戦ってきた。それは,自由を求める闘いとは,大国に蹂躙され,国民や資源を搾取された人々の侵し得ない権利であると考えたからである。
(オ)我々は,共通だが差異ある責任という原則の下に,あらゆる環境問題における進展を目指す。発展途上国が,環境保護のために際立った役割を果たすことができるように,先進国の技術や資金を発展途上国に移転する可能性を模索する。フェルナンデス大統領が述べているように,貧困や社会格差の克服に苦しんでいる発展途上国が,先進国の産物である環境の負債を負わなければならないというのは不公正である。
(カ)今日の国際金融構造は,不均衡を深化させるという重大な欠点を有している。世界は,貧困諸国の開発に失敗し続けており,多くの場合,発展のために不適切な政策を押しつけ,脆弱な人々に負の影響をもたらしてきた。多くの国で飢餓が常態化している中,一部の国々が過度な富を享受するということが,最早,持続不可能になってきていることは明らかであろう。
(キ)経済と社会の発展,平和及び繁栄という,我々をG77の結成へと導いた共通の理念と願いこそが,我々の足跡を刻むであろう。我々は,これらを実現するために,多国間システムと諸国民の協力を信頼し,各国の良識と連帯を獲得するまで,努力を継続する用意がある。
(2)同日,ティメルマン外相は,「亜は,G77の結成時以来の加盟国であるが,議長国への就任は初めてである。亜の議長国就任は,GRULACの提案によるものであり,これがG77において受け入れられたのである。また,亜が国際場裡において果たしてきた役割は,亜国内においても十分に認識されないことが多いが,今次就任は,G20やIMF改革等において我々が果たしてきた役割に対する評価の現れでもあろう」等述べた。
6 クウェート
16〜17日,フェルナンデス大統領はクウェートを訪問した。
(1)16日,同大統領は,ホラーフィ同国国民議会議長及びナーセル同国首相と会談した後,サバーハ同国首長と会談した。サバーハ首長との会談において,両国首脳は,以下の協定及び覚書に署名した。
(ア)「亜・クウェート間の経済及び技術協力に係る協定」:二国間の経済協力,及び,財政,観光,農業,資源,教育等の分野における技術協力。
(イ)「亜・クウェート両政府間の通商に係る協定」:二国間貿易の推進,両国企業の国際見本市等への参画支援等。
(ウ)「スポーツの分野での協力に係る協定」:スポーツの技術,スポーツ関連組織の運営等に係る知識等の交換,両国のスポーツ・チームの往来等。
(エ)その他,覚書計4点:アラブ経済社会開発基金に係る覚書,二国間の農牧漁業の分野での協力に係る覚書,医療の分野での協力に係る覚書,及び,二国間の投資に係る覚書。なお,二国間の投資に係る覚書において,クウェートは,亜を戦略的投資先と認定した。
(2)17日,フェルナンデス大統領は,クウェート商工会議所会長と会談した他,二国間の通商及び投資の促進を目的とする両国企業関係者らの会合に出席した。これらの場において,同大統領は,「亜経済は,資本の流入に対して開かれている」,「対亜投資の条件は,亜を利用するのではなく,亜と連携することである」等述べた。
7 カタール
18〜19日,フェルナンデス大統領はカタールを訪問した。
(1)18日,同大統領は,ハマド同国首長と会談した。同会談において,両国首脳は,カタール産ガスの輸入,亜の原子力関連技術の対カタール輸出,駐カタール亜大使館の開設等に係る各種二国間協定に署名した。ティメルマン外相は,駐カタール亜大使館の開設について,「この新たな大使館の開設は,亜とアラブ諸国との戦略的連帯を示すものであり,同時に,南南協力の可能性を強化するものである」と述べた。
(2)また,同日,フェルナンデス大統領は,二国間の通商及び投資の促進を目的とする両国企業関係者らの会合に出席した。同会合において,同大統領は,「世界的な経済危機を経て,新興国はより大きな発展のチャンスを抱いている」等述べた上で,食料品生産国としての亜の役割,原子力の平和利用の分野における亜の業績,亜における工業発展に伴うガス需要の増大等に言及し,亜・カタール間の戦略的連携の必要性を主張した。
(3)19日,同大統領は,カタール財団(注:教育,科学及び社会開発に係る非営利団体)代表,同国の主要企業幹部等と会談した。
8 トルコ
19〜21日,フェルナンデス大統領はトルコを訪問した。
(1)20日,同大統領は,ギュル同国大統領と会談した。同会談において,同大統領は,「(今次トルコ訪問は)二国間関係における新たな段階を意味する」と述べた。また,両国首脳は,以下の二国間協定に署名した。
(ア)両国の航空会社による二国間の直行便の設置に係る協定。
(イ)二国間の鉱物,石炭,その他燃料等の輸出入の促進に係る協定。
(ウ)亜原子力委員会とトルコの原子力関連機関の関係強化に係る協定。
(2)同日,フェルナンデス大統領は,エルドアン・トルコ首相と会談した。同会談において,国連やG20等において両国が協働していくことの必要性が確認された。また,二国間の通商関係の強化等のため,両国の首都に通商事務所を開設する旨合意された。
(3)その後,フェルナンデス大統領は,ギュル大統領主催の会合に出席し,「2008年に始まった国際市場の危機以前に(亜・トルコ)両国が築いていた通商関係を回復することが必要である」,「G20における亜及びトルコの役割は,新興国の権利を取り戻すことである」等述べた。
(4)21日,フェルナンデス大統領は,二国間の通商及び投資の促進を目的とする両国企業関係者らの会合に出席した。同会合において,同大統領は,「21世紀は,軍事力による防衛ではなく,科学技術や食料品の確保が鍵になるだろう」,「我々は,社会のために,生活水準の向上という目的を達成しなければならない。各国間の戦略的連携を通じて,通商及び労働の機会を創出することが,その目的の支えになるだろう」等述べた。
9 シリア
24日,ティメルマン外相はシリアを訪問し,アサド同国大統領と会談した。同会談において,両者は,通商,投資及び科学技術の分野における二国間関係の強化を約束した他,中東和平問題についても協議した。また,アサド大統領は,中南米諸国によるパレスチナの国家承認について謝意を表明し,ティメルマン外相は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,シリアが亜の立場を支持していることについて謝意を表明した。
10 チリ
(1)27日,ティメルマン外相,プリチェリ国防相,ジョルジ産業相,メイヤー観光相,デビード公共事業相,アラク司法相,トマダ労働相,マンスール厚生相,シレオニ教育相,バラニャオ科学技術相及びランダッソ内相がチリを訪問し,第3回亜・チリ二国間閣僚会合に出席した。同会合において,両国を結ぶアンデス山脈貫通トンネル「Cristo
Redentor」の整備に係る協定,災害対策のための亜・チリ合同委員会の機能に係る協定,臓器移植の分野での協力に係る協定,労働問題等を扱う二国間フォーラムの実施に係る協定等が採択された。
(2)また,チリ側は,フォークランド(マルビナス)諸島領有権問題に関し,亜の立場に対する支持を改めて表明すると共に,亜英両政府が,同問題の平和的且つ決定的解決を可及的速やかに見出すための交渉を再開することの必要性を追認した。
(3)その他,モレノ・チリ外相は,チリ人元ゲリラ・アパブラサの引渡問題(注:客年9月,国家難民委員会(CONARE)は,チリ政府による同人の引渡要請に応じず,同人に対し政治難民認定を与える旨決定した。翌月,モレノ外相は,CONAREによる同決定を非難したが,ティメルマン外相は同決定を承認する旨述べた)について,「アパブラサはチリで裁判を受ける義務がある」と述べ,亜政府に対し,同人の引渡を改めて求めた。
11 要人往来
(1)往訪
1〜2日 |
ティメルマン外相のブラジル訪問(ルセーフ同国新大統領就任式に出席) |
10〜11日 |
ジョルジ産業相の中国訪問(陳徳銘同国商務部長と会談) |
16〜17日 |
フェルナンデス大統領のクウェート訪問(サバーハ同国首長と会談) |
18〜19日 |
フェルナンデス大統領のカタール訪問(ハマド同国首長と会談) |
19〜21日 |
フェルナンデス大統領のトルコ訪問(ギュル同国大統領と会談) |
24日 |
ティメルマン外相のシリア訪問(アサド同国大統領と会談) |
27日 |
ティメルマン外相等閣僚11名のチリ訪問(第3回亜・チリ二国間閣僚会合に出席) |
(2)来訪
7日 |
アルマグロ・ウルグアイ外相(ティメルマン外相と会談) |
9〜10日 |
バレンスエラ米国務次官補(ティメルマン外相と会談) |
10日 |
パトリオッタ・ブラジル外相(フェルナンデス大統領と会談) |
31日 |
ルセーフ・ブラジル大統領(フェルナンデス大統領と会談) |